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葛西臨海公園の護岸におけるウラギクの分布規定要因の検討/三島らすな [2019年10月07日(Mon)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された三島らすなさんからの投稿が届きました!

葛西臨海公園の護岸におけるウラギク(Aster tripolium L.)の分布規定要因の検討
明治大学大学院 農学研究科 三島らすな


受賞ポスターはこちら!
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 この度は技術報告部門にてポスター賞を頂くことができ、大変光栄です。まず、共同研究者である倉本宣博士とTim Gardiner博士に厚く御礼申し上げます。当日私の発表を聞いて下さり、ご質問やご意見を下さった方々にも感謝申し上げます。この場をお借りし、簡単ではございますが私の研究の内容を紹介させて頂きます。

はじめに
 ウラギク(Aster tripolium L.)(図1)は、塩性湿地に生育する耐塩生に優れたキク科の植物です。東京都で絶滅危惧IB類に指定されている本種を、東京都内で保全するためには、現在ある生育地ごとの特性と本種の分布規定要因を把握する必要があると考えました。本研究では、東京都立葛西臨海公園の護岸を対象としました。
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護岸における塩水による浸水とウラギクの種子発芽
 当地における測量調査と植生調査と浸水状況調査の結果、ウラギクは、満潮時に15cm程度の水に浸ることがある生育地Xと、滅多に水に浸らないと思われる生育地Yの、主に2箇所に生育していました(図2)。また、塩分濃度の調査を行ったところ、生育地Xを浸した水の塩分濃度は0.85%でした(図2)。
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 塩水による浸水がウラギクの種子発芽に与える影響を調べるために、複数の塩分濃度条件下でのウラギクの種子発芽実験(20度の恒温条件下、50粒ずつ、発芽数のカウントは1日おき、それぞれ3反復ずつ)を行ったところ、ウラギクの種子は1%の塩分濃度条件下でも全体の4分の1ほどが発芽しました(図3)。
 以上より当地においては、発芽を完全に抑制するほど塩分濃度の高い水に、ウラギクの種子が浸ることは滅多にないと考えられました。
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岩と岩の間のくぼみの堆積の有無とウラギク個体の有無
 護岸における岩と岩の間のくぼみについて、基質の堆積の有無と、ウラギク個体の有無、基質の種類を調査しました。その結果、基質の種類はシルトでした。また、基質の堆積があったくぼみにだけウラギクの生育が確認されました(図4)。以上より当地においては、護岸上のシルトの堆積はウラギクが生育するために最低限必要な条件だと考えられました。
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おわりに
 本研究では、ウラギクの生育地の保全と再生を考える上で、護岸における基質の堆積を考慮することの重要性を示すことができたと思います。その上で、イギリスの首都ロンドンを流れるテムズ川における、塩沼テラスの設置による緑化事例を紹介したいと思います。テムズ川河口から64km付近のGreenwich Peninsulaの護岸には、図5のようなテラスが設けられています。この事例では、基質の堆積を維持する構造を設けることで、護岸で囲われた流路内での塩生植物のハビタットの創出に成功しています。
 護岸において基質の堆積を考慮するという観点は、日本においても、水域と陸域の間の移行帯特有の植生を保全及び再生する上で重要なものだと考えています。これからも生物多様性緑化に関する知見や技術の蓄積が行われていくことを願っています。

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 本研究においては、群落調査を倉本教授と三島が、発芽実験を倉本教授が、護岸の浸水状況と塩分濃度の調査を三島が、護岸における基質堆積をGardiner博士が、全体の構成と論理とポスターの制作を三島が、それぞれ主に担当しました。Gardiner博士のアイディアは葛西臨海公園の護岸を現地調査することによって生まれましたので、明治大学の国際交流制度に感謝の意を表します。
 ポスター賞を頂けたことを糧に、これからも意欲的に研究に取り組んでいきたいと思っております。この場で研究の紹介をさせて頂き、本当にありがとうございました。

以上
クスノキの乾燥耐性に寄与する木部細胞/山田佳乃 [2019年10月06日(Sun)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された山田佳乃さんからの投稿が届きました!

クスノキの乾燥耐性に寄与する木部細胞
山田佳乃


受賞ポスターはこちら!
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 この度は第50回日本緑化工学会大会において、ポスター賞(研究交流部門)をいただき、誠にありがとうございます。当日は多くの方々にコメントをいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。今後とも精進していきたいと思っております。ここでは、本研究について紹介したいと思います。

 木部樹液は、蒸散によって通導要素内の水柱に発生する張力(テンション)によって上方へ引き上げられていきます(Tyree 2003,凝集力―張力説)。しかしながら、木部樹液は絶えず流れているのではなく、蒸散が活発な時間帯には木部樹液にかかるテンションが強まり、一部の通導要素では水流が途切れて通導要素が空になることが知られています(エンボリズム)。長期間生育する樹木にとって、排水した道管で通水を回復させることは不可欠であると考えられますが、再注水を経て通水が回復する仕組みはよくわかっていませんでした。

 エンボリズムの発生が避けられない条件下でも樹勢を損なわず、生育する樹種には、エンボリズムを回復するメカニズムがあると仮説を立てました。そこで本研究では、乾燥耐性の強いクスノキ Cinnamomum camphoraを材料とし、機能解剖学の手法によって排水した道管への再注水のプロセスを明らかにすることを目的としました。
 含水条件を揃えたクスノキの切り枝を室内に放置し、試験的に排水させました(乾燥処理)。木部内のテンションの発生を避けるため切り枝から葉を除いたのち、色素液吸入法を用いて、切り枝における水分吸入の程度を把握するとともに、通水機能のある細胞を可視化しました。
 色素液吸入実験の結果、1-9時間の乾燥処理を施した供試枝では木部の広い範囲で色素液による染色が確認されました。染色は、軸方向柔細胞および放射柔細胞の細胞壁と内容物に加えて、染色した柔細胞類に隣接する道管の壁孔と細胞壁で観察されました。19時間以上の乾燥処理を施し、含水量が約50%に低下した枝では、色素液はほとんど吸入されず、柔細胞類の原形質分離が観察されました。これらの結果から、道管が排水した後の通水の回復の過程には、軸方向柔細胞および放射柔細胞を介した道管内腔への水の移動があるものと推測されました。また、クスノキの二次木部では周囲柔組織(翼状〜連合翼状柔組織)を形成しており、このような道管の周りを取り囲む多数の軸方向柔細胞が、クスノキの乾燥耐性に寄与している可能性が示唆されました

 都市の街路樹は、その樹種の生理特性に合わない環境に植栽されたことで枝枯れを起こしたり、ひどい場合は枯死することもあります。もし、木部の細胞構成からその樹種の乾燥耐性が推測できれば、植栽環境(土壌、風環境、水やりの頻度)に合った樹種を選ぶことができ、このような問題を防ぐことができます。人口減少によりどの自治体も財政が厳しくなることを考えると、最低限のメンテナンスで樹勢を保つ街路樹を植栽することはますます重要性を増していくでしょう。もちろん、樹木の水分通導の恒常性に関するメカニズムには高木か低木か、常緑か落葉か、広葉樹か針葉樹かなど、木部の細胞構成以外にも様々な要素が関わっていると考えられますが、本研究の結果が実社会に役立てられたらいいなあと思っております。

以上
第50回記念・日本緑化工学会大会 および平成30年度日本緑化工学会賞授与式 [2019年09月24日(Tue)]
日本緑化工学会 第50回記念大会
が2019年9月13日(金)〜15日(日)九州産業大学(福岡県福岡市)で開催されました。

このうち13日は福岡市内の現地見学会 および 公開シンポジウムでした。
シンポジウムを含め、会場には約200名の参加者を得て、3日間、活発な議論が行われました。
ご参加、ご協力頂き、ありがとうございました。

大会の会期中に、日本緑化工学会定時総会が開催されました。最初に福永会長から、今期を振り返ってあいさつがありました。
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そして、総会の開催前に「平成30年度日本緑化工学会賞」の授与式が行われました。
吉崎学会賞選考委員長による選考経過の報告に引き続き,福永会長から,
論文賞が宗岡寿美氏に,研究奨励賞が黒沼尊紀氏,中島有美子氏に,技術奨励賞が戎谷遵氏,
以上のみなさんに贈られました。
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授賞式のあとに引き続いて行われた懇親会の会場にて、受賞者のみなさんから一言ずつあいさつを頂きました。
受賞者のみなさん、おめでとうございます!
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みなさんからの自己紹介や研究紹介は次回以降の学会誌上にて紹介記事が掲載される予定です。
(ブログに原稿を頂けた場合には,こちらに掲載する可能性もあります)

なお、総会の議事録および議事資料は、公開ホームページにご報告を掲載いたします。
http://www.jsrt.jp/announce.html#20190914
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