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チャイルド・ライフ・スペシャリストとして [2008年03月31日(月)]

以前、“あそびのボランティア”として、病棟のこども達のベッドサイドを訪ねていた時、数え切れないほどの輝く笑顔に出会いました。一方で、あそびの最中に、処置の時間が来ることもありました。「まだあそびたい。一緒に来て。いかないで」と小さな手でしがみつき、必死になって引き留めて泣いている子に、「待ってるからね」と伝えて、見送った時の心の痛みは、今も忘れられません。こども達が、一番の“安心”である家族と離れて不安な時、最も恐怖や痛みを感じる時こそ力になりたい・・・と願うようになりました。そして、こども達の心の傷つきやすさと強さ、あそびの持つ癒しの力、その奥深さに触れるたび、CLSになって専門家としてこども達を支えたい、という思いを強くして、留学を決心しました。

昨年夏帰国し、CLSとして阪大病院での活動を始めました。小児科・小児外科病棟、骨髄移植病棟、脳神経外科病棟、ICUなど、入院しているこども達は約100人。アメリカでは各病棟・各検査室専任のCLSがチームとなって対応する規模であり、残念ながら、CLS一人で、すべてのこども達に十分なサポートを届けることはできません。そこで、まず、医師からの提案で、「病状・治療経過を把握する主治医が、“CLSのサポートを特に必要としていると思われるこども達”を判断して、介入を依頼する」という形で活動を始めることになりました。一見「落ち着いている」ように見えたこども達の、「もし、(処置中)一緒にいてくれなかったら怖くてパニックになってた」という程の不安、「聞きわけの良い」こども達が人知れず抱く葛藤や疑問やプレッシャー、「幼すぎて理解できない」と思われがちな乳幼児の“安心を得た時の乗り越える力”を医療者に伝え、シェアすることを通して、表面化しないニーズに目を向けた依頼や相談も届くようになりました。「明日、○○(処置)があるから、一緒に来てね」と自分でCLSに伝えて “予約”をすることができるこども達がいる一方で、自分では決して言い出せないこども達もいます。家族やこども達からCLSに直接“依頼”が届くことも増え、今後、どのように、“CLSの介入が助けになる”と思われるこども達のニーズに応えていくことができるか、大きな課題です。

次に、チーム医療の中で、CLSの専門性が生かされる介入のひとつとして、“ストレスを伴う医療処置・検査・手術等の「前・中・後」のサポート”に重点を置くこととなりました。医療者からの依頼に応じて、血液腫瘍、循環器、腎臓、消化器、脳・神経など、様々な疾患をもつこども達が体験する処置や検査、治療や手術の際のサポートに取り組んできました。当初、処置室に入る前から処置後まで泣き続けて全身で処置を拒んでいたというこども達が、介入後、あそびを通して、言葉にできなかった気持ちを表現し、徐々に恐怖心が和らぎ、処置の意味と周囲の援助を、その年齢なりに理解してゆきました。そして、医師・看護師・母・CLSが、それぞれの形・役割で「助けてくれる」という安心感を育み、おまもりやリラックスできるあそび、“自分で何かを選ぶこと”や“安心できる人と手をつなぐこと”などを通して、「守られている」「尊重されている」と感じ、不安が和らいだ様子で、処置を乗り越えていく例を何度も経験しています。

お母さんと離れて処置室に連れて行かれて、事前の説明なしに抑制を受けて、痛い処置を体験し、それが、心理的トラウマとなっているこども達は、日本中に数多いことでしょう。処置そのものの痛みだけではなく、“一番の安心感”から引き離される恐怖、理由が分からずに押さえつけられ、すがるもののない恐怖、予期できず親しみのない体験の恐怖、処置に付随する体験すべてが、心の痛みとなって残る可能性のある体験です。周囲の人とモノと体験に、事前に安全な場所・方法で親しみ、受け身ではなく主体的に体験に向き合うことができたなら、こども達は、驚くほどの「受けとめる力、乗り越える力」を発揮することを、日々感じています。医療現場は、時間的余裕のない場所ですが、短時間であっても適切なタイミングで適切なサポートを提供できれば、その処置・検査中だけではなく、その後の長期的なトラウマを予防・最小限にし得ることを、伝えてゆきたいと思います。

9ヶ月経ち、特定の処置に特化しない継続的な介入の意義も伝わるようになり、次第に、長期入院(再入院)のこども達とその兄弟姉妹のための治療の経過(小児がん患児の場合は、化学療法、放射線治療、骨髄移植、など)に沿ったサポートへの依頼が増えてきました。入院中と退院後を含めた治療の経過全体を視野に入れたサポート、ICUや重症室や無菌室など家族の付添や面会が制限された場所でのサポートなど、介入内容は徐々に多様になってきています。お母さんが心身の休憩をしたり、安心して思いを話し、涙を流せる場所や時間やかかわり、兄弟姉妹の病院での“居場所”作り、面会できない入院中のこども達と兄弟姉妹の橋渡しなど、兄弟姉妹を含めた家族サポートの充実は、今後の課題です。(つづく)

fumi