情報保全隊の監視を認める、内部文書を作成したという一審判決の認定にも争わず―「認否しない」路線が破綻 被告の国側の控訴理由書 [2012年05月30日(Wed)]
被告の国側が5月25日付で控訴理由書を提出していましたが、その全文がわかりました。
目を引いたのは、情報保全隊の国民監視活動を具体的に認めたことで、国・自衛隊が国民監視を公然と認めたのは初めてです。 一審で国側は、情報保全隊による国民監視活動について記録した内部文書についても、監視活動についても、認否を拒否し続けました。 ところが国側の控訴理由書は、情報保全隊が原告を監視し、文書にまとめたことについて、「認めるものではない」としながらも、「原判決(一審判決)の認定については、不服申し立ての対象としない」と表明しました。これは、国民監視活動にもとづいた内部文書の作成を事実上認めたものと言えます。 もちろん国側は控訴理由書で、一審判決を破棄させることを意図しており、情報保全隊が収集した原告の個人情報については、法的保護に値するプライバシーに関わる情報には該当せず、権利侵害に当たらないと主張しています。これは、監視活動の正当化であり、開き直りにほかなりません。 国側は監視活動も正当化しようとしています。成人式を監視したことについて、その会場が自衛隊駐屯地から大河原町の場合は7`b地点、秋田市の場合は4`b地点だったことをあげて、自衛隊員やその家族も参加することから市民の宣伝活動により悪影響が生じることが考えられるなどと主張。「自衛隊に対する外部からの働きかけ等から部隊を保全するために必要」な情報収集だったと正当化を試みています。しかし、控訴理由書のこれらの記述は、結果的に監視活動を行っていたことを具体的に認めるものになっています。 国側が、内部文書は自衛隊情報保全隊が作成したと認定した一審判決について争うことを放棄したことは重要です。それならば一審判決が存在していることを認定した内部資料の原本を公表すべきです。 また国側は、控訴理由書で情報保全隊の監視活動の目的と必要性を主張しましたが、これには被告の主張がそのとおりかどうかの検証が必要です。国側が一審で拒否した情報保全隊幹部の証人尋問は不可欠です。 控訴審では、監視活動の実態や態様などについて明らかにすることが審議の中心になることが浮かび上がってきています。被告の国側が態度を変えたため、そうでなければ仙台高裁が判断できないからです。 自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会は、平和と民主主義の前進を願う全国のみなさまに「審理を尽くし、違法性と違憲性を判断すること」を仙台高裁に求める運動を呼びかけたいと考えています。ご支援をお願いいたします。 |