大島会長より、今年度の助成者へのメッセージ
[2017年04月24日(Mon)]
平成29年4月21日に開催されました、笹川科学研究奨励の会において、本会の大島会長より若手研究者へのメッセージがございましたので、下記の通り紹介いたします、
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平成29年度笹川研究助成に採択された 324名の若手研究者の皆さん、おめでとうございます。
今年も昨年と同様に、笹川スポーツ財団と共同の研究奨励の会となりました。笹川スポーツ財団の平成29度48件の採択者の方々も、皆様と同じ席についておられます。
さて、私共日本科学協会の笹川研究助成制度は、昭和63年に創設され、今年の助成を受けられるみなさんは、ちょうど制度開始30年の記念すべき節目の年にあたります。
しかし、研究助成の基本方針は制度創設以来変わっておりません。
それは、若い研究者が、自ら発想する萌芽的な研究で、しかも助成をうけにくい分野の研究を支援するということであります。
過去30年の間、研究環境の変化に対応するために、新しい公募分野の増設を行い、8年前には審査選考の開示システムを導入し、また今年から申請書類の電子化を行いました。
研究資金をえるための申請書の書き方までを皆さんに指導する研究助成は他にはありません。
そして、すでにこの30年で8900名以上の若手研究者に、総額約53億円の支援を行い、現在は、学術研究6部門に実践研究部門を加えて、全部で7部門の若手研究者に助成を行っております。
さて研究とは、知的な探求を行って、人類の知的資産となる価値を生み出す活動です。
本日の式典の最後に、昨年度ノーベル医学・生理学賞を受けられた東京工業大学栄誉教授の大隈良典(よしのり)先生からのビデオメッセージを皆さまにお届けしますが、先生は、飢餓状態にある酵母の液胞の状態を光学顕微鏡で観察する実験を始められ、それが今やヒトに至るまでの真核生物に見られる普遍的な現象であることが判明して、これがノーベル賞へと繋がりました。
ちょうど同じ頃に研究者でありました私は、ヒト細胞内にあるリソソームという細胞小器官に代謝されずに溜まってくる脂質の分析をしていましたが、溜まってくる機構の解析には至りませんでした。
先生のお仕事のすごいところは、酵母の液胞内に膜に囲まれて取り込まれたタンパク質が代謝されるオートファジーの仕組みを、酵母の変異型を使って遺伝子解析し、その機構の普遍性がヒトや高等動物でも認められたことでした。
エサキ・ダイオードでノーベル物理学賞を貰われた江崎玲於奈先生の言葉に「昼のサイエンスと夜のサイエンス」ということばがあります。
サイエンスは昼と夜の2面性を持っていて、一つは客観的・論理的なロゴス的な面で、これはサイエンスの成果であって「昼のサイエンス」と呼ばれ、もう一つは、主観的・個性的・情感的で、創造性豊かなパトス的な「夜のサイエンス」であるというのです。
サイエンスの真髄は、科学者が生んだ成果である「昼のサイエンス」ではなくて、成果に至った創造のプロセスであり、ここにサイエンスの本質があると言っておられます。
大隈先生が終始一貫して、直感を頼りに暗中模索を繰り返すパトス的な夜のサイエンンスを進められ、それがノーベル賞につながったことを本当に素晴らしいと思います。
私も、この夜のサイエンスのパトス的な面に魅せられて、実験生物化学者として40年以上を費やしたのでした。
現代はすぐに成果を求める昼のサイエンスばかりが強調される時代ですが、皆さんは「夜のサイエンス」の重要性と研究の楽しさを忘れないで研究を続けてほしいと思います。
またその一方で、自分が進める研究について、常に自分で結果を厳しく吟味する真摯な姿勢も持ち合わせてほしいと思っております。
そしてさらに、自分自身の研究を進めながら、科学者が自らの研究成果を平易なことばで、社会に語りかけることも重要であると思います。
わかり易いことばで、社会に語りかけ、社会と会話する姿勢を常に持ち続けて欲しいのです。
社会とのつながりの中で活躍して欲しいというのが、私ども日本科学協会からのお願いなのです。
そのお願いを申し上げ、本日のご挨拶とさせていただきます。
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平成29年度笹川研究助成に採択された 324名の若手研究者の皆さん、おめでとうございます。
今年も昨年と同様に、笹川スポーツ財団と共同の研究奨励の会となりました。笹川スポーツ財団の平成29度48件の採択者の方々も、皆様と同じ席についておられます。
さて、私共日本科学協会の笹川研究助成制度は、昭和63年に創設され、今年の助成を受けられるみなさんは、ちょうど制度開始30年の記念すべき節目の年にあたります。
しかし、研究助成の基本方針は制度創設以来変わっておりません。
それは、若い研究者が、自ら発想する萌芽的な研究で、しかも助成をうけにくい分野の研究を支援するということであります。
過去30年の間、研究環境の変化に対応するために、新しい公募分野の増設を行い、8年前には審査選考の開示システムを導入し、また今年から申請書類の電子化を行いました。
研究資金をえるための申請書の書き方までを皆さんに指導する研究助成は他にはありません。
そして、すでにこの30年で8900名以上の若手研究者に、総額約53億円の支援を行い、現在は、学術研究6部門に実践研究部門を加えて、全部で7部門の若手研究者に助成を行っております。
さて研究とは、知的な探求を行って、人類の知的資産となる価値を生み出す活動です。
本日の式典の最後に、昨年度ノーベル医学・生理学賞を受けられた東京工業大学栄誉教授の大隈良典(よしのり)先生からのビデオメッセージを皆さまにお届けしますが、先生は、飢餓状態にある酵母の液胞の状態を光学顕微鏡で観察する実験を始められ、それが今やヒトに至るまでの真核生物に見られる普遍的な現象であることが判明して、これがノーベル賞へと繋がりました。
ちょうど同じ頃に研究者でありました私は、ヒト細胞内にあるリソソームという細胞小器官に代謝されずに溜まってくる脂質の分析をしていましたが、溜まってくる機構の解析には至りませんでした。
先生のお仕事のすごいところは、酵母の液胞内に膜に囲まれて取り込まれたタンパク質が代謝されるオートファジーの仕組みを、酵母の変異型を使って遺伝子解析し、その機構の普遍性がヒトや高等動物でも認められたことでした。
エサキ・ダイオードでノーベル物理学賞を貰われた江崎玲於奈先生の言葉に「昼のサイエンスと夜のサイエンス」ということばがあります。
サイエンスは昼と夜の2面性を持っていて、一つは客観的・論理的なロゴス的な面で、これはサイエンスの成果であって「昼のサイエンス」と呼ばれ、もう一つは、主観的・個性的・情感的で、創造性豊かなパトス的な「夜のサイエンス」であるというのです。
サイエンスの真髄は、科学者が生んだ成果である「昼のサイエンス」ではなくて、成果に至った創造のプロセスであり、ここにサイエンスの本質があると言っておられます。
大隈先生が終始一貫して、直感を頼りに暗中模索を繰り返すパトス的な夜のサイエンンスを進められ、それがノーベル賞につながったことを本当に素晴らしいと思います。
私も、この夜のサイエンスのパトス的な面に魅せられて、実験生物化学者として40年以上を費やしたのでした。
現代はすぐに成果を求める昼のサイエンスばかりが強調される時代ですが、皆さんは「夜のサイエンス」の重要性と研究の楽しさを忘れないで研究を続けてほしいと思います。
またその一方で、自分が進める研究について、常に自分で結果を厳しく吟味する真摯な姿勢も持ち合わせてほしいと思っております。
そしてさらに、自分自身の研究を進めながら、科学者が自らの研究成果を平易なことばで、社会に語りかけることも重要であると思います。
わかり易いことばで、社会に語りかけ、社会と会話する姿勢を常に持ち続けて欲しいのです。
社会とのつながりの中で活躍して欲しいというのが、私ども日本科学協会からのお願いなのです。
そのお願いを申し上げ、本日のご挨拶とさせていただきます。