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クスノキの乾燥耐性に寄与する木部細胞/山田佳乃 [2019年10月06日(Sun)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された山田佳乃さんからの投稿が届きました!

クスノキの乾燥耐性に寄与する木部細胞
山田佳乃


受賞ポスターはこちら!
2019poster_Yamada.jpg


 この度は第50回日本緑化工学会大会において、ポスター賞(研究交流部門)をいただき、誠にありがとうございます。当日は多くの方々にコメントをいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。今後とも精進していきたいと思っております。ここでは、本研究について紹介したいと思います。

 木部樹液は、蒸散によって通導要素内の水柱に発生する張力(テンション)によって上方へ引き上げられていきます(Tyree 2003,凝集力―張力説)。しかしながら、木部樹液は絶えず流れているのではなく、蒸散が活発な時間帯には木部樹液にかかるテンションが強まり、一部の通導要素では水流が途切れて通導要素が空になることが知られています(エンボリズム)。長期間生育する樹木にとって、排水した道管で通水を回復させることは不可欠であると考えられますが、再注水を経て通水が回復する仕組みはよくわかっていませんでした。

 エンボリズムの発生が避けられない条件下でも樹勢を損なわず、生育する樹種には、エンボリズムを回復するメカニズムがあると仮説を立てました。そこで本研究では、乾燥耐性の強いクスノキ Cinnamomum camphoraを材料とし、機能解剖学の手法によって排水した道管への再注水のプロセスを明らかにすることを目的としました。
 含水条件を揃えたクスノキの切り枝を室内に放置し、試験的に排水させました(乾燥処理)。木部内のテンションの発生を避けるため切り枝から葉を除いたのち、色素液吸入法を用いて、切り枝における水分吸入の程度を把握するとともに、通水機能のある細胞を可視化しました。
 色素液吸入実験の結果、1-9時間の乾燥処理を施した供試枝では木部の広い範囲で色素液による染色が確認されました。染色は、軸方向柔細胞および放射柔細胞の細胞壁と内容物に加えて、染色した柔細胞類に隣接する道管の壁孔と細胞壁で観察されました。19時間以上の乾燥処理を施し、含水量が約50%に低下した枝では、色素液はほとんど吸入されず、柔細胞類の原形質分離が観察されました。これらの結果から、道管が排水した後の通水の回復の過程には、軸方向柔細胞および放射柔細胞を介した道管内腔への水の移動があるものと推測されました。また、クスノキの二次木部では周囲柔組織(翼状〜連合翼状柔組織)を形成しており、このような道管の周りを取り囲む多数の軸方向柔細胞が、クスノキの乾燥耐性に寄与している可能性が示唆されました

 都市の街路樹は、その樹種の生理特性に合わない環境に植栽されたことで枝枯れを起こしたり、ひどい場合は枯死することもあります。もし、木部の細胞構成からその樹種の乾燥耐性が推測できれば、植栽環境(土壌、風環境、水やりの頻度)に合った樹種を選ぶことができ、このような問題を防ぐことができます。人口減少によりどの自治体も財政が厳しくなることを考えると、最低限のメンテナンスで樹勢を保つ街路樹を植栽することはますます重要性を増していくでしょう。もちろん、樹木の水分通導の恒常性に関するメカニズムには高木か低木か、常緑か落葉か、広葉樹か針葉樹かなど、木部の細胞構成以外にも様々な要素が関わっていると考えられますが、本研究の結果が実社会に役立てられたらいいなあと思っております。

以上