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オフィス緑化でストレス軽減/矢動丸琴子 [2016年12月30日(Fri)]
2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された矢動丸琴子さんからの投稿が届きました!

オフィス緑化でストレス軽減
千葉大学大学院園芸学研究科 博士前期課程1年 矢動丸琴子


受賞ポスターはこちら!
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この度は「オフィス緑化が勤務者に与える心理的効果に関する研究」というタイトルでポスター賞(論文部門)を頂き、ありがとうございました。緑化工学会では、「緑・健康」の分野の発表は、まだまだ少数派ではありますが、大会当日は多くの方に研究内容について興味を持って頂き、多くのコメントを頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。今回は、簡単ではありますが、私の研究について紹介させて頂きます。

本研究の背景には、昨年、従業員数50名以上の事業所を対象に「ストレスチェック制度が義務化」されたことがあります1)
今後、勤務者のストレス対策、特に職場におけるストレス対策が重要になると考えられます。厚生労働省の調査によると、2012年の時点で、約6割の労働者がストレスを抱えていると報告されています2)。近年、労働災害なども話題になっていましたが、ストレスを上手く解消できない労働者は今後ますます増えていくのではないかと私たちは考えています。

そこで、そのストレス対策の1つとして、オフィス緑化が効果的なのではないかと考えたことが、この研究のきっかけです。
植物(緑)の癒し効果、ストレス緩和効果、自覚疲労緩和効果・・・既往の研究3,4)からわかっている、これらの効果を活用しないのはもったいないですよね。
そんな植物の素晴らしい効果をオフィスに活用してもらいたい!というに期待を込め、今回実験を行いました。

私の研究の大きな特徴は、実際のオフィスで実験を実施したことです。実際に毎日業務を行っている勤務者の方に協力をして頂くことは、容易なことではありませんでした。しかし、本研究は「心理的効果」に着目をしていることから、既往研究のように模擬的なオフィスで行っては本当の心理状態は測れないと考え、実験に協力していただける企業を探しました。実際の現場での実験は、様々な制約が多く、苦労も多かったですが、連名者の協力もあり、実現することが出来ました。

実験期間は4ヶ月で、植物を設置して1ヶ月→植物を撤去して1ヶ月→再度植物を設置して1ヶ月→再度植物を撤去というような手順で行い、植物の設置や撤去の前後でVASとPOMSという指標を用いて勤務者の方の心理状態を測定しました。また、聞き取り調査や現地調査のために、対象の5社のオフィスに伺いました。研究の一環とは言え、実際のオフィスで勤務者の意見を沢山聞けたことは、貴重な体験になりました。

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さて、気になる結果についてですが、オフィスの自席の上に植物を設置すると、勤務者の仕事意欲の向上、疲労緩和などに効果があることが明らかになりました。
また、今回は異なる業種5社を対象として実験を行っておりましたので、業種による差も調べました。その結果、業種により心理的効果が異なることが明らかになりました(詳細は本文をご覧ください)。現在も引き続き研究を進めており、結果がまとまり次第、また緑化工学会で報告させていただきたいと思っております。

簡単に、といった割に長くなってしまいましたが、以上が私の研究の概要です。
読んで頂いてお分かりの通り、本研究のような「緑・健康」分野の研究は、被験者の方々の負担が大きい研究です。よって、多くの方々の協力が無ければ実施できませんでした。
最後になりますが、お仕事でお忙しい中、研究に協力してくださった5社の被験者様、研究のサポートをしていただいた国土緑化(株)様に心より御礼申し上げます。
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日本のイタドリにみられる地理的変異の解明 ―在来緑化植物の地域性種苗の定着を目指して/木村元則 [2016年12月11日(Sun)]
2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された木村元則さんからの投稿が届きました!

日本のイタドリにみられる地理的変異の解明
 ― 在来緑化植物の地域性種苗の定着を目指して

京都大学大学院 農学研究科 森林科学専攻 環境デザイン学研究室 博士課程1回生 木村元則
共同研究者:今西純一、今西亜友美、井鷺裕司、陶山佳久、柴田昌三


受賞ポスターはこちら!
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第47回日本緑化工学会大会・研究交流部門においてポスター賞を頂きました。私の研究は多くの方々のご協力の上で成り立っており、この場をお借りして御礼申し上げます。
このたびは私の研究について簡単にご紹介致します。

はじめに
生物多様性への配慮が叫ばれるようになって久しい現在、緑化植物についても遺伝的な系統まで考慮した地域性種苗の定着が急務である。本研究では、法面緑化に利用される緑化植物の中でも広域分布種であり、地域性についての早急な対応が迫られている植物としてイタドリを対象に国内自生個体の形質と遺伝子にみられる地理的な変異を明らかにする。

材料と方法
図1の採取地から採取したイタドリを対象に生態ニッチモデリング、ロジスティック回帰を用いた形質のマッピングを行った。また、上記のイタドリに外群としてカライタドリ(中国産イタドリ)を多く含む十和田八幡平国立公園内の法面に生育するイタドリを加え次世代シーケンサーを利用したMIG-seqによってSNP探索を行い、遺伝子型を決定し、STRUCTURE解析を行った。

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結果と考察
1 生態ニッチモデリング
生態ニッチモデリングの結果、イタドリは北海道と東北地方の一部を除くすべての地域に分布しているものと推定され、様々な環境因子が分布を規定していることが明らかになった(図2)。

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2 形質マッピング
ロジスティック回帰の結果、毛の多さの分布確率をモデリングできた。毛の多さは年降水量と年平均日射量と有意な関係性を示しており、マッピングの結果から北陸以北の日本海側を中心に家の多いイタドリが分布しているものと推定された(図3)。

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3 STRUCTURE解析
外群としてカライタドリを加えて国内イタドリのSTRUCTURE解析を行ったところ、カライタドリは日本に自生するイタドリとは別クラスターに由来することが明らかとなり、また日本に自生するイタドリも3つのクラスターに由来することがわかった(図4)。この3つのクラスターは概ね西日本から中部のイタドリと関東のイタドリはそれぞれ1つのクラスターに由来し、北陸から東北のイタドリには他地域のクラスターを中心に独自の1つのクラスターを合わせた3つのクラスターに由来することが明らかになった。

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以上より、日本に自生するイタドリには西日本〜中部、関東、北陸〜東北という大きく3つ地域性が確認できる。また、北陸〜東北の集団には形質マッピングの結果より、毛の多いイタドリが特異的に生育すると考えられる。

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今後は、形質、遺伝双方についてより詳細な地域性の検討を進めていきたいと考えています。



斜面地に対応した新たなシカ侵入防止柵の開発/東口 涼 [2016年12月05日(Mon)]

2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された東口涼さんからの投稿が届きました!

斜面地に対応した新たなシカ侵入防止柵の開発
京都大学大学院農学研究科 森林科学専攻 環境デザイン学研究室 博士後期課程3年 東口 涼


この度、『京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(2) 柵設置直後の初期段階における実生由来ササの再生経過』と題した発表で優秀ポスター賞を頂きました。本研究は、同大会において発表した『京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(1) 施工後1年間の効果確認』1)と一連の研究で、京都大学・株式会社ケイエフ・SPTEC YAMADAが産学連携で取り組んでいます。

京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(2)
柵設置直後の初期段階における実生由来ササの再生経過



研究の背景と目的
近年、野生鳥獣による農林業等への被害が全国的に注目を集めています。これらの防除ではポールとネットを組み合わせた柵を使用することが一般的で、平坦な農地等では一定の効果が見られます。しかしながら森林内や法面緑化工の施工現場などの場合は、急傾斜地が多く、落石・倒木・積雪によるグライド圧などの影響を受けやすいため、防除効果が失われやすいことが課題でした。加えて、こうした現場はアクセスが悪く、保守点検が行き届きにくいことも難点です。そこで、本研究では上記の課題を考慮した新しいシカ侵入防止柵を開発・設置し、植生回復のモニタリングを行うことで防除効果を確認しました。

方法
実験には新規に開発したシカ侵入防止柵 (商品名:シカ矢来2)、写真1、図1)を用いました。京都の古い木造建築に見られる「犬矢来」から着想を得たもので、従来の侵入防止柵が構造物の高さによってシカの跳越を防ぐ方法であったのに対し、幅も持たせることで、転倒などのリスクを軽減しています。

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効果のモニタリングに際しては、京都市北部の山間部に自生するチュウゴクザサ(Sasa veitchii var. hirsuta)に着目しました。京都市では2004年から2007年にかけて、広域にわたる一斉開花・枯死があり3)、本来はその後に発生する実生から群落が再生していくのですが、シカによる採食圧の影響で4)、2016年現在に至るまで自然下での再生が進んでいません。本研究では2004年に開花した地点5)に柵を設置し、柵の内外でササの個体数・稈数・稈高・葉の総数・葉のサイズを定期的に測定し、防除効果の指標としています。また同時に行った上述の実験(1)ではササ以外の実生についてもモニタリングをおこなっています。

結果
施工からわずか1年ほどの初期段階における経過報告ではありますが、柵はシカの侵入を防いでおり、柵内では稈・葉共に回復傾向が見られました。また落石や落枝にも耐え、積雪による大きな変状も起きていません。一方、柵外では継続してシカによる採食圧があり、調査開始時と変わらない矮性化したササ実生(写真2)が見られるのみでした。

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おわりに
会場では多くの皆様から、示唆に富むご意見並びに新たなシカ防除技術開発への期待の言葉を賜りましたことを、この場を借りて御礼申し上げます。今回は設置後の初期段階における報告でしたが、今後も継続したモニタリングを行い、防除効果の報告をしていきたいと考えています。
 また柵の構造等につきましても、改良の余地があると思われます。山林や法面のみならず、景観に配慮する必要のある社寺境内・庭園での防除など、新たな活用の可能性もあります。ご関心の方はお声かけいただきましたら幸甚です。

---------- 実験(1) の発表ポスター

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ステビア土壌改良資材の塩類集積緩和効果/杉浦総一郎 [2016年11月22日(Tue)]
2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された杉浦総一郎さんからの投稿が届きました!

ステビア土壌改良資材の塩類集積緩和効果
東京農業大学大学院 農学研究科 造園学専攻
博士前期課程2年  杉浦 総一郎


第47回日本緑化工学会大会にて、ポスター賞を頂きました。この場をお借りして、発表内容や現在の研究について紹介させていただきたいと思います。

研究目的と方法
世界では、塩類集積により1年あたり100万haにおよぶ土地の生産性が低下している1)。ステビア(Stevia rebaudiana)は葉身部に甘味成分を含む、パラグアイ原産のキク科多年生植物である(写真1)。本実験は、低コストかつ環境に優しい方法として、ステビア土壌改良資材(写真2,3)の塩類集積緩和効果を明らかにすることを目的とした。
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ステビア土壌改良資材とNaCl溶液の施用量を変えた実験区(図1)を設け、供試植物(コウライシバ Zoysia matrella Merr.)の生長量や体内塩分濃度、土壌水塩分濃度を測定した。
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結果
1.ステビア土壌改良資材の施用量が多いほど、地上部、地下部共に成長量が増加した(図2,3)。
2.ステビア土壌改良資材を施用した実験区では、コウライシバの葉身部に含まれる塩分濃度が低下する傾向であった(図4)。
3.無植栽区(コウライシバの塩分吸収の影響を受けていない)では、ステビア土壌改良資材の施用量が多いほど、土壌水の塩分濃度が低下した(図5)。

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以上から、ステビア土壌改良資材の施用により土壌塩分濃度が低下し、コウライシバへの塩ストレスが緩和されたと考えられた。土壌塩分濃度低下の理由として、ステビア土壌改良資材に多く含まれるCaやKなどの陽イオンが土壌中のNaと置き換わったと考えられた(イオン交換反応)2)

現在の研究
津波被災地や乾燥地・半乾燥地で問題となっている塩類集積を解決すべく、低コストかつ環境への負担が少ない方法として、植物や植物由来の材料を用いた塩類集積緩和に関する研究をしています。現在は、耐塩性が高く多くの塩分を吸収し蓄積することができるコウライシバを利用した除塩効果に関する研究をしています3)
 引き続き緑化工学会で研究発表をしていきたいと考えております。今後とも皆様のご指導ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
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中国の半乾燥地における緑化植物二種の関係/松本哲也 [2015年11月04日(Wed)]
2015年・第46回藤沢大会でポスター賞を受賞された松本哲也さんからの投稿が届きました!

中国の半乾燥地における緑化植物二種の関係
岡山大学 環境生命科学研究科 森林生態学分野
博士前期課程1年 松本哲也


去る9月27日に「中国半乾燥地の固定砂丘上におけるArtemisia ordosica Krasch.群落の構造にJuniperus sabina L.と土壌表層の環境条件が与える影響」と題した発表でポスター賞を頂きました。このたびこのような場を頂戴致しましたので、私の研究について簡単ながらご紹介申し上げます。

  中国の半乾燥地における緑化植物二種の関係


私の研究対象地である毛烏素沙地は、中華人民共和国北部のオルドス高原中央部に広がる半乾燥地です。
毛烏素沙地の景観.gif

毛烏素沙地の優占種であるArtemisia ordosicaは、キク科ヨモギ属の落葉性半灌木で、現地の緑化植物として広く利用されています。
Artemisia ordosica Juniperus sabina
   Artemisia ordosica            Juniperus sabina

本種の成長や群落構造は、土壌養分量3) や土壌表層の水分量4) 、降水量 (松本ら 未発表) などの環境条件に影響を受けることが知られていますが、しばしば側所的に自生するJuniperus sabinaとの関係についてはよく分かっていませんでした。

J. sabinaはヒノキ科ビャクシン属の匍匐性常緑針葉樹で、A. ordosicaと並んで毛烏素沙地に広く分布し、緑化植物として利用されています。J. sabinaに関しては、飛砂の防止効果6) や、地表面温度の低下効果7) 、被覆下の植物をグレージングから保護する効果5)、被覆下の土壌の発達促進効果1) 、湿潤な土壌深層から乾燥した土壌表層への不定根を介した水の再分配による土壌表層の乾燥の緩和効果8) など、隣接する植物に正の影響を与えうるさまざまな効果が報告されています。したがって、近傍のA. ordosica群落にも何らかの正の影響を与えるのではないかという考えのもと研究を行いました。その結果、14m×14mという比較的狭い空間スケールでは、両者は競争関係にあり、予想に反してA. ordosicaは負の影響を受けていることを示唆する結果が得られました。以上が今回、日本緑化工学会誌に掲載頂いた論文の内容の一部になります。

その一方で、半固定砂丘から固定砂丘にかけてA. ordosica純群落とA. ordosica J. sabina群落上に49箇所調査区を設けて研究を行ったところ、J. sabinaが同所的に分布している場所ではA. ordosicaの小型の株の密度が高く、大型の株の個体サイズが小さい傾向が確認出来ました(松本ら 未発表)。このことは、より広い空間スケールでは、J. sabinaA. ordosicaの大型の株とは競合するものの、小型の株に対しては定着を促す効果を持つ可能性を示唆していると考えられます。この研究成果につきましては、昨年度の日本森林学会大会において「中国の半乾燥地に生育するArtemisia ordosica Krasch.の群落構造に環境要因が与える影響」と題して発表させて頂き、現在論文化を進めております。
以上の様な知見は、半乾燥地における植物種間の生態的な関係を明らかにし、乾燥地緑化における植栽後の管理といった実際的な面から有益な情報であると考えられます。今後も得られたデータから研究を発展させて頂きたいと考えております。

最後になりますが、発表をお聞き下さった皆様、審査委員の皆様、並びに研究にご協力下さった皆様に、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

岡山大学 環境生命科学研究科 森林生態学分野
博士前期課程1年 松本哲也
a.matsumotoi(あっと)s.okayama-u.ac.jp   ※(あっと)は@です

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