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いわてNPOセンター破綻の教訓 その3 [2010年12月24日(Fri)]
蝸牛試論
「いわてNPOセンター破綻の教訓〜情報公開・会員制度・危機管理〜」その3


ここまでに、河北新報の検証記事に指摘されている3つの原因、
1)トップのマネジメント能力の欠如
2)県の業務委託の在り方
3)法人の自浄作用と市民監視の機能不全
について、3)法人の自浄作用と市民監視の機能不全から考察をし、情報公開
(開示)の本来の機能と、自浄作用の間には、組織構造の理解と媒介としての会
員による市民参加と職員参加の促進が必要であることを明確にした。その上で、
1)のトップのマネジメント能力のひとつとして、危機管理マネジメントのため
の具体策と会員や職員の関係の整理と参加について、あまり今まで指摘されてい
ない視点から述べた。

後半は、2)県の業務委託の在り方と、受託団体側の1)トップのマネジメント
(の欠如)について述べる。


■団体の事業構造を分析すると見えてくるものがある。

当該団体の事業構造について、事業報告書から見えるものを押さえておこう。最
新のデータが公開されておらず、平成19年度は決算期の変更があり、半年単位に
なっているため、平成18年10月1日から平成19年9月30日の平成18年度決算と事業
内容を分析する。その中で部門別の収入を見ると、以下の通りである。

・地域振興部(グリーンツーリズム、地産地消、食育など) 約2100万円
・中間支援部(活動交流センター受託他)         約3300万円
・事業開発部(道路管理、大学キャンパス、指定管理評価) 約3100万円
・就業支援部(雇用対策他)               約1300万円
・公会堂                        約5800万円
・県民の森                       −−−−−
・事務局経費                      −−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  総収入額                     約1億6000万円

記載のないところは不明だが、さまざまな分野に事業を拡大したNPO法人であ
ることは間違いがない。河北新報の12月11日の記事によると、「2008年度に県と
結んだ一般業務委託事業の契約総額が7861万円に上り、NPO法人全体の3割以
上を占めた。」とある。他の委託事業の受託金額がわからないのでなんとも言え
ないが、平成20年度(2008年度)の事業総額は、記事から逆算しておよそ2億
6200万円になり、平成18年度と比較すると、二倍近い成長率である。その結果、
一気に職員が増え(六十数人)、不祥事につながったと言うこともできる。

ただし、3割という数字が行政依存であり、その結果不祥事が起きたとするには、
少し飛躍がありすぎると思う。依存かどうかは、団体の意志決定の自律性と自主
事業の力によるが、3割程度の受託が行政依存なら、一部の団体を除いて、大き
な団体はほとんどが行政依存になってしまう。英国のNPO界の考え方では、行
政からの事業の受託は、ビジネスつまり対等の取引の結果と捉えられていて、行
政資金(補助金)の割合には参入されないし、そのことを行政依存という習慣は
ない。むしろ団体の仕事をする能力の証明と考えられている。

それにしても、施設系の指定管理や受託による規模の拡大はわかりやすいし、あ
る程度の安定性があるが、他の事務事業の受託による規模の拡大は大きなリスク
を伴うものである。なぜなら行政の事務事業の受託は、一年限りであり、かつ入
札や企画コンペによるものであるから、次年度の受託はまったく保障されない。
職員の大半は毎年のように解雇され、また雇用される臨時職員にならざるを得な
い。そのような仕事を、しかも安い単価で引き受け続けることは、結果、事業の
遂行に支障を来たし、報告書や領収書の偽造に行き着いたのではないか、と推察
される。(もっとも、これだって民間企業なら常識の範囲であり、そのせいでと
いういいわけにはならないことは言うまでもない。)

また、一年間の岩手県との一般業務委託事業の契約金額が7861万円というのは、
なかなかに大きな金額であり、さまざまな事業部門を持ついわてNPOセンター
だからこそ起きたことであるかも知れない。ちなみに、当センターも、それなり
の規模だが、収入の3分の2は施設管理系の収入であり、それ以外の受託事業は年
間1000万円からせいぜい2000万円である。さらに言えば、宮城県からの受託金額
は、この13年間で総額1000万円程度である。(意外と少ないことに驚かれること
が多いが事実である。当センターは、中間支援に限定・特化して仕事を選択して
いるので、行政からの受託にも限界があり、特に県の姿勢によって中間支援団体
に落ちている資金には大きな多寡があり、宮城県は全国的に見ても少ない方であ
る。)

その視点からみると、岩手県の発注は、やはりかなりの問題があると言われても
仕方がないところである。たとえ、手続き的には適正に行われたとしても、さま
ざまな分野の事業が一ヶ所の法人に集中してしまうのは、他の団体の発展を考え
たときにも問題がある。なぜなら、本来は他の団体の支援をミッションとする中
間支援団体が、他の団体の受託を妨害するような仕事の仕方をすること自体が問
題なのだ。しかし、いわてNPOセンターにとって中間支援は、事業拡大の方便
または一事業部門に過ぎなかったのではないかと思われる。

もちろん当該団体からすれば、受託は公正な競争の結果であり、県も手続きに瑕
疵はないということになろうが、一番釈然としないのは、支援の仕事をする団体
が、個別テーマに取り組むNPOの前に立ちふさがっているという思いを、多く
の団体に抱かせたことであろう。それが、不祥事に対する冷ややかな反応につな
がっていると思われる。

この団体の場合、本来のミッション-事業構造自体に、他の団体の支援を行うに
は無理があると言わざるを得ない。また、地方に行けば行くほど、中間支援事業
単体では食べられないという声も耳にするが、それでも県の単位の支援センター
がそれを言ってしまってはおしまいではないか。個別テーマに取り組む団体の分
野に進出するのではなく、それらの団体との連携と協働の上にある、中間支援の
可能性や多様性をもっと開発すべきと思うところである。


■委託費積算の問題もあるが、団体側の提案力、判断力も問われている。

フルコストリカバリー、つまり適正な単価での契約を推進することに異議はない。
当センターも、2年前の夏にはフルコストリカバリーのセミナーを開催し、行政
職員にも参加いただいたことがある。ただし、記事でも、いわてNPO−NET
サポートの高橋敏彦顧問の言葉として、「事業ごとに法人側から適正な対価を県
に示すことが必要。NPOと行政が対等な立場で話し合い、共通のルールづくり
をしなければならない」と述べられているように、NPO側の力量が求められて
いる。いわてNPOセンターは、自らコンペを勝ち抜く力量を持ちながら、それ
を意欲ある地域の団体と共有することを疎かにしていたと言われても仕方がない。
当センターも問われるところである。(もちろん相談対応などで、これらの問題
についてはノウハウの提供を含めてそれなりに対応している。)

もうひとつ気になるのが、赤字なのに受託しているという声が紹介されているこ
とである。ここは難しいことだが、場合によっては、赤字なら受託しないという
選択をもっとNPO側はすべきだろう。当センターでは、国(厚生労働省)の委
託事業に応募した際、人件費が認められないという条件に抗議し、人件費をまと
もに積算した見積書で応募、敢えて落選した上で、厚生労働省に抗議をするとい
うことをしたこともあった。詳しくは、『NPOマネジメント』連載(第45回)
の「蝸牛点晴」に書いた「コンペ落選」に譲るが、行政側がこのような発注をし
ている限り、受託団体側が外注費などの名目で、その団体の理事などが経営する
別法人に仕事をトンネルし、人件費を確保するといった便法が常態化してしまい、
単なる受託のための法人設立など、しばしば不正の温床にもなることがある。

反対に赤字覚悟で受託した場合は、愚痴はこぼすべきではない。その金額でいい
と応募しているんだから、それで文句を言われては行政もたまらない。行政から
すると、その金額でできることをやってくださいということなので、それ以上の
ことをしなくてもいいですよ、と言っているのでもある。NPOの人は私を含めて、
それでは自分の気持ちが治まらない、ニーズに応えられないと仕事を増やす傾向
があり、自分の首を自分で締める結果になっていることも多い。自戒の念をこめ
て書いておきたい。


以上
いわてNPOセンター破綻の教訓 その2 [2010年12月24日(Fri)]
蝸牛試論
「いわてNPOセンター破綻の教訓〜情報公開・会員制度・危機管理〜」その2


■危機管理の正しい対策はある。理事・職員問題も見逃せない。

もうひとつ、いわてNPOセンターで気になることがあった。正会員14人・社と
いう構成の中で、執行理事6人という数の問題は指摘したが、理事長以外の執行
理事は実質的には職員であろう。外部理事(執行理事以外の理事)が何人いたの
か知らないが、理事会の中での執行理事の割合自体がかなり高いことが想像でき
よう。これでは、理事会自体が形骸化するし、職員会議や職員の幹部会議と変わ
らなくなってしまう。何より、雇用された理事という存在は、職安などからの紹
介で雇用された職員が理事になっている場合など、ますます理事長の権限が大き
く独裁的になり、内部チェック機能が働かなくなることは火を見るより明らかで
ある。これはいわてNPOセンターだけではなく、そのような団体のコンサルティ
ングをいくつかした経験からも推定できる。

翻って、自組織を含む現状の規模の大きなNPOのことを考えてみたい。職員の
多くは、必ずしもミッションに強く賛同している人とは限らず、場合によっては
職安からの紹介によって雇用されている。そのような職員にとっては、理事長
(当センターでは代表理事)である私などは、雇用主そのものだ。雲の上の人の
ようである。私にはそのような意識はないが、相手には間違いなくある。そして、
自身の雇用の継続こそが重要な関心ごととなっている職員を、この情勢下で誰に
も責められることではない。このような組織では、いわてNPOセンターのよう
な申請書の担当者とその上司による偽造、助成金報告書の領収書偽装などが誰か
によって起きた場合、そこに上司の意思が入っていればいるほど発覚しにくいと
思う。被雇用者としては、その問題を自身の雇用の継続を担保しながら、誰に相
談すればいいのか、前もって組織が明示しているとは限らないからだ。しかも、
理事長は雲の上の人。そういう環境では、人々の多くは告発者とはならないもの
だ。

このような場合、組織の理念の共有や経験の伝承などの取り組みだけでは不十分
で、より具体的な組織的な対策が必要であり、それは、2つある。

ひとつは、さまざまな書類の保管や決裁のシステムを見直し、複数の人の目を必
ず通るようにすることである。単純な部門別経理や担当者任せや丸投げは危険で
ある。

ふたつ目は、前もって、コンプライアンス問題やその他気にかかることを、直属
の上司ではダメな場合に誰に伝えれば良いのかについて、その人の身分の保障の
確約と共に、内部にしっかりと告知しておくことである。上司の上司、執行理事
(常勤理事)、外部理事、そして監事のそれぞれに職員が直接連絡を取れるよう、
連絡先は職員に周知されていなければならない。ここが今回の問題に関する危機
管理マネジメントの要点であろう。外部に告発される前に、きちんとした対応が
なされる体制があればと思うところである。

一方、職員の側ではどうだろうか。どんな組織でも、上司に言われたからと不正
行為に手を貸す職員もいないとは言いがたい。その問題を少しでも解決するため
には、職員がNPO法人の会員になることを提案したい。しかし、多くの場合、
NPOという参加型組織で禄を食んでいるにもかかわらず、法人の会員になろう
という職員が極めて少ないという残念な現実がある。そもそも、組織のミッショ
ンに賛同していない者に、ミッション達成の仕事ができるのか?という原理的な
問いかけもある。もちろん職員になるためには、法人の会員にならなければなら
ないという規則を持つ法人もあり、それはそれでひとつの方法である。しかし、
それでは「市民の自由意志による」という法人の原理に抵触するところでもあり、
当センターでは職員の自由意志に任せてきた。私は、法人職員が自由意志でぜひ
法人会員になるように、理論的に整理した上で、改めて法人として積極的に働き
かけるべきだと考えている。その理由は前述してきたように何か問題があったと
き、「雇用者−被雇用者」としての上下関係でしかないという互いのあり方では、
正しい行動は生み出されにくく、真のNPOの方向性は出てこないと思うからだ。

「雇用者−被雇用者」であることは、現在のしくみの中では避けがたいし、その
利点(労働者保護)もあるが、それと平行して互いの関係を規定するものの複線
化があるといい。それが「正会員−総会−執行部」という関係である。そうなれ
ば、組織としての危機管理マネジメントに、職員としてだけではなく、市民に負
託された者としての正会員としての関わりが生じ、より積極的な参加が可能にな
る。場合によっては、職員を代表する理事がいてもいい。もちろん、人数が多い
からと言って単純に乗っ取り行為が起きては困るので、全体の会員数は、そのた
めにも多くなければならない。理事や職員は、ある意味で自分の権限割合(総会
における議決権比率)を低めるためにこそ、正会員の獲得に力を注ぎ頑張らなけ
ればならない。このように、理事や職員の個人的な利害であれば会員が少ない方
が有利なのだが、公益を追求する組織の運営には反対の行動、すなわち会員の増
加が求められるということを、もっと多くの人々が知っている社会にならないと
いけない。

従って、自浄作用は、単に、市民監視と直接に結びつくのではなく、媒介として
の会員による市民参加と職員参加がしっかり結びついてこそ、危機管理の具体的
な対策が意味のあるものになり、それこそが、1)トップのマネジメント能力の
欠如という問題に取り組む土台となるのである。

                                          その3に続く
いわてNPOセンター破綻の教訓 その1 [2010年12月24日(Fri)]
蝸牛試論

「いわてNPOセンター破綻の教訓〜情報公開・会員制度・危機管理〜」その1


いわてNPOセンターは、昨年10月、グリーンツーリズム関連事業(岩手県委託)
で、旅行業の外務員証を資格がない職員に持たせていたことや申請書類の偽造な
どが発覚、その後、さらに受託管理施設での自主事業であったコピー機収入の裏
金化や財団からの助成金の不正受給(領収書偽装)などが明るみに出て、理事全
員が辞任、代わりに現理事長以下、新理事体制で再生を図ったが、県をはじめと
する受託先から三行半を突きつけられ、本年12月10日、盛岡地裁に破産手続きの
開始を申し立てた、という報道があった。負債総額は3210万円。

いわてNPOセンターHP
 http://www.iwate-npo.org/center/
いわてNPOセンター 団体基本情報
 https://canpan.info/open/dantai/00002984/dantai_detail.html
不祥事について
 http://www.iwate-npo.org/center/fusyouji.html

岩手県で最大のNPO法人、しかも中間支援の仕事をしている組織の不祥事によ
る崩壊は、私どものような「同業者」にとっても大きなショックを与えた。しか
も、不祥事はひとつではなく、複数の不祥事が継続または平行して起きているこ
とも驚きであった。そして、規模が大きくなってくると、どんなに組織でも、コ
ンプライアンス対策を講じたり、理念を浸透させようとしたりするのだが、それ
だけでは防ぎきれないものがあることも事実であり、その原因を正しく認識し対
策を立てておかないとならない。

■河北新報、3つの原因を指摘

この問題を当初から追及してきた河北新報は、12月15日から17日にかけて3回連
続の検証記事「問われる「協働」いわてNPOセンター破綻」を掲載した。その
記事に沿って考えていこう。

記事の(上)では、簡単に破綻の経緯を述べたあと、その原因を「センターの破
綻は、2003年の設立時からトップを務めた前理事長の組織マネジメントの欠如と、
県の業務委託の在り方などが複雑に絡み合った結果と言われる。海野理事長は加
えて「法人の自浄作用も、それを促す市民監視の機能もうまく働かなかった」と
みる。」と指摘している。

つまり、
1)トップのマネジメント能力の欠如
2)県の業務委託の在り方
3)法人の自浄作用と市民監視の機能不全
の3つが原因として挙げられている。

(上)の後半では、このうち3)の市民監視の機能不全について、「情報公開の
理念が実体化していない」という藤井敦史立教大学教授の言葉をひき、事業報告
書の記載についても触れる。透明性・公開性を高めるべきとの議論が紹介され、
しかし一方では県の監視が強化される方向で動くことに危惧も表明され、「市民
監視による自浄作用を発揮する態勢づくりを急がなければ、何より独立した自由
な運営というNPOの根幹が揺るぎかねない。」とされる。

(中)では、いわてNPOセンターが受託していた「NPO活動交流センター」
の業務委託費に触れ、現受託団体からの火の車と持ち出しの現状が報告される。
後半では、愛知県のフルコストリカバリーの考え方に基づくルール作りの紹介が
あり、適切な労働対価を支払うべきとの声と財政難からそれは無理との自治体の
声との両論併記がなされている。

(下)では、「新しい風」と題して、「いわてNPO職員ネットワーク」と「い
わて中間支援NPOネットワーク」の動きを紹介、ガリバーが消えて中小の法人
が盛岡市との協働事業に手を挙げ始めたり、各団体が活動を広げたりしていると
の声を紹介している。後半は、国の「新しい公共」の動きを紹介、優遇税制の導
入に岩手が取り残される危険があるとの山岡義典日本NPOセンター代表理事の
言葉の紹介があり、新しい風に期待する結びとなっている。


■情報公開による市民監視だけでは、事件は防げない。

さて、(上)で指摘された原因は、1)トップのマネジメント能力の欠如、2)
県の業務委託の在り方、3)法人の自浄作用と市民監視の機能不全の3つだが、
一般読者向けの記事としては簡単に触れているだけなので、これをもう少し深め
て考えてみよう。

まず、3)法人の自浄作用と市民監視の機能不全だが、情報公開の機能について
の力点が市民監視に傾き過ぎていると思われる。私たちも、もう何年も繰り返し
法人の情報開示を推進する取り組みを続けてきたからわかるが、事業報告書や決
算書公開の不備や不十分さは、本当に市民に支持されようとするNPOならば目
に余るものがある。しかし、多くの団体は、そんなことを努力しても市民の支持
が増えるという見込みはないと、寄付税制の不備もあいまって諦めてきたのが実
態であろう。だからこそ、適切な情報開示支援を進めれば、社会の支持も得られ
ることが次第に明らかになりつつあり(当センターが進めるNPO情報ライブラ
リーとポータルサイトによる発信支援の取り組み)、優遇税制も改善されてきて
いる現在、NPOにとって情報開示は待ったなしの課題であることは言うまでも
ない。

しかし、一般的な情報開示では、不正の発見や法人の自浄作用を担保するだけの
力はない。いわてNPOセンターで行われたと言われている不祥事は、職員の申
請書偽造、助成金報告書の領収書偽造(理事長の関与があったかどうか不明)、
理事長の関与した裏金などであって、法人には、監事という理事と理事会=執行
部を監視する役目の役員がおり、前理事長の時代には税理士か公認会計士がその
役目についていたはずだが、彼らにしても、不正を発見することはできなかった
のである。ましてや一般市民に、これらの不正を発見することを期待するのは無
理というものである。だからと言って、適切な情報開示に意味がないのではない。
情報開示は、まともなNPOにとって、信頼の創造という大きな役割があり、社
会にとっても、より良いNPOを選択するための手立てという意味がある。


■市民一般だけではなく、会員という存在を問題にしなければならない。

幅広い市民に対する情報公開の前に、市民監視というなら、NPO法人には会員
という制度がある。自発的な市民の意思に依拠するNPO法人は、自発的な意思
によって団体の主旨に賛同する市民が集まり(会員)、「幅広い市民の公益の代
理人として」執行部や監事を選び(場合によっては自らがその職務につき)、そ
の業務を支援し監視する(事業報告書や決算書の承認など)という構造になって
いる。つまり、理事や監事だけではなく、議決権を行使する立場(正会員)に自
発的になること自体が、公共的な振る舞いを要請されることであり、団体のミッ
ションに照らして、執行部が行う事業計画や行った事業の報告について審査をす
る立場に立つことを志願した者(正会員)という位置づけになる。その機能は正
しく働いたのか?

日本の団体は、集まった人々の利益の増進のための団体が多く、会員になったら
メリットは何?特典は?という感覚で会員という制度を見てしまうために、「幅
広い市民の公益の代理人」としての会員という視点がほとんど自覚されていない
ことが問題である。この「会員とは何か?」を考えることが、法人運営の自浄作
用と結びつくことになる。

特定非営利活動促進法の制定は、日本の市民活動の社会的な認知の進展と共にあ
り、もともと市民による自発的な参加型の組織を前提に、公益型(自分たちだけ
の利益ではなく、広く社会全体の利益に資することを目的とする)の組織構造が
設定されている。(ただし、法の範囲内での運用次第で、理事会優先型の法人を
設立することは可能である。)(註1)

このような視点で、多くの法人の会員制度や総会のあり方を考えると、自浄作用
の拠って来たる所以が見えてくるのではないだろうか。

いわてNPOセンターの事業報告書(2008年度)を読むと、平成18年、平成19年
共に、個人正会員11人、法人正会員3社、正会員総数14人・社である。特定非営
利活動法人の設立と維持には、最低10人の社員、つまり正会員が必要とされてい
るから、これではいかにも少ない。私どもせんだい・みやぎNPOセンターは、
約100の団体と個人の正会員(議決権を持った社員)によって運営されている
社団型の組織である。定款を読む限り、いわてNPOセンターも普通の社団型の法
人である。これではほんの数人が欠けても、法人は維持できず解散に追い込まれ
る危険性がある。しかも、平成19年度の執行理事(現場で仕事をしている理事)
が6人と報告されているから、外部理事も加われば、総会などでほぼ過半数を理
事が占めることが予測され、執行部の報告や決算は必ず通るわけだ。もちろん社
団型の法人といえども、一般的に総会は信任投票であって、簡単に執行部が取り
替わるわけではないが、いざ危機の時期には、その法人の行方を左右する権限を
持っているのは、議決権を持つ正会員であり、その数の異様な少なさは、執行部
の緊張感を失わせ、独走を許す温床になるであろう。団体自治の原則に基づく民
主主義の実験場としてのNPOが成り立たないのである。

一般市民に対してアカウンタビリティ(註2)を負っていると考えることは理念的
には正しいが、実践的には緊張感を欠くことになりやすい。その課題を乗り越え
るものとしての会員制度と考え、市民の代理人である目の前の会員に対してアカ
ウンタビリティを負っていると考えることが、緊張感のある透明性の高い組織経
営上有効である。それがいわてNPOセンターに欠けていたものである。



註1:昔、米国のNPOを訪ね歩いたときに、会員制度と理事会の位置づけについ
て質問を繰り返してきたが、意外と議決権を持つ会員制度型(社団型)の団体が
少ないことに驚いた経験がある。つまり、理事会や評議員会のみでの設立と運営
という財団型の団体が多く、多くの人々の総意で運営される社団型の団体にはな
かなか出会わなかったのである。もちろん、草の根の市民グループの多くは、米
国でも社団型の運営をしているとのことだが、ある程度の規模の機能主義的な団
体には、社団型が少なく財団型が多いというのが印象的であった。欧米型のNPO
の多くは、会員との緊張関係ではなく、外部の理事会と現場のトップ(CEO、事
務局長)との緊張関係によって、アカウンタビリティや透明性を担保している。
英国でも、理事や理事長は無給であり、報酬を取ってはならないと法律で決まっ
ている。日本の場合、理事会と現場が分離していないケースが多く、別の緊張関
係をつくらないとアカウンタビリティも透明性も確保できない。

註2:アカウンタビリティとは、日本語で説明責任と訳されているが、単なる説明
する責任のことではない。「負託された者の委託者に対する全面的な実行責任」
を意味しており、さらには、accountability and transparency(透明性)とセッ
トで使われる。NPOの場合、直接的にアカウンタビリティを負っている対象は、
会員であり、その背後に、取り組むテーマによって関係している幅広い市民がい
ることになる。

                                         その2に続く
コミュニティ自立シンポジウム [2010年12月24日(Fri)]


来年2月1日に、東北活性研さんの主催で、下記のコミュニティ自立シンポジウムを開催いたします。

平成17年度から、旧東北開発研究センター(現東北活性化研究センター)さんの主宰で、「コミュニティ自立研究会」(山田晴義委員長、加藤哲夫委員、櫻井常矢委員、鈴木孝男委員)が組織され、加藤もその一員として、コミュニティの再生・自立、そのための支援システムの方向について検討してまいりました。

この研究会でたくさんの地域を歩かせていただき、各地のコミュニティ再生に関わる方々と意見交換をさせていただきました。その経験は大きな財産になっています。

現在までに3冊の書籍を上梓しておりますが、今回はその総括編として新刊本「地域コミュニティの再生と協働のまちづくり」の刊行準備をしております。小生は、原稿執筆の途中で緊急入院・手術という事態になったため、残念ながら本格的な原稿執筆には参画できていませんが、研究会5年の総集編とも言うべき本になります。

2/1のシンポジウムでは、その本の内容をベースにさらに議論を深めていくプログラムを企画しています。地域再生のための自治体の政策の課題をより一層明確にするものとなるでしょう。この問題に関心のある皆さんにぜひ参加いただきたいと思います。

                 記
日時  平成23年2月1日(火) 13:30〜17:00  
場所  メトロポリタン仙台(JR仙台駅西口隣接) 3階 曙の間
テーマ コミュニティと行政による協働のまちづくり
プログラム
     基調講演 櫻井常矢氏(高碕経済大学准教授)
              「住民自治・協働をめぐる自治体政策の課題」
            前山総一郎氏(八戸大学教授)
              「協働のまちづくりの新動向と問われる自治体機能」
     活動報告 鈴木孝男氏(宮城大学助教) 
              「コミュニティ支援システムへの提案」
     パネルディスカッション 「協働のまちづくりとコミュニティ支援システム」

            コーディネーター 山田晴義氏(東北こんそ会長)
            パネリスト     上記講師(櫻井氏、前山氏、鈴木氏) 

      なお、ご聴講いただいた方には新刊本を無料進呈いたします。

*****************************************************

財団法人 東北活性化研究センター(東北活性研) 調査研究部
〒980-0021 仙台市青葉区中央2丁目9-10 セントレ東北9階
022-222-3394(研究部直通) Fax022-222-3395
URL http://www.kasseiken.jp
*****************************************************

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