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Sadayoshia属の一種 [2010年12月24日(金)]
 今回もHolthuis追悼号からの紹介です。以前、紹介した「 Sadayoshia 属の一種」に学名がつきましたので、あらためて紹介したいと思います。本種は、つい最近までミヤケコシオリエビ Sadayoshia edwardsii (Miers, 1884) と紹介されていましたが、 Sadayoshia属の分類学的再検討の結果、新種「 Sadayoshia tenuirostris Macpherson & Baba, 2010」となりました。この写真の個体もパラタイプとして使われています。
この再検討の結果、本属には8種が知られることになり、沖縄には、 Sadayoshia tenuirostris の他に、 S. miyakei Baba, 1969、 S. acroporae Baba, 1972 の3種が生息していることになります。和名については、ミヤケコシオリエビを S. miyakei に充てるのが妥当だと思います。他の2種についてはまだ和名はありませんし、「 Sadayoshia」にも和名がないので、あいかわらず「 Sadayoshia 属の一種」と呼ぶより仕方ないですね。
 本種は、死サンゴ塊の隙間中や、ガレ場の転石下などで良く見ることができます。動きがとても素早いので、じっくりと観察するのは困難ですが、体色もなかなか渋い美しさがあるし、雄個体ははさみ脚が強大になって格好いいです(と個人的に思っています)。左写真の上は「雄」で、下が「雌」です。雌雄ではさみ脚の形態や大きさが随分異なるのが分かります。
以前、本種の抱卵雌を採集して孵化幼生(ゾエア幼生)を飼育したことがあります。水温25.0〜27.0℃の海水中で飼育したところ、4ゾエア期を経て(つまり4回脱皮して)、孵化後15〜20日でメガロパ幼生に変態しました。その後、さらに8〜13日で稚エビへと変態しました。
今回の分類学的再検討により、 Sadayoshia 属が整理されましたが、こういう論文はとても役立ちますね。沖縄に分布しない他の種についても、その分布域を見るかぎり沖縄にいてもおかしくない感じの種もあります。今後の探しがいがありますね。
<文献>
Macpherson, E., & Baba, K., 2010. Revision of the genus Sadayoshia (Anomura. Galatheidae), with description of four new species. pp. 415-452. In: Fransen, C.H.J.M., de Grave, S., Ng, P.K.L. (eds.), Studies on Malacostraca: Lipke Bijdeley Holthuis Memorial Volume. Crustaceana Monographs 14, Brill, Leiden, 754pp.
Fujita, Y., & Shokita, S., 2005. The complete larval development of Sadayoshia edwardsii (Miers, 1884) (Decapoda: Anomura: Galatheidae) described from laboratory reared material. Journal of Natural History, 39: 865-886.
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テヅルモヅルエビ [2010年12月20日(月)]
最近、甲殻類分類学の故Lipke B. Holthuis を追悼する学術雑誌が刊行されました。そのHolthuis追悼号には、沖縄のエビ・カニ類に関係のある論文が多数掲載されています。今回はその中から昨年の 沖縄島大浦湾における十脚甲殻類相調査にて標本が採集されたテヅルモヅルエビについて紹介したいと思います。
このテヅルモヅルエビは、大浦調査の共同研究者である千葉県立中央博物館分館海の博物館の奥野淳兒氏らの研究によって発表されました。この論文では、新属「 Lipkemenes Bruce & Okuno, 2010」が創設され、同属に対して「テヅルモヅルエビ属」の新標準和名が提唱されました。同時に、 Lipkemenes lanipes (Kemp, 1922)の国内初記録として、大浦湾の標本も用いられました(他にも伊江島と久米島からの標本が用いられています)。
実は、僕はこのエビには、ラニペスラニペスルルルルル...と、とても深い思い入れと苦い思い出があります。自分の研究でもないのに、Holthuis追悼号から思わず いの一番に紹介したのもそのためです。今回、「沖縄から」このエビが日本初報告されたことを心から嬉しく思っていますし、ほっとしています。
<論文>
Bruce, A.J., & Okuno, J., 2010. Designation of a new genus Lipkemenes, with supplementary description and range extension of its type species, L. lanipes (Kemp, 1922) (Decapoda, Palaemonidae). pp. 159-171. In: Fransen, C.H.J.M., de Grave, S., Ng, P.K.L. (eds.), Studies on Malacostraca: Lipke Bijdeley Holthuis Memorial Volume. Crustaceana Monographs 14, Brill, Leiden, 754pp.
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ウエノコブシ [2009年10月09日(金)]
今回は、ウエノコブシ Raylilia uenoi (Takeda, 1995) を紹介します。本種は、コブシガニ科に属し、甲の幅が1.3cm程度の小型のカニ類です。本種は、もともとは伊江島で採集された個体をもとに記載された種です。その後、国外でも発見されました。 写真のものは沖縄島で採集された小型の雌標本で、甲の棘が短いようですが、配置等は過去の報告のものと良く一致しています。著者はこれまでに本種をナイトダイビングで2個体採集していますが、いずれもはさみ脚や歩脚が欠損した状態で見つかりました。
<参考文献>
Komatsu, H., & Takeda, M., 2009. Rare crabs (Crustacea, Decapoda, Brachyura) from Okinawa Island, with description of a new species of the family Leucosiidae. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (Zoology), 35: 125-136.
Galil, B.S., 2001. A new genus and species of leucosiid crab (Crustacea, Decapoda, Brachyura) from the Indo-Pacific Ocean. Zoosystema, 23: 65-75.
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マンジュウイボツブコブシ [2009年10月07日(水)]
今回は、マンジュウイボツブコブシ Heteronucia fujitai Komatsu & Takeda, 2009 を紹介します。本種は、コブシガニ科に属し、甲の幅が1.2cm程度の小型カニ類です。著者が10年前(1998年)に沖縄島にてナイトダイビングで採集した標本を基にごく最近新種記載されました。その際、新標準和名として「マンジュウイボツブコブシ」が提唱されました。この写真の個体は雌でしたが、「海の甲殻類(p.201)」に本種の雄と思われる写真が掲載されています。
<論文>
Komatsu, H., & Takeda, M., 2009. Rare crabs (Crustacea, Decapoda, Brachyura) from Okinawa Island, with description of a new species of the family Leucosiidae. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (Zoology), 35: 125-136.
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トゲナガヒシガニ [2009年10月06日(火)]
今回も前回に続きヒシガニ科のカニ類を紹介します。今回紹介するのは、トゲナガヒシガニ Pseudolambrus longispinosus (Flipse, 1930) です。本種は、甲の幅が2cm程度の小型のカニ類です。このトゲナガヒシガニも、著者が10年前(1998年)に採集した標本を基にごく最近報告され、新標準和名が提唱されました。本種も、 ガレバヒシガニ同様、サンゴ礁ガレ場に生息しています。
本種の特徴は、甲の中央付近に大小2つの突起があることですが、この写真では分かりにくいですね(側面からだと良くわかる)。極めて稀な種で、おそらく2例目であろうとのことです。ガレ場は熱いですね!
<論文>
Komatsu, H., & Takeda, M., 2009. Rare crabs (Crustacea, Decapoda, Brachyura) from Okinawa Island, with description of a new species of the family Leucosiidae. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (Zoology), 35: 125-136.
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ガレバヒシガニ [2009年10月05日(月)]
今回は、ガレバヒシガニ Furtipodia petrosa (Klunzinger, 1906) を紹介します。本種は、ヒシガニ科に属し、甲の幅が2.4cm程度の小型のカニ類です。著者は、10年前(1998年)に沖縄島のサンゴ礁ガレ場から本種を採集しました。最近、その時の標本を基に日本初記録種として報告され、新標準和名として「ガレバヒシガニ」が提唱されました。ガレ場の死サンゴ礫にそっくりですよね。ガレ場環境からは、 カワリエビジャコ属の一種などの死サンゴ礫に酷似したエビ類も発見されていて、ガレ場特有のファウナの存在を予感させます。
本種は、インドー西太平洋域の広範囲の国々から記録されているようです。また、国内では沖縄島の他に八重山諸島の黒島や小笠原諸島からも本種が見つかっているようです。
<参考文献>
Komatsu, H., & Takeda, M., 2009. Rare crabs (Crustacea, Decapoda, Brachyura) from Okinawa Island, with description of a new species of the family Leucosiidae. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (Zoology), 35: 125-136.
Tan, S.H., & Ng, P.K.L., 2003. The Parthenopinae of Guam (Crustacea: Decapoda: Brachyura: Parthenopidae). Micronesica, 35-36: 385-416.
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ヨロンエビ [2009年09月14日(月)]
 今回は、ヨロンエビ Palinurellus wieneckii (de Man, 1881) を紹介します。ヨロンエビは、イセエビ下目 ヨロンエビ科 Synaxidae に属しています。甲長は5cm程度で、全身鮮やかな赤色を呈しているため、一見して他のイセエビ類と区別することができます。
スマトラが原記載地で、かつては希種とされていましたが、その後、カロリン諸島、ボルネオ、モリシャス、スリランカ、ハワイ、フレンチポリネシアなど各地から記録されるようになりました。国内の正式な記録としては、与論島と沖縄島から報告があります。ただし、近年では、沖縄の各地でダイバーによって写真撮影されています。リーフ際のクレバス内や洞穴内で時折見かけますが、生息密度は低いようで、一時期、沖縄県のレッドデータブックに掲載されていたこともあります(現在は未掲載)。
記録が少ない種であるせいか、繁殖を含め、詳しい生態は分かっていません。著者は、近年、ハタ類の胃内容物中から発見された本種の抱卵個体を観察する機会を得る事ができ、現在、報告論文を準備しています。
<参考文献>
Baba, K., & Shokita, S., 1984. Palinurellus wieneckii, a rare species of spiny lobster found in Okinawa-jima of the Ryukyus (Crustacea: Decapoda: Palinuridae). Galaxea, 3: 117-118.
Titgen, R.H., & Fielding, A., 1986. Occurrence of Palinurellus wieneckii (de Man, 1881) in the Hawaiian Islands (Decapoda: Palinura: Synaxidae). Journal of Crustacean Biology, 6: 294-296.
Ng, P.K.L., 1994. First record of the synaxid lobster Palinurellus wieneckii (de Man , 1881) (Crust acea, Decapoda , Palinuridea) from SriLanka. Journal of South Asian Natural History, Colombo, Sri Lanka, 1(1): 117-118
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コマチスベスベオトヒメエビ [2009年04月22日(水)]
 今回は、つい先日新種記載されたばかりの Odontozona crinoidicola Saito & Fujita, 2009を紹介します。本種は、沖縄島(水釜海岸)とソロモン諸島から採集された3個体を基に記載されました。体型を見ると上下に扁平で寸詰まりなので、一見ドウケツエビ科のサンゴヒメエビ属の種のようですが、詳細に調べた結果、オトヒメエビ科のスベスベオトヒメエビ属に含まれることがわかりました。スベスベオトヒメエビ属は、本種を含めて14種が知られていますが、ほとんどが自由生活種です。本種はウミシダ類に共生しており、沖縄島で採集された2個体はいずれもホソウデヒトフシウミシダ Phanogenia gracilis (Hartlaub, 1983)に共生していました。学名もウミシダ類に共生することに由来しています。また、和名も「コマチスベスベオトヒメエビ」となりました。
観察例も少なく、宿主特異性など詳しい生態は分かっていませんので、今後、(ダイバーさんからの)情報が増える事を願っています。ホソウデヒトフシウミシダは夜行性種なので、ナイトダイビングで丹念に探せば見つける事ができるかも知れません。
<論文>
Saito, T., & Fujita, Y., 2009. Odontozona crinoidicola, a new stenopodid shrimp (Decapoda: Stenopodidea: Stenopodidae) associated with a comatulid crinoid from Ryukyu Islands. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (Zoology), Supplement 3: 123-135.
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アカマダラテッポウエビ [2009年04月13日(月)]
 今回は、テッポウエビ科のアカマダラテッポウエビ Alpheus barbatus Coutière, 1897 を紹介したいと思います。本種は、体長3cm程度の小型種で、大鉗脚(はさみ脚)が側偏し、小鉗脚には多数の毛が生えているのが特徴です。
本種は、ユムシ類に共生しています。かつては自由生活種と考えられていましたが、近年の研究により、ユムシ類(特にスジユムシ)を宿主とする共生性のテッポウエビ類であることが明らかになりました。潮間帯の転石下や、干潟にあるユムシの巣穴を掘り起こすと良く見つかります。
 本種の体色は、白地に赤色のまだら模様がある個体が多いですが、模様の無い単色型の個体もいるそうです。ただし、この違いは、昼夜の明るさの違いに起因するようです。テッポウエビ類では、体色も種同定のために重要な形質ですが、本種は同一個体でも模様が著しく変わる(変えることができる)という点でとても珍しいようです。
<参考文献>
Anker, A., Murina, G.-V., Lira, C., Vera Caripe, J.A., Palmer, A.R., & Jeng, M.-S., 2005. Macrofauna Associated with Echiuran Burrows: A Review with New Observations of the Innkeeper Worm, Ochetostoma erythrogrammon Leuckart and Rüppel, in Venezuela. Zoological Studies 44: 157-190.
野村恵一, 2000. 日本産アカマダラテッポウエビの宿主と色彩. 沖縄生物学会誌, 38: 59-64.
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コツノテナガエビ [2009年02月02日(月)]
 今回は、久々に淡水性のエビ類を紹介しようと思います。今回紹介するのは、コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus (Von Martens, 1868) です。本種は、第2胸脚がとても太く頑丈になります。本種は、河川の中流から上流域の早瀬に生息し、国外では海抜1000mを超える高所からも採集されていて、「mountain river prawn」とも呼ばれています。早瀬に生息するせいか、体や胸脚などががっしりしています。
 本種は、インド-西太平洋域に広く分布しており、日本では、琉球列島から鹿児島県の大隅半島南西部から記録があります。沖縄県下での正式記録は、沖縄島、宮古島、石垣島、西表島と意外に少ないようです。
本種は、小卵多産種で、飼育下では11ゾエア期を経て、57日でデカポディド期幼生に変態することが報告されています。水槽飼育下で交尾・産卵させることは容易ですが、幼生を孵化させることが困難で、抱卵雌が放卵(放幼生)行動を示さず、時には卵を抱えたまま脱皮する例も報告されています。本種と同じく河川の瀬に生息するオニヌマエビやミナミオニヌマエビでも同様の観察例があり、放卵(放幼生)には、一定以上の水流が必要ではないかと考えられています。
本種は、沖縄県版レッドデータブックにおいて準絶滅危惧種(NT)に指定されています。
<参考文献>
伊藤茜・藤田喜久・諸喜田茂充, 2005. コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus (Von Martens, 1868) の卵発生と孵化.CANCER, 14: 5-8.
Ito, A., Y. Fujita, & Shokita, S., 2006. Complete larval development of Macrobrachium latimanus (Von Martens, 1868) (Decapoda: Caridea: Palaemonidae) reared under laboratory conditions. Crustacean Research, 35: 1-26.
藤田喜久, 2007. 宮古の湧水に生息する十脚甲殻類. 平良市総合博物館紀要, 11: 89-110.
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