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こどもと本ジョイントネット21・山口


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ムットーニからくり文学館C中原中也「地極の天使」より「アトラスの回想」 [2019年10月04日(Fri)]
【前回の続き】

次は、中也の「地極の天使」

 
  地極の天使
  
 われ星に甘え、われ太陽に傲岸ならん時、人々自らを死物と観念してあらんことを! われは御身等を呪(のろ)ふ。
 心は腐れ、器物は穢けがれぬ。「夕暮」なき競走、油と虫となる理想! ――言葉は既に無益なるのみ。われは世界の壊滅を願ふ!
 蜂の尾と、ラム酒とに、世界は分解されしなり。夢のうちなる遠近法、夏の夜風の小鎚こづちの重量、それ等は既になし。
 陣営の野に笑へる陽炎(かげろふ)、空を匿して笑へる歯、――おゝ古代! ――心は寧ろ笛にまで、堕落すべきなり。
 家族旅行と木箱との過剰は最早、世界をして理知にて笑はしめ、感情にて判断せしむるなり。――われは世界の壊滅を願ふ!
 マグデブルグの半球よ、おゝレトルトよ! 汝等祝福されてあるべきなり、其の他はすべて分解しければ。
 マグデブルグの半球よ、おゝレトルトよ! われ星に甘え、われ太陽に傲岸ならん時、汝等ぞ、讃ふべきわが従者!



をモチーフに天空を背負わされたに「アトラスの苦難」に絡めて制作された「アトラスの回想」(2015年 世田谷文学館蔵)ぴかぴか(新しい)

アトラスは回想する、自らに課せらえた罪を、
そして夢見る。
開かれた天空に翼を広げ舞う天使を。
われ星に甘え、
われ太陽に傲岸ならん時、
汝等ぞ、讃ふべきわが従者!」

(入館者配布パンフレットより)

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「地極の天使」が「アトラス」の物語になるとは、ムットーニの着想の豊かさに脱帽ですひらめき

アトラスの背負う天空が持ち上げられて開くと、パカッと二つに割れ(本当に、パカッとです!)、夜と昼の大地の風景に分かれた球体の中から、女性の有翼の天使が現れます。
日常の象徴である木箱とレトルト(このあたりの作り、実に細かいです)を手に持っていてる天使は、翼を広げて、足元のミラーボールを煌めかせながら、天空へと舞い羽ばたいていきます。そして、静かに舞い降りて来ると、ゆっくりと天空は閉じ、再びアトラスが天空を担ぎます。

そして、この天空には、「マグデブルグの半球」を暗示しているのでしょう、引っ張る取っ手(?)が付いています。

アトラスの回想.jpg

蛇足ではありますが、言葉の説明を少し……かわいい

「マグデブルグの半球」とは、1657年、ドイツのマクデブルク市長 オットー・フォン・ゲーリケが行なった、大気圧を示す実験です。二つの銅製の半球を動物の皮を間にはさんですきまなく接合し、真空ポンプで内部の空気を抜きました。この半球は、両側から8頭ずつの馬で引っ張り合ってようやく離れ、大気圧の存在とその大きさが示され、真空の存在を証明しました。

「レトルト」とは、物質の蒸留や乾留をする際に用いられるガラス製の器具で、形状としては、球状の容器の上に長くくびれた管が下に向かって伸びています。錬金術などで用いられていました。

「アトラス」とは、ギリシア神話に登場する 巨躯を以て知られた神で、ゼウスによって、世界の西の果てで、両腕と頭で天の蒼穹を支える役目を負わさたとされています。

【次回に続く】
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