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地質研究における近年の現状 [2015年11月06日(Fri)]
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 本会の商議員、長瀬和雄先生(長瀬技術士研究所所長)より、先生が専門としている「地質研究」分野について、寄稿いただきましたので、ご紹介いたします。

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 日本では地球科学領域、特にその応用分野で近年地質研究者・技術者の数が減少し、社会の中で層が薄くなり存在感をなくしているように見えてならない。

 私が属している水文地質学の分野は1959年に地質学会から地下水学会として独立し、日本が誇れる唯一の資源として地下水を開発し戦後の経済の発展を支えた。その結果1970年代に入ると地下水の過剰揚水により全国各地で地下水の涸渇、地盤沈下、地下水の塩水化等が起こったが水文地質家が中心になってこれに対応し、また1980年代には工場や事業所の有機塩素系溶剤により全国各地で顕在化した地下水汚染に対応して成果をあげた。それらの日本の取り組み手法や結果は世界的に権威のあるIAH(国際水文地質学会)においても高く評価されていた。

 地下水モデルを作るうえで適切な地下地質モデルは必須である。水文地質学の基礎となる地質学は地向斜という見方からプレ−トテクトニクスでいう付加帯に変わり特に日本では多少の混乱は生じているが地質学の原理は変わらないはずである。さらに、日本では高等学校における地学教育は昔に比べ今かなり後退しているように見えるし、最近の国の科学技術政策もあって現在全国を見回しても大学に水文地質学の講座がなくなってしまった。

 私は現在地方自治体の地下水審議会、あるいは地域の高速道路の建設に伴う地下水に対する影響の委員会、あるいは地下水学会で市民コミュニケ−ション委員会に属して現役の若い技術者、研究者と一緒になって地下水知識の啓発に努めている。自分の年齢を感じかなり前から若い人に代わりたいと思いながらも後を託す水文地質家がいないのを感じている。

 福島第一原発周辺の地下水問題への対応は非常に難しい問題で土木の技術者が中心となって献身的に取り組んでいるが、もしあの頃の社会を引っ張っていた水文地質の先輩や仲間と一緒に若返ってこの問題に取り組むことができていたら現在とは違った結果を出しているに違いないと思えてならない。地下水モデルを作るにあたり付加帯という特異な地域に属する日本列島の地質にどんなに著名でも外国の技術者の手を借りるわけにもいかない。 
             
 長瀬 和雄 
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:07 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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