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こどもと本ジョイントネット21・山口


〜すべての子どもに本との出会いを〜

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ムットーニからくり文学館E中原中也「サーカス」より「サーカス」 [2019年10月06日(Sun)]
【前回の続き】

最後に、赤い垂幕で囲んである場所に進みます。
サーカス小屋という設定なのでしょうか。

➍サーカス ブランコの影が揺れる荒野にて

中原中也「サーカス」


  サーカス

幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り
    今夜此処での一と殷盛り

サーカス小屋は高い梁(はり)
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒(さかさ)に手を垂れて
  汚れ木綿の屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
  安値(やすい)リボンと息を吐き

観客様はみな鰯
  咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

     屋外(やぐわい)は真ッ闇(くら) 闇(くら)の闇(くら)
     夜は劫々(こふこふ)と更けまする
     落下傘奴(らくかがさめ)のノスタルヂアと
     ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん



をモチーフにした「サーカス」(2019年 作家蔵)ぴかぴか(新しい)
新作で、初公開です。

荒野に一つの落下傘が舞い降りた。
いつしかそれは荒野に張られたテントになり、
ある夜サーカスの幕が開く。
ほら、遠い荒野にブランコの影が揺れている。

(入館者配布パンフレットより)

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箱型劇場の傍の二つのライトが消えるといよいよはじまり、はじまり……。
遠くで戦場を飛び交うプロペラ機のエンジン音が聞えてきます。警報、光、砲音とともに、茶色い落下傘が降りてきます。
落下傘が疾風吹きすさぶ荒野に張られたサーカス小屋になり、
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サーカス小屋は、明かりがともり、盛り上がっています。
汚れ木綿のサーカス小屋の高い梁から、
頭を逆さに手を垂れた空中ブランコの少女が「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」と揺れます。
ただ、左右に揺れるだけでなく、リアルに複雑な動きをしています!
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白いリボンのようなスポットライトがブランコ乗りの少女の姿を追い照らします。
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観客はみな鰯です。
1Fの展示でおおよその察しはついていましたが、本当に鰯です。
ちゃんと、ブランコの揺れに合わせて、体も頭も動きます。
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歓声が上がるサーカス小屋から、外に目を移すと、すかっり暗闇です。
落下傘が上がっていき、やがて、サーカス小屋の明かりも消えます。
両脇に置かれた二つのライトがともると物語は終わります。

大満足して、階段を降りる途中にライトアップした中原中也「四行詩」があります。

おまへはもう静かな部屋に帰るがよい。 
煥発する都会の夜々の燈火を後に     
おまへはもう、郊外の道を辿るがよい。     
そして心の呟きを、ゆつくりと聴くがよい。


【次回に続く】
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