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【レポート】東京サステナブル・シーフード・シンポジウム〜魚から考える日本の挑戦2018〜(2018年11月1日開催) [2018年11月05日(Mon)]
IMG_8768.jpg2018年11月1日(木)に日経ESGとシーフードレガシーの主催で開催された「東京サステナブル・シーフード・シンポジウム〜魚から考える日本の挑戦2018〜」に参加しました。

日本にいると、マグロ規制やうなぎが獲れないとか、サンマやイカの不漁など、食卓(消費者)の関心事しかニュースにならないので、一般人からすると食料品=水産業という印象しかない感じがします。

一方で、世界的にみると水産業=国際ビジネスであり、SDGsでも14番目に「海の豊かさを守ろう」目標として掲げられているように、世界的な環境問題の最前線の一つになっています。

ということを改めて実感させられるシンポジウムでした。

備忘録的なメモをアップします。

【レポート:東京サステナブル・シーフード・シンポジウム〜魚から考える日本の挑戦2018〜(2018年11月1日開催)】
◆セッション:水産業界で始まった持続可能性コミットメント
マルハニチロ経営企画部サステナビリティ推進グループ佐藤寛之 氏
日本水産養殖事業推進部部長屋葺利也氏
ウォルトンファミリー財団環境部門プログラムオフィサーテレサ・イッシュ 氏
ストックホルム・レジリアンス・センター副サイエンス・ディレクターヘンリック・オスターブロム 氏

IMG_8753.jpg

●オスタープロム氏
・水産業においては、大手企業による漁獲、生産への集中化が進んでいる。
・このような大手企業は影響力が非常に大きいので、キーストーンアクターと呼ばれる。
・SeaBOS(Seafood Business for Ocean Stewardship)を2016年にスタート。
・2017年6月の国連海洋会議で取り組みを発表。
・この会議では、SeaBOSに対しては全体的には模様眺めという雰囲気だった。
・2018年6月のFAO COFI会議に招待され、文書にも記述がされた。
・2018年9月の軽井沢ダイアローグには10社が参加した。
・ダイアローグの結果、会議体としての定款などの整備もでき、CEOが主導する会議として位置づけることができた。
・SeaBOSでは、4つのタスクフォース。@IUU漁業の抑制と奴隷漁業の撲滅、A透明性とトレーサビリティの向上、B規制の改善、Cモニタリングとコミュニケーション、D水産サプライチェーンにおけるプラスチックの削減。
・科学者としての立場から、科学的根拠を重視した取り組みを推進。
・UNグローバル・コンパクトとの連携によるAction Platform for Sustainable Oceanなど、取り組みが拡がっている。

●屋葺氏
・SeaBOSの会議にはすべて参加してきた。
・ニッスイグループは、@豊かな海を守る、A安全・安心で健康的な生活に貢献、B多様な人材が活躍できる企業、以上3つのマテリアリティを掲げている。
・GSSIやGDSTへの加盟、CSR調達方針の確率、認証水産物(MSC、ASC)の調達推進など、サステナビリティに関する取り組みを行っている。
・取扱水産物の資源状態の調査。
・ニッスイグループは、約160万トン、世界の漁獲量の1.6%相当を調達している。
・取扱魚種は450種。93%は天然魚、7%は養殖魚。
・取扱水産物に関し、約1年半をかけて持続性調査を実施した。
・天然魚については、サステナビリティに関して、88%は心配ない(うち37%は認証魚)、3%は心配がある。9%は不明。
・2030年までに、ニッスイグループのすべての調達品について、持続性が確認されている状態を目指す。
・SeaBOSに参加していることのメリット。
・世界の最先端の情報や動向にいち早く触れることができる。
・日本の大手水産3社(ニッスイ、マルハニチロ、極洋)の間で、サステナビリティに関する情報交換の機会が増えた。

●佐藤氏
・11年前にマルハとニチロが合併。
・165カ国で174社のグループ企業がある。
・サステナビリティ長期ビジョンで、経済価値、社会価値、環境価値の3つの柱で、価値の創造を規定。
・事例紹介。国交省の「東京湾UMIプロジェクト」に参加。
・カーボンニュートラル認証をオーストラリアで取得
・2010年に民間企業としては初めてクロマグロの完全養殖化に成功。生産量アップに取り組んでいる。
・認証水産物(MSC、ASC)の取り扱いを推進。
・SeaBOSに参加していることのメリット。
・業界および自社が本当にもとめられていることをいち早く知ることができる。
・変化により早く対応していくことが重要。

●SeaBOSの今後について
・取り組みを一つ一つ実行し、成果を出していくこと。
・スピードが重要。
・現在のメンバーは、欧米、東南アジア、日本。
・中国とロシアの会社もメンバーに入るとよい。
・大手から中小にも取り組みが拡がっていくことが、成功の一つの形。

●イッシュ氏
・NGOと産業の接点で働いてきた。
・SeaBOSについて、企業が参加し、競合他社が手を携え、喫緊の課題にチャレンジするというアイデア。これは非常にエキサイティングなチャレンジだった。
・連携が肝。連携することでしか実現できない。
・リーダーとして業界をひっぱり、他の業界も巻き込む。
・そのためには、目標を掲げること。
・目標の達成に向けて、連携により境界を超えてサステナビリティを実現していく。

●質疑応答
Q.関連するSDGsの実現への取り組みはされていると思うが、水産業の本領域での取り組みについてはどうか?
A.
・@社内の取り組みを改善、Aリーダーシップ(外部への良い影響)、B将来に向けた取り組み、以上の3つのレベルでの取り組み。
・SeaBOSとしてだけではなく、日本における規制、科学者との連携などによる取り組みもしていく。

Q.日本の沿岸漁業に対する印象は?
A.
・(オスタープロム氏)中小規模の水産業への印象はという質問でもある。正直、まったく知らない。
・(イッシュ氏)沿岸漁業は多くの従事者を使っている。大企業の利益だけでなく、従事者にも利益をもたらしているか。
・沿岸漁業は中小企業が多いので、サステナブルではない漁業のリスクが大きい。

以上

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◆セッション:IoTと新技術が作るサステナブルな新市場と漁業の課題解決
日本電気デジタルプラットフォーム事業部マネージャー早坂真美子 氏
NTTドコモ地域協創・ICT推進室担当課長山本圭一 氏
KDDIビジネスIoT推進本部地方創生支援室マネージャー福嶋正義 氏
ウミトロン代表取締役藤原謙 氏
IHIジェットサービス衛星情報サービス部取締役 兼 部長川辺有恒 氏
日経ESG編集 シニアエディター & 日経ESG経営ォーラム プロデューサー藤田香氏

●山本氏
・NTTドコモの水産業に関する取り組み。
・社会課題の解決と地方創生に取り組むことを者の目標として掲げている。
・きっかけは東日本大震災の復興支援。
・被災地でコミュニケーションを重ねる中で、海の状態の変化を見える化したいという相談が出てきた。
・2016年から実証実験を開始し、2017年から「ICTブイソリューション」をサービスイン。
・今まで見えなかった海の状態が見えるようになることで、新しい気づきが生まれ、現場からイノベーションが創出されることにつながることを期待。

●福嶋氏
・KDDIの水産業に関する取り組み。
・通信事業者からライフデザイン事業者へ。
・水産業との関わりは東日本大震災の復興支援がきっかけ。
・2012年に復興支援室を発足し、2017年に地方創生支援室へ。
・東松島での取り組み。震災前は15分で漁場につけたのが、高台移転や漁港被害等の理由により、1時間かかるようになった。
・センサーの情報から、翌日の漁獲量の推定にチャレンジ。
・鮭の定置網漁では推定精度70%以上を達成。
・ビッグデータがない状況での漁獲推定モデルの開発にチャレンジ。
・福井県小浜市での鯖復活プロジェクト。養殖事業の最適化に実装。
・長崎県五島市でのクロマグロの養殖に関する実証実験。ドローンでプランクトンを採水し、赤潮の発生をリアルタイムに検知。

●藤原氏
・水産養殖向けのデータサービスを提供するベンチャー企業。
・水産養殖が21世紀の最も重要な産業になると思ったので、ウミトロンをはじめた。
・世界の養殖可能余地の開発をすれば、現在の水産物消費量の100倍を生産できるといわれている。
・愛媛県愛南町で実証実験。
・水産養殖の現場の課題は多い。コスト削減、リスク低減、売上向上。
・生簀の魚の様子を遠隔でモニターし、給餌器をリモートで制御するサービス。
・AIやIoTを活用した養殖向け保険の開発

●早坂氏
・NECの水産業に関する取り組み。
・2016年から養殖魚のサイズ測定を自動化するサービス開発に取り組んでいる。
・養殖事業者は様々なデータを収集しているが、精度や頻度が足りない。データの所在や保管もばらばらなので活用できないという課題がある。
・この課題を解決するため、ICTを活用し、データの高度化、デジタル化、活用可能化を目指す。
・AIを活用し、養殖業の最適な打ち手をAIが提案し、経営に活かすことができるようなサービスへと発展させたい。

●川辺氏
・IHIジェットサービスの水産業に関する取り組み。
・航空機やロケットのジェットエンジンを開発するのが本業。
・AIS(船舶自動識別装置)を活用。
・exactTraxを開発中。
・漁船等にも搭載可能な、小型だが出力の大きい発振器。
・この技術とブロックチェーン技術を使うことで、操業場所から漁獲の報告までをデータ化。トレーサビリティやサステナビリティにつなげたい。
・データ化するための現場での手間の省力化に課題が残る。
・関心の高い漁業者の参入をどうやって増やしていくかも課題。

●ディスカッション(苦労と実用化のめど)
●NEC
・人手による作業では生簀全体の平均を出すのは難しい。これをICTを活用することで可能とする。
・勘と経験では誤差が大きい。
・2019年度から正式販売予定。
・価格は現在の実証実験で見定める。

●NTTドコモ
・2017年から有償サービスを提供中。
・有償トライアル→本購入の流れ。
・使用している漁業者からは、データが見えることによる安心感が大きいとの声。
・海苔の場合は塩分濃度が重要なので、そのデータを見て対応を判断する。
・ブイの値段は月数千円程度。

●KDDI
・定置網で天然魚を獲る漁獲推定サービスは実証実験の段階。
・鯖養殖のIoTサービスはサービスイン済み。
・マグロ養殖の赤潮早期検知サービスは実証実験の段階。
・複数の推進で採水できるドローンを実証実験中。
・鮭の定置網について、最初はカメラでチェックする方法を考えたが、水の濁り、データ量の膨大さがネックになり断念。
・過去7日間のデータから、翌日の漁獲量の推定が可能になる。
・ブイについては数十万円/台程度。マーケットが大きくなれば10万円を切るくらいの値段まで下がる。

●ウミトロン
・海のIoTの難しさは、データを取ることそのものが難しいこと。
・特に、電気がない環境でのオペレーションの実現が難しい。
・値段決めについては、コスト削減できた分の一定割合で模索中。

●IHIジェットサービス
・2019年からの実装化。
・センサー1台数千円程度で。

●ディスカッション(サステナビリティについて)
●ウミトロン
・養殖業の餌の量を最適化できることで、コスト削減はもちろん、環境負荷の低減も。
・働き方改革への貢献も。

●KDDI
・漁獲量の予測ができるこは、市場での価格の安定性につながると仮設を立てたが、実際には、少人数の参入では難しい、

●IHIジェットサービス
・トレーサビリティが向上することが、水産物の価格向上、漁業者の収入向上にもつながる。
・漁業が稼げる産業になってきている面もある。

●NEC
・技術を活用することで、労働時間や負担が減るので、この時間を別のことに使うことができる。
・スマートな漁業への貢献。

●NTTドコモ
・後継者不足が深刻な課題。
・漁業の技術を継承することは比較的難しくないが、タイミングの見定めを会得するのが非常に難しい。

●今後の展望
・現場との関係性の構築。新しい挑戦。水産業への貢献。
・企業単独でできることは限られている。
・地域に根ざしたICT、IoTの活用に取り組んでいきたい。
・水産養殖の成長を支えつつ、持続可能な産業への貢献。
・技術はそろっているので、あとは実践あるのみ。

以上

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◆セッション:シーフードにESG投資を呼び込め
大和総研調査本部主席研究員河口真理子 氏
高崎経済大学教授水口剛 氏
味の素広報部ダイレクトコミュニケーショングループ長CSR統括長谷川泰伸 氏
日本水産取締役 常務執行役員 CFO(最高財務責任者)山本晋也 氏
日経ESG編集 シニアエディター & 日経ESG経営ォーラム プロデューサー藤田香氏

●河口氏
・持続可能な水産資源とESG投資について。
・PRI(責任投資原則)が2006年に発足。
・署名機関数は2142機関。日本は65機関。
・署名機関の資産総額は80兆ドル。
・署名機関が増えている理由は、投資家がESG要因が投資価値やリターンに影響すると判断しているから。
・投資家が企業に求めることは、@情報公開(公開情報で評価、判断する)。
・ASDGsに基づく社会課題のマッピングができていること。
・Bマテリアリティがわかる情報があること。
・CEに関する重要なテーマの中に、海洋資源が含まれる。
・持続可能な水産業に関する投資家の動き。
・2017年10月英国のNPOフィッシュトラッカーイニシアティブによる過剰漁獲リスクの公表。
・2018年9月ノルウェー政府年金基金オーシャンサステナビリティに関する憂慮を公表。
・海洋資源の重要性は、日本の投資家の間ではようやく認識され始めた段階。
・地球の水の総量は非常に少ない。はかない存在。

●水口氏
・なぜESG投資をするのか?
・@ESGは個々の企業の評価、ブランド毀損のリスクにつながる。
・A個々の企業の評価は投資リスクにつながる。
・B地球のサステナビリティへのコミットメント。
・漁業のESG課題は、@人権、A乱獲、B薬物。
・世界の水産業の上場企業は228社。日本は40社で一番多い。
・情報開示している企業は37社。日本は0社。
・AVIVA INVESTORS(保険会社)による解説(投資家にとってサステナブルシーフードがなぜ重要かhttps://www.avivainvestors.com/en-gb/media/insights/gri/why-sustainable-seafood-matters.html)。
・アメリカを中心としたODP(Ocean Disclosure Project)。CDP(Carbon Disclosure Project)の海洋版。
・海洋資源に関しては、水産業だけでなく、サプライチェーンを通じて多くの企業に関連する。

●山本氏
・ニッスイグループの取り組み。
・2016年からCSRに本格的に取り組みだした。
・ステークホルダーダイアローグを経て、2016年3月にCSR行動宣言を策定。
・2016年11月にマテリアリティを公表し、12月にSeaBOSに参加。
・マテリアリティの決定プロセス。29のイシューに対し、571名・社から重要度(対ステークホルダー、対事業)を回答。
・水産資源のマテリアリティについて、調達水産物の資源状態の調査を実施。
・3.4%が心配がある。8.6%が不明という調査結果。調査結果は公表。
・ニッスイグループとしての調達基本方針を定めた。

●長谷川氏
・味の素の水産業関連の取り組み。
・100年先の漁業を考えるコンソーシアム(仮)を立ち上げた。
・投資家と対話するには、KPIを数値化、さらに金銭価値化することが必要。
・ほんだしの環境負荷を数値化。1リットルのだしをつくるのに、どれだけのCO2を排出しているのかをほんだしとそれ以外で比較。
・CO2排出量は、原料調達で57%、生産で16%、使用時で27%という構成。水の消費についても調べた。
・自然資本の総合評価にも取り組んでいる。

●投資家サイドの変化
●河口氏
・ノルウェー政府年金基金は、海洋の持続可能性について、まだ細かいことはコメントしていないが、関心があることを表明している。
・投資家の関心は陸から海へ。プラスチックも含めて。
・大和証券での水産資源に関するセミナーは、アンケート結果がセミナー史上最高の評価だった。
・魚は自分ごとにしやすいので、投資家としてなにをすべきかという思考、行動につながりやすい。
・日本の投資家も、ESGに関する感度がよくなっている。

●水口氏
・ヨーロッパの投資家はESGへの関心が高い。
・活用はエンゲージメントが中心になるだろう。

●企業側の変化
●山本氏
・最初は、なぜやる必要があるのか?コスト的に無駄では?という発言もあった。
・変わるきっかけは、社外取締役のやるべきという発言が大きく影響した。
・もう一つはマグロの状況。避けては通れない。
・中期経営計画の立案に際し、先進的な取り組みをしている他の企業の勉強もした。
・正直、最初は必ずしも腹落ちしていたわけではなく、やらなければいけなさそうだからという感覚もあった。
・マテリアリティを設定することは、担当部署を決めることでもあり、やらなければいけない環境が整うということ。

●長谷川氏
・ASV(Ajinomoto Shared Value)という考え方(味の素の発展は、社会の持続的な発展)を導入している。
・最初は、海外の先進企業とのコミュニケーションで感化された社長のイニシアティブが強かった。
・投資家とのスモールミーティングを開催してみたら、おどろくほど参加者が多かった。

●情報開示について
●山本氏
・情報開示は緒についた段階。
・タイムリーに情報を出していくことの重要性や、隠し立てをすることは身にならないことはよく理解している。
・すべて答えることは労力も大きく、投資家にとってもどこまで有益なのかは悩むところ。

●河口氏
・「地道に」や「まだまだ」というのは日本企業的。欧米では評価されない。
・やりますと宣言したら中身がなくても開示する欧米のスタイル。きっちりやりきるまで開示しない日本のスタイル。
・欧米のスタイルに変えることが必要。

●長谷川氏
・情報開示に関しても、ヨーロッパの仕組みに従わざるを得ないというのは現実。
・社内的な理解はまだ不十分。

●河口氏
・投資家をはじめ、情報の受け手側は、良いこともあれば悪いこともあることは理解している。
・100点を取ろうとしない。悪いことがないと、かえって怪しいと思われる。

●水口氏
・情報開示の目的は、信用を創ること。
・情報開示のルールやガバナンスには国による違いもある。
・一方で、水産資源のサステナビリティは共通の問題。
・ニッスイグループの80%以上が安全という調査結果も、世界的には、水産資源の危機感からすると「それほんと?」という疑問を持たれかねない。
・だから、情報開示の仕方、発信の仕方、コミュニケーションのとり方が重要。

以上

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◆セッション(総括):2020年に向け、サステナブル・シーフードを主流化
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会持続可能性部長荒田 有紀 氏
北京、ロンドン オリンピック バドミントン日本代表フライシュマン・ヒラード・ジャパンシニアコンサルタントFHスポーツ&エンターテーメント事業部池田 信太郎 氏
水産研究・教育機構 理事長兼農林水産省国際顧問農林水産省顧問宮原 正典 氏
大和総研調査本部主席研究員河口 真理子 氏
イオンリテールグループ商品本部グループ商品戦略部マネージャー山本 泰幸 氏
日経ESG編集 シニアエディター & 日経ESG経営フォーラム プロデューサー藤田 香氏
シーフードレガシーCEO花岡 和佳男氏

●荒田氏
・持続可能性に配慮した水産物の調達基準について。
・東京2020大会の持続可能性コンセプト(https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/)。
・主要テーマ(@気候変動、A資源管理、B大気・水・緑・生物多様性等、C人権・労働、公正な事業慣行等への配慮、D参加・協働、情報発信)ごとに、具体的な目標を設定。
・A資源管理については、資源を一切ムダにしない。
・ISO20121(イベントサステナビリティ)を取得。
・持続可能性に関する調達コードを策定。
・調達コードでは、共通事項と個別事項がある。
・個別事項の中で、水産物の調達基準を定めている。
・認証や認証取得計画の有無、行政機関による確認を受けた資源管理計画の有無、行政機関による確認を受けた漁業環境の維持・改善に関する計画の有無で、調達基準を満たしているかどうかを判断。

●宮原氏
・オリンピックを良い機会にしたい。
・様々なな魚種が不漁の危機にある。
・資源管理型漁業の対象となっているのは、魚種では7種/重要魚種50種中。漁獲量では42%にとどまっている。
・IUUについても、係争水域での事象が多いことを理由にあまり取り組んでこなかった。
・漁業を成長産業化するために、持続可能な資源量の維持、国際競争性の確保。
・Googleのグローバルフィッシングウォッチ(http://globalfishingwatch.org)との連携。
・水産庁の2019年度概算要求では、荒田な資源管理と成長産業化に関して約3000億円(2018年度は1772億円)を要求。
・ただし、この新たな資源管理の中に、トレーサビリティーが入っていない。

●ディスカッション
●荒田氏
・調達基準が直接的に影響するのは、選手村等で提供する飲食物など。
・それだけでなく、オリパラの影響力をポジティブに活用し、幅広く社会へ広げていきたい。
・人権についても、予防的な取り組みはもちろん、発覚した際に通報する取り組みも。
・ケータリング業者の選定については、一斉にではなく、順次決定していく。プロセスはこれから。

●池田氏
・晴海の選手村が建設中。
・場所が奥まったところにあるので、目にする機会はなかなかない。
・選手村は約3か月。
・大会期間中の選手は、試合が終わるまでの期間と試合終了後の期間の、2つのステージがある。
・選手のバリューは、2020年に向かってピークを迎えていく。
・アスリートやスポーツが持つコンテンツもピークを迎える。
・限られた資源を、どうやって半永続的につなげていくか、これは大きな課題。
・スポーツは体験が源泉。
・日本財団がHEROsというプラットフォームづくりを行っている。自分もメンバーに入っている。
・スポーツの力、アセットを上手に活用していくとよい。

●宮原氏
・輸入物、国内流通物のどちらについても、流通経路を知りたいというニーズは高まっている。
・政府が強制するのではなく、民間主導の動きが必要。政府はあくまでも後押しするスタンスであるべき。
・テクノロジーは進化しているので、技術的には実現可能。
・まだまだ抵抗勢力は多いが、みんなでやろうとすれば必ずできる。
・オリンピックを、風向きが変わる機会として活用。
・コストはまだまだ削減可能。
・大企業だけでなく、中小企業との連携もコスト削減の活路の一つ。

●河口氏
・世界のESG投資家は、まだ日本の水産業についてウオッチできていない。
・なぜなら、情報開示が少ないから。
・まずは、やっていることをアピールする、情報開示し、投資家の目を向けさせることから。
・水産会社自体の時価総額は大きくないので、株価という観点から注目を集めるのは難しいかもしれない。
・一方で、水産業や海洋資源への注目は高いので、日本(人)と魚のサステナブルな付き合い方のビジョンのようなものを発信していくとよい。
・サプライチェーンまで
・スタバのプラスティックストロー廃止など、脱プラスティックの注目度も参考に。
・社会全体の認知、消費者の認知を高め、サステナブルな水産業の実現にもつなげていく。

●山本氏
・持続的な調達に関する2020年目標を公表した。
・日本企業なので、約束事は必ず守る。単なる大風呂敷ではない。
・日本産か海外産かへのこだわりはない。
・CSRではなくCSVとして取り組む。
・お魚コーナーだけでなく、おにぎりや惣菜コーナーなどでの認証も取り組み始めている。
・まずは2020年の目標の必達。
・その先については、その時の状況をみないと分からない。課題が解決されている、もしくはめどが立っているのであれば次の課題に進む。
・消費者の最大の関心事についてコミットメントを出す。
・小売業は常に消費者が起点。
・認証取得を促進するために、漁業者を支援するようなことは考えていない。
・消費者が望むことを実現するための取り組みをする。
・持続可能な調達基準は、イオンに納入するために必要なライセンス。
・現状は、プライベートブランド以外では、調達基準の適用はほとんどできない。

●荒田氏
・東京2020の調達コードでは、国内産を優先したいということは明記している。
・持続可能性を担保しつつ、国内産での提供を実現したいが、割合についてはなんとも言えない。

●宮原氏
・ルールは変えていかないといけない。
・例えば鯖。なぜ国内で出回らないかといえば、小さな鯖を取っており、アフリカなどに輸出しているから。
・消費者の責任も大きい。
・例えば、数年前にテニスプレーヤーの錦織圭選手がのどぐろが食べたいとインタビューで答えたら、のどぐろの消費が急拡大。結果、大きなのどぐろを獲り尽くしてしまった。

●池田氏
・社会への恩返しをしたい。
・GAP基準を満たした食材を扱うレストランを2019年3月にオープン予定。
・メディア・コントロールが重要。そのためにはストーリーが重要。
・農業の現場は、工事現場の2倍も事故率が高い。
・こういう状況では、様々な認証も取れないし、若い人材も獲得できない。

●藤田氏
・ESG投資は上場企業だけではない。
・たとえば、サステナビリティへの配慮に取り組んでいる漁協には、積極的に地域金融機関が融資するなどもできるのではないか?

●河口氏
・ESG投資は、現在は投資が注目されているが、融資という方法もある。
・地域金融機関の動きはまだまだにぶい。

●山本氏
・持続可能な調達は、CSRの問題ではなく、仕入れ・商品の問題であることを認識することが必要。
・MSCやGAP認証を導入したときは、仕入れ担当が始めた。
・これはイオンにとっては当たり前だと思っていたが、どうやら企業全体ではそうでもなく、CSR部門が進めるケースも多いようだ。
・消費者をどれだけ巻き込めるか

●藤田氏
・ミニストップがおにぎりでのMSC認証を最初に取り組み、セブンイレブンも開始した。
・コンビニや社食での取り組みの影響力は大きいと思う。

●荒田氏
・ボランティア(大会8万人、都市3万人)は現在募集中。
・ボランティアも発信の一役を担う。

●未来に向けて一言
●山本氏
・調達において、人権課題のプレッシャーが大きくなっている。
・水産物についても、サステナビリティはもちろんだが、人権課題への対応も大事。

●河口氏
・海と人間の関係は、ギブ・アンド・テイクではなく、テイク・アンド・テイクになっている。
・自分自身、自社だけでなく、ことあるごとに周囲の人に発信してほしい。
・魚のことは自分ごとにしやすい。

●宮原氏
・テクノロジーの活用を促進する。
・資源管理や資源回復のためには、小さな魚は食べないことを、消費者としても意識してほしい。

●池田氏
・アスリートでこのシンポジウムに参加しているのは自分くらい。
・今後、競技団体も環境対応について指摘されるようになるだろう。
・たとえば、バドミントンの羽はガチョウの羽。しかも、競技用の公式については、生きているガチョウを切って羽を確保する。
・クロス・マーケティング的発想も必要だろう。

●荒田氏
・東京2020のBe Better Togetherというコンセプトは、2020はもちろん、その先のサステナビリティの実現につながるもの。

以上

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