『キンコンカンせんそう』 @ アーサー・ビナードとともに平和を考える朗読会B
[2019年08月18日(Sun)]
【前回の続き】
『キンコンカンせんそう』(ジャンニ・ロダーリ/作 べフ/絵 アーサー・ビナード/訳 講談社 2010.8)
戦争をおしすすめる将軍たちは、教会の鐘まで兵器にしてしまいます。ところが……。人間の愚かな行為を、ユーモアをもって戒める絵本。(講談社HP)
イタリア児童文学の巨星ジャンニ・ロダーリの絵本です。
ビナードさんは、大学在学中に交際していた女性を追って20歳の時イタリアに渡ったこともあって、イタリア語も堪能です。
イタリア人のロダーリが童話として書き、フランス人画家のペフが絵本にし、アメリカ人のビナードさんが日本語に訳すという実に国際的な絵本です。
長く続く戦争。
ついに武器にする金属が足りなくなり、ボンボーネ・バクレッツォーネ・フニャラロッシー大将は、
「くにじゅうの とけいとうからも
きょうかいからも がっこうからも
ベルというベル かねというかねを
ぜんぶ あつめてこい! とかして
その きんぞくで せかいいち
でっかい たいほうをつくるんだ!
てきに いっぱつ くらわしたら
せんそうに かてるんだから」
と学校や教会の鐘を溶かして武器にしてしまいます。
日本でも、第二次世界大戦のとき金属類回収令が公布され、金属を供出していました。母の実家でも銅製の樋も、茶道具の釜も風炉も出したそうです。お寺の鐘も出したと聞きますよね。
なのでリアルに心に届きます。
ドデカたいほうの たんとうの へいたいは、はっぽうの ボタンを おした。
すると とつぜん ふしぎな おとが ひびきだした。
「キン! コン! カン!」
「へいわの ぼっぱつの おまつりさ!」
原題は"La guerra delle campane"。
直訳すると「鐘の戦争」。
ビナードさんは、本質を語るために、そのまま翻訳するではなく、一度言葉を体の中に入れてから、訳すそうです。
そこで、例に出されたのが、『はじまりの日』(ボブ・ディラン/作 ポール・ロジャース/絵 アーサー・ビナード/訳 岩崎書店 2010.2)。
『はじまりの日』は、ボブ・ディランの1974年に発表された名曲「Forever Young」を絵本にしたもので、ビナードさんが翻訳しています。
「Forever Young」をそのまま「いつまでも若く」と訳したのでは、確かにボブ・ディランが息子に作ったその思いが伝わってきません。だから『はじまりの日』。
こちらは、鐘から造った大型兵器が「キンコンカン」という平和の響きを奏でるというストーリーで、戦争の愚かさを、わかりやすく描いた絵本です。なので『キンコンカン戦争』。
さて、ビナードさんからの質問。
「ふたつの国が作った2つの形の違う大型兵器は何を象徴しているでしょうか?」
絵本に登場する、1発で戦争に勝てるという大砲は核兵器を意味しています。
ボンボーネ・バクレッツォーネ・フニャラロッシー大将の大砲は、リトルボーイ 。
敵のバンバーネ・ヘキラッツァーネ・ホニャロラッソー大将の大砲は、ファットマン。
広島、長崎へ投下された原子爆弾です。
核配備の競争をしていた冷戦時代をも暗示しています。
山口の朗読屋さんのKさんの朗読に、
「キーーン! コーーン! カーーン! コーーン!」
と、石本館長のギターの音色が実に効果的に入っていました
最近NHKの朝ドラで
とんがり帽子の 時計台 鐘が鳴ります キンコンカン
(「鐘の鳴る丘(とんがり帽子)」(菊田一夫/作詞 古関裕而/作曲))と流れていました。
こちらは山口サビエル記念聖堂。1時間毎に時を告げる鐘が鳴ります。
鐘は時を刻むものです。そうでなければなりません。
「へいわの ぼっぱつ」(平和の勃発)とは、聞きなれない言葉ですが、なんて素敵な言葉でしょう。
そもそも「勃発」とは「突然に起こること。急に発生すること」。
「戦争は長い準備があって起こる。戦争は勃発しない。」とビナードさん。
「戦争が起こる」という意味で「戦争が勃発する」と使いますが、戦争は突然起こるものではないので、言われてみれば「勃発」はおかしい??? 調べてみます。
「戦争は勃発しないけど、平和は勃発しうる」とビナードさん。
【次回に続く】
『キンコンカンせんそう』(ジャンニ・ロダーリ/作 べフ/絵 アーサー・ビナード/訳 講談社 2010.8)
戦争をおしすすめる将軍たちは、教会の鐘まで兵器にしてしまいます。ところが……。人間の愚かな行為を、ユーモアをもって戒める絵本。(講談社HP)
イタリア児童文学の巨星ジャンニ・ロダーリの絵本です。
ビナードさんは、大学在学中に交際していた女性を追って20歳の時イタリアに渡ったこともあって、イタリア語も堪能です。
イタリア人のロダーリが童話として書き、フランス人画家のペフが絵本にし、アメリカ人のビナードさんが日本語に訳すという実に国際的な絵本です。
長く続く戦争。
ついに武器にする金属が足りなくなり、ボンボーネ・バクレッツォーネ・フニャラロッシー大将は、
「くにじゅうの とけいとうからも
きょうかいからも がっこうからも
ベルというベル かねというかねを
ぜんぶ あつめてこい! とかして
その きんぞくで せかいいち
でっかい たいほうをつくるんだ!
てきに いっぱつ くらわしたら
せんそうに かてるんだから」
と学校や教会の鐘を溶かして武器にしてしまいます。
日本でも、第二次世界大戦のとき金属類回収令が公布され、金属を供出していました。母の実家でも銅製の樋も、茶道具の釜も風炉も出したそうです。お寺の鐘も出したと聞きますよね。
なのでリアルに心に届きます。
ドデカたいほうの たんとうの へいたいは、はっぽうの ボタンを おした。
すると とつぜん ふしぎな おとが ひびきだした。
「キン! コン! カン!」
「へいわの ぼっぱつの おまつりさ!」
原題は"La guerra delle campane"。
直訳すると「鐘の戦争」。
ビナードさんは、本質を語るために、そのまま翻訳するではなく、一度言葉を体の中に入れてから、訳すそうです。
そこで、例に出されたのが、『はじまりの日』(ボブ・ディラン/作 ポール・ロジャース/絵 アーサー・ビナード/訳 岩崎書店 2010.2)。
『はじまりの日』は、ボブ・ディランの1974年に発表された名曲「Forever Young」を絵本にしたもので、ビナードさんが翻訳しています。
「Forever Young」をそのまま「いつまでも若く」と訳したのでは、確かにボブ・ディランが息子に作ったその思いが伝わってきません。だから『はじまりの日』。
こちらは、鐘から造った大型兵器が「キンコンカン」という平和の響きを奏でるというストーリーで、戦争の愚かさを、わかりやすく描いた絵本です。なので『キンコンカン戦争』。
さて、ビナードさんからの質問。
「ふたつの国が作った2つの形の違う大型兵器は何を象徴しているでしょうか?」
絵本に登場する、1発で戦争に勝てるという大砲は核兵器を意味しています。
ボンボーネ・バクレッツォーネ・フニャラロッシー大将の大砲は、リトルボーイ 。
敵のバンバーネ・ヘキラッツァーネ・ホニャロラッソー大将の大砲は、ファットマン。
広島、長崎へ投下された原子爆弾です。
核配備の競争をしていた冷戦時代をも暗示しています。
山口の朗読屋さんのKさんの朗読に、
「キーーン! コーーン! カーーン! コーーン!」
と、石本館長のギターの音色が実に効果的に入っていました
最近NHKの朝ドラで
とんがり帽子の 時計台 鐘が鳴ります キンコンカン
(「鐘の鳴る丘(とんがり帽子)」(菊田一夫/作詞 古関裕而/作曲))と流れていました。
こちらは山口サビエル記念聖堂。1時間毎に時を告げる鐘が鳴ります。
鐘は時を刻むものです。そうでなければなりません。
「へいわの ぼっぱつ」(平和の勃発)とは、聞きなれない言葉ですが、なんて素敵な言葉でしょう。
そもそも「勃発」とは「突然に起こること。急に発生すること」。
「戦争は長い準備があって起こる。戦争は勃発しない。」とビナードさん。
「戦争が起こる」という意味で「戦争が勃発する」と使いますが、戦争は突然起こるものではないので、言われてみれば「勃発」はおかしい??? 調べてみます。
「戦争は勃発しないけど、平和は勃発しうる」とビナードさん。
【次回に続く】