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自己洞察瞑想療法 [2012年02月16日(Thu)]

自己洞察瞑想療法(2)

 =マインドフルネス心理療法の一種

<第4> 自己洞察瞑想療法(SIMT)という名称の由来

 このように、欧米のマインドフルネス心理療法とは違う理論と背景を持つ(しかし、表面のマイ ンドフルネス、アクセプタンスの技法は類似する)ので、別の名称で呼ぶことにした。
 マインドフルネス、アクセプタンスをおりこんだ心理的治療技法でうつ病、不安障害などの改善支援 を行なってきたが、いつのまにか(大田の命名であるがいつであったか明確でない)、この手法を 「自己洞察瞑想療法」( Self Insight Meditation Therapy )とよぶようになった。自分の心を洞察 し、不快な症状、問題でも、回避せず、他者の傷害に向かわず、正面から自己に向きあい、不快な 事象の受け入れるべきは受け入れて、自己の目的を実現するという適切な意志を行使していくスキ ルを向上させていく。結局、自分の生きていく上での全ての精神活動を洞察するものであるので、 「自己洞察」の心の鍛錬といえる。
 禅は自己とは何かを探求することであるとして禅のスローガンに「己事究明」という言葉がある 。自己とはなにかを究明することである という。西田哲学も自己の探求が主題である。アメリカのマインドフルネス心理療法の源流をつく りあげたジョン・カバット・ジンは禅を学び、弁証法的行動療法を創始したリネハンなどは禅の実 践を応用したものだという。ジョン・カバット・ジンは次のようにいう。
 「一般的には、瞑想はあくまでも仏教の枠組みの中でとらえられていますが、その本質は宗教を 超えた普遍的なものです。注意を集中するというのも、基本的には自分の内部を深く見つめて、自 分を探求し、自分を理解するための方法なのです。ですから、私はとりたてて東洋の文化や仏教を 、ここでもちだすまでもないと考えています。注意集中力のもつ力は、あらゆる宗教やイデオロギ ーに依存していないところにあります。 つまり、誰でもその恩恵を受けることができるわけです。もちろん、注意集中力という考え方が、 煩悩からの救済と雑念をはらいのけることを主眼とした仏教の修行から生まれてきたことは偶然で はありません。」(4)
 日本の禅の開祖の位置にある道元(鎌倉時代)に「仏道をなろうというは、自己をなろうなり」 の語がある。自己を習うことである。自己について学習するという目標がある。
 また、アメリカのマインドフルネス心理療法者のうち、ある人は、仏教の瞑想実践を応用したも のだともいう。仏教の創始者とされる釈尊には「自燈明・法燈明」という語がある。これは次の言 葉を簡略にしたものである。
   「自らを燈明とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、真理(法)を燈明とし、
    真理をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ」
 この言葉が法句経では短い詩句にまとめられて友松圓諦氏の美しい翻訳がある。
   「おのれこそ
   おのれのよるべ
   おのれをおきて
   誰によるべぞ
   よくととのえし
   おのれにこそ
   まことえがたき
   よるべをぞ獲ん」
 初期仏教も禅も個人が自己を学ぶことを通しての自立をめざしている。そのために「自己」とは 何か深く観察し新しい見方を発見(それが洞察である)して、自己をよくととのえて、その智慧を 指針として生きていくことを目標として、他人の教えに依存しないことを重要な方針としている。 心を病む人は治療を受けて治ったら支援者から離れていくものである。自己を深く洞察して、自己の精 神作用や自己自身を洞察して、修正すべき自らの精神活動がわかれば変えていくこともできる。自 己の洞察がすすめば支援者に依存することなく自立していくことができる。西田哲学も自己につい て種々の段階があるとして、自己の種々の作用、深い自己について論理的に考察している。
 こうして、瞑想(自己の精神現象、精神作用、自己自身を現在進行形で観察して洞察すること) を通して自分の種々の精神活動や自己自身、現実の世界を新しい見方で洞察して、つらい現実があ ろうとも自己の目標(価値)を実現する行動をしていく意志作用のスキルを獲得していくことを支 援する心理療法という事味から「自己洞察瞑想療法」と名づけた。
 これまで、うつ病、非定型うつ病、自殺念慮、パニック障害、対人恐怖症、外傷後ストレス障害 (PTSD)、不眠症、過食症、心気症、親子夫婦の不和などに効果がみられた。支援期間は、半年から 2年かかっており、それが薬物療法や他の心理療法でも効果がなく長期化した難治性の問題のゆえ なのか、それとも、理論や技法が不十分であるゆえなのか判明していない。
(注)
(1) 「マインドフルネス&アクセプタンス  ー認知行動療法の新次元ー」
編著=S.C.ヘイズ、V.M.フォレット、M.M.リネハン、 ブレーン出版、2005/9/10
(2)臨済宗の坐禅の目標は、一般的に悟りを得ることとされる。曹洞宗の坐禅は、一般的には、何の 目的を持たずにただ坐禅することとされる。どちらも、精神疾患などを治すことを目標とはしない 。初心者段階においても、精神疾患の改善支援ということは説かれない。そこで、 宗教的目標とはその宗教教団の標榜する「悟りを得ること」または「何の目的を持たず坐禅するこ と」とであるとしておく。これらは、共に、かなり高い立場に立つ境地をさしているようである。それぞれの開祖が、一般庶民(現在では僧侶でない一般市民)の現実の苦悩の解決支援を全面的に否定して、一挙に高い境地だけを主張したのかどうかは研究者の間で議論がある。西田哲学によれば、ある立場に立つのを深いとはしない。 釈尊の仏教は「苦の解決」であるとされる。現実の苦脳の解決を包含していた可能性がある。そういう宗教の思想問題の解明は、仏教研究者が課題としているが、医療としての心理療法の開発研究にはさして重要な問題ではない。関心は、現代人の苦脳、精神疾患等が改善する理論や技法の開発に貢献するかどうかの「有用性」である。 SIMTの目的は精神疾患等(他の心理社会的問題の解決支援にも適用可能と思われる)の改善、予防 である。
(3)1985年頃から、うつ病の研究、坐禅の実習、道元禅、初期仏教、大乗仏教、西田哲学の学習を行なっており、これらを参照した瞑想技法を指導すればうつ病などを改善できると確信して、1993年の臨床開始となった。
(4)「生命力がよみがえる瞑想健康法」ジョン・カバット・ジン、実務教育出版、 18頁。
Posted by MF総研/大田 at 21:07 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
自己洞察瞑想療法 [2012年02月15日(Wed)]

自己洞察瞑想療法(SIMT)

 =マインドフルネス心理療法の一種

 このホームページにアクセスが増えています。テレビで熊野先生がマインドフルネス心理療法を 紹介なさったからでしょう。 このブログもマインドフルネス心理療法を紹介するものですが、マインドフルネス心理療法には種 々あって、これは欧米で開発されたものではなくて、日本で開発されたマインドフルネス心理療法 です。 自己洞察瞑想療法といいます。その内容はこちらに要約しています。  具体的な手法、50くらいを、セッション1から10まで実践していくと、1年から2年で、うつ病や不安障害が改善します。4月ころ出版される本「うつに効く坐禅 ー マインドフルネス心理療法」ですべて公開します。
 はじめてごらんになるかたが多いでしょうから、自己洞察瞑想療法の起源をご説明いたします。 マインドフルネス心理療法によって他の人を救済支援なさろうとする方の育成講座のテキストから 抜き出します。
 マインドフルネス心理療法は、種々の流派があって、欧米で開発されたものが多いです。マインドフルネスストレス低減法、アクセプタンス・コミットメント・セラピー、弁証法的行動療法、マインドフルネス認知療法などは、欧米で開発されたもので、翻訳書が多数出版されつつあります。 自己洞察瞑想療法(SIMT)は、これらとは違って日本で開発されたもので、その開始は 1993年です。研究と実際の臨床を重ねて、発展してきました。 禅の実践と哲学を応用した心理療法で、欧米のものと似ています。背景の理論が異なっていますが、開発された手法、課題は大変にています。認知を修正する技法を用いません。アクセプタンス、マインドフルネスの技法が用いられます。そこが、「マインドフルネス心理療法」という範疇に含まれるのです。
<育成講座のテキストから抜粋>今回少し加筆しました。

<第1> 自己洞察瞑想法(SIMT)の起源

◆自己洞察瞑想療法の臨床開始は1993年
 アメリカでは、2000年前後から、マインドフルネスおよびアクセプタンスの技法を取り入れ た心理療法プログラムが多数発展している。アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)、 弁証法的行動療法、マインドフルネス認知療法、行動活性化療法などである。これらは、2005年9月 に翻訳出版された書籍(1)によって日本に紹介され始めた。
 こういう流れとは別に、1993年から、坐禅の実践を宗教的目標(2)を達成することではなく、 精神疾患の治療に適用できると思った筆者が一般の人向けに、心の病気の予防、改善を主たる目的 としたグループ実習を開始した。これが自己洞察瞑想療法の始まりである(3)。グループ実習のほか に、個別面接により、うつ病などを改善するための呼吸法の実践指導をした。
 指導の方向は、うつ病、不安障害などの精神疾患についての脳神経生理学の研究成果を参照しな がら、その患者にみられる心理的な柔軟性の欠如があることを見出し、呼吸法によって改善しよう とこころみてきた。当時は前頭前野、セロトニン神経などの研究はまだ参照せず、もっぱら、呼吸 法に、注意集中、思考抑制、不快事象の受け入れ、執着(一時的な楽をとる心理)の解放の目標技 法をおりこんだものであった。これは、禅の手法からヒントを得たものである。大乗仏教の実践で は、禅定と智慧を同時に実行すべきであると主張されている。智慧は、禅定を行なうガイドライン 、目標といってよい。目標なく形式的に坐禅のみを行なうのではなくて、智慧をおりこみながら坐 禅を実践するということである。これにヒントを得て、呼吸法の実行(呼吸に意識を集中するので 禅定に類似する)をする時に、「精神疾患を治す智慧」を織り込みながら実行するという心理療法 を開発して、臨床を行なってきた。たとえば、感覚をあるがまま観察して言語との連想の解消をは かる、自動思考を抑制するとか、感情が起きても、すぐ行動に移らず観察して受容し、機能的な行 動に意識を向けるなどであった。

<第2> 神経生理学的変調の改善

 2000年ころから、前頭前野やセロトニン神経に関わる精神疾患の神経生理学的研究の成果を参照 して、目標技法の再編成、形式技法の追加、修正を加えながら技法を洗練させて臨床を行なってき た。呼吸法に目標技法をおりこんだ技法が主な技法であったが、2002年ころから、それらに加えて 、脳神経生理学の知見にヒントを得て、生活技法、脳機能活性化技法、運動技法などの追加が行な われた。
 その間、2000年に、ジョン・カバット・ジンに発するマインドフルネス・ストレス低減プログラ ム(MBSR)の存在を知ったが、まだ、アメリカのマインドフルネス心理療法の発展(精神疾患の治療 )については日本に広く紹介されていなかった。自己洞察瞑想療法は、すでに精神疾患の臨床に使 っていたが、MBSRは、痛みの緩和が主であって、自己洞察瞑想療法は、もっと広い領域に適用して いたから、MBSRは自己洞察瞑想療法にはほとんど影響を与えなかった。ただ、呼吸法実行中におけ るマインドフルネスのありかたをいかに言葉で指導するかについて多くの示唆を得た。 横臥して行なうボディスキャン技法は新鮮であったが、横臥していない時に刺激を受けて感情的に なることが多い精神疾患のクライアントに用いるのは限界を感じて、ほとんどすすめてこなかった 。しかし、横臥することが多い、がん患者、介護状態の人には積極的に用いることが期待される技 法である。今後、新しい領域で、考慮されるべき技法である。
 禅の実践や西田哲学を深く参照しているが、あくまでも、自己洞察瞑想療法は医療(治療と予防)であるから、単なる禅、単なる哲学にならないように、精神疾患や社会問題における神経生理学的な研究との整合性を検証しながら、理論と技法を構成している。心理的、哲学的な現実の世界と神経生理学的な世界とが独立自存しているのではなく、相互に影響しあって不一不二であることを表す概念として「神経生理学的フュージョン(NPF)」を導入した。 両者の関係の記述の作業は今後も続けられて、理論的説明や技法は改変されていくだろう。

<第3> 自己洞察瞑想療法の文書化

 自己洞察瞑想療法の文書化は2003年に始まる。うつ病を改善し、自殺を防止するために、自己 洞察瞑想療法を提供できるセラピストの育成の必要性を感じて、自己洞察瞑想療法のセラピストの 養成講座のためにテキストを作成した。2004年から、講座を開始して、その後、講座は繰り返 し行なわれて、テキストに改訂を加えてきた。当初は、仏教や禅の用語も多く用いて、その哲学を心理療法化したものであるとして、現在の心の病気の人でも理解できるように記述した。後には、宗教に中立を求められる公共の場での普及活動を考慮して、仏教用語、禅の用語を用いないようにあらためられた。
 2006年春に上述のアメリカのマインドフルネス心理療法の翻訳書が前年に出版されたのを知った 時に、自己洞察瞑想療法と類似した心理療法がアメリカでは、マインドフルネス&アクセプタンス の心理療法(以下、マインドフルネス心理療法という)として広く発展していることを知って驚愕 した。2つの心理療法の類似性を自覚し、アメリカのそれを参考にして、自己洞察瞑想療法を心理 療法として再構成をして、2007年に、ほぼ現在の形に落ち着いた。自己洞察瞑想療法の応用範囲が 、種々の領域に発展する気配を感じたので、多数の要請に応えやすいように、2007年から2008年に かけてテキストをテーマ別にモジュール化した多数の小冊子のテキストに編集しなおした。
 基本的には禅の実践や禅の哲学が背景になっているが、禅の研究領域においては、思想的な研究 が重視されていて、精神疾患への応用に参照できるように論理的に記述した研究を発見することができなかった。そこで、 西田哲学を参照した。西田幾多郎は、禅を実習した人で、自己について深く洞察して哲学書を著し た。自己の作用、自己について論理的に記述していて、精神疾患の治療、予防の理論と実践の指針を得るための多くのヒントを西田哲学に見出した。西田哲学が 自己洞察瞑想療法(SIMT)の理論と実践方法に大きな影響を及ぼしている。
 このように、自己洞察瞑想療法は、西田哲学、日本の禅、大乗仏教、精神疾患の研究、脳神経生 理学などの成果をおりこんで、日本で開発された心理療法である。
 アメリカのマインドフルネス心理療法と自己洞察瞑想療法は類似するが、それは、両方とも、仏 教や禅の手法が中核に用いられているからである。ただ、禅定と「目標技法」の一部に相当する技 法は類似するが、他の補助技法と精神疾患の生起と治癒の理論がかなり異なっており、いくつもの 多様なマインドフルネス心理療法が開発されている。日本でも、ある領域、ある疾患、ある問題に 特化したマインドフルネス心理療法プログラムが開発されていくだろうと期待する。

<第4> 自己洞察瞑想療法(SIMT)という名称の由来

 このように、欧米のマインドフルネス心理療法とは違う理論と背景を持つ (しかし、表面のマインドフルネス、アクセプタンスの技法は類似する)ので、別の名称で呼ぶことにした。

 こちらに続く 

Posted by MF総研/大田 at 21:23 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
宗教でなく医学=自己洞察瞑想療法(SIMT) [2012年01月15日(Sun)]

宗教でなく医学=自己洞察瞑想療法(SIMT)

 自己洞察瞑想療法(SIMT:Self Insight Meditation Therapy)は宗教ではなくて、 医学ですが、決定的な違いを指摘しておきます。論理的(西田哲学や神経生理学的な)に説明不能 の部分は用いないことです。「開祖の言葉だから信じてやればいいのだ」というような論理的では ないものはとりいれないことです。
 心理療法、医療ならば、その体系の中で、その病気の症状の記述、その症状が起きる原因 (病因=仮説でよい、後に述べるセロトニン仮説、認知のゆがみ仮説と同様)、それを治す理論(仮説に基づく)が、科学的に、医学的に説明されなければならないこと、 それと治療法(心理療法としての介入方法、課題)が論理的か神経生理学的か心理学的に説明され ていることです。宗教の論理では医学になりません。釈尊や開祖の言葉だから「これをする」というのは宗教であって、医療になりません。病気との関連の説明がありません。
 SIMTでは、哲学や神経生理学の成果を利用して、「仮説」を立てて、ある程度の理解度を持つ人 には納得するような説明をつけています。 他のマインドフルネス心理療法も心理学的に説明しています。同様の態度です。

簡単に「仮説」を説明

 SIMTの仮説とはこのようなことと、説明してみます。
 原因については、過去には求めません。「今、心理的柔軟性に欠ける」のが原因である、今、非叡智的フュージョンがあり、今、神経生理学的フュージョンがある。 (これはACTも同じです。背景が違うので内容は少しちがいますが。道元禅に「柔軟心」があります。基本的には、それです。)
 うつ病は心理的柔軟性の欠如により、何かの出来事に遭遇して、否定的な思考を起こし、扁桃体 、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)を興奮させてストレスホルモンを過剰に分泌させて、前頭前野、海馬などを障害して発症す る。非定型うつ病は、扁桃体の興奮が鉛様麻痺感の部位にスイッチを入れる。 治すためには、否定的な思考をコントロールしなければならない。思考をコントロールする意識作 用を西田哲学では意志作用という。意志作用を活性化して、思考のコントロールをすれば、 ストレスホルモンの過剰分泌がとまるし、鉛様麻痺感へのスイッチが入らない。 これ以上は傷つかない。止まるだけでは、悪化したまま回復せず現状維持で推移するかもしれない。 しかし、 一方、 意志作用の使い方自体が、ワーキングメモリ(作業記憶 )としての前頭前野、帯状回などのリハビリテーションにあたっており、傷ついた神経細胞を修復する・・・。もう省略します 。SIMTには、いくつかの仮設があります。西田哲学や神経生理学の研究成果から仮説をいくつか立 てました。その仮説により、治療する。そうすると、かなり治った。効果がある。こういう理屈で す。
 抗うつ薬の仮説は、うつ病はセロトニン神経の低下によるというものです。認知療法の仮説は、 うつ病は認知のゆがみが引き起こすというのが仮説です。ある程度治るが、どうも、この仮説では 治らない人がいる。仮説がゆらいでいる。
 SIMTの仮説、意志作用の活性化は、認知を置き換える手法ではなくて、思考を観察し、中断し、 価値実現の行為を選択することである。そのような訓練をすれば治る。具体的な方法を示している 。 こういうわけでうつ病が治る。過去の実践でも効果が証明されている。
 こういうふうに、論理的に説明されています。論理的に説明できない課題は、儀式、作法は行わ ない。こういうわけで、SIMTは医療です。

医療は有用性のために変化していく

 宗教は、論理的ではなくて、釈尊や開祖がいうから信じなさい。問答無用、論理的な議論は無用 、開祖の言葉は絶対であると解釈されます。絶対に変化、追加してはならない。
 ごく大雑把に、医療としてのSIMTの方法を説明しました。病因、治す理論は、神経生理学の研究 の進展によって変化していきます。宗教のように絶対不変ということはありません。 いくつかのマインドフルネス心理療法がありますが、将来は、いいところを取り入れて、一つのも のに集約されていくような気がします。治療割合の高いこと、習得容易性など5つの条件が心理療 法の条件だからです。リネハンの弁証法的行動療法は大変壮大ですから、これが全体の基盤でいい 。 その中の一部に、SIMTの技法が吸収されてもいい。 リネハンは「弁証法的」といいいますが、弁証法には種々あるのだそうです。西田哲学も弁証法的 です(そうではないという哲学者もおられるそうですが心理療法には厳密な差異は問題とはならな いでしょう)。弁証法的行動療法が、SIMTと同様に、西田哲学をその弁証法の根拠にしていいわけ です。西田哲学は大変、緻密で論理的に自己というものと現実の世界を洞察する実践的な哲学です から、 病気の治療や支援者の実践を説明するのに都合がいい(説得的)ような気がします。

マインドフルネス心理療法が欧米に現われた現在、今後西田哲学が見直される

 欧米のマインドフルネス心理療法の大部分(弁証法的行動療法=リネハンやMSRP=ジョン・カバト ・ツィン)は、東洋哲学を応用しているといわれます。 東洋哲学をマインドフルネス心理療法で説明するために、欧米のマインドフルネス心理療法者が西 田哲学のようにもう少し論理的な言葉にするために、西田哲学を研究するのではないでしょうか。 ACTも、弁証法的行動療法も、内奥の場所のような自己について記述していますが、翻訳されたもの ではわかりにくい。言葉で説明するなら、結局、西田哲学のように言わざるをえないのではないで しょうか。なぜなら、西洋ではあまり見られなかったもので、彼らが「東洋哲学」だというのです から。東洋哲学でも昔の大乗仏教や平安、鎌倉仏教であり、現在の仏教の解釈説明では、現代の医学には使いにくいでしょう。昔の仏教にあった 深い哲学はこれまであまり解明されていないと東洋大学学長、竹村牧男氏はいいます。「日本の仏教においてはいまだじゅうぶんに検討 されていないことも事実である。」(「入門 哲学としての仏教」竹村牧男、講談社現代新書、255頁)
 こちらに、アメリカのマインドフルネス心理療法者の言葉を紹介しました。あちこちに、 東洋哲学を賛美しています。現代人の苦悩を救うと。 アメリカのマインドフルネス心理療法
 ところが、日本の仏教者は、こういう哲学をいうひとがほとんどいないということです。アメリ カの人がいう宝が埋もれています。
 だから、今後、若い人に深い東洋哲学の解明を期待されるのである。昔の大乗仏教の哲学が西田哲学に近いという(同167頁)。
 「もっと、仏教が本来持っていた豊かな思想・議論に耳を傾けるべきではなかろうか。そして、それらを現代社会の課題に応えうるよう、さらに鍛え上げていく必要がある。」(同257頁)
 「若い人々こそが、この貴重な「心の世界遺産」としての仏教思想、仏教哲学に関心を持ってくださり、それを鋭意、時代に活かしていくことをめざしてくれるなら、心からうれしく思うのである。」(同262頁)
 今後、西田哲学や昔の大乗仏教が欧米でも見直され、尊敬され、研究されるのではないでしょうか。 哲学者が西田哲学を評価しています。
 たとえば、「西田哲学の論理と方法」(板橋勇仁、法政大学出版局)では「学問としての厳密な 論理」「厳密な学の立場に立つ」(213頁)など評価しています。 日本の学問、専門家には、厳密ではないところがある。ある立場を作って自己に都合のいい論理を 展開する、自己の利益を優先する立場をとるものがあり、世界的立場、立場のない立場に立たない 専門家がいる、そういうことを批判する西田哲学。
 また「西田哲学の基層」(小坂国継、岩波現代文庫)では「西田哲学は一貫して生の根本の意味 を究明しようとする哲学である。現実の世界の真相を解明しようとする哲学である」(あとがき)、 「今後、西田哲学は西洋においてますます多くの関心と共鳴を得るのではなかろうか」(まえがき) とされています。
 日本人が軽視した、心の病気を禅、東洋哲学の方法で治すことを欧米の人が始めた。日本人が捨 てた状況になっている西田哲学が欧米によって再評価されるかもしれません。
Posted by MF総研/大田 at 17:50 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
セッション10が終わっても自己洞察をやめないで [2012年01月13日(Fri)]

セッション10が終わっても自己洞察をやめないで

 自己洞察瞑想療法(SIMT)を各地(福井、山梨、大阪、その他の地区で) でセッション10か12まで受けた方、その後も1,2年、継続して自習してください。 やめると、また、再燃します。 なぜなら、セッション10(12)くらいまでは、まだ、価値崩壊の反応をする神経生理学的な通 路が冷え切っていません。何かのストレスのかかる出来事でまた、価値崩壊の反応パターンを使ってしまいます。 しかし、その後も継続している人は再燃していません。
 ただし、セッション10までやった人は、ワーキングメモリ(作業記憶)や抑制機能には神経生理学的な変化がおきていますから、以前ほどひどい抑うつ症状、鉛様麻痺感、パニック発作にはなりません。 再燃しても、以前よりは悪化の深さが浅く、期間は短いはずです。また、自己洞察をセ ッション1からやり直しましょう。すぐ回復するはずです。一度、薬を減薬、断薬できたのなら、 またしばらくしてから、挑戦するといいです。今度こそ、5年、油断せず、自己洞察を継続して、 価値崩壊の火山爆発するマグマの通路を冷え切らせて死火山にしてください。 10−12月で(自習も)やめると、マグマは冷えていない活火山状態です。 抑制機能、意志作用の回路で爆発を抑制している感じです。その意志作用を用いず、嫌悪的思考回路を渦巻かせると、小爆発をし ます。2年再燃しないと休火山といってよいでしょう。かなりもストレスをうけても、もはや、価値崩壊の反応パターンは使用しないです。セッション10のあとも、呼吸法、行動時自己洞察をおこたりなくやってきているから、容易に嫌悪的思考回路にhはいりません。ストレスへの耐性ができています。
 セッション10か12のテキストの課題のところに、自己洞察を生涯(5年くらいするともう自 動化されますが)続けましょうと記載してあります。守ってください。あなたのために。再燃するとショックですよ、また、抑うつ症状や鉛様麻痺感が起こりますよ。短期間だけど寝込む羽目になります。
  • 2011年版は、セッション10、または、12までを1クールとしているのでセッション10、と、12に書いてあります。たとえば、セッション12ですが。
    「これから、数ヶ月、実践してください。
    その後も、この課題をずっと続けていけば、課題(E)(F)(G)が進展するでしょう。再発防止のためには、セッション10またはセッション1の課題を生涯続けることをおすすめします。」
 「なぜ、生涯もか?」と思いますか。当然ですね。ストレスの強い出来事が高齢になるほど多くなります。子どものことで悩む、昇進による重責、親の介護、自分の病気、配偶者の病気、配偶者か自分が介護状況、配偶者や自分のがん、死亡・・。価値崩壊の反応パターンを用いていいはずがありません。
 一度よくなった人が、再燃するには、マインドフルネス心理療法がまずいのではありません。限界を超えるストレスが起きたとか、油断して、価値崩壊の反応パターンをして しまう、意志作用を忘れる油断が問題ですね。でも、一度、軽くなった人は大丈夫、すぐ回復します。また、やればいいのです。 今度こそ、死火山にするまで怠りなく、自己洞察を続けていただきたいです。
Posted by MF総研/大田 at 15:07 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
マインドフルネス心理療法(SIMT)は医学 [2012年01月05日(Thu)]

マインドフルネス心理療法(SIMT)は医学

 マインドフルネス心理療法は欧米の流派(マインドフルネス認知療法や弁証的行動療法)でも、 日本の自己洞察瞑想療法(SIMT:Self Insight Meditation Therapy)でも、 うつ病や不安障害が治りますので、医学です。心理療法です。
 しかし、欧米の人が、東洋の仏教、東洋の哲学を応用したものであるというので、 仏教!! それなら宗教か? と疑い?をかけられます。 アメリカでは、宗教が尊敬されて、宗教を持たない人は警戒されます。よりどころがエゴを持つ自 分 になるからです。宗教のない人は、自分を律する宗教的倫理観がないので、何をするかわからない 人・・。
 誠実な宗教には、倫理があるので、人や社会に貢献している側面があります。殺すな、うそをつ くな、自殺するな、姦淫(浮気)するな、だますな、いじめるな・・など、宗教の倫理があります 。宗教を持たない人は、そういう倫理は自分の都合次第です。 だから、欧米では、宗教を持つ人は警戒されない・・。
 アメリカでは、マインドフルネス心理療法が仏教と混同されてもあまり不都合は起こりません。 しかし、日本では、困ります。 宗教者が(オウムのように)犯罪を犯したので、特に、東日本では宗教は警戒されます。 関西は、京都、奈良が仏教のメッカですから、マインドフルネスと仏教の混在でも警戒されないの で しょう。関東は違います。宗教活動ならば、公的施設を使うことや教育現場、医療現場に宗教を持 ち 込むことは 制限されます。
 関東を拠点とする私は、自己洞察瞑想療法が宗教とは違うことを強調せざるをえません。 誤解されて、医療や福祉、教育の現場で活用できないのでは、社会的損失だからです。 だから、私は、自己洞察瞑想療法は宗教と違う点を鮮明にしてきました。日本で創始したマインド フ ルネス心理療法(SIMT)をすすめるために苦労しています。しかし、 おかげで、宗教語のあいまいさ、解釈が学者によってまちまちなのに 巻き込まれる心配もありません。宗教としての境涯、境地は問題ではなく、 うつ病を治す効果が高いかどうかが決め手です。 オウム事件のあった関東では特に 両者を区別することが必要なのでしょう。

●心理療法の5つの条件

 SIMTは禅の自己探求の実践(言葉では説明できないとされています)と自己探求について論理的 に 言葉 で説明している西田哲学と神経生理学を参考にしましたが、禅と西田哲学と神経生理学はそのまま で は心理療法にはなりません。心理療法となるには、
    @治療理論が明確であること、(病気の原因論、治癒理論、治療手法)
    A患者の習得容易 性、
    B治療割合の高いこと、
    C脱宗教的であること(患者や支援者の特定宗教への警戒を尊重するこ と、つまり医療、教育などの現場での宗教の中立性を確保すべきこと。 そのために、心理療法の現場では、仏教語を用いない、仏教思想に入らない、仏教者の言葉を引用 しないなどに注意すること)、
    D支援者の習得容易性
の5 点を満足するように研究と臨床を重ねてきました。 宗教としての坐禅は、これらの条件をみな満たしていませんので、SIMTと宗教の坐禅は違うもので す。
 宗教としての禅は、心の病気でない人の実践を重んじるために、病気を治す方針のような言葉を 用 いないとはいうものの、それぞれの宗教目標に到達させようとして、説法、語録の膨大な言葉があ り ます。説法はわかりにくく、公案による指導もきわめて難解です。僧侶でもない一般人が理解して 実 践して、その境地に達することは容易ではありません。そういう状況は、患者と支援者の習得容易 性 と治療割合の高いことの条件を充たすことができず、心理療法とはなりません。心理療法ならば、 1 年程度の理論の学習と実践によって習得できるものでなければなりません。心理療法の支援者とな る べき人、病気や問題を治したいクライアント(患者さん)が、1年くらいで習得でき、治癒できる ス キルを習得するための理論と習得容易な指導法を生みだすまで長期間試行錯誤を繰り返してきまし た 。 脱宗教的という条件のために苦労したことは仏教、禅の用語は用いないこと、仏教や禅の人の言葉 を 引用しないことでした。類似の実践があるのですが用語を置き換えて宗教とは別であることを徹底 し ようと努力を続けています。たとえば、坐禅は呼吸法、自己洞察法、瞑想などに置き換えました。 煩 悩は本音に置き換えました。内容も違っています。 宗教に警戒、不安を持つ、あるいは、他の宗教の信者である患者さんは、仏教の言葉を聞きたくな いはずです。そういう患者さんの気持ちを尊重したいです。
 他の人にこの手法を指導して効果を得た始めての問題は70歳くらいのかたの睡眠障害でした。 それ 以来、うつ病、不安障害の方々を中心に おあいしてきました。5つの条件を満足させるために、治療法も理論的な説明も日々改訂を加えて き ました。
 うつ病、パニック障害、PTSDのかたが治っていますので、患者の習得容易性や治療効率を証明し てくださって嬉しいことです。そして、カウンセラーになった方もおられるので、支援者の習得容 易性も証明されていると思います。これも嬉しいことです。 東日本大震災の被災地の方に習得していただきたいというのはこのためです。 多くの人が、うつ病、PTSDになる可能性があり、薬物療法だけでは間に合わないでしょう。うつ病 、PTSDを心理療法で治す支援者が多数必要です。

宗教が悪いわけではない

 宗教と医療は区別しなければいけないのは法律の要請です。NPO法人法で、NPO法人は宗教活動を してはいけないことになっています。この点からも、宗教と心理療法とを峻別する必要があります 。

  「特定非営利活動促進法」の第2条に 「宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでな いこと。」とあります。 そのNPO法人の活動において、 宗教としての禅の言葉や宗教者の言葉の引用が多いと、この法律に触れるおそれがあります。 教育現場や公共の場で、宗教語が多いと、他の宗教の人が困惑されるはずです。

 教育現場(私立学校でなければ)でも、特定宗教の宣伝になるような言葉をいっては、問題にな るでしょう。アメリカと違って、宗教を分離している日本では、配慮すべきでしょう。まだ、研究 者の間でも、混在しているので、その流派は、日本では、いずれ、分けようと議論になるでしょう 。そうでないと、医療、教育、福祉などの現場で反対されるおそれがあります。特に 他の宗派の方から。 ちゃんと、反論できる自信があれば、別ですが、宗教との違いを説明できる 人は少ないでしょうし、宗教語を使うのであれば、なさら不審感を持たれるでしょう。
 とはいっても、宗教が悪いわけではありません。法律で認められています 。心の病気ではない人が自己存在の問題に苦悩する時に宗 教が大きな貢献をしています。病気、心理療法の範囲を超えた問題、苦悩の解決に貢献するのが 宗教でしょう。もちろん、心の病気の人が医師、カウンセラーに相談しても治らない場合に、宗教 にはいることはあるでしょうが。
 しかし、宗教者も心理療法を提供できるのはもちろんです。僧侶の人が学校の先生であったり、 医者であったりします。しかし、学校や病院で宗教の説法、宣伝はしません。
 厳密に使い分ければいいのです。心の病気の治療の現場、教育、医療、福祉の現場では、宗教の 宣伝になる活動はしない、宗教にひきいれる行為をしないのです。 カウンセリングの現場では、仏教語を用いない、宗祖の言葉を引用しないことも心がけるのです。 自分の宗旨の宣伝にならない、自分の宗教組織の利益にならない無償の奉仕に近くなります。病気 が治るまでの1,2年だけの支援です。信者とはならない人たちへの支援です。 そこから宗教の信者になる人はほとんどないと思います。カウンセリングを実際やってみますと、 本当は、完治までもう少しグループセッション、面談にくればいいのにと思うのですが、7−15 回でやめてしまわれます。忙しい、復帰、再就職、新しい生活をしたいのです。だから、せいぜい 、1,2年の治療関係です。
 学習やヨーガ、カウンセリングを標榜していて、宗教にひきいれるのは<カルト>の手口です。 宗教者であるカウンセラーは、これを自覚していないと、<隠れた本音>となります。患者が望ま ないのに、自分の利益をはかる(自分の宗教にひきいれたい)深層心理となる。心の病気の治療や 福祉、教育の現場では峻別すべきは当然です。
 ただし、マインドフルネス心理療法が宗教の禅や仏教と類似することは、カウンセラー講座の受 講者(支援者になる人)では、仏教、禅はどういうものであるか簡単に学習します。 脳神経生理学も、西田哲学も簡単に勉強します。しかし、患者さんには、宗教的なことは言わない (ターミナルケアの場面は除く)、宗教語は用いないということです。
 宗教の坐禅と類似している(坐って静かにしている)ので、禅寺、禅僧の方も、この心理療法を 習得して現代社会に貢献していただけると思います。 その場合、どうやっていくか、どこかで模範を示せばいいと思います。寺で、僧侶が提供する場合 には、 そこにくる患者さんは、指導者が僧侶で 場所が宗教施設であることを承知して参加されるのですから、 カウンセリングの時に、「開祖の言葉ではこういっているところです」というようなことを 交えてカウンセリングの課題をわかってもらうのはさしつかえないだろうと思います。 あまり多すぎて、病気の治療でなく開祖の思想の説法にならないように注意して。
 マインドフルネス心理療法を行う人材(医師、看護師、心理士)が少なくて、禅僧が提供すれば 、患者さんがうつ病、不安障害、自殺から解放される機会が増えます。治ったら、離れていきます ので、信者の獲得にはならないかもしれませんが。 ただ、やはり僧侶の方も本務で忙しいことがネックになるのではないかと思います。
 うつ病の心理療法、自殺防止に関心のあるリソースがないものでしょうか。 やはり、本務に忙しいと新しい活動はできません。それは、私自身もそうですから。 心理療法の研究やカウンセラー講座、福祉施設での心の健康体操などをする時間が忙しいと、患者 さんの治療セッションはできません。学校カウンセラーや企業の顧問となる臨床心理士も、一般者 向けの治療にさく時間がないでしょう。
 少しの時間でも多くの人が出し合う協同でなら、できるでしょうか。マインドフルネス心理療法 の担い手となるリソースはどこになるのでしょうか。
Posted by MF総研/大田 at 22:47 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
マインドフルネス心理療法(SIMT)でなぜ治るのか(1) [2011年12月21日(Wed)]

マインドフルネス心理療法(SIMT)でなぜ治るのか(1)

 マインドフルネス心理療法の一派である自己洞察瞑想療法(SIMT:Self Insight Meditation Therapy)は、うつ病、非定型うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、パニック障害、対人恐怖、家族の緊張不和などに効果がみられました。なぜ、治るのか簡単に説明いたします。

うつ病

 うつ病が自己洞察瞑想療法(SIMT)で治る人がいるのはどうしてでしょうか。 心理的には、意志作用のリハビリテーションが奏功したからであるといってよいのです。SIMTの課題 の繰り返しの実行は、前頭前野、帯状回などの機能訓練にあたります。自分を傷つけるだけの否定的 な思考を続けることがなくなります。
 第一に、上流の非機能的な心理的行為がなくなるということです。ひどく感情的になることが少な くなるので、 扁桃体、交感神経の興奮をしずめます。 それによって、心理的な不快さが少なくなり、身体症状が軽くなります。
 第二に、、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)の興奮をしずめます。 それによって、前頭前野や帯状回の神経細胞を新しく傷つけなくなります。
 第三に、過去の価値崩壊の反応によって傷ついていた前頭前野や帯状回の神経生理学的な回復が起 こり、それに関連する機能が回復します。
 治りたい、治すという「目的」(価値、願いを明確にもち、毎日確認)を想起 して、不快な症状があっても、それを横目に見ながら、本来すべきことをします。 課題を実行することは、前頭前野、帯状回などの機能を使う行動になっています。 呼吸法、自 己洞察法(自己の種々の精神作用の自覚、使い方によっては害になるので益になる 使い方を訓練する)、脳機能活性化トレーニング(ワーキングメモリ機能の活性化 )、運動、ささやかな行動などです。こうした行動は、長期報酬課題の実行、ワ ーキングメモリの機能使用にあたります。まさに、前頭前野、帯状回などを動かすこと になります。これを毎日、実行します。 人の神経細胞は使用頻度が高いと発達します。使用頻度が低いと神経細 胞がすたれます。その神経細胞が使用されると血液が送られて、脳由来神経栄養因子 (BDNF)ができて、神経細胞が増殖します。軸索が伸び、シナプスが増えます。 こうして、前頭前野、帯状回、海馬などの神経細胞が増加して、健康な状態に戻って、う つ病の症状が消失すると推測されます。
 メランコリー型うつ病には、発作的な症状(拒絶過敏性、鉛様麻痺感など)がな いので、課題を実践すれば、順調に回復します。薬物療法で治らないのに自己洞察瞑 想療法(SIMT)でなおるのは、こういう仕組みであると推測しています。薬物療法の場 合には、体質によって、効かない人がいるのですが、自己洞察瞑想療法(SIMT)の場合には、前 頭前野などの機能とされる課題を実行するので、必ず神経細胞が動きます。実施方法が 適切で実施量が多ければ、必ず変化が起きるはずです。使う神経は活性化します。
 自己洞察瞑想療法(SIMT)の課題は、意志作用の訓練です。目的を想起し、不要な 作用(特に否定的な思考)を抑制し、不快事象があっても目的を放棄せず、目的に そった行動を選択し、決意し、実行します。こうして、うつ病が治ります。このトレーニ ングによって治った人は、再発が少ないです。以前にうつ病になった精神作用の使い方 がわかり、トレーニングによって、うつ病にならない意志作用の使いかたの訓練が できているからです。
 以上は、形式的、技法的な方面からと脳神経生理学的な視点から治るわけを推測しましたが、自己 や世界(対象と自己の生きる場所)の哲学的見方の変化があります。自己洞察瞑想療法(SIMT)の実践 は、自己自身の哲学的な見方の変換を起こします。技法も実は、自己の哲学的な探求からのものです 。自己の作用、苦痛の対象は何か、作用を起す自己とは何かという自己を深く探求します。苦痛の対 象も苦痛の作用(感情や衝動的思考・行動が多い)も、自己自身の心の中のことであるとの自覚的見 方がうまれます。 そうなると、うつ病をひきおこすストレスの種(職場、苦手な人、症状など)も自己の心にあるもの ですから従来の対処のしかたが変化してきます。治った後も、世界、苦痛的対象、自己の見方が変化 しているので再発しにくいのです。

(次は、非定型うつ病です)
  • 自己洞察瞑想療法(SIMT)でなぜ治るのか
  • Posted by MF総研/大田 at 18:58 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
    マインドフルネス心理療法を受けた人のその後(1) [2011年12月16日(Fri)]

    マインドフルネス心理療法を受けた人のその後(1)

     今年は、地方都市2ヶ所で連続講座を展開したので、埼玉でのマインドフルネス心理療法による グループセッションは、8月で終了していました。 もちろん、受けた方は、ひきつづき自主的に実践できますので、 症状の改善、心の成長がもたらされます。 いくつか、ご報告を受けました。
     非定型うつ病の改善にとりくんだ「あきさん」から、完全な断薬にまで至ったことを おしらせいただきました。
    こちらのブログにも 詳しい様子が掲載されています。
     他の人は、マインドフルネス心理療法(SIMT)を1年ほど受けた後、案外簡単に、減薬、断薬をでき たのですが、あきさんはめずらしく離脱反応が強くて、長期間かけて減薬、断薬にとりくみました。 マインドフルネス心理療法を受けていないと、離脱反応がこわくて、うつ病が再発するのではないか とおそれて減薬、断薬が難しいです。実に、10年も服用する人もおられます。
     マインドフルネス心理療法を受けると、不快事象の受容の訓練をしますので、離脱反応の不快さも 忍耐することができます。あきさんは、精神が安定して、症状が回復して、就職もできてからの減薬 、断薬にずいぶん長くかかりましたが、完全断薬ができるということを実証してくださった貴重な事 例です。マインドフルネス心理療法は、病的に興奮していた脳部位 (抑うつ症状、パニック発作、過呼吸、鉛様麻痺感、拒絶過敏性の感情など) をおだやかにし、症状を悪化させる非機能的な思考、行動を抑制する脳部位(前頭前野から帯状回)を活性化する効果 があります。認知療法、行動療法 でうまくいかない患者さんでも改善します。呼吸法が中心ですから、「認知を変える」(認知療法) とか「ハードルのきついエクスポージャー法(暴露法)」という難しいことをしないですむからです 。ただ、真剣に呼吸法をやっていただかないといけませんが。
     マインドフルネス心理療法を受けた人で、抗うつ薬、抗不安薬を服用しておられる方は、症状が回 復して、不快事象の受容の心得を一層成長させて、1,3年かけても完全断薬に挑戦していただきた いと思います。 マインドフルネス、アクセプタンスはやればやるほど成長します。脳神経の特徴から言えます。使え ばつかうほど活性化していきます。背外側前頭前野から帯状回の神経回路が活性化するのでしょう。ワーキングメモリ(作業記憶)の中央実行系の活性化にあたるでしょう。西田哲学でいう、叡智的自己の自覚、意志作用の深まりでしょう。

     来年春の出版をめざして、マインドフルネス心理療法(SIMT)の自習のための、本の原稿を書いています。お近くに、マインドフルネス心理療法を受けられる場所がないかたに。
      SIMTは、Self Insight Meditation Therapyで、日本で独自に開発されたマインドフルネス心理療法です。自己洞察瞑想療法です。現在進行形での心の作用を観察することによって、自己の問題、自己自身を深く探求する「瞑想」を中核とした心理療法です。 20年近い研究と臨床を重ねて開発してきました。日本人になじみの深い 西田哲学と脳神経生理学的を基礎にしていますので、 日本人に受け入れやすい心理療法です。論理的ですし、脳神経生理学ともよく整合性をとっていきます。うつ病、非定型うつ病、不安障害、過食症などに効果がみられました。多くの人が、自殺からまにかれたと思います。 非定型うつ病の拒絶過敏性、そしてパニック障害やPTSDの広場恐怖は薬では、治りにくくて、 家庭環境、経済事情が変化すると、苦痛を強めて、自殺がおこるおそれがあります。しかし、 自己洞察瞑想療法(SIMT)で、多くの人が治っています。
    Posted by MF総研/大田 at 20:46 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
    現代型うつ病=非定型うつ病ではなさそう [2011年11月22日(Tue)]

    新型うつ病は非定型うつ病ではない

     テレビで紹介された「現代型うつ病」は、非定型うつ病ではなさそうでした。 ディスチミア型うつ病に近いようです。だから、非定型うつ病とは一言も言わなかったのですね。
     私がみたところでは、非定型うつ病との違いがありました。 非定型うつ病は心が弱いままに育った(大事に育てられて打たれ強くないこと)わけではないこと(*)、他罰的ではないこと、自己愛ではないこと、非定型うつ病は鉛様麻痺感があること、非定型うつ病はグループミーティングでは治りそうもないこと、などです。
    (*)非定型うつ病になる人は、若いころ、不安、緊張の心で育った人が多い。 現代型うつ病の人は、心の成長が未熟と解説の医師のお話し。しかし、非定型うつ病の人はそうではありません。心の成長はとげておられるのだが、発作的な感情の処理がうまくない。患者同志の議論指摘は認知修正であり、非定型うつ病はあまりよくならないでしょう。非定型うつ病は、従来の認知行動療法のプログラムでも再発されている。もっと深いメタ認知、 意志作用レベルの問題のようです。患者ではなく、メタ認知レベルのことをよく知る専門家の指導が必要です。たとえば、PTSD、パニック障害、予期不安、広場恐怖なども患者同志の議論で治るようなレベルではありません。それと似て、非定型うつ病は難しいです。これで悩む優秀な人材が多いのです。

     従来は、現代型うつ病は、薬物療法だけのようでしたから、病み終えない=治りにくいと されていたのですが、 グループミーティングで治るそうで、よかったですね。
     最近は、現代型うつ病や非定型うつ病が多くて、薬物療法だけではいけませんね。
     非定型うつ病は、マインドフルネス心理療法(SIMT)で治ります。呼吸法などの課題を実践できる人は。非定型うつ病は、パニック障害や社会不安障害との並存(または過去にそうであった) が多いです。
     もちろん、現在でも、メランコリー型うつ病もあります。若いころ、不安過敏でもなく、別に問題なく成長したのに、過労やひどいストレスにあった時になるのは、メランコリー型うつ病が多いでしょう。成功していた人が40代以降にかかるうつ病(そして自殺も)はこれが多いでしょう。
    Posted by MF総研/大田 at 21:27 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
    痛み [2011年11月22日(Tue)]

    腰痛も心理的ストレスから
     =NHKテレビ

     11月16日(日)、NHKテレビの「ためしてガッテン」で腰痛も心理的なストレスで悪化するとい うことを教えてくれました。心理的ストレスによって、鎮痛物質を分泌する側坐核の機能低下が生じて 、痛みを抑制できなくなる・・。 つまり、腰痛も身心症としてのものがある・・。心理的ストレスで身体の症状、病気が悪化するものが身心症。普通の治療では完治しにくい。
     心理的ストレスを受ける人は痛みがでやすい。 うつ病、不安障害の人も、たいてい痛みがありますが、 マインドフルネス心理療法(SIMT)によって、痛みが消失しています。 今夜、午前0時15分から再放送があります。 ごらんになってください。
     マインドフルネス心理療法(SIMT)でも、種々の痛みが軽くなります。 いつか、記事にします。


     今夜、7時半から「現代型うつ病」について報道しますね。 非定型うつ病やデスティミアうつ病でしょうか。 薬物療法だけでは治りにくい。非定型うつ病はマインドフルネス心理療法(SIMT)で治ります。 テレビをみてみましょう。
    Posted by MF総研/大田 at 18:02 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
    葛藤時の抑制 [2011年10月13日(Thu)]

    心の病気と前頭前野(4)
     背外側前頭前野と前部帯状回の協調で葛藤時の抑制

     ワーキングメモリ(作業記憶)は、現在進行形の情報保持や注意の維持だけでは なくて、不快な事象がおきて感情にかられて発作的に非機能的な思考、発言(激し い暴言)、行動を抑制 して、結果的に自分も後悔せず相手も怒らせない反応をしなければなりません。 今ここでの瞬間的な(文脈における)反応ですから、考え方を変えるようなゆっく りとした余裕は ありません。優秀な実力を持ちながら、発作的な不安、恐怖、怒りによる行動を抑 制できずに、対人関係を悪化させ激しい落ち込み、鉛様麻痺感などに苦悩する人が 多いでしょう。
     行動の抑制の心が活発にならなければ治りにくい問題、障害も多いでしょう。 ワーキングメモリ(作業記憶)の機能が関係するようですが、 注意の移動(ひとつに過度に執着せずに状況に応じて別のことに意識を移動できる 心)、非機能的行動の抑制を働らかせながらの ワーキングメモリ(作業記憶)です。背外側前頭前野(DLPFC) のほかに前部帯状回(ACC)の協調のようです。難しい課題の時には、さらに前頭極 も関係するようです。
       「DLPFCは一貫した選択的注意の統御を担い、課題遂行に必要な「表象を維持す る」機能をはたしている。一方、抑制する必要のあるものに対してはACCがその機 能を担っていると考えられる。」(P86)
     会話中や、仕事中、他者がいなくても強い感情が起きた時に、 非機能的な自分を傷つける(抑うつ症状、鉛様麻痺感などをもたらす)思考、激し い発言、行動(逃避、過食、アルコール、暴力、自傷など)を抑制できるのは、今 ここにおける洞察・抑制・実行反応 です。ストレス、葛藤がまさにある時に、 背外側前頭前野や前部帯状回の機能がうまく働くようにトレーニングしていくこと でしょう。マインドフルネス心理療法は、これに適しているようです。メランコリ ー型うつ病のように、おだやかな状況ではない場面で悪化させる精神問題には、 背外側前頭前野、前部帯状回(ほかに、PTSDは海馬も)の機能回復訓練が必要なの でしょう。
     アメリカのマインドフルネス心理療法者は、覚せい剤依存、犯罪更生、激しい感 情(BPDにみられる)、注意欠陥多動、発達障害などにも応用しているようです。 自閉症の児童も、前頭前野の機能が低下している(P161-184)そうです。 私は、そういう領域には関係していませんので、治療した経験はありません(*)が 、日本でもプログラムを研究してみる価値があります。
     上記の領域には、マインドフルネス心理療法の手法のどれかを応用拡張した手法 を開発して、集中的に訓練適用してみることになるだろうと思います。 コンピューターを用いた訓練プログラムを開発してみるのも可能性があります。 おおがかりですので、ここではできていません。
       (*)私が治療したのは、薬物療法や他の心理療法で効果がなかったとしておいで になった、うつ病、非定型うつ病、不安障害、過食症、家族の不和などの方です。 うつ病、不安障害などのための標準化したプログラム(セッション1から10)は 50−60ほどの手法を広く浅くトレーニングしています。長い人生を生き抜いて いくために、再発は防ぐべきですので、幅広く 非機能的思考、発言、行動をしない反応パターンを習得していただきます。考え方 を変えるという認知的手法は含みません。認知(考え方)よりも深い「今ここ」と いう瞬間におけるダイナミックな意識作用である<意志作用>を活性化させるとい う哲学的な理論と、ワーキングメモリ(前頭前野や帯状回)、海馬、扁桃体、HP A系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)をはじめとして脳神経生理学的な意味での機 能亢進と機能低下の研究成果を応用します。


    注)(P)は「ワーキングメモリの脳内表現」(京都大学学術出版会)のページ

    (続く)
    心の病気と前頭前野
    Posted by MF総研/大田 at 18:31 | 私たちの心理療法 | この記事のURL
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