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先輩研究者のご紹介(秋葉 祐里さん) [2019年06月17日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2018年度に「亀裂パターンを司る共通法則の探求〜乾燥土壌から冷却マグマまで〜」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、山梨大学大学院医工農学総合教育部工学専攻環境社会システム学コース所属の、秋葉 祐里さんから最近の研究について、コメントを頂きました。

<秋葉さんより>
 私たちの身の回りでは、数多くの多角形パターンが自然にできあがります。例えば、干上がった田んぼの表面や、マスクメロンの表皮、キリンの斑などは、すべて表面全体が網目状の多角形パターンで覆われています。それではなぜ、全く異なる物質がよく似た多角形パターンを示すのでしょうか?また、こうした多角形パタ−ンの形や大きさは、どのような仕組みで決まるのでしょうか?この科学的な仕組みを解き明かすことを目指して、私は現在の研究を進めています。

図1.jpg


 数ある多角形パターンの中でも、ひときわ荘厳な例は、角柱状岩石の集合体「柱状節理」です。柱状節理とは、地表に噴き出したマグマが冷え固まった際に生じる、角柱状の割れ目のことを指します。日本では、兵庫県豊岡市にある「玄武洞」や、福井県坂井市の「東尋坊」がよく知られており、数kmにわたって岩の柱が並ぶ様子が観察できます。
 ここで興味深いのは、柱状節理とよく似た構造が、身近な材料である「デンプン粉」で簡単に作れることです。作り方は次の通りです。まず、デンプン粉(コーンスターチや片栗粉)と水を、重量比5 : 4でよく混ぜ合わせて、ドロッと粘り気のあるペーストを作ります。次に、このペーストを深さのある容器に入れて、中の水が全て蒸発するまでカラカラに乾かします。しばらくすると、ペーストの表面に細かいひび割れが現れます。このひび割れがペーストの奥底まで伸びると、柱状節理とよく似た角柱状の亀裂構造が出来上がるのです。
 ただし柱状節理の岩石とデンプン試料では、材料とサイズが全く違います。それにも関わらず、柱構造や試料の表面にできる網目模様は、なぜかとてもよく似ているのです。この不思議な事実は、多角形パターンの出来る仕組みに、材料種や時間・空間スケールを超えた共通ルールが潜んでいることを意味しています。

図2.jpg

図3.jpg


 他にも、多角形パターンの身近な例として、マスクメロンの網目模様があります。この網目は次のようにしてできます。まず、メロンの実が成長するときは、外側の固い表皮よりも内側の果肉の方が速く成長します。すると、内側の素早い膨張に対して表皮が耐え切れなくなり、表皮の一部がひび割れます。そして、その割れ目から果汁が染み出ると、果汁が表皮で固まってかさぶたのようなものができます。このかさぶたがメロンの網目模様の正体です。
 農家の方いわく、メロンの網目が細かいほど、甘くて美味しいメロンなのだそうです。しかしその科学的な理由は、今もよくわかっていません。もし、網目模様と甘さとの関係を科学的に証明することができれば、メロンを切ることなく、網目の様子を見るだけで、中身の糖度を測定できるかもしれません。

図4.jpg


 ここでご紹介した例のほかにも、私たちの身の回りには、色々な多角形パターンを見つけることができます。例えば、古い絵画の表面にできるひび割れ模様は、上に述べたペースト亀裂と本質的に同じものです。また、ワニの頭部や亀の甲羅にも、上とよく似た多角形模様が見て取れます。生物・無生物を問わず、様々な物質に現れる多角形パターンの仕組みを探究することは、自然の謎の一端を解き明かすとても興味深い試みだと思っています。
<以上>


 身の回りでもよく見かける五角形や六角形のパターンですが、言われてみると確かに似ており、その着眼点を研究に活かして、独創的な研究を頑張っていただきたいと思います。メロンの網目が細かいと甘いというのであれば、キリンの網目からは何が分かるのか…気になります。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:24 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)