どろぼうのどろぼん
[2018年08月26日(Sun)]
今日ご紹介するのは、斉藤倫さんの『どろぼうのどろぼん』(牡丹靖佳/画 福音館書店 2014.9)
チョコレートやクッキーの缶に入れといわれても困りますけれど。でもそれが家だったらどこへだって入れますよ。
どろぼんはどろぼうの天才。どろぼんは「もの」の声を聞くことができる。どろぼんは絶対に捕まらない。これは、ぼくがどろぼんから聞いた話。
今まで盗んできたもののこと。その「もの」たちの声のこと。
そして、絶対に捕まらないどろぼんが、あの雨の日の午後、あじさいの咲き誇る庭で、どうしてぼくに捕まったのか。
(福音館HPより)
詩人として活躍されている斉藤倫さんによるはじめての長篇物語です。
本作により第48回日本児童文学者協会新人賞を受賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞されました。
元福音館の編集長の松本徹さんにお会いした時、
「前回教えていただいた伊藤遊さん、とってもよかったです。」
というお話をしたら、
「今、一番お薦めの児童文学作家は、斉藤倫さん」
と言われ、読んでみました。
まず詩人だけあって文章がすごくいい。そして、ストーリー展開もおもしろく、引き込まれていきます
絵も単なる挿絵ではなく物語の一部となっていて、おしゃれでとてもよかったです
雨の降る日に読む本としてもお薦めです
作家の梨木香歩さんインタビューを添えておきます。
詩人の斉藤倫さんの書いた詩のような物語、『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)。「もの」の発する声が聞こえるどろぼうの話なのですが、最初に出てくる「自殺する花瓶」の話に思わず引き込まれ、そのまま一気に読み切ってしまいました。花瓶が、「ねえ、ころして」と声をかけるのです。この花瓶は結局自死するのですが。その後、どろぼんが自分の全存在かけて守ろうと思う、弱い小さないのちを、なんと、どろぼんをつかまえた警察官たちもそろって守ろうという気になる、そういう空気に(喜んで)巻き込まれていく……まったく無関係のような二冊の本(注:もう一冊は『小林秀雄とその戦争の時』(山城むつみ 新潮社)を指します)ですが、実はどこかでーーsubtleな「何か」に一瞬一瞬の「相」を刻印され決定されていく世界のどこかでーーつながっている気がしてなりません(私にとっての「subtle」とは、微妙で捉え難く、世間の表舞台には出てこない繊細さのようなものです)。(2014.10.23)
斉藤倫
1969年、秋田県生まれ。詩人。
2004年『手をふる 手をふる』(あざみ書房)でデビュー。14年『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で長篇デビュー。同作で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。
詩集に『オルペウス、オルペウス 新しい詩人6』『さよなら、柩』(以上思潮社)、『本当は記号になってしまいたい』(私家版)、児童書に『せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ) 』(junaida/絵 2016.6)、『波うちぎわのシアン』(まめふく/絵 偕成社 2018.3)、『えのないえほん』(植田真/絵 講談社 2018.6)、絵本に『いぬはなく』(名久井直子/絵 ヒヨコ舎)、『とうだい』(小池アミイゴ/絵 福音館書店)がある。また、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(PARCO出版)に編集委員として関わる。
牡丹靖佳
1971年、大阪府生まれ。現代美術作家。
東京をはじめ、オランダ、スウェーデンなど世界各地で作品を制作、発表している。主な展覧会に「イメージの庭」(伊丹市立美術館、兵庫、2017年)、「gone before flower」(アートコートギャラリー、大阪、2016年)、「Unknown Library」(MA2 Gallery、東京、2013年)などがある。
2012年に出版された創作絵本『おうさまのおひっこし』(福音館書店)は第24回ブラティスラヴァ世界絵本原画展の日本代表に選ばれる。
チョコレートやクッキーの缶に入れといわれても困りますけれど。でもそれが家だったらどこへだって入れますよ。
どろぼんはどろぼうの天才。どろぼんは「もの」の声を聞くことができる。どろぼんは絶対に捕まらない。これは、ぼくがどろぼんから聞いた話。
今まで盗んできたもののこと。その「もの」たちの声のこと。
そして、絶対に捕まらないどろぼんが、あの雨の日の午後、あじさいの咲き誇る庭で、どうしてぼくに捕まったのか。
(福音館HPより)
詩人として活躍されている斉藤倫さんによるはじめての長篇物語です。
本作により第48回日本児童文学者協会新人賞を受賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞されました。
元福音館の編集長の松本徹さんにお会いした時、
「前回教えていただいた伊藤遊さん、とってもよかったです。」
というお話をしたら、
「今、一番お薦めの児童文学作家は、斉藤倫さん」
と言われ、読んでみました。
まず詩人だけあって文章がすごくいい。そして、ストーリー展開もおもしろく、引き込まれていきます
絵も単なる挿絵ではなく物語の一部となっていて、おしゃれでとてもよかったです
雨の降る日に読む本としてもお薦めです
作家の梨木香歩さんインタビューを添えておきます。
詩人の斉藤倫さんの書いた詩のような物語、『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)。「もの」の発する声が聞こえるどろぼうの話なのですが、最初に出てくる「自殺する花瓶」の話に思わず引き込まれ、そのまま一気に読み切ってしまいました。花瓶が、「ねえ、ころして」と声をかけるのです。この花瓶は結局自死するのですが。その後、どろぼんが自分の全存在かけて守ろうと思う、弱い小さないのちを、なんと、どろぼんをつかまえた警察官たちもそろって守ろうという気になる、そういう空気に(喜んで)巻き込まれていく……まったく無関係のような二冊の本(注:もう一冊は『小林秀雄とその戦争の時』(山城むつみ 新潮社)を指します)ですが、実はどこかでーーsubtleな「何か」に一瞬一瞬の「相」を刻印され決定されていく世界のどこかでーーつながっている気がしてなりません(私にとっての「subtle」とは、微妙で捉え難く、世間の表舞台には出てこない繊細さのようなものです)。(2014.10.23)
斉藤倫
1969年、秋田県生まれ。詩人。
2004年『手をふる 手をふる』(あざみ書房)でデビュー。14年『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で長篇デビュー。同作で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。
詩集に『オルペウス、オルペウス 新しい詩人6』『さよなら、柩』(以上思潮社)、『本当は記号になってしまいたい』(私家版)、児童書に『せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ) 』(junaida/絵 2016.6)、『波うちぎわのシアン』(まめふく/絵 偕成社 2018.3)、『えのないえほん』(植田真/絵 講談社 2018.6)、絵本に『いぬはなく』(名久井直子/絵 ヒヨコ舎)、『とうだい』(小池アミイゴ/絵 福音館書店)がある。また、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(PARCO出版)に編集委員として関わる。
牡丹靖佳
1971年、大阪府生まれ。現代美術作家。
東京をはじめ、オランダ、スウェーデンなど世界各地で作品を制作、発表している。主な展覧会に「イメージの庭」(伊丹市立美術館、兵庫、2017年)、「gone before flower」(アートコートギャラリー、大阪、2016年)、「Unknown Library」(MA2 Gallery、東京、2013年)などがある。
2012年に出版された創作絵本『おうさまのおひっこし』(福音館書店)は第24回ブラティスラヴァ世界絵本原画展の日本代表に選ばれる。