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先輩研究者のご紹介(久保 篤史さん) [2019年09月09日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2018年度に「小型CO2濃度連続測定装置の開発」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、静岡大学理学部地球科学科所属の、久保 篤史さんの研究について、コメントを頂きました。

<久保さんより>
 私は沿岸海域における物質循環研究を行っています。特に、人間活動の影響を強く受けている海域の炭素・栄養塩類(窒素・リン・ケイ素)循環研究を行っています。観測は東京湾・荒川・浜名湖などで行っており、さまざまな船に乗ったり、橋からのバケツ採水を行ったりしています(写真1)。

図1.jpg
写真1 採水場所

 沿岸海域には流域で生活している多くの人々の生活排水が下水処理場を通して流入してきます。下水処理水も昔(1980年代)と現在で大きく変化しています。昔は下水処理場での汚水処理は有機物を減らすことがメインとなっていました(二次処理)。一方、現在ではバクテリアによりさらに有機物や栄養塩の除去を行うようになってきました(高度処理)。その結果、東京湾では1990年代から2000年頃にかけて濃度のピークを迎えた栄養塩濃度が低下傾向にあります。
 また、流入する有機物の質と量にも変化が見られます。当然のことながら東京湾に入ってくる有機物量は減少しています。さらに、有機物の多くが難分解の有機物となり、東京湾では有機物が分解して生成する二酸化炭素が減少しました(分解しやすい有機物は下水処理場ですでに分解されているため)。その結果、東京湾は強い二酸化炭素の吸収域となっています。これまで、沿岸海域は陸域からの有機物供給・有機物分解に伴い二酸化炭素の放出域であるとされてきました。しかし、流域で下水処理場の整備が進むことにより沿岸海域における炭素循環像が従来考えらえているものから大きく変化することがわかってきました。
 このように、私の研究は過去の先人たちが積み上げた研究結果に現在の現場観測結果を加えることで、沿岸域の都市化に伴いどのように物質循環が変化しているかを定量的に明らかにしようとしています。
<以上>

 東京湾は東京2020オリンピック・パラリンピックのトライアスロン会場となっており、テストイベントではパラトライアスロンの水泳が水質悪化のために中止され、最近話題となっておりました。このような大きなイベントも沿岸海域の物質循環にも影響を与えるかと思いますので、オリンピックの成功のためにも(?)、測定を続けて頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:30 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)