不要の歯科金属1億6千万に 小児ホスピス、小児がん施設を支援 [2011年02月28日(Mon)]
動画:トゥースフェアリー記者会見(3:31秒) 治療で不要となった歯科用金属を回収して社会に役立てる「TOOTH FAIRY(歯の妖精)」事業に取り組む日本歯科医師会(大久保満男会長)と日本財団(笹川陽平会長)は2月22日、東京・赤坂の日本財団ビルで会見し、2009年6月の事業開始以降、集まった金属の換金価格が1億6600百万円に上り、これを利用して新たに小児ホスピス「海のみえる森」(神奈川県・大磯町)と小児がん専門施設「チャイルド・ケモ・ハウス」(神戸市中央区)の建設を支援する考えを明らかにした。 |
会見する大久保日本歯科医師会会長(左)と笹川日本財団会長 事業には現在、全国約6万5000の歯科医院のうち3234医院が協力、患者に不要となった歯科撤去金属の提供を呼び掛け、寄せられた金属を日本財団に保管。日本歯科医師会立ち会いの下でリサイクル業者に手渡され、融解して金や銀を取り出している。この結果、開始以来約1年半で金29.6キロ、銀125.1キロ、パラジウム37キロ、プラチナ0.2キロが抽出され、金価格の高騰もあって全体で1億6千万円を超えた。 回収事業で得られた金のインゴット この資金約2500万円を活用して既にミャンマーの山岳地に10校の学校が建設されており、今回は歯科医師会と日本財団で協議の結果、小児ホスピスと小児がんの2施設の建設を支援することになった。支援額は「海の見える森」が2年間で1億1千万円、「チャイルド・ケモ・ハウス」が同3億円。小児ホスピス施設は民間から提供された大礒町東小磯の土地約2万平方メートルと建物を活用して病気や障害と闘う子供と家族が心と体を休めるショートステイ施設が整備される。 一方、小児がん専門施設はNPO法人「チャイルド・ケモ・ハウス」(大阪府茨木市)が神戸・ポートアイランドの市有地に建設を目指す小児がん患者と家族の滞在施設。“夢の病院”と名付けられ、ともに国内では初めての本格施設となる。 小児ホスピスの重要性を語る細谷理事長 今回の支援について財団法人「海の見える病院」理事長の細谷亮太・聖路加国際病院副院長は「願ってもない有難いプロジェクト」と謝意を述べ、チャイルド・ケモ・ハウス理事で2歳の次女を小児がんで亡くした萩原雅美さんは「小児がん対する支援の輪が大きく広がったと実感する」と語った。 感謝を語る萩原理事 22日は寄せられた歯科金属や1億6千万円に相当する1キロの金のインゴット47本も用意され、笹川会長は「事業は日本歯科医師会が一つになって社会に貢献する世界でも珍しい試み。さらに多くの人に参加していただきたい」と期待を寄せ、大久保会長も「単に建物を作って終わりということにはしたくない。完成した施設を医師が定期的に訪れ、協力して子どもの口腔ケアにも取り組みたい」と事業にかける熱意を語った。(宮崎正) |