2018年11月16日
文化イベント「デフリンピックを知ろう」を開催しました(続き)
【文化イベント「デフリンピックを知ろう」を開催しました】(続き)
<第三部:卓球 「音のない世界でスポーツを体験してみよう>
デフ卓球選手:加藤貴子さん
関学体育会卓球部:林原征汰さん・秋山悠香さん・廣田雅志さん
第三部は、「音のない世界でスポーツを体験してみよう」と題した、卓球体験です。まず、当センター専門技術員の川口聖より、企画主旨の説明がありました。卓球は、ボールが当たる音で、ボールの回転速度などを判断するそうです。そこで、その音がシャットアウトされてしまうと、プレイにどのような影響が出るのか、を参加者の方々に体験してもらいました。
その後模擬試合として、デフ卓球選手の加藤さんと関学体育会卓球部の林原さんによるシングル戦、続いて、加藤&林原ペア vs. 秋山&廣田ペアの男女ダブルス戦を披露していただきました。その際学生にはイヤホンをしてもらい、音楽を聞きながらプレイしてもらいました。やはり、いつもと調子が違ったようで、スポーツ競技においてもいかに音を頼りにしているかに改めて気づかれた様子でした。
続いて、参加者の中から希望者に、加藤さんと関学体育会卓球部の学生を相手にして、 対戦の体験をしてもらいました。希望者にもイヤホンをしてもらい、子供から卓球経験のある方まで、様々な方が対戦していました。参加者からは、「貴重な経験になった」などのコメントをいただくとともに、音のない世界でのスポーツとはどのようなものか、その実感を掴んでいただけたのではないかと思いました。ご協力くださいました加藤さん、関学卓球部の皆様、本当にありがとうございました。
<第四部:座談会>
司会進行:溝畑潤先生(関西学院大学人間福祉学部教授)
登壇者(デフリンピック出場選手側):
・ 信田光宣さん(バレーボール男子)
・ 山田真樹さん(陸上競技)
・ 石田考正さん(ハンマー投げ)
・ 安積梨絵さん(バレーボール女子)
・ 宮田夏実さん(女子サッカー)※宮田さんは関学の現役生でもあります。
登壇者(関学学生側)
・ 中川礼生さん(バレーボール)
・ 岡本壮太さん(陸上競技部)
・ 岸上空良さん(体育会学生本部/水泳競技部)
・ 林原正汰さん(卓球)
最後の第四部では、デフリンピック出場選手と関学生との座談会を行いました(登壇者については上記参照)。溝畑先生による司会で、それぞれの立場から疑問に思っていることや普段心がけていることなどについて、質疑応答し、意見を交わしました。
聴こえる学生にとって「音」は一種のバロメーターであり、音でボールの回転速度を判断したり(卓球)、走るときの足音で体調の良さを判断したり(陸上)するようです。また、リレーの場合、バトンタッチをするときの掛け声は勝負に左右されるくらい非常に大切だそうで、学生にとっては、耳の聞こえない選手は、聴こえない中でどのように瞬時に判断をしたり、体調を感知したりしているのか、が大きな疑問だったようでした。
すると、デフリンピック選手の場合、音の代わりに視覚から入っている情報を最大限に利用している、というお話がありました。例えば、リレーの練習では、相手の走り方を見て、体調の良し悪しを判断し、そして、それぞれの体調のときのバトンの渡し方の違いを、何度も練習し、感覚で掴んでいくのだそうです。また、周りの音が聞こえないので、自分の世界に入りやすい、という事を話された選手もいらっしゃいました。
最終的には、聴こえるか聴こえないかで、練習方法や手段が違うだけであって、目指すところは同じだということが、お互い確認し合えたのではないかと思います。
フロアからは、デフリンピックの認知度を高めるためにはどうすればよいか?というご質問がありました。難問を前に壇上の皆さんからそれぞれなりの見解が示されていましたが、単に認知度を高めていくだけではなく、社会から「どう見られたいのか」という点も視野に入れて考えていく必要がありそうです。
改めて、ご登壇くださった皆様にこころより感謝申し上げます。選手の皆様それぞれが、目指している大きな舞台でご活躍されることを期待しております。そして、デフスポーツが「見られたい姿」で社会から認知される日が来ること祈っています。
最後に、このイベントを開催するうえで、事前に何度も打ち合わせをさせていただいた関学体育会バレーボール部の西台耕平監督および、座談会のみならず全体の進行を務めてくださった溝畑先生に厚く御礼を申し上げます。そして、このイベントにご協力くださいました全ての方々、そして何よりも当日にご参加くださいました皆様、ありがとうございました。
このイベントをきっかけに、デフリンピックやデフスポーツの理解が更に進み、また聴者とろう者がスポーツ選手として共に戦い合う機会が今後増すことを通して、スポーツを介したインクルーシブな社会の実現に向かっていくことを願います。
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