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先輩研究者のご紹介(和田 恵梨さん) [2019年10月21日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 2020年度笹川科学研究助成の募集が締め切られ、本年度も多数のご応募を頂き、誠にありがとうございました。事務局はこれから大忙しです。

 さて本日は、2018年度に「栄養素によるグルカゴンの分泌調節機序の解明と、健康増進のための栄養素摂取比率の検討」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、群馬大学大学院医学系研究科所属の、和田 恵梨さんから最近の研究について、コメントを頂きました。

<和田恵梨さんより>
 グルカゴンはこれまで、同じ膵ホルモンであるインスリンの拮抗ホルモンと考えられてきました。グルカゴンの分泌について、教科書をめくると、糖の摂取後にグルカゴンの血中濃度は下がり、絶食時に増加する(肝糖新生を亢進させるため)と示されており、その他の状況は示されていません。例えば、糖単独ではなく、食事を摂取した時にグルカゴンの分泌がどのようになっているかについては、インスリンほど研究が進んできませんでした。
 このようにグルカゴンの研究が遅れている原因として、グルカゴンが正確に測定できていなかったことが影響しています。グルカゴンはプロセッシングの過程で類似ペプチドが複数産生され、測定の際、交差反応を起こしてしまいます。この問題を解決すべく、サンドイッチELISAの開発が進み、我々の研究室でも、LC-MS/MSを用いた正確な測定系を開発しました。グルカゴンはやっと真の生理的動態を解明できるようになったのです。

スライド1.JPG

 わたしの研究では、各種の栄養素がグルカゴン分泌にどのように影響を及ぼしているのかを解明することを目的としています。グルカゴン分泌のスイッチとなる栄養素の解明および、分泌されたグルカゴンの代謝調節機構を明らかとし、将来的にはインスリンだけではなく、グルカゴンの分泌を考慮した食事摂取方法を提案し、健康長寿に寄与できればと考えております。

スライド2.JPG

 グルカゴンをはじめとし、食事を摂取することで我々の身体の中で何が起こっているのか、分かっていないことがたくさんあります。それにも関わらず、特定食品の一部分の健康効果を取り上げ、ブームのように摂取されていることなどを目の当たりにすると、本邦の栄養学の未成熟さを感じてしまいます。わたしは今後も、食(栄養素)が身体に及ぼす影響を基礎的に解明していくことで、栄養学の発展に貢献し、社会的にも、食環境をより豊かにできるような科学的根拠のある情報を発信していきたいと思っています。

 この度は笹川科学研究助成に採用していただき、大変充実した研究を行うことができました。研究課題の追究を深め、より良い成果を示せるよう、今後とも精進いたします。ありがとうございました。
<以上>

 人間の身体の中で何が起こっているか調査することは、倫理的な問題などもあり非常に難しかと思いますが、美味しく食べられて健康になれるような食事方法を研究して頂きたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:00 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)
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