発足40年目を迎えた特殊救難隊について、大久保隆洋・羽田特殊救難基地長に聞いた。
――特救隊は発足当時に比べて組織も大きく、国民の認知度も高まった。今後の課題は
先輩たちが海難現場から得た教訓やノウハウを引き継ぎ、さらに高い技術を身に付けながら、新たな特殊海難に対応していくことが必要だ。
――高い技術とは
例えば、空気にヘリウムガスを混ぜて窒素を減らした混合ガスによる「深々度潜水」技術の習得。また、救急救命士が医師の指示下で心肺停止前の重度傷病者に行う点滴処置が可能となったことから、そのための専門知識や技術の習得も急務だ。
――新たな特殊海難とは
特救隊として、船舶火災や危険物積載船などの海難事故には数多くの対応経験があるが、N(核)、B(バイオ)の海難事故への出動実績はない。かといって、いつでも起きる可能性がある。さらに近年は、外国籍あるいは外国人船長の船舶事故が目立ち、漁船についても操船者の高齢化による事故の増加も懸念される。また、何千人も乗った大型旅客船の海難事故への対応も、今から考えておく必要がある。
――これまで特救隊では殉職者がなかった
結果は0(ゼロ)だが、隊員の中には、実際に出動中に瀕死(ひんし)の重傷や大けがをした者がおり、私自身を含め、かなり危険な場面を経験した者も多い。今後も、予断を許さない。
――隊員たちには
基地長就任時にも話したことだが、まず安全管理を徹底させること。次に家族を含めて、心身ともに健康であること。その二つが我々の業務と生活の土台だ。