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こどもと本ジョイントネット21・山口


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一つのメルヘン @ 吉敷川 [2018年09月11日(Tue)]
2009(平成21)年7月24日〜9月27日、中原中也記念館で特別企画展「月光とメルヘン」が開催されました。

月光とメルヘン.jpg

展示5は、「一つのメルヘン」でした。

詩「一つのメルヘン」の世界は、とても不思議な世界です。〈秋の夜〉なのに〈陽〉が射し、〈さらさら〉音をたてます。この光は、暖かい太陽ではなく、冷ややかな月光を連想させます。やがて〈蝶〉が現れ、見えなくなると〈水〉が流れ出す。中也は、この〈河原〉での風景だけを詩として描いています。
(『中原中也館館報2010』第15号より)

「小石ばかりの河原」にいつのまにか水が「さらさらと」流れているという展開はまさに吉敷川の伏流の現象をモチーフにしているのでしょう。

吉敷川(水無川)の写真や、山口市仁保産出の硅石が展示してありました。
硅石は、ガラスの原料として戦前に多く産出していたそうです。

現実にあるものを詩の素材の可能性として展示しながら、この詩の世界がまさに、「一つのメルヘン」であること(同)

が紹介されていました。

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一つのメルヘン

秋の夜は、はるかの彼方[かなた]に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。


陽といつても、まるで硅石[けいせき]か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。


さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。


やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました……



▼写真左側の竹林向こうに中也の眠る経塚墓地がある
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この4日、吉敷川の記事のために、吉敷川と中也の墓に通っています。
今日は良城橋から吉敷大橋まで吉敷川に沿って歩いてみました。
中也の時代と違って、今は住宅地となっていて、川の様子も変わっていることでしょう。

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昨日(9日)まで結構雨が降ったにもかかわらず、川には水は余りありません。
今日(10日)は久し振りの秋晴れです。
陽射しで「小石ばかりの河原」はきらきらと光り、
水は「さらさらと」音を立てて流れ、
「一つのメルヘン」の世界に迷い込みそうでした。

(2018年9月10日撮影)
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