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こどもと本ジョイントネット21・山口


〜すべての子どもに本との出会いを〜

子どもと本をむすぶ活動をしています


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中原中也とお酒 [2019年02月28日(Thu)]
以前、湯田温泉観光回遊拠点施設狐の足あと 2階多用途スペースで「山口市の地酒展・文学者編」が開催されていました。

カフヱーにて
狐の足あと 山口市の地酒展・文学者編.jpg

醉客の、さわがしさのなか、
ギタアルのレコード鳴つて、
今晩も、わたしはここで、
ちびちびと、飮み更かします

人々は、挨拶交はし、
杯の、やりとりをして、
秋寄する、この宵をしも
これはまあ、きらびやかなことです

わたくしは、しよんぼりとして、
自然よりよいものは、さらにもないと、
悟りすましてひえびえと

ギタアルきいて、身も世もあらぬ思ひして
酒啜ります、その酒に、秋風沁みて
それはもう結構なさびしさでございました



(酒は誰でも酔はす)
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酒は誰でも酔はす
だがどんなに傑れた詩も
字の読めない人は酔はさない
――だからといつて
酒が詩の上だなんて考へる奴あ
「生活第一芸術第二」なんて言つてろい

自然が美しいといふことは
自然がカンヴアスの上でも美しいといふことかい――
そりや経験を否定したら
インタレスチングな詩は出来まいがね
――だが
「それを以つてそれを現わすべからず」つて言葉を覚えとけえ

科学が個々ばかりを考へて
文学が関係ばかりを考へ過ぎる
文士よ
せち辛い世の中をみるが好いが
その中に這入
(はい)つちや不可(いけ)ない


夜空と酒場
IMG_8132.JPG

夜の空は、広大であつた。
その下に一軒の酒場があつた。


空では星が閃めいて[きら]めいてゐた。
酒場では女が、馬鹿笑ひしてゐた。


夜風は無情な、大浪のやうであつた。
酒場の明りは、外に洩れてゐた。


私は酒場に、這入[はい]つて行った。
おそらく私は、馬鹿面さげてゐた。


だんだん酒は、まはつていつた。
けれども私は、醉ひきれなかつた。


私は私の愚劣を思つた。
けれどもどうさへ、仕方はなかつた。


夜空は大きく、星もあつた。
夜風は無情な、波浪に似てゐた。



湖上
IMG_8131.JPG

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、

沖に出たらば暗いでせう、
(かい)から滴垂(したた)る水の音は
昵懇
(ちか)しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切
(とぎ)れ間を。

月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇
(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。

あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言
(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。


ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。



月夜の浜辺
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月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。


それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂たもとに入れた。


月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。


それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
   月に向つてそれは抛はふれず
   浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。


月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁しみ、心に沁みた。


月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?



「湖上」や「月夜の浜辺」がお酒をうたった訳ではないのですが、
4篇ほど酒にまつわる詩、2篇の随筆をあげます。


(酒)



原因が分りません
蜘蛛は五月雨(さみだれ)に逃げ場を失ひました

キセルを折れ
キセルを折れ
犬が骨を……
ヘン、何故(なぜ)です?



渓流

渓流(たにがは)で冷やされたビールは、
青春のやうに悲しかつた。
峰を仰いで僕は、
泣き入るやうに飲んだ。

ビシヨビシヨに濡れて、とれさうになつてゐるレッテルも、
青春のやうに悲しかつた。
しかしみんなは、「実にいい」とばかり云つた。
僕も実は、さう云つたのだが。

湿つた苔も泡立つ水も、
日蔭も岩も悲しかつた。
やがてみんなは飲む手をやめた。
ビールはまだ、渓流(たにがは)の中で冷やされてゐた。

水を透かして瓶の肌へをみてゐると、
僕はもう、此の上歩きたいなぞとは思はなかつた。
独り失敬して、宿に行つて、
女中(ねえさん)と話をした。



青木三造

序歌その一
こころまこともあらざりき
不実といふにもあらざりき
ゆらりゆらりとゆらゆれる
海のふかみの海草(うみくさ)
おぼれおぼれて、溺れたる
ことをもしらでゆらゆれて

ゆふべとなれば夕凪[ゆうなぎ]
かすかに青き空慕[した]
ゆらりゆらりとゆれてある
海の真底の小暗きに
しほざゐあはくとほにきき
おぼれおぼれてありといへ

前後(ぜんご)もあらぬたゆたひは
それや哀しいうみ草の
なさけのなきにつゆあらじ
やさしさあふれゆらゆれて
あをにみどりに変化(へんげ)すは
海の真底の人知らぬ
涙をのみてあるとしれ

その二
  冷たいコップを燃ゆる手に持ち
  夏のゆふべはビールを飲まう
  どうせ浮世はサイアウが馬
   チヤツチヤつぎませコップにビール

  明けても暮れても酒のことばかり
  これぢやどうにもならねやうなもんだが
  すまねとおもふ人様もあるが
   チヤツチヤつぎませコップにビール

  飲んだ、飲んだ飲んだ、とことんまで飲んだ
  飲んで泡吹けあ夜空も白い
  白い夜空とは、またなんと愉快ぢやないか
   チヤツチヤつぎませコップにビール



宿酔

朝、鈍い日が照つてて
  風がある。
千の天使が
  バスケットボールする。

私は目をつむる、
  かなしい酔ひだ。
もう不用になつたストーヴが
  白つぽく銹(さ)びてゐる。

朝、鈍い日が照つてて
  風がある。
千の天使が
  バスケットボールする。



散歩生活
「女房でも貰つて、はやくシヤツキリしろよ、シヤツキリ」と、従兄みたいな奴が従弟みたいな奴に、浅草のと或るカフエーで言つてゐた。そいつらは私の卓子(テーブル)のぢき傍で、生ビール一杯を三十分もかけて飲んでゐた。私は御酒を飲んでゐた。好い気持であつた。話相手が欲しくもある一方、ゐないこそよいのでもあつた。(略)


亡弟
(略)
九月八日の宵であつた。私はその夜の汽車で東京に向けて立つことにしてゐた。弟の寝てゐる蚊帳(かや)のそばにお膳を出して、私はそこで、グイグイと酒を飲んでゐた。『今度はうんと、勉強すらあ』なぞと、時々蚊帳の中の、よくは見えない弟に対して話しかけながら、私は少々無理にお酒を飲んでゐた。(略)
やがて母が俥が来たと知らせた声に、弟は目をパチリと開けた。『あんまり酒を飲まないやうにしてくれ。』といふなり弟は目をつむり、もう先刻さつきから眠つてゐるもののやうになつた。『ぢや大事に。』けれども弟はそのまゝであつた。目を開けさして、私はもう一度言葉を掛けようと思つた、『泰三、――泰三。』『およしおよし』と蚊帳のそばまで来てゐた母が云つた。私は諦めて蚊帳を出ると、飲み残しの酒を急いで飲んだ。(略)
友達を訪ねて、誘ひ出し、豪徳寺の或るカフヱーに行つて、ビールを飮んだ。その晩は急に大雨となり、風もひどく、飮んでる最中二度ばかりも停電した。客の少ない晩で、二階にゐるのは、私と友達と二人きりであつた。(略)
私は同宿人のゐないことが、つまり六畳と三畳二間きりのその二階が私一人のものであることが、どんなに嬉しかつたか知れはしない。存分に悲しむために、私は寝台にもぐつて、頭から毛布をヒツかぶつた。息がつまりさうであつた。が、それがなんであらう、私がビールを飲んでゐる時、弟は最期の苦しみを戦つてゐた!(略)



原田和明さんのオートマタ「或る中也」
中也が酒瓶を振り回しています。
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湯田温泉の「白狐伝説」のオートマタもあります。
キツネがつるはしを持つ作品は「キツネの入った池を掘ると湯が出た」という伝説に因んだものです。
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私達も作家さんなどが来られると、湯田温泉で冬はフグ刺しを肴に県内のお酒の利き酒を楽しみます。
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