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こどもと本ジョイントネット21・山口


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対談集 絵本のこと話そうか [2018年11月06日(Tue)]
今年の8月、28年前の対談『素直にわがまま』(偕成社 1990)が、今の時代を生きる人たちの羅針盤として手渡すべく『対談集 絵本のこと話そうか』(松田素子/編 アノニマ・スタジオ 2018.8)と改題して復刊されましたぴかぴか(新しい)

絵本のこと話そうか.jpg

長 新太、五味太郎、林 明子、糸井重里、高橋源一郎、谷川俊太郎、山田 馨、司 修、岸田今日子、スズキコージ、小沢 正、佐野洋子、沢野ひとし、田中和雄、江國香織、高橋章子、吉本ばなな、黒井 健の18人の表現者が登場する対談集です。
絵本作家・小説家・詩人・編集者などによるリレー対談によって、「絵本」を軸にした、作り手たちの「こころざし」や「根っこ」が示されています。

「絵本」とは、作家がどのように世界を見ているかそのものです。(略)現在も活躍される18人の方々の、28年の時を経てもゆらぐことのない信念と言葉の数々。絵本とは、読者とは、ものづくりとは、仕事とは、芸術とは、人生とは。対談を通して、絵本や本を越えたヒントがもらえる、人生の羅針盤となる一冊です。
アノニマ・スタジオHPより)

編集されたのは、山口県周南市 (元 新南陽市)出身の編集者 松田素子さんです。

松田さんは「はじめに」(P3)で

この本は、絵本の紹介や評論の本ではありません。けれど、ひとつひとつの対談を重ね合わせたとき、そこから、ひとつの絵本の地図〞が、そして、創るということとはどういうことなのかがあぶりだされ、確かに見えてくるような気がするのです。

リレー対談というスタイルで、さまざまなジャンルの方にバトンが渡っていきました。話題もいろいろです。

対談が行われた期間は1987年から1990年。それらをまとめたものが書籍『素直にわがまま』(偕成社)として、1990年に刊行されました。

そして長い時を経て、復刊されることになったのが本書です。

時を経ても変わらないものが、ここにあります。それは創り手たちの「こころざし」であり、目に見えないところで、探り、考え、深々と伸ばされていった「根っこ」のようなものなのかもしれません。

と書かれています。

この復刊に込めた松田さんの思いは、本のあとがき「復刊によせて」に書れています。

(略)この本がこれから、どんな人にとって、どんな羅針盤となり、灯台となり、チカラとなるのか…。
手にとってくださった一人ひとりの未来に、その答えがあるのだろうと思います。

(P468)


とても熱くて深い本です。
ぜひ、あなたも、手にとってみてください揺れるハート
どろぼうのどろぼん [2018年08月26日(Sun)]
今日ご紹介するのは、斉藤倫さんの『どろぼうのどろぼん』(牡丹靖佳/画 福音館書店 2014.9)ぴかぴか(新しい)

どろぼうのどろぼん.jpg

チョコレートやクッキーの缶に入れといわれても困りますけれど。でもそれが家だったらどこへだって入れますよ。
どろぼんはどろぼうの天才。どろぼんは「もの」の声を聞くことができる。どろぼんは絶対に捕まらない。これは、ぼくがどろぼんから聞いた話。
今まで盗んできたもののこと。その「もの」たちの声のこと。
そして、絶対に捕まらないどろぼんが、あの雨の日の午後、あじさいの咲き誇る庭で、どうしてぼくに捕まったのか。

福音館HPより)

詩人として活躍されている斉藤倫さんによるはじめての長篇物語です。
本作により第48回日本児童文学者協会新人賞を受賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞されました。

元福音館の編集長の松本徹さんにお会いした時、
「前回教えていただいた伊藤遊さん、とってもよかったです。」
というお話をしたら、
「今、一番お薦めの児童文学作家は、斉藤倫さん」
と言われ、読んでみました。

まず詩人だけあって文章がすごくいい。そして、ストーリー展開もおもしろく、引き込まれていきます揺れるハート
絵も単なる挿絵ではなく物語の一部となっていて、おしゃれでとてもよかったでするんるん

雨の降る日に読む本としてもお薦めです雨

作家の梨木香歩さんインタビューを添えておきます。

詩人の斉藤倫さんの書いた詩のような物語、『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)。「もの」の発する声が聞こえるどろぼうの話なのですが、最初に出てくる「自殺する花瓶」の話に思わず引き込まれ、そのまま一気に読み切ってしまいました。花瓶が、「ねえ、ころして」と声をかけるのです。この花瓶は結局自死するのですが。その後、どろぼんが自分の全存在かけて守ろうと思う、弱い小さないのちを、なんと、どろぼんをつかまえた警察官たちもそろって守ろうという気になる、そういう空気に(喜んで)巻き込まれていく……まったく無関係のような二冊の本(注:もう一冊は『小林秀雄とその戦争の時』(山城むつみ 新潮社)を指します)ですが、実はどこかでーーsubtleな「何か」に一瞬一瞬の「相」を刻印され決定されていく世界のどこかでーーつながっている気がしてなりません(私にとっての「subtle」とは、微妙で捉え難く、世間の表舞台には出てこない繊細さのようなものです)。(2014.10.23)


かわいい斉藤倫かわいい 
1969年、秋田県生まれ。詩人。
2004年『手をふる 手をふる』(あざみ書房)でデビュー。14年『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で長篇デビュー。同作で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。
詩集に『オルペウス、オルペウス 新しい詩人6』『さよなら、柩』(以上思潮社)、『本当は記号になってしまいたい』(私家版)、児童書に『せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ) 』(junaida/絵 2016.6)、『波うちぎわのシアン』(まめふく/絵 偕成社 2018.3)、『えのないえほん』(植田真/絵 講談社 2018.6)、絵本に『いぬはなく』(名久井直子/絵 ヒヨコ舎)、『とうだい』(小池アミイゴ/絵 福音館書店)がある。また、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(PARCO出版)に編集委員として関わる。

かわいい牡丹靖佳かわいい
1971年、大阪府生まれ。現代美術作家。
東京をはじめ、オランダ、スウェーデンなど世界各地で作品を制作、発表している。主な展覧会に「イメージの庭」(伊丹市立美術館、兵庫、2017年)、「gone before flower」(アートコートギャラリー、大阪、2016年)、「Unknown Library」(MA2 Gallery、東京、2013年)などがある。
2012年に出版された創作絵本『おうさまのおひっこし』(福音館書店)は第24回ブラティスラヴァ世界絵本原画展の日本代表に選ばれる。
「ありがとがす」 @ 『ありがとうの詩(うた)』 [2018年05月04日(Fri)]
4月11日の「やまぐち朗読Cafe」で宮城県出身のFさんが『ありがとうの詩(うた)』から「ありがとがす」を朗読されたと言う記事(2018.4.12)をアップしたところ、『ありがとうの詩(うた)』や「ありがとがす」について問い合わせがありました。

そこで、『ありがとうの詩 詩・楽曲集 3・11大震災復興支援企画』(河北新報社)について、少しばかりご紹介させていただきますぴかぴか(新しい)

ありがとうの詩.jpg


宮城県は、2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を受けました。

そして、震災の直後から、日本だけではなく世界中の人々や団体、企業からたくさんの支援物資や義援金、そして数え切れない励ましのメッセージが寄せられました。

そうした多くの支援に対して、感謝、「ありがとう」の気持ちを伝えようと、
宮城県仙台市に本社をおく、河北新報社が、
2011年5月から9月にかけて、広く「詩」を募集したところ、
予想を超える460もの作品が集まったそうです。

詩人の和合亮一さんらが審査にあたり、最優秀作品5編、優秀作品45編が選定されました。

そして、そのうち宮城県にゆかりのある音楽家が選んだ8編に曲がつけられ、最優秀作品5編の朗読とともにCDにし、詩集とセットにして 『ありがとうの詩(うた)』が2012年3月に出版されました。

審査員講評で和合亮一さんは、

「数多くの作品を前にして、時に涙した。ある日、被災した福島県南相馬市の若者たちに、震災後に一番大切にしたい言葉は何かと尋ねると、「ありがとう」という一言が返って来たことを思い出した。津波や原発の問題にさいなまれながらも、その心を信条にしたいと語る彼ら。「「ありがとう」は相手との心をキャッチボールを約束してくれる。それを言い続けることで、プラスのエネルギーが、やってくる気がする」と教えてくれた。
 …(略)…ここに込められた想いは、私たちに確かな何かを導いてくれる。応募作それぞれの想いの「ありがとう」…、その一つ一つに暗がりに灯された明かりのような確かさがあった。今、分かりあえること。様々な生命の光を、受賞作品からぜひ感じていただきたい。」

と述べられています。
かわいいなお、和合亮一さんは、『AFTER』(思潮社 1998.3)で第4回中原中也賞を受賞されましたかわいい

最優秀作品の一つが「ありがとがす」ですぴかぴか(新しい)


(略)
おめえ様にも緑豊かな古里があり 
こころやさしい家族が待っているべ
ほんでも もうちょっとだけ 
おらに力を貸してけねが 

(略)
ありがとがす ありがとがす ありがとがす
おらも精一杯努力すっから 
ありがとがす



岩手県一関市の高橋悦朗さん、62歳の作品です。

「大震災による沿岸部の方々の被災には言葉もありません。内陸部住む私の家も7月解体しました。連日、支援に向かう方々を見て、せめて詩をかりて御礼申し上げたいと思いました。」

と作品エピソードで述べられています。
狛犬の佐助 [2018年04月10日(Tue)]
狛犬の佐助.jpg

伊藤遊さんの『狛犬の佐助 迷子の巻』(ノベルズ・エクスプレス19)(岡本順/絵 ポプラ社 2013.2)をご紹介しますぴかぴか(新しい)

『狛犬の佐助 迷子の巻』は、第62回(2013年)小学館児童出版文化賞を受賞しました。

本書は、伊東さんの作品で初めて、あやかしが主人公です。江戸時代の石工の魂が宿った狛犬です。


明野神社の狛犬には、彫った石工の魂が宿っていた。狛犬の〈あ〉には親方、〈うん〉には弟子の佐助の魂が――。
二頭は神社を見張りながらしょっちゅう話をしていたが、その声を聞くことができるのは、数え年7歳になるまえか100歳をこえた者だけだという。
佐助は近頃、愛犬をさがし続ける参拝客、大工見習いの耕平のことが気になってたまらない。
そんな佐助を、親方は「狛犬らしくない」とたしなめるのだが……。
150年前の石工たちの魂を宿した狛犬と、神社で出会う人々との心躍るファンタジー。
伊藤遊、9年ぶりの待望の書き下ろし長編。
長編『つくも神』、絵本『きつね、きつね、きつねがとおる』でコンビを組んだ岡本順の絵がファンタジーの世界をリアルに立ち上げる。

ポプラ社HPより)


伊藤さんの作品は、いつも登場人物の心の描写が細やで、物語の中にすっと引き込まれます。

一生懸命にやっていれば、必ず道は開ける。世の中ってのは、そういうものなんだ」(P.168)
最初から上手な人間なんていやしねえんだよ。だれでも最初は下手くそなんだ」(P.176)
泣かせるようなことをしたのでなければ、かまやしねえんだよ」(P.177)

狛犬(獅子)の〈あ〉(石工の親方 孫七)がいいですね揺れるハート
いかにも江戸の職人という感じで粋で、若くて危なっかしい佐助をたしなめるキツい台詞も、弟子への愛情が感じられます。
『鬼の橋』の征夷大将軍坂上田村麻呂、『えんの松原』の伴内侍といい、伊藤さんの作品は、サブキャラも魅力的で、作品の深みになっています。


 親方の目に、一筋のかかがやく道が映りました。
「おい、佐助。帰れるかもしれないぞ。道が見える」
(P.170)

というところは、『えんの松原』P.284〜285の

……ひと筋の光る糸のようなものが音羽の目の前にあり、彼はよく考えせずそれをたどって走っていった。(略)
 光る糸にみちびかれ、音羽が内裏へ帰りつくと、糸はわずかに開いた門の中へと続いた。(略)…音羽は、暗がりに立つ伴内侍に会った。(略)
 衵をさし出す伴内侍の胸のあたり、光る糸は消えていた。(略)
「…おれも無事にもどってこられた。待っていてくれる人がいたから……」

と通じるものがあります。


また、6歳までの子どもにしか狛犬の声が聞こえないという設定は、『きつね。きつね、きつつねがとおる』の子どもにしかあやかしが見えないという設定に通じます。

100歳になったら、聞こえるそうですから、それを目指しましょうか…。


"迷子の巻"となっているのでシリーズ化されるんですよね、伊藤さん。
次作をお待ちしています。


花見(さくら)花見(さくら)花見(さくら)花見(さくら)

蛇足ですが、京都の哲学の道

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南下し坂を上っていったところに大豊神社という神社がありますが、

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そこの大国社には狛子【ねずみ】がいます揺れるハート

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それだけではなく、狛巳ヘビ狛猿さる(日吉社)や狛鳶(愛宕社)までいますexclamation

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(以上、2016年4月6日18:00頃撮影)

なお、哲学の道には、『えんの松原』の憲平親王の御陵、冷泉天皇櫻本陵【さくらもとのみささぎ】があります。
つくも神 [2018年04月09日(Mon)]
つくも神.jpg

今日ご紹介するのは、伊藤遊さんの『つくも神』 (ポプラの森12)(岡本順/画 ポプラ社 2004.11)ですぴかぴか(新しい)

「つくも神」とは、長い年月を経た道具などに霊が宿って誕生する妖怪の総称です。「付喪神」とも「九十九神」とも記します。

マンションの放火騒ぎの翌日、ほのかはエレベーターの中に、こわい顔をした奇妙な置物があるのを見つけた。それ以来、ほのかと兄の雄一のまわりで不思議な事件が続く。ほのかはなぜか隣の家のおばあさんと土蔵にひかれてゆくが…。
長い時を経て魂を宿した道具たち、「つくも神」の物語。

(カバーより)

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改題し、『となりの蔵のつくも神』(ポプラ文庫ピュアフル154)(岡本順/画 ポプラ社 2013.7)と文庫本になりました。

老朽化の進むマンションで、両親と中学に入って荒れはじめた兄と暮らすほのかは、
古い土蔵がある隣の家のおばあさんが気になっている。
近所でボヤ騒ぎがあった翌日、エレベーターで奇妙な人形を見つけたことをきっかけに、
ほのかの身の回りでは不思議な出来事が起こり始めて――
古道具に宿った「つくも」と少女たちの交流を描く、温かなファンタジー。
巻末に岡本順による絵物語を特別収録。

ポプラ社HPより)

表紙のネッケは、単行本の裏表紙では、根付のガマガエルとなっています。

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ユウキ [2018年04月05日(Thu)]
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福音館書店元編集長 松本徹さんが3月11日の講演の中で、少し触れられた伊藤遊さんの『ユウキ』(上出慎也/画 福音館書店 2003.6)を続けて、読んでみましたぴかぴか(新しい)

2004年、第44回日本児童文学協会賞を受賞しました。

今度の舞台は現代。怨霊も鬼も出てきません。


“転勤都市”札幌の郊外に住むサッカー少年、ケイタ。小学校入学以来、彼の前には「ユウキ」という名の転校生が三度現れ、たくさんの思い出と痛みとを残してまた去っていった。六年生の新学期にやってきた四人目のユウキは、長い髪の女の子。彼女は不思議少女とあだ名され、いろいろな“奇跡”を起こして話題をさらうが、それがやがて彼女を孤立させることになっていく……。多感な子どもたちの心模様を生き生きと描ききった力作。
福音館書店HP


小学6年生の主人公ケイタの目線で書かれています。
ケイタのクラスにやってくる転校生の名前はいつも「ユウキ」で、「祐基」と一緒にカードバトルに熱中し、「悠樹」からはミニ四駆の世界を教わり、「勇毅」とはかけがえのないサッカー仲間になったという思い出があります。
そして6年生になったケイタのクラスにまた新しい転校生がやって来ました。偶然も3回あるとまた……と期待してしまいますが、今度の転校生の「優希」は、占いが得意なはきはきした少女でした…。
かつての親友「ユウキ」の残していったものが、ケイタと現在の「ユウキ」を結びつけるという設定になっていて、そこが、伊藤さんらしい見事な構成です。
冗長なエピソードもなく、現代の小学生の等身大の姿が鮮やかに描かれています。
小学生にお薦めの一冊です。
鬼の橋 [2018年04月03日(Tue)]
鬼の橋.jpg

伊藤遊さんのデビュー作の
『鬼の橋』(福音館書店 単行本1998.10 文庫版 2012.9)
を読んでみましたぴかぴか(新しい)
絵は太田大八さん揺れるハート

この世と地獄を往き来したと伝えられる平安初期の文人、小野篁の少年時代を主人公に、思春期の少年の揺れ動く心情が、勢いある筆づかいで力強く、さわやかに描かれます。「元服」という人生における大きな節目を苦しみながらもこえてゆく篁の姿は、現代に生きる子どもたちにも通じ、多くの読者の共感をよぶでしょう。作者が生まれ育った京都の四季や情景も、作品のなかに巧みに織り込まれ、物語にふくらみと陰影を与えています。
福音館書店HPより)

平安時代の京の都。妹を亡くし失意の日々を送る少年篁は、ある日妹が落ちた古井戸から冥界の入り口へと迷い込む。そこではすでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が、いまだあの世への橋を渡れないまま、鬼から都を護っていた。歴史上の人物、小野篁の少年時代を描いた第三回児童文学ファンタジー大賞受賞作、待望の文庫化。
福音館書店文庫版HPより)

『鬼の橋』は、第3回児童文学ファンタジー大賞を受賞し、出版されることになりました。
児童文学ファンタジー大賞は第1回が梨木香歩さん『裏庭』(理論社 1996.11)、第3回が『鬼の橋』が受賞したのみで、第23回(2017年)まで大賞が出て行ません。

第3回児童文学ファンタジー大賞選考委員長の河合隼雄さんの選評がこちら。

 「鬼の橋」は京都の小野篁の伝説を踏まえた創作である。(略)
 「鬼の橋」の主人公は小野篁の少年時代、十二歳のときから話が始まり、彼が「元服」という人生における重要な節目を、しっかりとこえようとするまでに、その内面においていかに凄まじいドラマが生じるかをよく描いている。それは、現代の少年たちにとっても、そのまま通じることである。現代の思春期の少年がいかに大変な内面生活をしているかは、最近の衝撃的な事件によって一般の人々にもある程度の認識を得ている。
 「鬼の橋」の篁少年は、この世とあの世の境目に立つ経験をする。しかし、これはある意味では、現代のすべての少年が経験していることと言ってよいことだ。ただ、そのような「現実」が通常はあまり見えない。そのために大変な悲劇が生じるのだ。そこで、そのような「現実」を何とか人々に伝えようとすると、ファンタジーという方法が非常に適切になってくる。ファンタジーというのは、現実と遊離した絵空事ではない。
 この作品の強いところとして、作者が京都の史実や伝説に詳しく、それをうまく作中に取り込んでいる点がある。ファンタジー作品を書くためには、現実の認識やその記述ということにすぐれていなければならない。
 「鬼の橋」についても言いたいことは沢山ある。非天丸という鬼が興味深くはあるが、これが十分に描かれていない。なぜ角の片方を祈られたのか。なぜあまりにも「よい鬼」にあっさりと変っていくのか。片角の鬼という存在は極めて重要な役割であるだけに、この非天丸のイメージをもう少し心のなかに抱いてみて欲しい。もう少しイメージが豊かに生き生きとしてくるのではなかろうか。(略)

第3回児童文学ファンタジー大賞 選後評より抜粋)

このHPには、神沢利子佐野洋子清水真砂子さんなどそうそうたる選考委員の方々の選評も載っていますので、是非、チェックしてみてください。

選考委員の方々の選評がそのまま私の読後の感想に通じます。
次作の『えんの松原』よりストーリーが、無理なくストーンと入ってきます。

ただ、鬼が人間へ徐々に変貌していくというせっかくの面白いキャラの非天丸の描き込みが今一つなのはとても残念です。

ですが、それを差し引いても、児童文学ですが、おとなも十分楽しめる内容です。「侮るなかれ、児童文学」です。児童文学だからといって、(児童文学だからこそ)決して、手を抜いていません。
むしろ、児童文学に対峙する作者の姿勢に圧倒されます。

そして、太田大八さんの絵が最高です。


物語の主人公は、小野篁
いわずとれた平安時代を代表する詩人にして、歴史に名を残す有能な文官でもあり、夜ごと井戸から冥府に降って閻魔大王の右腕を務めたという奇怪な伝説(『今昔物語集』『江談抄』など)の持ち主の元服前の少年時代を描いています。彼の成長物語です。

物語は、『篁物語』にある異母妹 比右子との悲恋をベースにしています。

重要なキャラクターの阿子那は、篁が隠岐島に流罪になった時の島の恋人の一人 阿古那からとったと思われます。

征夷大将軍坂上田村麻呂も、死後嵯峨天皇より従二位を追贈され、勅命により死してなお平安京を守護するように平安京に向かって甲冑武器を帯びた立姿(「甲冑・兵仗・剣・鉾・弓箭・糠・塩を調へ備へて、合葬せしめ、城の東に向けひつぎを立つ」)で埋葬された言われており、その話をストーリーの中にうまく取り入れています。
『えんの松原』の伴内侍(ばんのないし)に勝るとも劣らない魅力的なキャラです。

物語では、タイトルにある「橋」と「川」「井戸」が重要なファクターとなっています。

その「井戸」ですが、東山の六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)に残っています。
物語にも出てきましたが、このあたりは六道の辻と呼ばれていて、いにしえの葬送の地 鳥辺野に近く、この世とあの世の境目なのだそうです。

で、私は、2009年と2016年に行ったことがあります。
境内にはなんともいえない雰囲気が漂っていました。
特に、2008年の訪問時は、夕暮が近かったせいか、ただならぬ気配を確かに感じました。

それほど広くない境内に、本堂、閻魔堂、迎え鐘などがあります。
閻魔堂の格子から覗くと、左側に小野篁が彫ったと言われている閻魔大王の像が、右側に小野篁の像が安置されています。
閻魔大王は、迫力があり、ぞくっとしました。

格子戸の向こうに地獄(冥界)へ通じる井戸がありました。

もちろん、物語では、篁が冥府に通う時に使ったと言われる、高野槇(こうやまき)も、小道具として使われています。

蛇足ですが、六道珍皇寺から六波羅蜜寺に行く途中にみなとや 幽霊子育飴本舗があります。
えんの松原 [2018年04月01日(Sun)]
えんの松原.jpg

2018年3月11日(日)に元福音館編集長の松本徹さん講演会「子どもの本に向き合う“覚悟”」で「表現者」として2冊目に紹介されたのが、伊藤遊さんの

『えんの松原』(太田大八/画 福音館書店)

ですぴかぴか(新しい)
初版は2001年5月、福音館文庫版(2014.1)もあります。

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(2018年3月11日 山口県立山口図書館での講演会「子どもの本に向き合う“覚悟”」において『えんの松原』を紹介される松本徹さん)

伊藤遊さんは、前作『鬼の橋』で第3回ファンタジー大賞、第46回産経児童出版文化賞推薦、2000年IBBYオナーリスト文学作品を受賞し、続いて、本書で第35回日本児童文学者協会新人賞、第46回産経児童出版文化賞を受賞をし、周囲の人から、いよいよ大人向けの作品ですね、と言われた時、子ども達のための物語を腰を据えて書き続ける、という決意を 、自分はだれに向かって書こうとしているのか、自分の場所はどこか、臆ぜず、打算もなく、思うところを述べられたそうですかわいいかわいいかわいい


で、私も『えんの松原』を読んでみましたexclamation×2
前作『鬼の橋』に続く平安朝ファンタジーです。


時は平安中期。年若い皇子・憲平は夜ごと現れる怨霊に怯えていた。偶然彼と知りあう少年・音羽は、故あって女童になりすまし下働きをする身。憲平に崇るのは一体何者か?死に至る運命から彼を救うことはできるのか?二人の少年の命を賭けた冒険に、老女官や怪僧阿闍梨、美少女夏君といった面々がからみ、息もつかせぬ物語が栄華の都のまん中に展開する。多感な世代に訴えるテーマ性を合わせ持つ骨太な作品、読みごたえ抜群!
福音館書店のHPより)

帝の住まう内裏のとなりに鬱蒼と広がる松の林。そこは「えんの松原」とよばれる怨霊たちのすみかだった。少年でありながら女童として宮中に仕える音羽は、東宮・憲平に祟る怨霊の正体を探るべく、深い闇のなかへと分け入っていく。そこで彼が見たものは?……真実を求める二人の少年の絆と勇気、そして魂の再生の物語。
福音館文庫版のHPより)


憲平は後の冷泉天皇、主人公音羽丸は伴氏の一族で、音羽丸が音羽として仕える伴内侍は伴保平(やすひら)の娘だったり……歴史的事実や言い伝えなどをうまく落とし込んでいるところも、本書の面白さの一つでしょう。


タイトルとして使われている「えんの松原」は、「宴の松原」または「縁の松原」と記し、 平安京大内裏(宮城)内、内裏(御所=天皇の私的エリア)の西側にあった、内裏に匹敵する広さを持つ、実在した空き地だそうです。饗宴のための広場として用いられたとする説や内裏を建て替える時のための余地という説がありますが、いずれもその事実を示す記録はなく明らかではないとのこと。ここで、若い女性が鬼に惨殺されたとか、肝試しに通り掛かった貴公子が怪しい声に怯えて逃げ帰ったとか、伝えられているそうです。
それをうまく取り入れ、まさに、帝の住まう内裏の隣に鬱蒼と広がる松の林である「えんの松原」を、存在を信じその祟りを怖れていた、怨霊のすみか「怨の松原」として描いています。

奇行が目立ったという憲平、後の冷泉天皇の有名なエピソードも、しっかり効果的に使われています。
三種の神器の一つ、御璽(勾玉)の箱の紐を解いているところを臣下が奪い取って元通りに結び直した、というエピソードを、別の神器・鏡に変えて、音羽と憲平が出会う冒頭の大切な場面としています。

冷泉天皇、御璽の結緒を解き開かんとし給ふ事
 故小野宮右大臣 (實資) 語りて云はく、
冷泉院、御在位の時、大入道殿(兼家)【たちま】ち参内の意有り、よりて俄 【にはか】に単騎馳せ参ず、御在所を女房に尋ぬ、女房云はく、
夜の御殿【=清涼殿】に御す、只今、御璽の結緒を解き開かしめ給ふなり
  【にはか】に驚き、闥【たつ=宮中の小門】を排【おしひら】きて参入す、女房の言の如く筥の緒を解き給ふ間【ころほひ】なり。因【よ】りて奪ひ取り、本の如く之を結ぶ
云々。
(『江談抄』(2-3)より)

江談抄.jpg江談抄 文.png

また、御所の番小屋の屋根に登った、というエピソードも、東宮が自己に目覚め、主体的に生きる決心をする終盤のクライマックスとなっています。

本書は、怨霊をただ恐れる存在ではなく、怨霊を普遍的な“寓意”としても受け取れるようになっていて、真実と対峙するために闇に分け入った二人が、少年として成長していく様子が確固たる筆致で描かれています。

裏表紙の衣が舞う絵も、女性の衣を脱ぎ捨て、音羽が音羽丸として生きていく象徴となっていて、さすが、太田大八さん、深い〜、と感激しました。

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いろいろな意味で、児童書ですが、おとなも楽しめる内容ですので、
是非、おとなの方にも手に取っていただきたい本です。
私自身一気に読み終えましたが、心に残るものがありました。
伊藤遊さんの他の作品も読みたくなりました。


画を描かれた太田大八さんにお目にかかったことがあります揺れるハート
とっても素敵な紳士でした。


なお蛇足ですが、皆さんよくご存知の映画『陰陽師』(2001)は、冷泉天皇が幼い時の東宮指名騒動を描いています。憲平親王は、別腹の異母兄の広平親王を蹴落として東宮の座についた結果、ライバル皇子の外祖父・藤原元方に恨まれ、祟られてしまう、という本書でも語られる“あの”エピソードです。


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第7回 梅棹忠夫・山と探検文学賞に『そして、ぼくは旅に出た。』 [2018年03月31日(Sat)]
大竹英洋さんの『そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ』(あすなろ書房 2017.3)が第7回 梅棹忠夫・山と探検文学賞に選ばれた、という嬉しい知らせが、30日入ってきましたぴかぴか(新しい)

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選考対象50作品のうち最終選考に残った5作品からの選出だそうですかわいいかわいいかわいい

大竹英洋さん、おめでとうございます。
編集をされた松田素子さん、本当によかったですね揺れるハート
心よりお祝い申し上げます。

自分の大好きな作品、大切にしている本がこうして認められるのって、本当に、嬉しいですね。
これからも、いい作品をこのブログで紹介できたら、と思います。
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角野栄子さん @ 国際アンデルセン賞 作家賞 [2018年03月29日(Thu)]
児童文学作家の角野栄子さんが児童文学のノーベル賞といわれる「国際アンデルセン賞」の作家賞を受賞されたという嬉しいニュースが26日入ってきましたぴかぴか(新しい)

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(2018年3月28日付読売新聞)

日本人の同作家賞受賞は1994年のまど・みちおさん、2014年の上橋菜穂子さんに続き3人目で、画家賞の1980年の赤羽末吉さん、1984年の安野光雅さんを入れると5人目です。

おめでとうございますかわいいかわいいかわいいかわいい

角野さんには、ジョイネットの活動の講師を何度もしていただいて、大変お世話になっています揺れるハート

講演会で必ず言われるのが、
「魔法は一つ。誰でも必ず持っている。」
と。

最近では、2016年2月7日、下関市の勤労福祉会館で行った「おばけのアッチ 誕生のヒミツ  〜〜作者 角野栄子さんをかこんで〜〜」です。

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いつも素敵な角野さん。この時は81歳exclamation×2

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こどもの広場の横山さんとのかけあいで進みました。

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会場にはキキになりきった少女も。2年生だそうです。熱心に質問していました。

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アッチのバッジも作りました!
谷川俊太郎 × 小室等 @ プロテクトソング [2018年03月28日(Wed)]
1978年、谷川俊太郎さんと小室等さんは共作アルバム「プロテストソング」をリリースしました。

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そして約40年の歳月を経て2017年に届けられたのが「プロテストソング2」

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(2月13日付新聞)


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『プロテクトソング』(旬報社 2018.3)は、
右に開くと、そこで歌われるすべての詩が載っていて、
左に開くと、その楽譜(解説付)が収録されていて、
真ん中に、今という時代をめぐって詩人 谷川俊太郎さんとミュージシャン 小室等さんの対談が掲載されている
という何とも豪華なつくりの本です。

3月24日歌われた全12曲のうち、「プロテクトソング2」からは、

るんるん希望について私は書きしるするんるん
るんるん死んでからるんるん
るんるんおしっこるんるん
るんるん死んだ男の残したものはるんるん (武満徹/作曲)
るんるん木を植えるるんるん

の5曲を歌われました。

娘さんのこむろゆいさんとのユニット“Lagniappeラニャップ)”の演奏が主でした。
ラニャップは、「おまけ」などという意味で、アーサー・ビナードさんが命名されたとのこと。
私は、ラニャップの演奏を聴くのは、2017年4月29日 中原中也生誕祭 空の下の朗読会(中原中也記念館)以来ですかわいい

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(2018.3.24 下関市生涯学習プラザ)

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(2018.3.24 長州屋台村)

24日のイベントの出演依頼ですが、実は、小室等さんだけで、ゆいさんにはお願いしていませんでした。
だから、チラシには、ラニャップの名前も、ゆいさんの名前もありません。
でも、小室さんは、ゆいさんも一緒に、と言われて、今回のラニャップの演奏となった訳です。

ゆいさんは、“おまけ”のようなもの。
“おまけ”って、もらった人を幸せな気持ちにしますね揺れるハート

二人は、舞台の上でも、舞台を降りても、息ピッタリで、ステキな父娘です。

素晴らしい演奏ありがとうございました。
絵の中のぼくの村 [2018年03月26日(Mon)]
『絵の中のぼくの村』(くもん出版 1992.8)は、
絵本作家 田島征三さんが、双子の兄 征彦さんと高知県芳原村で過ごした少年時代を綴ったエッセイ集ですぴかぴか(新しい)
田島さんの絵本の原風景を見ることができる本です。

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東陽一監督により映画化されているので、映画の方をご存知の方も多いのでは・・・。
映画は1996年に第46回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞しました。

24日田島さんにお会いしたら、ぜひ聞いてみたいことが、いくつかありました。

表紙の絵は、ハヤトウリを描いたものです。

 表紙の絵は、ニガウリを描いた『はたけうた』に通じていますね。
 お母さんを描いたあの絵は、お母さんに贈られましたか?

とお話ししたかったのですが、お話しできませんでした。

大人になってぼくがいつか立派な絵かきになれたなら、美しい母の姿をすばらしい絵を描こう。そしてその絵を世界中の人々に見てもらい、そして母に贈ろう。そうすればきっと母は今の哀しみを忘れるほど喜んでくれるに違いない。」(P.74)

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講演会では、小室さんの演奏でるんるんとべバッタるんるんを歌ってくださいまいた。

 病院通いをしていた時に、いつも現れたバッタは、
 『とべバッタ』のモチーフになったのではないですか?

とも、お聞きしたかったです。

「…約1か月、毎日その病院まで通った。大人の足でも一時間も要する道のりを、真夏の炎天下てくてくぼくはひたすら歩いた。…(略)…榎の下までゆくと、もうぼくの足は疲れて、体は熱くけだるくて、歩くのがいやになるのだった。まだ四半分もいってないのである。ところがここまでくると、いつもぼくの足元からバッタは跳び立って、またぼくのゆく先でぼくを待っていてくれる。その様子は、「セイゾウ、元気を出してここまできいや(おいで)」とバッタがいっているみたいで、ぼくはバッタに励まされような気分になって、てくてく歩き歩きゆく。」(P.33〜34)

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講演会では、6月位に佼成出版者社から出る『ぼく おたまじゃくし』を読んでくださいました。
なんと、それは、本著16ページにあるオタマジャクシのエピソード、そのままでした。

オタマジャクシはバケツの中で元気に育って、やがて手や足を出ししっぽを捨てて小さな蛙となりぴょんぴょん逃げていった。だが、一匹だけ手も足も出ないのがいた。(略)ある大雨の夜、水槽が雨水であふれ〇〇〇はその水とともにどこかへ流れていった。
ぼくは今でもあの〇〇〇の子が庭や道を泳いで川までたどりつけたのだろうかと思ってみる。四十年以上前に逃げていった〇〇〇の子は、いまでもぼくの心の奥の方の叢の根方の湿った土の上を必死で川に向かって泳いでいるのである。
」(P.16)

ネタバレになるので、〇〇〇が何だったか、を書くのはやめます。
知らないで聞かれた方は、色々想像されて楽しまれたようでしたので。

サイン会と打ち上げの時、そのお話だけは少しだけすることができましたexclamation×2

 『ぼく おたまじゃくし』は、『絵の中のぼくの村』の中のエピソードですね。
 読み始められてすぐに分かりました。
 〇〇〇はどうやって川にたどり着くのか、興味津々だったのですが、
 意外な展開で、すごい、そうくるか、と思いました。さすが、田島さんです。
 70年近くたったけれど、川に帰ることができて、よかったですね。
 田島さんの中で、心の澱が取れたのでは…。

本当は、もっともっとお話したかったのですが、小室さんを飛行場にお送りするのにお供するという素敵なミッションがあったので、残念ながら、打ち上げを途中退席しました。

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(2018.3.24 下関市生涯学習プラザ)
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(2018.3.24 長州屋台村)

握手させていただいた田島さんの手は繊細で柔らかく暖かかったです。

これからも、ステキな作品を描いてください揺れるハート
ぼくたちに翼があったころ [2018年03月11日(Sun)]
いよいよ、ジョイネット主催の松本徹さんの講演会当日となりましたぴかぴか(新しい)

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本も揃えたし、資料も刷ったし、名簿も準備したし、準備は万全です。
今日は、お天気も良さそうだし、いい講演会になりそうです。
参加申込されていない方も大歓迎です。
お待ちしています。

福音館書店元編集長の松本さんが編集された本のうち、今日紹介するのは、『ぼくたちに翼があったころ コルチャック先生と107人の子どもたち』タミ・シェム=トヴ/作 樋口範子/訳 岡本よしろう/画 2015.9)ですぴかぴか(新しい)

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20世紀初頭のポーランド・ワルシャワで、愛と理想主義を貫く孤児院運営をし、ユダヤ人孤児たちとともにガス室に消えたコルチャック先生。その「孤児たちの家」では、信頼と自立・協働に基づく暮らしが息づき、子ともたちの生きる喜びが輝いていました……。施設にいた経験を持つ何人かへの聞き取りや詳細な調査をふまえ、戦争と暴虐に踏みつぶされるまで続いた輝くような日々を克明につづる、渾身のノンフィクション・ノベル。

福音館書店のHPにあります。

実在した「孤児たちの家」を舞台に、新聞記者になるという自分の夢に向かって努力するユダヤ人の少年ヤネク・ヴォルフと個性豊かなその仲間たちを生き生きと描いた作品です。

農場「小さなバラ」の木陰で、読書好きな少女ハンナが、子どもたちにせがまれて本を読み聞かせる場面があります。

ふたりの少年は、人間にも鳥のように翼があったら、どんなにいいだろうと話している。・・・」

この物語のタイトルは、おそらくここからきたのでしょう。
この本 ― 『いま一度子どもに帰れるとしたら』は実際に1925年にコルチャック先生が著した本です。

最終章は涙が溢れて仕方ありませんでした。

「・・・いつものように大きなガラス窓を開けて、窓辺の餌台につぶ餌をまいた。白みはじめた窓から、スズメたちが次々と、ドクトルめがけて飛んでくる。
 ドクトルは、ぼくの父さん、そのときぼくは、心からそう思った。


ぜひ、子どもたちに読んでもらいたい本です。
また、おとなたちも読んでもらいたいです。 

蛇足ながら、英文タイトルは

I'M NOT A THIEF
A story about Janusz Korczack's orphanage

です。
七十二歳の卒業制作 [2018年03月10日(Sat)]
3月11日(日)に福音館書店元編集長の松本徹さんの編集された本に、田村せい子さんが書かれた『七十二歳の卒業制作 ― 学ぶこと、書くこと、生きること』(2016.5)がありますぴかぴか(新しい)
画は岡本よしろうさんでするんるん

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家庭の事情で中学を中退し、60代に至り一念発起、夜間中学を皮切りに、定時制高校を経て大学へと進んだ著者が、自らの幼年期から青春期までを創作作品につづり、「卒業制作」としてまとめたものが本著の基になっています。

お話は、三部で構成されています。

第一部が、3歳で敗戦を迎えた君子が物心ついてから、中学校にひと月通っただけで、様々な職を転々とし、結婚する相手に出合うまでの話です。
(私から考えたら信じられない程の)悲しい話も辛い話もさらりと書いてあり、そんなに悲壮な印象はありません。
基本的に、明るい!

幕間に、姉妹そろっての墓参の話をはさみ、第二部には創作が載っています。

あとがきには、感銘を受けました。
「私は、気がすんだのです」とあります。

勉強するのに遅すぎることはないのです。
学ぶということはどういうことか、今一度考えるにはいい本です。

著者の指導教官である児童文学作家の富安陽子さんの「解説」が素敵ですかわいい

岡本よしろうさんの絵も秀逸です揺れるハート


3歳で敗戦を迎えた君子の最初の記憶は防空壕での体験。大家族の戦後の生活は苦しく、中学校にはひと月通っただけで、住みこみの店員として働きに出ます。以来、復学の機会はなく、いろんな仕事を転々として、十代のうちから人生の厳しさに直面。やがて、運命の人との出会いが……。主人公・君子とは、60代に至って一念発起し、夜間中学、定時制高校、そして大学へと失われた学びを取りもどす道を歩んだ作者その人なのです。
福音館HP


かわいい田村せい子さんかわいい
1942年、大阪市生まれ。1955年5月、家庭の事情で中学校への通学を約ひと月で休止し、うどん屋の住みこみで働き始める。以降、転職を重ねる。1963年結婚、夫の郷里・鹿児島へ。その後、夫の転職にともない愛知県犬山市、三重県鈴鹿市、再び鹿児島へと転居。その間、家事・育児のかたわら販売員・事務員として働く。1999年、大阪市にもどる。コンビニエンスストアでアルバイト。2006年、大阪市立天満中学校夜間学級入学。2007年、大阪府立大手前高等学校定時制に入学。2010年、梅花女子大学入学、2014年卒業。


かわいい岡本よしろうさんかわいい
1973年宇部市生まれ。1997年武蔵野美術大学油絵学科卒業。卒業後は山口県で制作活動を行っていたが、絵本の仕事をきっかけに2009年より神奈川県横須賀市に移住。出版関係のイラストを手がけ始める。現在は、絵画・イラスト・立体・動画・インスタレーションなど、幅広く制作活動を行っている。
瓜と龍蛇 @ いまは昔 むかしは今 [2018年03月09日(Fri)]
3月11日(日)の講演会の準備のため 松本徹さんが担当されていた本を探していたら、『いまは昔 むかしは今』(網野善彦・大西廣・佐竹昭広/編集委員)という叢書に巡り合いましたぴかぴか(新しい)

全5巻と索引でなるこのシリーズは、この本を企画・構成をした福音館書店の底力、子どもの本に向き合う「覚悟」を改めて認識させるものです。
珠玉の作品ですかわいい

各巻、事典のような重厚な厚みがあり、数々の話の集大成となっています。
寝ながら読む私の読書スタイルには向きませんが、偶然開いたページを読んでいっても楽しい本です。


その1巻めが『瓜と龍蛇』(1989.6)。
   大意・再話 佐竹昭広・仲倉眉子・長谷川摂子・大西昌子
   写真撮影  杉田徹
   模写・挿絵 桂川潤

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「ドイツの博物館に秘蔵された美しい日本の説話絵巻1軸。その物語に隠された謎を追う旅は、眠っていた物語たちに命を吹き込み、やがて、天空と海原に広がりわたる珠玉のお話集となる。」

と福音館書店のHPにありますが、実は、この絵巻の実物を見たことがあります揺れるハート
2008年7月30日〜8月10日の間、山口県立美術館の「美がむすぶ絆 ベルリン国立アジア美術館所蔵日本美術名品展」で展示されていました。巡回展(郡山市立美術館、岩手県立美術館、愛媛県美術館)だったので、他の美術館でご覧になった方もいるのでは・・・。
その展覧会は貴重な作品が多く作品保護のため会場全体の照明も暗く、観覧者は意外と少なかった記憶がありますが、絵巻大好きな人間の私は、展示されていた約10日間、殆ど毎日じっくり見せていただきました。

その「天稚彦草紙絵巻(あめわかひこそうしえまき)」は、15世紀に京都で活躍したやまと絵師・土佐広周(ひろかね)が描いた室町時代(15世紀)の絵巻です。「天稚彦(彦星)」と結婚した娘「七夕」の二人が、天の川を隔てて離れてしまうまでの「七夕」のルーツとなる壮大な物語が描かれています。

『瓜と龍蛇』のページをめくると最初に目に飛び込む数々の瓜・・・初めは繋がりこそ感じられなかった「瓜」と「龍蛇」ですが、瓜と瓢簞を手がかりにして、今から昔へ、そして昔から今に繫がる、日本列島に暮らした人びとの心を探る旅へ誘います。旅を終えると、「瓜」と「龍蛇」は繋がりを持ちます。

各巻それぞれの観点で編集されており、その企画力に驚嘆しました。

2巻『天の橋 地の橋』(1991.1)
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3巻『鳥獣戯語』(1993.2)
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4巻『春・夏・秋・冬』(1995.12)
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5巻『人生の階段』(1999.2)
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『索引』(1999.2)
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装丁は、田村義也さんです。
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