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(12) 「死」の問題の解決支援(3) [2017年10月07日(Sat)]

大乗仏教からの初期仏教批判
(12) 「死」の問題の解決支援(3)

   大乗仏教は、別の哲学で、死の問題の解決の支援をします。竹村牧男氏の大乗仏教の説明をみています。
 「自己や世界の真実を知らずにいることに、苦しみの根本の問題があるということを示しています。つまり、無明です。」とありました。本当の自己をしらないのです。ブームのマインドフルネスは、感覚とか身体動作とか集中力を観察します。大乗仏教が一番協調したエゴイズムの心理(煩悩といいます)を観察しません。もっと様々な自己のありさまを観察しません。

 「そして無明にもとづいて、さまざまな煩悩が発生し、当人は自我とものとに執着し、人と争い傷つけあい、にっちもさっちも行かなくなってしまうと仏教は見るのでした。 (中略)
要は、死の苦しみとは、真実の自己を明らかに了知していないがゆえに、生死する虚妄の自我に執して発生するものであって、実はこの苦しみは、万人にとっての課題になっているということでした。
 だとすれば、仏教はやはり現代人にも重要なものであり、欠かせないものであるということになります。現代は苦しみのないもしくは少ない時代のようですが、仏教の見ている苦しみは時代にかかわらない、人間に普遍的な苦しみ だったのです。だから仏教徒は、ともすれば、この根本的な問題を見つめることを忘れがちな現代人に、はっきりこのことを指摘し、より深い世界への眼を開かせていくべきでしょう。」 (竹村牧男「般若心経を読みとく」角川ソフィア文庫、2017年、P171-172)

 いかがでしょうか。大乗仏教は、このようにすばらしいものだったのです。 ブームのマインドフルネスは仏教に似ている実践です。 それなのに、「マインドフルネス」でも、自己洞察が浅いと、自分の「もの」(権力、金銭、地位、名誉、生き甲斐など)に執着して、クライアント、関係者を傷つけます。救済を妨害します。誇大宣伝的であったり、ウソをついていたりして、信じて参加したクライアントを失望させ、絶望させます。浅い見識のものが 結託して多数派となり誠実な実践者を排除したりして争います。弱い立場の人は泣き寝入りでした。

 昔は、それでもとおったでしょうが、現代は違います。インターネットで批判されて拡散したり、内部告発の制度や、ハラスメント防止の制度が健全な組織にはありますので、訴えられるでしょう。そして、自分が苦しみを得るはずです。 身内だからとかばったり、無視したりしても、今は種々の手段があります。いつかは、暴露されます。市民はやはり社会正義を期待します。ハラスメントを起こさないようにしない組織は、評判を落とし、組織の衰退を招くでしょう。 エゴイズムは、他者を傷つけ、そして、批判されて自分が傷つきます。だから、大乗仏教、日本仏教、西田哲学は、エゴイズムの心理の観察を極めて重視したのです。(このことは 「マインドフルネス・ハラスメント」 として、考察していきます。)

 本当の自分を探求せず、自分のエゴイズム、マインドフルネスについて 無知のためにエゴイズムの行動をする自分を観察せず、誠実な仏教やマインドフルネスを否定するために、「死」の問題の解決支援を妨害することになってしまいます。

 仏教やマインドフルネスの「死」の不安の解決支援の「観察」は、他の対象的な科学とは違います。 世俗諦ではなく、勝義諦です。 ここまであるマインドフルネスですから、深いマインドフルネスを否定してはなりません。すべての人の「生」と「死」の哲学にかかわります。否定すれば「科学」という装いで過ちを犯します。歴史上よくあったことです。 どんなにすぐれた科学者であっても、本当の自己はわからないのです。仏教が探求してきたのです。対象的な学問知識をひけらかしても、ダメなのです。勝義諦でないと死の問題の支援が難しいでしょう。そこが西田幾多郎博士からも批判されたところでしょう。勝義諦でないと「本当の自己」にもとづく他者の支援が難しいでしょう。「マインドフルネス」の「科学」が始まったようですが、深い仏教に学ぶべきだと思います。

★学問が「マインドフルネス」に指針を
★科学的真理
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3591
<目次>大乗仏教からの初期仏教批判
 =大乗仏教の哲学は在家にとってすぐれたマインドフルネス
本当の自分とは? 人生はなぜ苦しい?
竹村牧男「般若心経を読みとく」角川ソフィア文庫、2017による。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3549 
★第3世代の認知行動療法=多くの流派のマインドフルネス心理療法

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3288 
★日本のマインドフルネスの再興を
Posted by MF総研/大田 at 17:17 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL