漂着ごみから海を守る 動き始めた海洋汚染対策 [2007年12月18日(Tue)]
パワーポイントで映し出された漂着ごみの山 日本の海岸線で大きな問題になっているのが漂着ごみだ。この問題を研究している兼弘春之・東京海洋大学教授がこのほど、海洋政策研究財団の「第47回海洋フォーラム」で「漂着ごみによる海洋汚染−動き始めた国の対策」と題して講演、解決のためには「プラスチック製品の発生抑制と大量生産・消費社会の見直しが必要」と指摘した。 海洋政策研究財団は、日本財団の支援で海洋に関するその時々の関心事をテーマに月1回のペースでフォーラムを開いており、海の問題に関心を持つ各界の関係者が参加している。この日のフォーラムで兼弘教授は漂着ごみ問題の深刻な現状を紹介、動き始めた国の対策について詳細に説明した。(写真:漂着ごみ問題で講演する兼弘教授) この中で兼弘教授は、漂着ごみの中でも生態系に影響を与えるプラスチックのごみを中心に実情を語った。それによると、1960年代から海洋汚染が始まり、その後年々汚染が進行、80年代に入ると国際会議で対策が検討されるようになり、90年代には市民団体、研究者、各省庁による海洋ごみの調査も始まった。2000年代に入ると、海洋ごみを議題にした国際会議が多く開催され、各国間の取り組みもスタート。しかし現在は海流によって運ばれるごみが増大し、海洋ごみは「地球規模」の問題になっているという。 日本の海岸に漂着するごみは、食品容器、包装材、ペットボトル、飲料缶、ガラスビンなどの生活用品が多く、漁業系の廃棄物、工業製品なども含まれるという。このうちの大半はプラスチックで、分解せず、半永久的に環境中に残ってしまうため海洋環境、生物への影響が懸念されている。日本を含め、世界各国ともプラスチックの生産量は年々増大しており、海洋に流れ込む廃棄物も増えているという。中国の経済の発展に伴う海洋汚染も脅威になりつつある。 兼弘教授はこうした現状を踏まえ漂着ごみの回収・処理の問題点を説明、問題解決に向けて最近積極的に取り組みを始めた国、行政の役割の重要性を訴え、プラスチック製品を中心とした「使い捨て文化」を見直しし、製品に使用する材料の変更も検討すべきだと指摘した。メーカーに対してもその社会的責任を認識し、海洋ごみの回収と処理に協力し、リサイクル費用を負担する必要があると提言した。フォーラムに参加した関係者からは「海洋基本計画の中に、海洋ごみ問題に対応する何らかの字句を入れるべきだ」との声が出ていた。(写真:海洋フォーラムの会場) |