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書籍紹介「学者は平気でウソをつく」(2) [2018年01月21日(Sun)]

「学者は平気でウソをつく」

 「学者は平気でウソをつく」和田秀樹、新潮社

 衝撃的な内容が続きます。 当分、うつ病の新しい治療法は、日本の医師や心理療法者からは、研究が促進されるかどうか、わからない状況が予想されます。

 「二〇一二年、日本うつ病学会が新たなガイドラインを発表し、軽症のうつ病には薬を使うべきではないと突然言い出したのです。」(p134)E

 「新しいガイドラインで認知療法などの精神療法を取り入れることを推奨していることは方向としては妥当なことです。しかし、そもそも、日本の精神科医のほとんどは精神療法の技術を身につけていません。そういう医師たちに急に薬を使うなといっても、代わりの手段がなければ、どうしようもないでしょう。」(p136)F

「ただし、うつ病のうち、抗うつ剤が効くタイプは五割ほどに過ぎないという説も出てきました。また、子どもや若年車に抗うつ剤を使うと自殺を増やしてしまうことや、ある種の抗うつ剤は子どもには効果が出ないこともわかってきています。うつ病にも、薬物治療が万能ではないことが次第に明らかになってきました。」(p135−136)G

 マインドフルネス心理療法も有望ですが、日本の学者は、新しい仮説には用心深いという。

 「学問を絶対視したがる人たちは、新しい仮説に対してとても用心深く、また誰かが学説やスタンスを変えた場合には、それだけで「変節漢」よばわりすることさえあります。」(p16)H

 「森田療法は、・・・・認知療法・認知行動療法という最新の精神療法とも似通った点があり、近年では世界的に見直されてきました。・・・・ その考え方は時代を大きく先取りするものだったのです。・・・。 日本の学者はとかく欧米の概念をありがたがりますが、日本発の技術には、欧米で評価されるまで気づかないのが残念なことです。」(p100)J

 うつ病の薬物療法では、十分治らない患者が半数。若者や軽症には、抗うつ薬はあまり効果がない。しかし、医師は精神療法を身につけていない。
 では、ブームの欧米のマインドフルネス心理療法を導入するかというと、日本の学者は新しい仮説には、用心深い。マインドフルネスを取り入れようとは、なかなか思えない。 おまけに、欧米のマインドフルネス認知療法(MBCT)は、再発予防法であり、治療法ではない。
 こうして、日本では、うつ病を治して、自殺防止を促進させようとするためには、何か大きな力が必要です。医師、心理学者は、真剣に考えていただきたい。著者がいうように、新しい学説に乗り換えていくのは、難しいのだろうか。
 専門家が旧いものを墨守するならば、新しいものを切望する別の人材がとりくむしかにだろう。再発を繰り返すうつ病の家族、若者、軽症のうつ病の家族を持つ市民も、本書で述べられた現状を十分理解して、何か行動を起こすきっかけにしていただきたい。

 ただし、科学や学問を全否定するのではないことはもちろんである。著者もそういう(P205−206)。選者もそう思う。 しかし、従来の学説、仮説では解決困難な状況があるのは事実である。 環境の変化によって新しい学説、解釈が必要だという正当な主張をする人が、組織の中で差別、排除されることも起きているかもしれない。自分のことが優先で、組織全体の活力が失われることには、関心がない自己洞察の低い者に支配されていては、長い間にその組織は外部とかけ離れて崩壊していく。
 科学的だとか公式な学説というものが、組織の内外で絶対視されていることに違和感を持つ、 多くの人に、本書をすすめたい。

【選者】大田健次郎(特定非営利活動法人マインドフルネス総合研究所代表、一般社団法人日本マインドフルネス精神療法協会代表、マインドフルネス瞑想療法士)

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Posted by MF総研/大田 at 22:11 | うつ病 | この記事のURL