シンシア医師、幅広い支援を要請 福祉向上大使の笹川会長を訪問 [2012年11月27日(Tue)]
精力的に活動するシンシア医師 タイ・ミャンマー国境でミャンマー難民向けの診療所を運営するシンシア・マウン医師が11月20日、日本財団を訪問、ミャンマー少数民族福祉向上大使を務める笹川陽平会長に支援を要請、笹川会長は「可能な限り少数民族地域に足を運び、どのような保健医療政策が可能か、あるいは各国の支援をどうしたら呼び込めるか、考えてみたい」と答えた。シンシア医師は16日に来日、10日間にわたり東京や横浜、福井、大阪などを精力的に回り、講演会や公開講座を通じてミャンマー難民への幅広い支援を訴えた。 |
メータオ・クリニック シンシア医師は少数民族カレン族の出身で1989年にミャンマー国境に接するタイの町メソットに診療所「メータオ・クリニック」を開設、ミャンマー軍事政権の弾圧から逃れてきた避難民の無料診療、さらにミャンマー国内避難民に対する保健医療活動を続け、「もう1人のアウンサン・スーチー」として国際的にも高く評価され、2005年のノーベル平和賞にもノミネートされた。 笹川会長と記念撮影 一方、日本財団も笹川会長が6月、福祉向上大使の委嘱を受けて以降、ミャンマー支援を加速、タイ・チェンマイに本部を持つ少数民族武装勢力の連合体「統一民族連邦評議会」(UNFC)などと幅広く接触し、この過程で9月末、メータオ・クリニックも訪問、日本財団として支援を約束し、この一環として今回のシンシア医師の日本訪問となった。 精力的な講演活動も。17日・日本財団ビル 20日の訪問には同クリニックに看護師2人を派遣している「メータオ・クリニック支援の会」(JAM)のメンバーらも同席、年間15万人の避難民が利用するクリニックの現状やミャンマーの医療状況、さらに日本財団が進める伝統医薬品の配備事業などについて約1時間、意見を交換した。 この中でシンシア医師はミャンマーの医療状況について、130を超す少数民族が住むミャンマーの現状から、多言語を駆使できるヘルスワーカーの育成や学校での保険教育、ワクチン供給体制の整備、家族計画の普及―などの必要性を強調するとともに、出産を例に「訓練を受けた助産婦の下で出産する妊婦は全体の20〜25%に過ぎない。知識も経験もない助産婦が出産に関わっており危険性が高い」、「5歳以下の乳幼児の死亡率も高い」などと医療体制の遅れを指摘した。 現在、タイにはメソットを中心に100万人を超すミャンマー難民が住み、メータオ・クリニックは難民の拠点病院となっている。民主化以降、欧米を中心とした民間支援が避難民居住地よりミャンマー本国に流れる傾向が強く、無料診療体制もあって、病院経営は極めて厳しい状況にある。シンシア医師はこの日の訪問に先立って17日、日本財団ビルで行われた講演会でも「ミャンマー政府は、われわれがタイと同様の活動をミャンマーでもできるよう認めるべきだ」などと訴えていた。 メータオ・クリニックに対しては故笹川良一・日本船舶振興会会長(当時)が開院2年目の1991年に訪問、建物を寄付した経過がある。日本財団も本年度、新たに300万バーツ(約780万円)の支援を行うことにしている。(宮崎正) |