• もっと見る

« 2012年04月 | Main | 2012年06月»
掲載記事の分類
プロフィール

市民監視さんの画像
<< 2012年05月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
リンク
最新のコメント
https://blog.canpan.info/kanshi/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/kanshi/index2_0.xml
情報保全隊の監視を認める、内部文書を作成したという一審判決の認定にも争わず―「認否しない」路線が破綻 被告の国側の控訴理由書 [2012年05月30日(Wed)]

 被告の国側が5月25日付で控訴理由書を提出していましたが、その全文がわかりました。
 目を引いたのは、情報保全隊の国民監視活動を具体的に認めたことで、国・自衛隊が国民監視を公然と認めたのは初めてです。

 一審で国側は、情報保全隊による国民監視活動について記録した内部文書についても、監視活動についても、認否を拒否し続けました。
 ところが国側の控訴理由書は、情報保全隊が原告を監視し、文書にまとめたことについて、「認めるものではない」としながらも、「原判決(一審判決)の認定については、不服申し立ての対象としない」と表明しました。これは、国民監視活動にもとづいた内部文書の作成を事実上認めたものと言えます。
 もちろん国側は控訴理由書で、一審判決を破棄させることを意図しており、情報保全隊が収集した原告の個人情報については、法的保護に値するプライバシーに関わる情報には該当せず、権利侵害に当たらないと主張しています。これは、監視活動の正当化であり、開き直りにほかなりません。

 国側は監視活動も正当化しようとしています。成人式を監視したことについて、その会場が自衛隊駐屯地から大河原町の場合は7`b地点、秋田市の場合は4`b地点だったことをあげて、自衛隊員やその家族も参加することから市民の宣伝活動により悪影響が生じることが考えられるなどと主張。「自衛隊に対する外部からの働きかけ等から部隊を保全するために必要」な情報収集だったと正当化を試みています。しかし、控訴理由書のこれらの記述は、結果的に監視活動を行っていたことを具体的に認めるものになっています。

 国側が、内部文書は自衛隊情報保全隊が作成したと認定した一審判決について争うことを放棄したことは重要です。それならば一審判決が存在していることを認定した内部資料の原本を公表すべきです。 
 また国側は、控訴理由書で情報保全隊の監視活動の目的と必要性を主張しましたが、これには被告の主張がそのとおりかどうかの検証が必要です。国側が一審で拒否した情報保全隊幹部の証人尋問は不可欠です。
 控訴審では、監視活動の実態や態様などについて明らかにすることが審議の中心になることが浮かび上がってきています。被告の国側が態度を変えたため、そうでなければ仙台高裁が判断できないからです。

 自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会は、平和と民主主義の前進を願う全国のみなさまに「審理を尽くし、違法性と違憲性を判断すること」を仙台高裁に求める運動を呼びかけたいと考えています。ご支援をお願いいたします。
監視は違法とする仙台地裁判決を受けて、仙台弁護士会長が声明(4月6日) [2012年05月10日(Thu)]

仙台地裁判決を受けて,改めて自衛隊情報保全隊による国民監視活動の中止を求めるとともに秘密保全法制の法案化に反対する会長声明

 本年3月26日,仙台地裁第2民事部(畑一郎裁判長)は,陸上自衛隊情報保全隊(当時)が自衛隊のイラク派兵に反対する活動等を監視し,市民の個人情報を収集保有していたことについて,原告らが監視活動の差止め及び国家賠償を請求した訴訟において,情報保全隊の上記情報収集活動には人格権の侵害があり違法であると判断した。
 本訴訟では,国は上記監視結果を記した内部文書の存在及びその真偽について認否すら拒否していたが,本判決は真の原本が存在し,かつ,情報保全隊によって作成されたものであることを認定したうえ,情報保全隊が原告らのした活動等の状況等に加え,氏名,職業,所属政党等の思想信条に直結する個人情報を収集して保有したことについて,自己の個人情報をコントロールする権利たる人格権を侵害し,違法であると指摘した。
 この判断は,情報保全隊が密かに前記監視活動を行っていた事実を明確に認定したものであり,国家権力の濫用をチェックし国民の権利・利益を保障するという立憲主義の理念に適うものである。また,高度情報化社会におけるプライバシー権(自己情報コントロール権)の重要性を認めて人格権侵害の違法性を厳しく指摘した点で評価できる。
 しかし,他方で,本判決は,情報保全隊の情報収集活動が国民の集会その他表現活動に対し強い萎縮効果をもたらし,表現の自由を侵害する点について触れておらず,監視活動の問題点を十分に指摘していない。当会は,2007(平成19)年7月18日付け「陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議しその中止を求める会長声明」においてこれらの問題点を指摘し,監視活動を直ちに中止することを求めたが,改めて情報保全隊による違法な情報収集活動を直ちに中止するよう求める。
 また,現在,政府が国会提出を目指している秘密保全法案が制定されると,今回の如き情報保全隊の国民監視活動に関する情報も「特別秘密」に指定される可能性が高く,そうなってはなお一層国民の人権侵害が隠ぺいされ続けかねない。当会は, 2011(平成23)年12月14日付け「『秘密保全の法制の在り方について(報告書)』に対する意見書」において秘密保全法制の法案化に強く反対する意見を表明したが,今回の仙台地裁判決を受けて,改めてその法案化に強く反対する。

2012(平成24)年4月6日
仙台弁護士会 会長 橋春男