【レポート】就労支援フォーラムNIPPON 2018(2018年12月8日開催) [2018年12月11日(Tue)]
2018年12月8日(土)に日本財団主催で開催された「就労支援フォーラムNIPPON 2018」に参加しました。
財団主催イベントでありながら、5回目となる今年が初参加でした。 毎年満員御礼ですごい熱気だと聞いていましたが、たしかに、今年もメイン会場は満員御礼。大勢の方々で賑わっていました。 結構若い方が多いのが個人的には意外でしたが、就労支援の未来を考えるという意味では、やはり若い世代がたくさん参加され、世代を超えてバトンをつないでいくことが大切ですね。 備忘録的なメモをアップします。 【レポート:就労支援フォーラムNIPPON 2018(2018年12月8日開催)】 ◆特別企画「遺言〜未来に託したい思い〜」 小島靖子氏(ANAウィングフェローズ・ヴィ王子株式会社 顧問) 金子鮎子氏(NPO法人ストローク会 副理事長) 村木太郎氏(公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会 専務理事) ●自己紹介(金子氏) ・働きたいという人を応援したいという気持ちが強かった。 ・NHKに在職中から、どのような関わりや支援ができるのかを研究していた。 ・退職後、株式会社ストロークを設立した。 ・平成元年1月に、週刊誌の記事に掲載された。 ・働くことは大変なこと、でも、大変だからこその喜びもある。 ●自己紹介(小島氏) ・21年前に卒業生を応援する会を立ち上げた。 ・当時は、今のような福祉制度はなかった。 ・立ち寄れる場所、相談できる場所が無いことが一番の問題だと感じた。 ・通える場所を、学校のそばにつくろうという計画を立てていた。 ・その時に、ヤマト福祉財団の小倉昌男氏のスワンカフェのことを知った。 ・フランチャイズ展開するとのことだったので、自分たちも入れてもらうお願いをした。 ・お弁当屋さんよりもパン屋さんの方が今時。 ・イートインコーナーを大きめに確保すれば、障害者も立ち寄れるスペースにもなる。 ●質問 ・なんの知識もない中での株式会社の設立。一番苦労したことは?手応えは? ●金子氏 ・会社の設立や運営に必要な事務関係は大変だったが、専門家にサポートしてもらった。 ・もう一つは働く場(仕事)の確保。 ・仕事探しでは知り合いのツテに助けられた。 ・ヤマト福祉財団の賞を受賞できたのはありがたかった。 ・賞だけでなく、仕事もくださいとお願いした。 ●質問 ・支援費無し(公的補助無し)でどうやって継続できたのか? ●金子氏 ・固定費をなるべく減らすため、事務所は借りずに自宅にて。 ・運営職員の給料も極力小額で。自分は無給。取締役は3万円/月。 ●小島氏 ・立地があまり良くなかったので、店舗での待ち販売だけでは難しい。 ・店舗販売の他に、パンの宅配サービスや出張販売、注文販売も行った。 ・地域に出てお客さんをつかまえる計画を立て、ようやくスワン1号店としての許可がおりた。 ●村木氏 ・厚労省にお届けサービスを行ってくれていたが、ある時からこのサービスがなくなった。 ・それは、省内での人気が高まり、庁舎内に売店ができてしまったから。 ●小島氏 ・厚労省、内閣府、気象庁などには今でも配達を週1回ずつ行なっている。 ・配達サービスを行なっていると、いつもの販売員が風邪で休んだりすると、心配してもらえる。待っててもらえることの喜び。 ●金子氏 ・苦労したことの一つに、働く障害者の安定的な出勤という問題もあった。 ・有料で研修を行なった。 ・有料の研修にしてから、ポカ休が減った。 ●木村氏 ・今なにを?これから何を? ●金子氏 ・支援者側が上から目線になってしまうことを何度も見てきた。 ・地域の高齢者と障害者がもっとつながり、高齢者向けの仕事を増やしていければと考えている。 ●小島氏 ・就労している人たちにも定年になった人たちが出てきている。 ・シルバー障害者の問題。 ・北区は高齢化率が高い。高齢化率の高い地区に入って、高齢者向けのサービスにも着手。 ・シルバー障害者がそのままB型施設にいるのは違う気がする。 ・S(シルバー)型事業を加えていけたら良い。 ・工賃アップはもちろん大事だが、B型施設の中に囲ってしまうのは間違っている。 ・共生社会を実現するには、地域に開き、地域とつながらないといけない。 以上 ◆パネルディスカッションA「オランダ・ドイツ視察からニッポンを考えてみた」 横内陽子氏(ヤフー株式会社 政策企画本部/紀尾井町戦略研究所 上席コンサルタント) 岩渕祐二氏(公共価値創造研究所 代表) 竹村利道氏(日本財団公益事業部国内事業開発チーム シニアオフィサー) ●導入(竹村氏) ・報酬がつかないとやらない、というのはどうなのか? ・制度を良くするために動くことは必要なこと。 ・社会福祉事業は増えたけど、社会福祉は劣化しているのではないか?という疑問。 ・ショートスティ、デイサービス、訪問看護も現場から制度へ。 ・お金になるかならないかではなく、居ても立っても居られないという思いで動くことから。 ・オランダ、ドイツの視察のフィードバックをみなさんへ。 ●オランダ・ドイツ視察の報告(岩渕氏) ・福祉の専門家ではなく、事業評価を専門にしている。 ●視察の目的 ・雇用割当アプローチ(保護)と差別禁止アプローチ(権利)の2つある。 ・世界的な潮流は、差別禁止アプローチ+一般労働市場への統合。 ・オランダは4都市5団体、ドイツは4都市5団体を視察。 ●オランダの就労支援 ・社会雇用法(1969年)に基づく就労支援。 ・保護就労等の高コストが問題化してきた。 ・参加法(2015年)により、保護就労に加え、一般労働市場への就労支援に力を入れる。 ・最低雇用賃金の7割までを福祉制度で保障。残りは雇用主の自助努力。 ●ドイツの就労支援 ・障害者作業場で、職業訓練や就労の場を提供。 ・100人単位の大規模施設。 ・2015年に国連が保護就労の段階的廃止を勧告。 ・「障害者作業場←→インクルージョン企業←→一般企業」双方向の考え方。 ・インクルージョン企業とは、障害者の雇用率など、一定の条件を満たすことで税金等の優遇措置を受けている企業のこと。 ●オランダ・ドイツ視察の報告(横内氏) ・障害者に限らないソーシャルインクルージョンの流れ。 ・オランダは、大国に囲まれた小国の生き残り戦略に対する強さ。 ・雇用情勢や困難さ等のデータをしっかりと調査し、e-サービスに力を入れていることが印象的。 ・ドイツは、理念と規律の国。 ・国連の勧告は受け止めつつも、ドイツ自国の考え方を大切にしている。 ・ネイティブではない人(移民等)へのサポートも対象に入れている。 ●竹村氏 ・人口が少ないので、総動員で働かないと国が保たない、という考え方が印象的だった。 ・オランダは、誰がどこで働いているかをデータ化し、かつ、利活用できるように統合されている。 ・個人情報保護法との整合性は必要だが、データの積極的な活用も不可欠。 ●横内氏 ・国に対する信頼感やセキュリティ対策は当然必要。 ・日本は日本の中にデータセンターを持った方がよい。 ・GAFAは典型。個人情報はダダ漏れ。守るよりも、自分たちも活用すること。 ●竹村氏 ・後半は、日本を考えるというテーマで。 ●岩渕氏 ・オランダもドイツも、就労の場は「企業」である。 ・オランダは、補助金は賃金補填の位置づけ。 ・オランダは障害者一人あたりの行政支出は24,000ユーロ。そのうち20,000ユーロは障害者の賃金になる。 ・一方で、日本は、行政支出は12,340ユーロと少なく見えるが、1,390ユーロしか障害者の賃金にはならない。多くが就労施設にいってしまう。 ・結果として、直接の行政支出に加えて、生活保護等の公的支出が必要となり、高税負荷、高公共サービスという印象のオランダよりも、日本は高税負荷、低経済効果になっている。 ●横内氏 ・ダイバーシティ就労は進めていくべき。 ・障害者雇用率は2.35%くらい。 ・柔軟な雇用環境、条件は整っている。 ・日本の企業も、一部では取り組みが進んできている ●岩渕氏 ・今回の視察では、事業所ではなく、広く一般の企業が受け皿になることを目指していることが印象的だった。 ・ドイツの長官の「国連に対して、障害者就労に関する我が国の文化的な背景を説明すべきだった。」というコメントが印象的だった。 ・大規模施設の閉鎖的な場に閉じ込められているという方式が国連勧告につながったのではないか。 ●竹村氏 ・措置費から支援費に移行した以降、小規模な施設を街中につくってきた日本の路線は間違っていなかったのではないか。 ●最後に(横内氏) ・国政の場のダイバーシティの無さが根本問題ではないか。 ・障害者議員率は公式なデータすらない。 ・女性議員率も13%程度。 ・ICTはダイバーシティとの親和性が高い。 ・ICTの積極的な活用の推進も。 以上 ◆ザ・プレゼンテーション「就労支援にはドラマがある」 末安民生氏(一般社団法人日本精神科看護協会 会長) 荻原喜茂氏(一般社団法人日本作業療法士協会 副会長) ●工賃5倍増と地域課題の解決を実現! 野原徹氏(社会福祉法人ふしの学園(山口県)) ・仕事を選ぶ9つの基準(@人手を活かせるか、A平易確実であるか、B気をつかわないか、C職人仕事を選んでいないか、D儲かりそうか、E旬な仕事か、F付加価値があるか、G社会にとって必要か、H利用者がやりたい仕事か) ・一般廃棄物処理業の事例紹介。 ・定期収集と臨時収集の2種類。 ・臨時収集の依頼が急増。 ・引っ越し、遺品整理、ゴミ屋敷の整理など。 ・人海戦術で一気に片付けが可能。 ・遺品整理業者の数がニーズ増に合わせて急増中。 ・仕事の依頼者は、1位が個人、2位が行政。その他、不動産業者や廃棄物事業者。 ・コンテナ10台所有し、フル稼働中。 ・10年前に比べ、売上は倍増、工賃も4万5千円にアップした。 ・利用者の変化は、意欲、承認、自己肯定、自己実現、目標などの向上。 ・地域の困りごとも解決できた。 ・生活困窮者への支援、災害廃棄物の処理など。 ・強みを発揮できる仕事→売上アップと工賃向上→地域の課題も解決という好循環。 ●「枠」にはまらない支援で日本の若者をもっと元気に! 後藤千絵氏(一般社団法人サステイナブルサポート) ・福祉を志す原体験は? ・2015年10月に岐阜にIターンし、ノックス岐阜をオープン。 ・事業はうまくスタートしたが、ずっと気になっていたこと。 ・障害者のイメージ ・ノックス岐阜の利用者の多くが大学以上の高学歴。 ・大学在学時、就職時、就職後に障害が発症(顕在化)する。 ・グレーゾーン学生を対象にキャリア支援をスタート。 ・グレーゾーン学生は、発達障害診断も出ておらず、自覚もない、プライド高いなど、支援の必要性に向き合えない人も多い。 ・学生支援にのめり込むうちに、スタッフの3分の2が離職してしまった。 ・本人が支援の必要性を感じていなくても、予防的支援は可能ではないか。 ・誰もが当たり前に、自分らしく生きることを選ぶことができる社会を実現したい、という思いで続けている。 ・制度があるからではなく、社会に必要だからをベースに活動したい。 ・障害は感動の対象ではない、特別なものでもない。 ・覚悟と情熱、明確なビジョンと戦略が必要。 ・ユニバーサルな社会を実現していきたい。 ●「就労プロジェクト」の取り組み 多田眞理子氏(医療法人恒仁会近江温泉病院) ・平成27年より「近江就労支援レディネスパス」を開始。 ・ある利用者の事例で紹介。 ・支援センターや職業センターを卒業し、実際に就労を始めた後に、十分にできない自分、周りに迷惑をかけてしまう自分がいやで「やめたい」という気持ちになってしまった。 ・精神的なつらさを本人が抱え、自分の思いを伝えられず、周りも理解できず、コミュニケーション不全も起きてしまう。 ・中途障害者の就労支援では、アウトリーチ活動が重要。 ●鳴門市の「就労支援部会」がおもしろい! 林弥生氏(鳴門市就労支援部会) ・平成23年度から、説明、個別支援、お悩み解決、就職セミナーなどのプロジェクトに取り組む。 ・就労移行3年目の就職を実現するプロジェクト。 ・お悩み解決プロジェクトは、ある事業所の悩みごとを、その事業所以外の人たちも一緒にみんなで考える取り組み。 ・一年目は、視察したい事業所の見学会をみんなで一緒に行った。 ・二年目は、講師を招き、当事者も参加して模擬面接を行った。 ・(JSN金塚氏)鳴門市支援部会の取り組みは全国でも珍しい。 ●ショートタイムワーク制度について 横溝知美氏(ソフトバンク株式会社CSR統括部CSR部CSR1課) ・日本の雇用は公平か? ・フルタイム労働となんでもできることが暗黙の前提になっている。 ・週20時間未満しか働くことができない人(=支援が届きづらい人)への支援を。 ・ショートタイムワーク制度を導入。 ・「人を雇用し、仕事をあてる」から「仕事を決め、人を雇用する」への発想の転換。 ・仕事をトータルで成立させるには、様々な能力や特性が必要になる。 ・一方で、仕事を分解することで、特定の能力や特性でも成り立つ仕事へと変換できる。 ・一人ひとりが特性を活かし、挑戦できる社会へ。 ・20名がショートタイムワーク制度を利用。 ・雇用側も労働者側も両者ともに満足度が高い。 ・導入ガイドをHPで公開中。 ・今後の展望として、ショートタイムワークアライアンスを設立。 ・一社の力ではなく、多くの企業の力で。 ●利用者の生きる意欲を高める「啓発事業」という取り組み 鈴木こころ(一般社団法人愛媛県摂食障害支援機構) ・高校一年生の時に、摂食障害を発症。 ・自身の経験を活かし、当事者目線での支援に取り組む。 ・その日の体調で、2つの支援コースから自身で選ぶ。 ・自身で選ぶことがポイント。 ・働くの前段階に目を向けた基礎力アップ支援。 ・どの作業も時給は100円に設定。 ・これは、お金が目的ではなく、生きる力と意欲を身につけることを最優先にしたいから。 ・自分で判断し、決断し、耐えることも身につける。それが未来を切り拓く力になる。 ・障害があると出来ないこともある。でも、チャンスはいつどこに転がっているか分からない。 ・B型とその他のサービスを組み合わせ、総合的なサポートを。 ・「マゼンダリボン運動」(摂食障害の啓発活動)を当事者主体で関与、推進。 ●感想(末安氏) ・どれもそれぞれに工夫を凝らし、もっと聞いてみたいと思うプレゼンテーションだった。 ・自分のやってきたことと重ね合わせると、生活が安定しないと就労にならない。 ・生活とは毎日繰り返すことは、簡単なことではない。 ●感想(荻原氏) ・枠にとらわれない、領域を超える、他者とつながるなどが共通のキーワード。 以上 |