オーケストラの体験講座がフィナーレ〜5年間の成果に手応え [2012年02月08日(Wed)]
児童のすぐ目の前での演奏会 本物のオーケストラが小学校を訪れ、ワークショップ(体験型講座)やミニ・コンサートを開いて児童らの豊かな感性を育む…日本交響楽振興財団(原良也会長)が日本財団の支援で進めてきた『小学校における通年音楽教育プログラム』の最後の体験講座が1月30日、兵庫県姫路市の市立英賀保小と安室小の2校で行われた。5カ年計画で始めた同プログラムの最終年度にあたり、文字通りの“フィナーレ”を迎えて、児童代表から感謝状と花束が、この1年間の指導を担当した関西フィルハーモニー管弦楽団に贈られた。 |
木管楽器の説明を行う演奏家たち 午前9時半、JR山陽本線英賀保(あがほ)駅南約500メートルの英賀保小学校に、関西フィルのメンバーや振興財団職員ら約10人が到着した。今年度10回目のワークショップの最後は5年生が対象。フルート、ファゴット、クラリネット、オーボエの木管楽器によるヘンデルの「水上の音楽より“ホーンパイプ”」が演奏され、続いて楽器の紹介、指揮者の藤岡幸夫さんが加わり、児童の手拍子で音楽を作っていく…。「プロの、ナマの音楽をすぐ目の前で聞く、このインパクトはすごい」と音楽担当の平野知詠子教諭。印象に残ったのは、今年1月16日に開催したミニ・コンサートで、弦楽器のナマ演奏でプロの声学家と一緒に校歌を歌ったことを上げた。 指揮者の仕事を説明する藤岡幸夫さん 午後からの安室小では、ワークショップ終了後児童代表から感謝状と花束が贈られた。感謝状には「ぼくはサッカーをしていますが、音楽もチームプレー。それぞれの楽器の得意とする音が結集して、すてきなハーモニーができあがっていることに気がつきました…1年間すてきな音楽と楽しい授業をありがとうございました」との言葉が綴られていた。藤岡さんは「単発授業ではなく、10回の講座と2回のミニ・コンサート、オーケストラ公演も1回。連続した音楽教育の効果は100倍にもなるはず」と話した。 英賀保小での最後のワークショップ このプログラムは、出前授業でオーケストラ音楽の楽しさを身近に知ってもらうだけでなく、その地域の人たちにもホール・コンサートを提供し、地域文化の向上と交響楽の振興・普及を図ることも目的としている。このため地域の教育関係者と相談して毎年小学校2校を推薦してもらい、講師となる地元の楽団と調整するなど「振興財団」と「地域」「楽団」の3者がスクラムを組んで運営しているのが特徴。07年度の金沢市がスタートで、08年度奈良市、09年度南相馬市、10年度甲府市、最終の11年度は姫路市で行われた。 日本交響楽振興財団によると、金沢市や奈良市ではプログラムが終了してからも自主事業としてワークショップを実施。南相馬市からは「初めてオーケストラを聴いて言い表せない何かを感じた」(6年生)「小さな音楽ファンがきっと増えたと思う」(保護者)などの感想が届けられた。“本物の音楽”に触れる5年間の成果は各地で、子供らの心に根を下ろしているようだ。(平尾隆夫) |