「正しさ」をゴリ押しする行動の背後にある心理とは?
[2018年08月13日(Mon)]
「正しさ」をゴリ押しする行動の背後にある心理とは?組織の中で「ごり押し」し、攻撃的な行動をする人がいる。「正しさをゴリ押しする人」(榎本博昭、角川新書)を見ている。 この本は、マインドフルネス(自分の意識を観察)を標榜する推進者、専門家に必読書であろう。 自分のおぞましい心理を「マインドフルネス」(=自ら観察し気づき)して、組織や周囲に迷惑をかけないようにすべきなのであるが、 多くの組織で、ゴリ押しが行われる。まず、前の記事で、原因は、 「認知的複雑性が低い」からだという分析である。その背後にある心理(SIMTでいえば「本音」=気づきにくいおぞましい自己中心的な心理) は何か。榎本氏の解説をみる。 ★背後に欲求不満・劣等コンプレックス・妬み 「「正しさ」を振りかざしている人は、本人は義憤に駆られているつもりでいる。」(p94) 「「正しさ」をごり押しする行動には、どうしても攻撃的が雰囲気が漂っている。・・・ 冷静に正論を主張している感じではない。」(p95) 背後にある心理は何か。 「そこで参考になるのが、心理学者の世界ではよく知られている欲求不満―攻撃仮説である。」(p96) 「心理学者ダラードたちが唱えた欲求不満―攻撃仮説とは、目標に向けて遂行されていた行動が阻止されると 欲求不満が生じ、その解消または低減のために攻撃行動が引き起こされるというものであり、 多くの実験や調査によって妥当性が支持されている。」(p96) SIMTでは、表面の本音があれば、さらにその奥に深い本音が隠れていることがあるので、深い本音もできるだけ 気づくように観察を深める。似たようなことを榎本氏の説明がある。「欲求不満」の背後にあるものは何か。 「承認欲求が満たされないこと」(p106) 「僻みっぽい歪んだ認知を生み、攻撃的な反応を引き起こす。」(p107) 「自分が輝いているなどと感じることはほとんどない」(p109) 「「自分は正当に評価されていない」といった不満が強い」(p113) こうした、背景の心理(本音)から、「正義感を振りかざしたり」(p122)、 「自分の言い分が通じないと・・・相手を攻撃する」(p122) 榎本氏は、さらに、背後の心理に「劣等コンプレックス」があるという。 「コンプレックスというのは、無意識のうちに人の思考や感情や行動に影響を与えているもの」 (p122)であるから、まさにSIMTでいう本音に類似する。SIMTでは、コンプレックスも観察し気づくように トレーニングする。 「コンプレックスというのは人の無意識層に作用するため、このような人は無意識の 衝動に突き動かされており、現実を冷静に見ることができずに、一方的な思い込みで行動する。 ゆえに、相手の言い分に耳を傾けようとせず、相手の立場や意向をまったく配慮することなく、 自分勝手な理屈を振りかざすのである。」(p123) 「劣等感」(p123)があり、「自己効力感を高めたいという欲求の他に、自分に正当性を与えたいという欲求も 潜んでいる。」(p125) 「妬みの心理がある」(p133,135) 「ほんの些細な違反でも大ごとにして」(p133) 「自分より優位に立っている人を引きずりおろしたい心理が働いている。」(p135) こうして、強く主張し相手を攻撃する背後にこのような、その個人のトラウマのような心理、「自尊感情の低さ」から 来ている主張、解釈で誠実なひと、説を攻撃するのであれば、公的な組織とその利用者にとっては大きな迷惑である。 欧米の心理学者は、深く解明している。日本はどうだろうか。 宗教や「マインドフルネス」の世界は、自己の心理現象を洞察して他者、自己を苦しめないようにするはず (=本音)であるが、日本ではこの領域の実践、学問にも起きていないのか。人間は複雑であるのに、随分、色々な解釈があるのはずなのに、 画一主義的、還元主義的のものをゴリ押ししていないのか。ビクトール・フランクルが、全体主義、画一主義、還元主義の学問を 批判したが、仏教、マインドフルネス、臨床心理学、精神医療の領域の組織はどうなのか。 残念だが、本来、禅や西田哲学で警告した「独断偏見に気づきやめよう」という教えと実践が見失われている日本。やはり、ある。 「正しさ」をゴリ押しする行動の背後にある心理とは? https://blog.canpan.info/jitou/archive/3853 【目次・書籍紹介】「正しさをゴリ押しする人」(榎本博昭、角川新書) https://blog.canpan.info/jitou/archive/3835 【New 目次】非定型うつ病のマインドフルネスSIMT |