敬老の日に「昭和の記憶」を聴く 山梨・上野原の子どもたち [2007年09月26日(Wed)]
お年寄りと子どもたちが向き合っての「聴き取りの会」 お年寄りが語る「昔の暮らし」を聴き取って、記録に残す運動を続けているNPO「昭和の記憶」(東京都千代田区神田神保町、盛池雄歩代表)が、その「聴き書き活動」を全国に広め、家族間・地域間のコミュニケーションの場にもしていこうと、「敬老の日を聴き書きの日に」キャンペーンを開始した。今年は17日の「敬老の日」を中心に神奈川県鎌倉市や山梨県上野原市でスタートさせ、「2010年までに全国1000カ所での聴き書き実施」という目標を掲げている。 上野原会場は市内の学習塾で開催、近在のお年寄り10人が参加した。聴き取り役は市内の中学生や高校生、それに塾OBの大学生らで、2人1組になってお年寄り一人一人から若いころの生活体験などを聴いた。かつてはどの家庭でも使われていた「かまど」「洗濯板」「ちゃぶ台」といった生活道具は、画集「道具の記憶」をもとにお年寄りがその使い方を教えた。また「井戸端会議」や「薮入り」といったかつての社会慣習を、現代っ子たちは不思議そうに聞いていた。写真左:絵をもとに道具にまつわる思い出を聞く お年寄りの最高齢は86歳。聴き取り役の14歳の中学2年生は「たった60年前だというのに、こんなに今と違う生活だったなんて!」と驚いていた。子どもたちにはどんな話も新鮮だったようで、熱心に聞き入り、録音したりメモに取るなどしていた。会場は祖父母が孫たちに若いころの暮らしを語って聞かせているような光景で、夫婦で参加したお年寄りは「私らも忘れていたことをたくさん思い出しました」と、語り聞かせる楽しさを実感していた。 NPO「昭和の記憶」は、激動の昭和を生き抜いた人々の実体験を「聴き取り」という手法で発掘し、記録に残すことを目的に活動している。理事の和栗由美子さんは「市井(しせい)の記憶はどんどん薄れ、消えて行きます。お年寄りの皆さんの人生に刻まれた体験を記録に残していくことは、これからの社会にとっても必ずや寄与すると考えています」と語っている。写真右:若者には新鮮な「昭和の生活」が次々と すでに全国300人を超える高齢者からの聴き取りを行っており、これらの記録は『市井の昭和史』として刊行が始まっている。今後はこの聴き取り活動が「敬老の日」と組み合わせた企画となるよう全国キャンペーンを展開する考えで、年内には団体事務所のある新潟県上越市でも開催する。日本財団もこの活動や記録保存を支援している。写真左:刊行が始まった『市井の昭和史』 |