スマートな医療とは? [2006年10月31日(Tue)]
スマートな医療とは
先日、チャイルドケモハウスの件で、毎日新聞の取材を受けました。その時に、記者さんに『スマート』と言う言葉は目指している病院のイメージと合わないのでは?と言われました。 確かに、『スマートな病院』であればイメージと合わないかもしれません。 しかし、私が目指したいのは『スマートな医療』です。 私の考える『スマートな医療』の対義語は『不細工な医療=後手にまわる医療』です。 よくテレビでは、忙しそうに医師が『酸素3リットル!』とか『ボスミン1アンプル投与!』とか叫んでいますが、 焦ってこのように叫ばなければならない状況はできるだけ減らしたいです。 (テレビドラマで医師が叫んでいる内容は、わざわざ叫ぶような内容ではないことが多いです。) 具体的な例を挙げると、 化学療法後、免疫力が低下しているときに、発熱したとします。 発熱したことにすぐ気づき、適切な抗生剤に変更すれば、それで事無きを得ることがほとんどです。 しかし、発熱したことを見逃し、血圧が下がってショック状態になってから気がついたとすると、 抗生剤の変更だけでなく、血圧を上げる薬も投与しないといけないし、時には人工呼吸器や、透析が必要になるときがあります。 今の医療技術があれば、後者の場合でもなんとか救えることも多いと思います。 そして、『危険な状況でしたが、奇跡の回復をしました』なんて言われても患者さんは、うれしくないでしょう。 上記のような、免疫低下時の発熱というのはよくあることです。 抗生剤の進歩により後者のようになる頻度は減りましたが、抗生剤の効きにくい菌であれば現在でもありえる話です。 免疫低下時の感染は、急変する可能性があり、かなり気を使って治療をしています。 抗生剤の効きにくい菌であればともかく、抗生剤の効く菌の感染なのに、対応が遅れたために、患者さんが重症になり、医療者も忙しくなり、他の患者さんがおろそかになる、と言うのは、誰にとってもメリットはありません。 先手必勝の『スマートな医療』は、小児血液腫瘍に関わるすべての人のQOLを向上すると考えます。 (注意)上記の例は、あくまでわかりやすく説明したものです。『熱が出たら、絶対に抗生剤を変更しないといけない』という事ではありません。医療はそんな単純なものではありません。今回のブログを書くことは、医療者に対し非常にプレッシャーを与えてしまうので、公開しようか悩みました。また、免疫低下時の感染の対応は血液腫瘍に関わっている医療者にとっては基本中の基本です。早く対応した方がよいに決まってますし、対応が遅れれば医療者も忙しくなり、誰も得しません。 無責任な医療者は当然批判されるべきだと思いますが、責任感のある医療者も、様々な事情から理想の医療ができていないのが現状です。 何か問題が起これば、医療者個人の責任にされがちな世の中ですが、医療ミスをしたくてミスしている医療者はいないし、その事によって医療者だって損をします。 小児科は、患者家族はもちろん、医療者も『子どもを助ける』『子どもを守る』という同じ目標に向かって行動しています。 同じ目標に向かって頑張っている、医療者と患者家族・患者が対立することほど虚しい事はありません。 s.kusuki |
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