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精神科医、カウンセラーも燃え尽きる(4) [2008年06月18日(水)]

精神科医、カウンセラーも燃え尽きる(4)

 セラピスト(精神科医、カウンセラー、スタッフ)を燃え尽きさせない、治療意欲を喪失 させないように、弁証法的行動療法(*1)では種々の対策が組み込まれている。チームで取り 組む大きなクリニックでないとできないものもある。自分もカウンセリングを行なっている ので、燃え尽きないように、また、活動意欲喪失におちいることを防止するために参考にし たい。

(3)セラピストにコンサルテーション

 セラピストの燃え尽きを防くための対策として、弁証法的行動療法のリネハンのチームで はコンサルテーションが行なわれる。
 セラピストがむつかしい患者に怒りを覚えたり、治療意欲がなくなったりして、次のよう なことが起きることがある。
  • 効果のないセラピーを行なう
  • 大きな間違いをおかす
  • 極端な立場をとる
  • スタッフ同志、あるいは、患者を否認、責める
  • 自分のやり方に対する他人からの批判に脆弱。その混乱の結果「スタッフ分裂」を起こ す
 こうした治療スタッフを支援して、危機を早く解決するための戦略がある。(572頁〜)
  • 治療についての協議ミーティングを開催する。セラピストが受け持ちの患者の事例を報 告して、コンサルタントは助言する。参加者は、人の言うことを受け入れ、防衛的にならな いことが要求される。
     ただし、理論の異なる背景を持つセラピストが同じ施設にいて、弁証法的行動療法を適用 できない場合、対立したままではおかず、対立の総合を模索しなければならない。
  • 合意事項を作り、それを守る
    • 意見が対立するとき、双方を認証し、弁証法的に総合の解決策をさぐる。誰が正しい、 誰が間違っている、と言わない。
    • セラピストは他のセラピストの治療法を受け入れる。批判しない。
    • セラピストは他のセラピストの限界が異なるのを受け入れる。
    • セラピストはすべてのセラピストが間違いをおかすということを受け入れる。
  • セラピストは他のセラピストを励ます。援助する。
 ここには、まさに、マインドフルネス心理療法の理念が含まれている。セラピストが、マ インドフルネスで、アクセプタンスであることを実行すれば、上記のとおりになる。 他のセラピストを批判したくなる時、自分の中に不満が起きていて、他のセラピストを受容 しないで批判の言葉を出してしまう。誰でもベストを尽くしているつもりであるが間違いを 犯す。それを認証されずに批判されると批判されたセラピストは相当に落ち込む、わかって くれないと怒りを覚える。こんなセラピーにいいことはない。批判されそうなセラピストの 態度(防衛的、攻撃的、回避的など) も妥当なものとして認証した上で、総合の対策を模索する。
 マインドフルネス心理療法は、ただ、患者にマインドフルネス心理療法を教えるだけでは すまない。自分もそうであらねば、患者さんによい医療を提供できない。これは相当むつか しい。だから、私も、自分を未熟だと思っている。
 チームで治療を提供する場合には、先輩やコンサルタントの人の支援を得ることができる が、個人で行う場合、コンサルタントの役割も自分自身の叡智に求めざるをえない。それが マインドフルネスでなく、アクセプタンスでないと、叡智が曇る。結局、合理的理屈を理解する だけではなく、瞬間瞬間に受容が実現されなくてはならないのだから油断できない。つまり 常にマインドフルネスの実践のただなかである。
    (*注)
  • (1) アメリカのリネハンが開発した心理療法で境界性パーソナリティ障害、物質乱用または物質 依存、無茶喰い障害、神経性大食症、うつ病に効果があったという。記事中の(xx頁)は「 境界性パーソナリティ障害の弁証法的行動療法」リネハン、誠信書房。


 弁証法的行動療法のチームは、すばらしいですね。こんな職場で働いてみたかった。スタ ッフが多くなったら、ぜひ、採用したい戦略です。最初、崇高な精神でこの活動を始めたは ずなのに、本質的ではないところでスタッフが対立し、疲弊し、やめていくのは社会にとっ て大きな損失です。自己洞察瞑想療法では「受容」や「価値の確認」の手法が関連する。本 質でないところでの不満対立で、大きな願い(価値)<社会貢献したい、他者を救済したい >の実現行動から撤退していく。それでは、貴重な人材の喪失で社会的損失が大きい。この 領域に志す人は少ない。精神科医療を崩壊させるのをセラピスト側がしないようにしたい。

 なお、この本は相当、むつかしくて、マインドフルネス心理療法の基礎実践をしていない 人は理解できないでしょう。
 禅の学問は不毛の対立(○○のみが正しいという)の様相をみせているが、真相は両方と も妥当で、総合がないのでは ? リネハンのような誠の弁証法の実践者は表面の言葉、理論の対立にとらわれず、「結局 救われるためにはどうすればいいのか」という「総合」で生きていくようですね。表面の言 葉の対立を総合したところに救済の真相がある。弁証法的行動療法はボーダーライン、リス トカット、幼児虐待されたために成人になって苦 しむ心の病気、激しい対人関係様式、重症うつ病などに適用されます。日本人も多くの人が 苦しんでいる問題を治療できる心理療法でしょう。これから日本の精神科医、心理学者が弁 証法的行動療法を研究し、日本の禅学との比較もするでしょう。リネハンの弁証法的行動療 法は禅の学問を見直すことを迫ってくると思われます。
Posted by 埼メンタル協会/大田 at 20:18 | カウンセラーのストレス | この記事のURL