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コシオリエビ属の一種(その3) [2009年01月25日(Sun)]
 前回に続き、ウミシダ共生性のコシオリエビ類を紹介します。今回紹介する種は、コシオリエビ属の一種 Galathea continua Baba & Fujita, 2008 です。本種も、前回紹介した Galathea leptocheir Baba & Fujita, 2008と同様に、ごく最近新種記載された種です。和名はまだありません。 本種は、エビ・カニガイドブックに紹介されているフタスジウミシダコシオリエビ Galathea inflata Potts, 1915に酷似していますが、甲、胸部、はさみ脚、第4胸脚などの形態、第一腹肢(生殖肢)を持つ事(フタスジウミシダコシオリエビはこれを欠く)などで区別することができます。また、体色も極めて似ていますが、少なくとも沖縄の標本では、甲上の2本の線が腹部まで達するようで、フタスジウミシダコシオリエビと区別できると思われます(フタスジウミシダコシオリエビは甲の後縁で2本の線が癒合する)。著者もかつては体色をざっと見ただけでフタスジウミシダコシオリエビと誤同定していましたが、コシオリエビ類の繁殖生態の研究をしている時に第一腹肢(生殖肢)に違いがあることに気づき、各部を調べて別種と確信したという経緯があります。 本種の宿主ウミシダ類に対する特異性の程度はさほど高く無く、様々なウミシダ類に共生しています。夜行性のウミシダ類で割と良く見る事ができるように思います。 <参考文献> Baba, K., & Fujita, Y., 2008. Squat lobsters of the genus Galathea associated with comatulid crinoids (Decapoda: Anomura: Galatheidae) from the Ryukyu Islands, Japan. Crustacean Research, 37: 43-62.
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コシオリエビ属の一種(その2) [2009年01月24日(Sat)]
 久しぶりのエビ・カニ紹介です!今回は、コシオリエビ属の一種 Galathea leptocheir Baba & Fujita, 2008 を紹介します。本種は、ウミシダ類に共生するコシオリエビ類で、ごく最近新種記載されました。以前紹介した コシオリエビ属の一種 Galathea amboinensis De Man, 1888に似ていますが、はさみ脚が細長く、体色が異なるので容易に区別することができます。ちなみに学名の「leptocheir」は、leptos (slender: 細長い)+cheir(hand:手)の意味です。残念ながらまだ和名はありませんので、近いうちに考案したいと思っています。  本種の体色は大変美しいのですが、これは宿主ウミシダ類の体色によく一致しています。右写真のような体色の変異もありますが、このタイプの体色は、やや小型の個体でよく見られるように思えます。 本種の宿主となるウミシダ類は、ホソウデヒトフシウミシダというウミシダ類で、ナイトダイビングで良く見られます。上の写真のように、ウミシダ類から少し離れて行動することもありますが、近づいたりすると素早くウミシダ類に逃げ込みます。ホソウデヒトフシウミシダのみに共生するので、宿主さえ認識できるようになると簡単に見つける事ができます(ウミシダ類の紹介を急がねば.....)。 <参考文献> Baba, K., & Fujita, Y., 2008. Squat lobsters of the genus Galathea associated with comatulid crinoids (Decapoda: Anomura: Galatheidae) from the Ryukyu Islands, Japan. Crustacean Research, 37: 43-62.
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ムラサキオカガニ [2008年12月03日(Wed)]
 今回は、ムラサキオカガニ Gecarcoidea lalandii H. Milne Edwards, 1837 を紹介します。本種は、オカガニ科ムラサキオカガニ属に属しています。和名の通りとても美しい濃紫色の体色を呈しており、甲幅は5cm以上になります。日本産のオカガニ類の中で最も稀な種だと思われます。他の日本産オカガニ類とは、甲の額の幅(眼と眼の間)が狭いことや、頬部に毛が少ないことなどから、容易に区別できます。  本種は、極めて報告例の少ないオカガニ類で、日本からは石垣島と奄美大島から正式な記録(写真のみの記録を除く)があります。ただし、著者は近年、宮古島、多良間島、与那国島から本種を採取しており、報告論文を準備中です。大型個体は夜間に海岸付近で見られます。また、小型個体は、海岸部の飛沫転石帯でしばしば見つかります。 本種は、環境省版のレッドデータブックでは準絶滅危惧に、沖縄県版では絶滅危惧 IB 類に、それぞれ指定されています。 <参考文献> 鈴木廣志・藤田喜久・組坂遵治・永江万作・松岡卓司, 2008. 希少カニ類3種の奄美大島における初記録. CANCER, 17: 5-7. 諸喜田茂充・成瀬 貫, 2005. ムラサキオカガニ. p.198. 沖縄県編, 「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 (動物編) レッドデータおきなわ」, 沖縄県, 561pp.
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アシナガヌマエビ [2008年11月11日(Tue)]
 今回は、アシナガヌマエビ Caridina rubella Fujino & Shokita, 1975 を紹介します。 本種は、ヌマエビ科ヒメヌマエビ属に属する全長2〜3cm程度のヌマエビ類で、地下水域に生息しています。体は全体的に赤みを帯び、眼は小さく退化傾向を示し、触覚や胸脚が長い、などの地下水域に適応的な形態をしています。 本種の生活史についての研究例は決して多くはないですが、地下水性エビ類としては稀な例として、抱卵雌の記録や繁殖期、幼生についての情報があります。宮古島は、本種の個体数が極めて安定しており、様々な研究に用いることができます。著者は、宮古島において本種の繁殖生態を調べており、5〜11月に抱卵個体が確認されること、性転換の可能性があること、浮遊幼生は一般的なヒメヌマエビ属の幼生に類似していることが分かっています(一部は報告準備中)。 本種は、宮古島から採集された標本を基に記載された種で、沖永良部島、南大東島、沖縄島、宮古島から記録があります。かつては日本からの記録は無かったのですが、最近、フィリピンからも記録されました。本種は、環境省レッドデータブックの準絶滅危惧種に、沖縄県版では絶滅危惧 II 類に指定されています。また、本種は平良市自然環境保全条例の保全種に指定されており、採集する際には許可申請の必要があります。 <参考文献> Fujino, T., & Shokita, S., 1975. Report on some atyid shrimps (Crustacea, Decapoda, caridea) from the Ryukyus Islands. Bulletin of Science and Engineering Division, University of the Ryukyus, (Mathmatics and Natatural Science) 18: 93–113. 藤田喜久, 2007. 宮古の湧水に生息する十脚甲殻類. 宮古島市総合博物館紀要, 11: 89-110.
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ヒメオカガニ [2008年11月10日(Mon)]
 今回は、ヒメオカガニ Epigrapsus notatus (Heller, 1865) を紹介します。本種は、甲幅が最大3〜4cm程度の小型のオカガニ類で、オカガニ科ヒメオカガニ属に属しています。 日本産のヒメオカガニ属には、本種の他に ヤエヤマヒメオカガニ が知られていますが、本種は甲の眼の横(眼窩後方)の歯が発達すること、甲の背面が濃い紫色ではさみ脚がオレンジ色であること、体サイズがより大きくなることなどで、容易にヤエヤマヒメオカガニと区別することができます。  本種は、海岸の潮上帯(飛沫帯)の転石の下などに棲んでいます。沖縄県版レッドデータブックには、本種の生息環境として「河口近くの潮をかぶらない場所で、植生等により陰になった場所の流木や石の下に潜む」と書かれています。しかし、河口近くよりは、むしろ海岸の飛沫転石帯の上部付近の方が良く見つかります。 国内での正式記録は、西表島、石垣島、八丈島です。しかし、著者は近年、宮古島と与那国島から本種を採集し、現在、報告準備中です。なお、本種は、環境省版レッドデータブックでは「情報不足」に、沖縄版では「準絶滅危惧」に、それぞれ指定されています。 <参考文献> 成瀬 貫, 2005. ヒメオカガニ, 220. 沖縄県編, 「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 (動物編) レッドデータおきなわ」, 沖縄県, 561pp. Ng, P. K. L., Nakasone, Y., & Kosuge, T., 2000. Presence of the land crab, Epigrapsus politus Heller (Decapoda, Brachyura, Gecarcinidae) in Japan and Christmas island, with a key to the Japanese Gecarcinidae. Crustaceana, 73: 379-381,
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イボテカニダマシ [2008年11月08日(Sat)]
 今回は、イボテカニダマシ Novorostrum decorocrus Osawa, 1998 を紹介します。本種は、甲幅1cm程度の小型のカニダマシ類で、異尾下目カニダマシ科 Novorostrum属に属しています。頭胸甲は台形状で凹凸していて、額角は3葉からなります。また、鉗脚の掌部および歩脚の腕節と前節の外縁に、鈍形の歯(突起)が多数あります。 本種は、現在の所、国内では西表島の海岸のみで生息が確認されています。極めて局所的に分布し、生息範囲も狭いので、護岸工事などにより、個体数の減少・絶滅が心配されています。沖縄県版のレッドデータブックにおいて、絶滅危惧 IB 類に指定されています。
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ヘリトリオカガニ [2008年11月03日(Mon)]
 今回紹介するのは、ヘリトリオカガニ Discoplax rotunda (Quoy & Gaimard, 1824) です。本種は、オカガニ科Discoplax属に属しており、甲幅は6cmに達します。甲の前側縁を縁取るように明瞭な板状の隆起があり、後側縁には明瞭な横条線があるのが特徴です。 夜行性で、岩礁海岸や海岸近くの洞穴付近などで良く見られます。また、洞穴地下水域では、小型個体が良く見つかります。 国内からは、沖永良部島、北大東島、南大東島、宮古島、伊良部島、多良間島、石垣島、黒島から記録されています。北大東島や南大東島では特に個体数が多いようで、夜間に道路を徘徊している個体もよく見ます。 本種は、環境省のレッドデータブックにおいて準絶滅危惧に、沖縄県版において絶滅危惧II類に、それぞれ指定されています。 <参考文献> 藤田喜久, 2007. 宮古の湧水に生息する十脚甲殻類. 平良市総合博物館紀要, 11: 89-110. 藤田喜久・砂川博秋, 2008 . 多良間島の洞穴性および陸性十脚甲殻類. 宮古島市総合博物館紀要, 12: 53-80.
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アカボシカニダマシ属の一種 [2008年11月02日(Sun)]
 今回紹介するのは, アカボシカニダマシ属の一種 Neopetrolisthes spinatus Osawa & Fujita, 2001 です。本種は、カニダマシ科アカボシカニダマシ属に属していて、常に小型のイソギンチャク類に共生しています。体色には変異があるようです。沖縄のサンゴ礁浅海域には、同属のアカボシカニダマシ Neopetrolisthes maculatus (H. Milne Edwards, 1837) がよく知られていますが、本種は甲がデコボコしているのですぐに区別がつきます(アカボシカニダマシは甲がツルツルしています)。 本種は、沖縄島の残波岬から採集された4個体を基に新種記載されました。その後、国内での正式な(標本を基にした)追加記録はありませんが、ダイバーによって沖縄の色々な場所で観察されているようです。残念ながらまだ和名はありません。 <参考文献> Osawa, M., & Fujita, Y., 2001. A new species of the genus Neopetrolisthes Miyake, 1937 (Crustacea: Decapoda: Porcellanidae) from the Ryukyu Islands, southwestern Japan. Proceedings of the Biological Society of Washington, 114(1): 162-171.
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コシオリエビ属の一種 [2008年11月01日(Sat)]
 今回は、コシオリエビ属の一種 Galathea amboinensis De Man, 1888 を紹介します。本種は、全長2cmほどのコシオリエビ類で、ウミシダ類に共生しています。甲と腹節の背面に白黒の縞模様を持つのが特徴的です。1999年に沖縄島産の標本を基にして日本から初めて記録されました。 通常、ウミシダ類の背面に生息していますが、時折宿主のウミシダ類から離れて餌等を摂る行動が見られます。 また、本種は、幼生期も明らかになっています。幼生はゾエア幼生として孵化し、4回の脱皮を経て、孵化後13〜16日でメガロパ幼生へと変態します。また、メガロパ幼生の段階で宿主ウミシダ類に共生し始めることが知られています。また、同一個体上に雌雄両方の生殖孔を持つ個体の存在が知られていて、同時性雌雄同体の可能性が指摘されています。 宿主となるウミシダ類は、夜行性のウミシダ類が多いので、ナイトダイビングで良く見られます。残念ながらまだ和名はありません。いずれどこかで和名を考案したいと思っています。 <参考文献> Fujita, Y., & Baba, K., 1999. Two galatheid associated of crinoids from the Ryukyu Islands (Decapoda: Anomura: Galatheidae), with their ecological notes. Crustacean Research, 28: 112-124. Fujita, Y., Baba, K., & Shokita, S., 2003. Larval development of Galathea amboinensis (Decapoda: Anomura: Galatheidae) under laboratory conditions. Crustacean Research, 32: 79-97.
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チカヌマエビ [2008年10月28日(Tue)]
 今回は、チカヌマエビ Halocaridinides trigonophthalma (Fujino & Shokita, 1975)を紹介します。チカヌマエビは、地下水域に生息する体長1.5cm程度の小型のヌマエビ類で、ヌマエビ科チカヌマエビ属に属しています。琉球列島の地下水域には、本種に似たヌマエビ類として、 ドウクツヌマエビが生息しています。しかし、本種は、1) 額角が短く、眼の先端部を超えないこと、2) 胸脚に外肢がないこと、の特徴から比較的容易にドウクツヌマエビと区別することができます。  本種は,国内では沖縄島、宮古諸島の宮古島と伊良部島、多良間諸島の多良間島、八重山諸島の鳩間島から記録されています。また、ごく最近、著者の調査によって 竹富島からも採集されました(報告準備中)。 宮古島、多良間島、竹富島では、極めて高密度(ごく狭い湧水部に50匹〜数百匹)で生息する例が報告されていますが、繁殖や幼生等の生活史について詳しいことはほとんど分かっていません。 本種は、環境省版のレッドデータブックにおいて、準絶滅危惧種(NT)に指定されていましたが、ごく最近のランク見直しによって絶滅危惧II類(VU)に変更されました。沖縄県版では絶滅危惧IB類に該当しています。 <参考文献> Cai, Y., & Shokita, S., 2006. Atyid shrimp (Crustacea: Decapoda: Caridea) of the Ryukyu Islands, southern Japan, with descriptions of two new species. Journal of Natural History, 40: 2123-2172. 藤田喜久, 2007. 宮古の湧水に生息する十脚甲殻類. 宮古島市総合博物館紀要, 11: 89-110. 藤田喜久・砂川博秋, 2008. 多良間島の洞穴性および陸性十脚甲殻類. 宮古島市総合博物館紀要, 12: 53-80.
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