長期間の課題実践の結果得られる「治る」という報酬 [2006年09月12日(火)]
長期間の課題実践の結果得られる「治る」という報酬=前部帯状皮質の機能認知行動療法やマインドフルネス心理療法(自己洞察瞑想療法もその一つ)のような課題遂行型 の心理療法が成功するには、クライアント(患者)が課題を実行することが必要になる。それは、 動機づけであり、脳神経科学では、報酬回路が深く関係する。2,3か月先に「治る」という報酬 効果が出てくるが、そのようなすぐには報酬が選れない課題を実行することが、心理療法である。 そういう長期間の実践行動で得られる効果(報酬=治ること)を聞いて「快感」(長期報酬)を起こ さないと、課題を実行しないだろう。 そのような長期報酬は、通院方式のカウンセリングの場合、自宅での実行時に、長期報酬を想起 しないと、課題を実行しないだろうということが推測されるので、前頭前野の機能であるワーキン グメモリが影響するだろうということを次の記事で考察した。
行動発現のための報酬回路情動や報酬に関係する情報処理過程は多岐にわたるが、目標を達成して報酬を得ようという動機 づけ、行動の計画、実行という目標到達行動がある。設楽氏によれば、こうである。
「この際、我々は絶えず現在の状態と到達目標とを比較し、目標に近づくほど期待が高まる。従 って、このような動機づけに基づく目標到達行動の情報処理に際しては、報酬に対する期待の大き さが重要な要素の一つであり、これに対応する神経活動が脳内に存在することが予想される。」 (1) 大脳皮質→大脳基底核→視床→大脳皮質 というループ回路がいくつかあるが、どこを、通るかで機 能的な違いがあるといわれている。 [前部帯状皮質→腹側線状体→腹側淡蒼球→視床背内側核→前部帯状皮質〕という回路も、この ループ回路の一つであるが、「この回路は情動や動機づけに関連した重要な刺激に反応して運動を 開始するときに重要であるといわれているものである。」(2) このループの中で、腹側線状体(側坐核)は、次のような位置にある。
「すなわち側坐核は情動系および学習・記憶などの認知系の両方の情報が入力する。したがって 側坐核は、刺激を判断し学習して続行するか回避するか、動物に適切な行動をとらせる位置を占め ているのである。」(3)
長期報酬に反応する前部帯状皮質設楽宗孝氏は、前部帯状皮質の報酬期待の機能を調べた。
「その前半(吻側部)がより情動に直接的に関係するaffective division(情動部位)であるの に対し、後半(尾側部)はより認知制御に役割を果たすcongnitive division(認知部位)と考え られてきている。」(1)
こうした前部帯状皮質における報酬期待の機能の障害が、種々の精神疾患に関係しているようで ある。これを考慮して、治療のすすめ方、カウンセリングを工夫する必要がある。
心理療法の現場では、患者の中には、カウンセリングを1、2回で中断する患者もいる。治るだ りうという報酬期待を得ることができない重症の患者だ。課題をクライアントによっては、前部帯 状皮質が障害されていると、長期報酬の課題を実行しないことが推測できる。中断するクライアン トの一部は、そういうことを想定して、治療方針をたてる必要があるかもしれない。 うつ病や不安障害の患者には、記憶機能、ワーキングメモリの機能の不全の患者もみられるが、 治らないうちに、カウンセリングを中断してしまうクライアント(患者)は、記憶、ワーキングメ モリや、長期報酬にかかわる脳部位に変調があるのかもしれない。心理療法を提供する場合、そう いうことを留意して、治療法を工夫したほうがいい。 (続) |













