CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 研究と活動の報告 | Main
在来緑化植物ヨモギの外国産緑化個体と在来個体間の形態及び遺伝的組成の違い/我妻聡 [2018年11月11日(Sun)]
2018年・第49回/設立30周年記念大会(東京都市大学)でポスター賞を受賞された我妻 聡さんからの投稿が届きました!
ポスター賞_我妻さん.jpg

在来緑化植物ヨモギの外国産緑化個体と在来個体間の形態及び遺伝的組成の違い
京都大学大学院農学研究科 我妻 聡


受賞ポスターはこちら!
Wagatsuma0_Poster_s.jpg


 この度は「在来緑化植物ヨモギの外国産緑化個体と在来個体間の形態及び遺伝的組成の違い」という題目で研究交流部門のポスター賞をいただき、誠にありがとうございました。大会当日は多くの方に研究内容に関して興味を持っていただき、多くのコメントを頂いたり、在来種を用いた緑化の現状を教えていただいたりしました。この場をお借りして御礼申し上げます。今回は簡単ではございますが、私の研究に関してご紹介いたします。

はじめに
 外来植物による在来生態系への悪影響を懸念し、法面緑化には在来植物の利用が推奨されています。しかし、種が同じであれば種子の採取地は考慮されないことが一般的なため、緑化に使用されている在来種の種子の大半が中国等の国外から輸入されています。また、日本国内でしばしば法面緑化に用いられるヨモギでは、日本で採取した種子を中国で育成して採種した「日本系統由来中国産種子」も緑化用に利用されています。しかし中国産及び日本系統由来中国産のヨモギと日本国内のヨモギの違いは未解明でした。そこで私の研究では、国内の法面緑化に用いられるヨモギを対象として、日本産および緑化用に輸入された中国産の種子を播種・育成し、それらの形態及び遺伝的組成を比較しました。

材料と方法
 中国産4集団及び日本系統由来中国産6集団、日本産13集団から採取した種子をもとに各集団につき10個体育成し、痩果・葉・頭花のサイズ等の形態を測定しました。また、形態測定に用いた育成個体及び日本国内32地点の自生個体より採取したヨモギからDNAを抽出し、MIG-seq法により一塩基多型(SNPs)を検出し、主座標分析及びSTRUCTURE解析を行いました。

結果と考察
 今回の実験から中国産は形態的、遺伝的に日本産および日本系統由来中国産とは明瞭に異なることが示されました。特に明瞭な違いがあった形態は痩果のサイズやシワの有無でした(図1)。日本由来中国産と日本産に関しては明瞭な差は見られませんでした。
Wagatsuma01_Fig1.jpg

 2664SNPsにもとづいた主座標分析の結果、中国産が日本産および日本系統由来中国産と遺伝的に大きく異なることが示されました。
Wagatsuma02_Fig2.jpg

 日本国内のサンプルのみ用いてSTRUCTURE解析を行ったところ、最適クラスター数は4となりました。各クラスターの地理的な分布から、北海道、関東以北、関西以西、九州の間で遺伝的な分化が存在することが明らかとなりました(図3)。
Wagatsuma03_Fig3.jpg

遺伝的に異なる個体を緑化に用いることによって、在来個体群に遺伝的撹乱をもたらす可能性があります。したがって、遺伝的に大きく異なる中国産種子の利用だけでなく、日本産でも地理的に大きく離れた地域由来の種子の利用は好ましくないと考えられます。

おわりに
 研究をおこなうにあたり多くの方々にご協力いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
公園の利用で地域住民の交流が活性化!健康増進にもつながる!/大塚芳嵩 [2018年11月09日(Fri)]
2018年・第49回/設立30周年記念大会(東京都市大学)でポスター賞を受賞された大塚芳嵩さんからの投稿が届きました!

ポスター賞_大塚さん.jpg

都市公園における利用行動の多様性と地域における交流状況との関係性
産総研人工知能研究センター 大塚芳嵩



受賞ポスターはこちら!
Otsuka01_Poster.jpg


 この度、第49回日本緑化工学会大会において優秀ポスター賞(論文部門)をいただきました。大変栄えある賞をいただきましたこと、誠にありがとうございます。また、本研究に関わられた共同研究者、関係者各位に対しこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
 本研究の目的は、都市緑地の利用促進により地域住民のソーシャル・キャピタルの向上が可能であるか検討することです。

 ソーシャル・キャピタルとは、地域住民間の信頼関係や日頃の交流頻度、地域活動への参加などの“地域の結束力”あるいは“交流状況”を指す用語で1)、公衆衛生学や社会経済学においては地域住民の健康状態と密接に関係することが示されています2)
 このため、現在は地域のヘルス・プロモーションや地域活性化のため、ソーシャル・キャピタルの向上させる取り組みや研究が行われています。しかし、多くの研究者がソーシャル・キャピタルを向上させる方法を模索しているにもかかわらず、実効性やあらゆる地域に対して普及可能性がある取り組みは未だ少ないのが現状です。
 また、公衆衛生学においては、“0次予防”による健康増進が進められようとしています。この0次予防は、従来までの生活習慣の改善、病気の早期発見や再発防止などの個人レベルに対するアプローチから、住むだけで健康になってしまう都市環境や社会制度の整った包括的なまちづくりへ予防医療の枠組みを拡大した点に特徴があります。現代の公衆衛生学においては、都市計画的なアプローチによる健康増進や交流促進に関する研究が、高い期待を寄せられるテーマとなっています。

 そこで、我々が着目したのが公園を中心とした都市の緑地です。公園は、どの地域にも必ずあり、いつでも誰でも無料で利用できる公共施設です。一方で、公園は老朽化などの維持管理上の問題から今後再開発が必要とされ、この際に健康増進や交流促進など多面的な効果の発揮することが求められています3)。WHOのレビュー資料によると、公園や森林などの緑地は周辺住民への健康増進効果や健康格差の縮小効果があること4)、緑地の利用頻度が高まるほど住民の健康状態が向上することや孤独感が緩和することが示されています5,6)。また、公園の利用形態と交流状況を検証することで、交流促進に有効な利用形態を特定することができ、その利用形態を誘発しやすくするデザインや公園の環境整備へ示唆を与えることができると考えました。

 本研究の結果としては、地域住民の公園の利用形態は5つに区分することができ、これらは「低利用型→散歩型→休憩型→活動型→多様型」と段階的に活動的な利用形態へと行動変容していくことが示されました。また、公園における行動変容が進むほど、ソーシャル・キャピタルが高まることが示されました。つまり、公園の利用促進や行動変容により、地域住民の交流状況が改善する可能性が示されました。詳細は、上記のポスターと論文を参照してください。
 これらの結果から、我々のグループでは、下図のようなフローにより地域住民の健康増進と交流促進を進めていきたいと考えています(図-1)。

@多様な利用形態に対応できるように地域の公園を再整備する
A地域住民の公園の利用頻度が向上し、段階的に行動変容する
B利用頻度の向上や行動変容に伴い、交流状況も段階的に発展する
C交流促進により、地域住民の健康状態も段階的に改善していく
D健康状態の改善に伴い、さらなる行動変容や交流促進につながる
E健康的なライフスタイルが定着しやすくなる

Otsuka02_Fig_1.jpg
図-1 公園の利用による健康増進の想定フロー

 今後は、地域の環境と社会経済状態、ソーシャル・キャピタル、住民の心理・生理・行動と健康状態を包括した統合モデルの構築とシミュレーション解析を人工知能により行い、より健康増進や交流促進に効果的で普及可能性の高い公園の利用形態を探っていきたいと思います!
 また、地域レベルでの社会環境と健康状態の関係性を解析するためには、社会疫学との連携、研究成果の社会実装には地域看護学や公衆衛生看護学との現場レベルでの取り組み推進が必要となります。課題は山積していますが、これからも緑の普及とより良い社会を目指すため、研究を続けていきたいと思います!

以上

続きを読む・・・
オフィス緑化でストレス軽減/矢動丸琴子 [2016年12月30日(Fri)]
2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された矢動丸琴子さんからの投稿が届きました!

オフィス緑化でストレス軽減
千葉大学大学院園芸学研究科 博士前期課程1年 矢動丸琴子


受賞ポスターはこちら!
poster_yadomaru.jpg


この度は「オフィス緑化が勤務者に与える心理的効果に関する研究」というタイトルでポスター賞(論文部門)を頂き、ありがとうございました。緑化工学会では、「緑・健康」の分野の発表は、まだまだ少数派ではありますが、大会当日は多くの方に研究内容について興味を持って頂き、多くのコメントを頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。今回は、簡単ではありますが、私の研究について紹介させて頂きます。

本研究の背景には、昨年、従業員数50名以上の事業所を対象に「ストレスチェック制度が義務化」されたことがあります1)
今後、勤務者のストレス対策、特に職場におけるストレス対策が重要になると考えられます。厚生労働省の調査によると、2012年の時点で、約6割の労働者がストレスを抱えていると報告されています2)。近年、労働災害なども話題になっていましたが、ストレスを上手く解消できない労働者は今後ますます増えていくのではないかと私たちは考えています。

そこで、そのストレス対策の1つとして、オフィス緑化が効果的なのではないかと考えたことが、この研究のきっかけです。
植物(緑)の癒し効果、ストレス緩和効果、自覚疲労緩和効果・・・既往の研究3,4)からわかっている、これらの効果を活用しないのはもったいないですよね。
そんな植物の素晴らしい効果をオフィスに活用してもらいたい!というに期待を込め、今回実験を行いました。

私の研究の大きな特徴は、実際のオフィスで実験を実施したことです。実際に毎日業務を行っている勤務者の方に協力をして頂くことは、容易なことではありませんでした。しかし、本研究は「心理的効果」に着目をしていることから、既往研究のように模擬的なオフィスで行っては本当の心理状態は測れないと考え、実験に協力していただける企業を探しました。実際の現場での実験は、様々な制約が多く、苦労も多かったですが、連名者の協力もあり、実現することが出来ました。

実験期間は4ヶ月で、植物を設置して1ヶ月→植物を撤去して1ヶ月→再度植物を設置して1ヶ月→再度植物を撤去というような手順で行い、植物の設置や撤去の前後でVASとPOMSという指標を用いて勤務者の方の心理状態を測定しました。また、聞き取り調査や現地調査のために、対象の5社のオフィスに伺いました。研究の一環とは言え、実際のオフィスで勤務者の意見を沢山聞けたことは、貴重な体験になりました。

yadomaru_01.jpg
yadomaru_02.jpg

 
さて、気になる結果についてですが、オフィスの自席の上に植物を設置すると、勤務者の仕事意欲の向上、疲労緩和などに効果があることが明らかになりました。
また、今回は異なる業種5社を対象として実験を行っておりましたので、業種による差も調べました。その結果、業種により心理的効果が異なることが明らかになりました(詳細は本文をご覧ください)。現在も引き続き研究を進めており、結果がまとまり次第、また緑化工学会で報告させていただきたいと思っております。

簡単に、といった割に長くなってしまいましたが、以上が私の研究の概要です。
読んで頂いてお分かりの通り、本研究のような「緑・健康」分野の研究は、被験者の方々の負担が大きい研究です。よって、多くの方々の協力が無ければ実施できませんでした。
最後になりますが、お仕事でお忙しい中、研究に協力してくださった5社の被験者様、研究のサポートをしていただいた国土緑化(株)様に心より御礼申し上げます。
続きを読む・・・
日本のイタドリにみられる地理的変異の解明 ―在来緑化植物の地域性種苗の定着を目指して/木村元則 [2016年12月11日(Sun)]
2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された木村元則さんからの投稿が届きました!

日本のイタドリにみられる地理的変異の解明
 ― 在来緑化植物の地域性種苗の定着を目指して

京都大学大学院 農学研究科 森林科学専攻 環境デザイン学研究室 博士課程1回生 木村元則
共同研究者:今西純一、今西亜友美、井鷺裕司、陶山佳久、柴田昌三


受賞ポスターはこちら!
Poster_Kimura2016.jpg


第47回日本緑化工学会大会・研究交流部門においてポスター賞を頂きました。私の研究は多くの方々のご協力の上で成り立っており、この場をお借りして御礼申し上げます。
このたびは私の研究について簡単にご紹介致します。

はじめに
生物多様性への配慮が叫ばれるようになって久しい現在、緑化植物についても遺伝的な系統まで考慮した地域性種苗の定着が急務である。本研究では、法面緑化に利用される緑化植物の中でも広域分布種であり、地域性についての早急な対応が迫られている植物としてイタドリを対象に国内自生個体の形質と遺伝子にみられる地理的な変異を明らかにする。

材料と方法
図1の採取地から採取したイタドリを対象に生態ニッチモデリング、ロジスティック回帰を用いた形質のマッピングを行った。また、上記のイタドリに外群としてカライタドリ(中国産イタドリ)を多く含む十和田八幡平国立公園内の法面に生育するイタドリを加え次世代シーケンサーを利用したMIG-seqによってSNP探索を行い、遺伝子型を決定し、STRUCTURE解析を行った。

kimura_01.jpg

結果と考察
1 生態ニッチモデリング
生態ニッチモデリングの結果、イタドリは北海道と東北地方の一部を除くすべての地域に分布しているものと推定され、様々な環境因子が分布を規定していることが明らかになった(図2)。

kimura_02.jpg

2 形質マッピング
ロジスティック回帰の結果、毛の多さの分布確率をモデリングできた。毛の多さは年降水量と年平均日射量と有意な関係性を示しており、マッピングの結果から北陸以北の日本海側を中心に家の多いイタドリが分布しているものと推定された(図3)。

kimura_03.jpg

3 STRUCTURE解析
外群としてカライタドリを加えて国内イタドリのSTRUCTURE解析を行ったところ、カライタドリは日本に自生するイタドリとは別クラスターに由来することが明らかとなり、また日本に自生するイタドリも3つのクラスターに由来することがわかった(図4)。この3つのクラスターは概ね西日本から中部のイタドリと関東のイタドリはそれぞれ1つのクラスターに由来し、北陸から東北のイタドリには他地域のクラスターを中心に独自の1つのクラスターを合わせた3つのクラスターに由来することが明らかになった。

kimura_04.jpg

以上より、日本に自生するイタドリには西日本〜中部、関東、北陸〜東北という大きく3つ地域性が確認できる。また、北陸〜東北の集団には形質マッピングの結果より、毛の多いイタドリが特異的に生育すると考えられる。

---------
今後は、形質、遺伝双方についてより詳細な地域性の検討を進めていきたいと考えています。



斜面地に対応した新たなシカ侵入防止柵の開発/東口 涼 [2016年12月05日(Mon)]

2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された東口涼さんからの投稿が届きました!

斜面地に対応した新たなシカ侵入防止柵の開発
京都大学大学院農学研究科 森林科学専攻 環境デザイン学研究室 博士後期課程3年 東口 涼


この度、『京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(2) 柵設置直後の初期段階における実生由来ササの再生経過』と題した発表で優秀ポスター賞を頂きました。本研究は、同大会において発表した『京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(1) 施工後1年間の効果確認』1)と一連の研究で、京都大学・株式会社ケイエフ・SPTEC YAMADAが産学連携で取り組んでいます。

京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(2)
柵設置直後の初期段階における実生由来ササの再生経過



研究の背景と目的
近年、野生鳥獣による農林業等への被害が全国的に注目を集めています。これらの防除ではポールとネットを組み合わせた柵を使用することが一般的で、平坦な農地等では一定の効果が見られます。しかしながら森林内や法面緑化工の施工現場などの場合は、急傾斜地が多く、落石・倒木・積雪によるグライド圧などの影響を受けやすいため、防除効果が失われやすいことが課題でした。加えて、こうした現場はアクセスが悪く、保守点検が行き届きにくいことも難点です。そこで、本研究では上記の課題を考慮した新しいシカ侵入防止柵を開発・設置し、植生回復のモニタリングを行うことで防除効果を確認しました。

方法
実験には新規に開発したシカ侵入防止柵 (商品名:シカ矢来2)、写真1、図1)を用いました。京都の古い木造建築に見られる「犬矢来」から着想を得たもので、従来の侵入防止柵が構造物の高さによってシカの跳越を防ぐ方法であったのに対し、幅も持たせることで、転倒などのリスクを軽減しています。

20161127_Higashiguchi_p02.jpg 20161127_Higashiguchi_c01.jpg

効果のモニタリングに際しては、京都市北部の山間部に自生するチュウゴクザサ(Sasa veitchii var. hirsuta)に着目しました。京都市では2004年から2007年にかけて、広域にわたる一斉開花・枯死があり3)、本来はその後に発生する実生から群落が再生していくのですが、シカによる採食圧の影響で4)、2016年現在に至るまで自然下での再生が進んでいません。本研究では2004年に開花した地点5)に柵を設置し、柵の内外でササの個体数・稈数・稈高・葉の総数・葉のサイズを定期的に測定し、防除効果の指標としています。また同時に行った上述の実験(1)ではササ以外の実生についてもモニタリングをおこなっています。

結果
施工からわずか1年ほどの初期段階における経過報告ではありますが、柵はシカの侵入を防いでおり、柵内では稈・葉共に回復傾向が見られました。また落石や落枝にも耐え、積雪による大きな変状も起きていません。一方、柵外では継続してシカによる採食圧があり、調査開始時と変わらない矮性化したササ実生(写真2)が見られるのみでした。

20161127_Higashiguchi_01p.jpg


おわりに
会場では多くの皆様から、示唆に富むご意見並びに新たなシカ防除技術開発への期待の言葉を賜りましたことを、この場を借りて御礼申し上げます。今回は設置後の初期段階における報告でしたが、今後も継続したモニタリングを行い、防除効果の報告をしていきたいと考えています。
 また柵の構造等につきましても、改良の余地があると思われます。山林や法面のみならず、景観に配慮する必要のある社寺境内・庭園での防除など、新たな活用の可能性もあります。ご関心の方はお声かけいただきましたら幸甚です。

---------- 実験(1) の発表ポスター

20161206_Higashiguchi_Po_01.jpg




続きを読む・・・
| 次へ