昭和大学マダガスカルプロジェクト〜口唇口蓋裂の手術で子供達に笑顔が戻る〜 [2012年07月09日(Mon)]
手術後の子供と土佐泰祥医師 術後2日も経つと顔なじみの仲に 手術前は泣いてばかりいた子供達が笑顔をみせ、クリニックの中庭を元気に遊びまわっている…その笑顔を見た子供の家族が笑顔になり、その笑顔を見てクリニックを訪れる人々も自然と笑顔になる。アフリカ大陸東部の島国・マダガスカルで口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)に苦しむ子供達を助けようと、作家の曽野綾子さんが呼びかけ人となった昭和大学の医療チームの「昭和大学マダガスカルプロジェクト」は、6月14日〜21日、23例の手術を終えて「笑顔の連鎖」を現地に残して帰路についた。 |
手術前の口唇口蓋裂の赤ちゃん/手術後の赤ちゃん 口唇口蓋裂とは先天性の障害の一つであり、アジア系人種で約500人に1人、アフリカ系人種では約1,000人に1人の割合で発症するという。マダガスカルは地理的にはアフリカに分類されているが、住民の多くはマレー系やポリネシア系の先祖を持つため、他のアフリカ諸国と比べて口唇口蓋裂の発症数が多い。手術を受けていない口唇口蓋裂の新生児は母乳をちゃんと飲む事ができないため、栄養が十分に取れずに命を落としてしまうケースも少なくない。子供が成長しても、口唇口蓋裂の外見がいじめや差別につながることも多いという。 手術の様子 勉強を兼ねて昭和大学の医学生と看護学生もプロジェクトに参加した この「昭和大学マダガスカルプロジェクト」は2011年5月の第1回目に引き続き、2回目となる。笹川記念保健協力財団が事務局を務め、東京都や神奈川県から計7名のボランティアも参加し、首都アンタナナリボから約170キロ南下したアンツィラベにあるクリニックアヴェマリア病院で、現地スタッフと一緒になって昭和大学の医療チームをサポートした。クリニックには2008年にJOMAS(海外邦人宣教師活動援助後援会)が支援した手術室が整備されている。また、20年間同クリニックで助産師を務める牧野幸江さん(シスター牧野)が事前の準備や手術を受ける子供達との調整などを担ってくれたこともあり、海外での手術にも関わらず、医療チームは大きなストレス無く実施することができた。 夕食のひとこま 食事は修道院のシスターが用意してくれた。 朝には自家製ヨーグルトも 期間中、プロジェクトメンバーはクリニックの宿泊施設で寝起きし、文字通り「同じ釜の飯」を食べた仲となった。団長を務めた昭和大学形成外科准教授の土佐泰祥医師は「今回のプロジェクト関係者全員がオーケストラのようにチーム一丸となって無事に手術を行う事ができた。手術前は顔を隠していた子供が手術後に笑顔を見せてくれたのは本当に嬉しい」とほっとした表情で語る。 手術を受けた子供の口を消毒する牧野幸江さん マダガスカル語もできるため現地の人の信頼も厚い 今後も手術を受けた子供達の経過を見守ることになる牧野幸江さんは「この土地の人にとって手術は一大事なので、家族や親戚が全員心配するんです。手術が終わって、子供が親や兄弟に手を引かれながら元気になって帰っていく姿を見ることができるのは嬉しいですね」と顔をほころばせた。プロジェクトの発起人でもあり今回の全行程をボランティアとして参加した曽野綾子さんは「マダガスカルの多くの地方には病院はおろか診療所もない。近代的な外科室の設備など全くないし、外科医がいても技術が無いのが現実。そんな状況の中で無事に手術を終える事が出来たのは本当に良かった」と総括する。 手術を受けた子供達は今日も笑顔で元気に遊びまわっていることだろう。(和田真=同行の日本財団広報チーム職員) |