みんながあなたの味方 [2008年04月04日(Fri)]
ある医療スタッフが、こどもと家族にCLSを紹介する時に、「こどもの味方」と表現してくれたことがありました。CLSが本当の意味で「こどもの味方」になるためには、「CLSだけがこどもの味方」かのような状況や印象を作るのではなく、「こども」と「医療者」、「日常体験」と「医療体験」との間に“架け橋”を作り、家族も病院スタッフも「みんなが、こどもの味方」だと、こども達が信頼や安心感を伴って感じられる状況をサポートしていくことだと思います。また、家族の付添や面会が制限された時間・場所では特に、こどもが「ひとりぼっちじゃない。だいじょうぶ」と思えるように、安心感を途切れさせない“架け橋”の役割を担います。こどもは小さな胸の中に、抱えきれないほどの不安を持っていますが、自分を取り巻く”人”と、医療機器など自分を取り巻く”もの”の“大切な役割”を理解して、「みんなが自分を守り、支え、助けてくれる味方」・・・と感じられたら、大人もかなわないほどの大きな力、乗り越える力を持つことができると、いつも感じます。
心地よい日常から一転して、緊張や不安を伴う体験をしなければならない馴染みのない場所に連れて来られたこども達が、多くの見知らぬ大人たちに囲まれ、痛みやストレスを伴う体験をする中で、「みんなが自分の味方」だと受けとめることは、大変困難で、また、負担が大きなことです。CLSは、こども達の一番の味方である「家族」のぬくもりとつながりができる限り守られるように、そして、あそびや会話の中で、こどもが“その子らしく”いられ、少しでも安心できるようにサポートし、「患児」としてではなく、「こども」として向き合います。そして、あそびを通して、こどもが何を感じているかを汲み取り、負担のない方法で、体験や感情を表現・消化し、心を癒す形で、「あそびきる (play out)」ことができるように援助してゆきます。そのような介入を通して、こども達が胸の奥に閉じ込めていた様々な「思い」がぽろぽろと溢れ出します。弱音を吐かずに「いい子」でがんばらなければというプレッシャー、処置や病気を「悪い子」への“おしおき”だと感じているという誤解、何が何だかわからない、逃げ出したいほどの恐怖・・・。まず、どんな感情も無条件で受け止めてもらえる、弱音を吐いてもいい、という安心感を持てるように、その気持ちをありのままに包んで耳を傾けます。そのあと、ゆっくりと、心と理解の許容範囲内で、こどもが受けている医療体験の意味や目的、プロセスや今後の見通し、こどもをサポートする医療スタッフの役割を、安心感を伴って受け止められるように援助してゆきます。 あそびの中で、医師・看護師役となったこども達は、患児役のぬいぐるみを、やさしく撫で、語りかけます。「ちっくんは、いたいね。でも、だいじょうぶ。いたかったね。もうだいじょうぶ」。医療者に対して拒絶や警戒心を見せていたこども達が、あそびの中で、徐々に医療者の役割を理解しながら、医療者への信頼や憧れの気持を育んだり、医療者の患児に対するいたわりや優しさを表現したり、「こうしてほしい」という願い、「これがあればだいじょうぶ」という“おまもり”を表現することが大変多いのです。 そして、医師役・看護師役を演じているこども達のもとに、医師・看護師が処置のために訪れる時、急に、「患児」の立場に引き戻されると、こどもたちは、傷ついたり、混乱や戸惑いを感じることもあります。ほんの少しの時間、あそびの中でこども達が演じる“医師・看護師”としての役割や仕事を尊重して見守ることで、多くのこども達は、納得して安心して、“医師や看護師に診てもらう患児”の立場に戻り、受け入れることができるのです。(つづく) fumi |