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中国の半乾燥地における緑化植物二種の関係/松本哲也 [2015年11月04日(Wed)]
2015年・第46回藤沢大会でポスター賞を受賞された松本哲也さんからの投稿が届きました!

中国の半乾燥地における緑化植物二種の関係
岡山大学 環境生命科学研究科 森林生態学分野
博士前期課程1年 松本哲也


去る9月27日に「中国半乾燥地の固定砂丘上におけるArtemisia ordosica Krasch.群落の構造にJuniperus sabina L.と土壌表層の環境条件が与える影響」と題した発表でポスター賞を頂きました。このたびこのような場を頂戴致しましたので、私の研究について簡単ながらご紹介申し上げます。

  中国の半乾燥地における緑化植物二種の関係


私の研究対象地である毛烏素沙地は、中華人民共和国北部のオルドス高原中央部に広がる半乾燥地です。
毛烏素沙地の景観.gif

毛烏素沙地の優占種であるArtemisia ordosicaは、キク科ヨモギ属の落葉性半灌木で、現地の緑化植物として広く利用されています。
Artemisia ordosica Juniperus sabina
   Artemisia ordosica            Juniperus sabina

本種の成長や群落構造は、土壌養分量3) や土壌表層の水分量4) 、降水量 (松本ら 未発表) などの環境条件に影響を受けることが知られていますが、しばしば側所的に自生するJuniperus sabinaとの関係についてはよく分かっていませんでした。

J. sabinaはヒノキ科ビャクシン属の匍匐性常緑針葉樹で、A. ordosicaと並んで毛烏素沙地に広く分布し、緑化植物として利用されています。J. sabinaに関しては、飛砂の防止効果6) や、地表面温度の低下効果7) 、被覆下の植物をグレージングから保護する効果5)、被覆下の土壌の発達促進効果1) 、湿潤な土壌深層から乾燥した土壌表層への不定根を介した水の再分配による土壌表層の乾燥の緩和効果8) など、隣接する植物に正の影響を与えうるさまざまな効果が報告されています。したがって、近傍のA. ordosica群落にも何らかの正の影響を与えるのではないかという考えのもと研究を行いました。その結果、14m×14mという比較的狭い空間スケールでは、両者は競争関係にあり、予想に反してA. ordosicaは負の影響を受けていることを示唆する結果が得られました。以上が今回、日本緑化工学会誌に掲載頂いた論文の内容の一部になります。

その一方で、半固定砂丘から固定砂丘にかけてA. ordosica純群落とA. ordosica J. sabina群落上に49箇所調査区を設けて研究を行ったところ、J. sabinaが同所的に分布している場所ではA. ordosicaの小型の株の密度が高く、大型の株の個体サイズが小さい傾向が確認出来ました(松本ら 未発表)。このことは、より広い空間スケールでは、J. sabinaA. ordosicaの大型の株とは競合するものの、小型の株に対しては定着を促す効果を持つ可能性を示唆していると考えられます。この研究成果につきましては、昨年度の日本森林学会大会において「中国の半乾燥地に生育するArtemisia ordosica Krasch.の群落構造に環境要因が与える影響」と題して発表させて頂き、現在論文化を進めております。
以上の様な知見は、半乾燥地における植物種間の生態的な関係を明らかにし、乾燥地緑化における植栽後の管理といった実際的な面から有益な情報であると考えられます。今後も得られたデータから研究を発展させて頂きたいと考えております。

最後になりますが、発表をお聞き下さった皆様、審査委員の皆様、並びに研究にご協力下さった皆様に、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

岡山大学 環境生命科学研究科 森林生態学分野
博士前期課程1年 松本哲也
a.matsumotoi(あっと)s.okayama-u.ac.jp   ※(あっと)は@です

引用文献 (本文中該当箇所に青字で表示してあります)

1) Hirobe, M., Ohte, N., Karasawa, N., Zhang, G. S., Wang, L. H., and Yoshikawa, K. (2001) Plant species effect on the spatial patterns of soil properties in the Mu-us desert ecosystem, Inner Mongolia, China. Plant and Soil, 234: 195-205.
2) 小林 達明 (1994) 中国ムウス砂地の緑化植物の生態と水分生理に関する研究. 千葉大学園芸学部学術報告, 48: 329-381.
3) Li, C. P. and Xiao, C. W. (2007) Above- and belowground biomass of Artemisia ordosica communities in three contrasting habitats of the Mu Us desert, northern China. Journal of Arid Environments, 70: 195-207.
4) Ohte, N., Koba, K., Yoshikawa, K., Sugimoto, A., Matsuo, N., Kabeya, N. and Wang, L. (2003) Water utilization of natural and planted trees in the semiarid desert of inner Mongolia, China. Ecological Applications, 13 (2): 337-351.
5) Ning, L., Liu, C. X., He, W. M. and Yu, F. H. (2013) Interaction of the indigerous evergreen shrub Sabina vulgaris with coexisting species in the Mu Us sandland. Journal of Plant Ecology, 6 (1): 48-56.
6) 温 国勝・王 林和・吉川 賢 (2002) 中国半乾燥地に生育する臭柏 (Sabina vulgaris Ant.) の生理的特性と生態学特性. 日本緑化工学会誌, 25 (4): 526-532.
7) 山中 典和・王 林和・吉川 賢 (2000) 中国内蒙古毛烏素沙地における臭柏 (Sabina vulgaris Ant.) 更新場所の微環境. 日本緑化工学会誌, 25 (4): 437-442.
8) Yang, L., Miki, N. H., Matsuo, N., Zhang, G., Wang, L. and Yoshikawa, K. (2014) Contribution of adventitious roots to water use strategy of Juniperus sabina in a semiarid area of China. Journal of Agricultural Science and Technology, A 4: 251-259.
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