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先輩研究者のご紹介(田路 翼さん) [2019年06月24日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。本日は、2018年度に「サラシナショウマの多様な性表現の維持機構〜雌雄異熟性と送粉者相に着目して〜」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、信州大学理学部市野研究室所属の、田路 翼さんから最近の研究について、コメントを頂きました。

<田路さんより>
 私の材料としているサラシナショウマには生態的に異なる3つのエコタイプが存在します。それらは、花の香り・生育する標高・遺伝的構造・花の咲く時期・生育する光環境・送粉者相が異なっています(図1)。また、それぞれのタイプは異なる繁殖様式を持つことが最近行った自身の研究でわかりました(Toji and Itino, 投稿中)。タイプTにはおしべとめしべを持つ両性株とめしべしか持たない雌性株が主に見られます。タイプUには両性株と両性花と雄花を同時につける株が主にみられます。タイプVの集団は主に両性株からなっています。また、種子から抽出したDNAを解析したところ、タイプT・Uは主に他殖(他家受粉)で繁殖を行っており、タイプVは主に自殖(自家受粉)で繁殖を行っていることがわかりました。このように集団を構成する株の性表現や、自殖・他殖といった交配様式までもがサラシナショウマのタイプ毎に異なっています(図2)。

図1.jpg
図1.サラシナショウマ3タイプの生態


図2.jpg
図2.サラシナショウマ3タイプの繁殖様式はそれぞれ異なっている


 今回、笹川科学研究助成をいただき「なぜ、タイプ毎に異なる繁殖の仕方を行っているのか?」という疑問に答える研究を行いました。そこで着目したのが、タイプ間で送粉者相が異なっている点でした。受粉を昆虫に依存する花では、昆虫が最も繁殖に影響してくるファクターになります。そこで、まずタイプ毎に訪れる昆虫の送粉能力を測るために一回訪花実験を行いました。この実験はつぼみの段階からサラシナショウマに袋掛けを施しておき、花が咲いてから任意の昆虫に一回だけ訪花させる実験です。昆虫が一回の訪花だけでどれだけの実をつけることができたか(結果率)を評価しました。その結果、タイプTに訪れるハチ類は送粉能力が高く、タイプUに訪れるチョウ類やハエ類は送粉能力が低いことがわかりました。また、訪花昆虫の量的な側面も評価するために訪花観察をタイプ毎に花期を通して測定しました。その結果、タイプTは訪花頻度が花期を通して非常に高い水準にあり、タイプUでは花期の前半と後半に低くなりました。タイプVでは常に訪花頻度が低いという結果でした(図3)。

図3.jpg
図3.各タイプを取り巻く送粉環境


 以上から考察を行うと、タイプTは訪花昆虫の質・量ともに高く、めしべしか持たない雌性株が繁殖に成功しやすい送粉環境にあるといえます。タイプUは訪花昆虫の質が低く、また花期の前半と後半では訪花昆虫の量も低下しました。雌性株はこのような送粉環境が不安定な状況下では受粉に成功しにくいことが考えられます。両性花であっても受粉に成功しにくいため、無駄な胚珠生産を減らした結果として雄性花が出現したと考えられます。タイプVでは常に訪花昆虫が少なく、このような環境下では自殖が進化しやすいということをダーウィン(1876)が提唱しています。多くの研究でもそのような環境下で自殖が進化することを支持しており、タイプVは確実に子孫を残せる自殖という戦略をとっているのだと考えられます。
 実は、この文章はかなり結果を簡単に書いたもので、ほかにもたくさんのデータをとっていて、研究助成のタイトルにもあるように両性花の雌雄異熟性なども考察に関わってきます。今回は簡単な説明のために具体的な数値等は出していませんが、近いうちに論文として発表しようと考えているので、詳細はそちらで公開していきたいと考えています。
<以上>


 研究助成の成果論文を間もなく発表されるそうで、非常に楽しみにしております。本文中に出てきました「エコタイプ」とは、人為的に作出した突然変異体ではなく、野生のままの種という意味です。皆様がご執筆されたブログを、アップロードさせて頂いていると、私も勉強になります。また、皆様のご活躍を聞くことができ、非常にうれしく思います。
 
 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:05 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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