苦悩の現実の中で世界を創造して生きていく(20)
[2014年04月16日(Wed)]
苦悩の現実の中で世界を創造して生きていく(20)
日本および欧米のマインドフルネス心理療法には、マインドフルネスとアクセプタンスの要素があります。こ
れらは、思想や理論ではなくて、現実の実践能力や行為への実現能力です。マインドフルネスと、もう一つの「アクセプタンス」も重要な実践です。不快な事象でも、即座に非機 能的な行為に移らずに、受容するスキルです。Alan E. Fruzzetti and Kate M. Iverson らの定義をみて おきます。そして、あとで、私見の違いを述べます。 一般的な定義「第一に、アクセプタンスとは、自分自身の個人的な体験に対するある種の応答として人が行 う(または行わない)何らかの行為である。すなわち、我々が、思考、感覚、情動、覚醒の体験、願望や欲 望など、個体内に生じる様々な刺激を受け入れる(または受け入れない)ことを意味する。ここでいう個人 的な体験とは、当然、近刺激(proximal stimulus)に対して、それを受容したり、受容しなかったりする反応 のことである。体験はそれ自体が、一つの、あるいは多様な先行刺激により引き起こされるが、それは個 体内から発生する刺激に導かれる個人的体験と、個体外の刺激に導かれる公共的(public)体験のいず れかに分類できるのである。」(1)アクセプタンスとは、人生における快も不快も受け入れることです。受け入れないこともあります。どちら の場合にも建設的な対策をとるマインドフルネスと連動します。 人が反応するのは、病気の症状などのような身体内からの刺激と、対人関係や社会的な出来事など外 界からの刺激が考えられます。 アクセプタンスには2種あり、変化を伴うアクセプタンスと、変化を伴わないアクセプタンスであるといいま す。 変化を伴わないアクセプタンス 不快が存在しても、何かの目標を達成するために目標に近づくために、前向きに苦痛に耐えるのは変 化を伴わないアクセプタンスです。建設的な忍耐です。非機能的な行動を抑制できます。解決策、希望 の見えない中での我慢ではありません。
不快なものから、目を他のものに転じるのも、不快の対象そのものを変化させることに努力しない、純粋 なアクセプタンスです。
こうした場合に、可能性ある治療は受けながらも、自分の人生で大切と思う価値から家族と楽しい余生 をすごす決意をして、家族と旅行するのもアクセプタンスです。旅行すれば、めずらしい風物に接して、 病気であることのつらさを変化させるかもしれません。家族との人生をよく生きることができます。 別の例では、配偶者のある欠点が、目について「それを治せ」と常に言うならば、相手は自分が受容さ れていないと、不満に思い、口論が絶えず離婚になるかもしれません。離婚が「自分の願いなのか」をか えりみれば、そうではないのだとしたら、「その人に、こういう欠点があるけれども、これこれのいいところが あるから、もう「あそこを変えろ」ということはやめよう」と決意します。そうすると、表面的な不満はあっても、 離婚せず、相手のあるがままの人格を受け入れることで、愛情を持ち続けることができます。人格は身体 、心理よりも深く全体的なものです。表面の身体的心理的な浅いレベルの不満を見つづけて不満を持続 させて、大きな深い人格を見損なっては本末顛倒です。 変化を伴うアクセプタンス変化を伴うアクセプタンスもあります。
「こうした工夫を行っても、ーー上位の(本来の)目標や欲求に従って行動を続ける限り、(その人は)苦 痛を受け入れ続けることに変わりはない。このように、アクセプタンスは変化に対してエネルギーを注ぐこ とを否定するものではない。」(B) 「ただし、そのエネルギーが、本来の目標に向けた効果的な働きかけの維持を減退させる、あるいは阻 止するものであってはいけない。」(C)(4) (C)は、エネルギー、努力を、害になるようなことに注ぐのはよくないということです。食べ物、アルコール 、強迫行為、改善効果のない宗教的な行為、などは、依存症になるおそれがあります。努力しても、問題 解決にならず、目的を達成できない可能性もあります。うつ病、不安障害の人が種々の健康法や宗教実 践を試みても悪化することさえあるでしょう。しかし、マインドフルネスのように長期間かけて治すという変 化を伴うアクセプタンスも考えられます。うつ病や不安障害、過食症などは治るのですから、治るという変 化を希望して、適切な改善行動をすべきなのです。治る可能性があるものを絶望してほしくないのです。 次のような、高度のアクセプタンスがあります。
「新しい刺激を作り出す」という例は、不快感を感じても、害にならない方策、たとえば音楽や読書に心 を向けるのが例でしょう。食べ物やアルコールは、過食症、アルコール依存症などになるおそれがあるか ら、アクセプタンスではありません。 このように、アクセプタンスは心の病気や対人関係の改善、非行・犯罪の治療、予防、再発防止などに 貢献するのです、アクセプタンスは、マインドフルネスの実践ができることが前提となります。アクセプタン スも、思想、理論の理解だけにとどまっていては、問題が現実に改善しません。具体的な実践が必要で す。 マインドフルネス心理療法は認知療法のように特定の観念を変えるという戦略ではなくて、広く、あらゆ るストレスを受容し、受け流し、ときには、建設的な方法で、ストレスを乗り越えるという、普遍的なストレス 対処法です。 ここでは、アクセプタンスの一般的な定義をみたのですが、個々の障害、問題に、最も効果ある方法へ の変更、最低必要な期間などが研究されています。一般的なマインドフルネス、アクセプタンスを基礎と して、それぞれの障害や問題に最も効果があるように、技法の多少の付加・変更、期間の選択、個別か 集団か、などの試験研究がされています。 以上が、欧米のマインドフルネス心理療法家のマインドフルネス、及びアクセプタンスの定義ですが、 私見では少し異なる定義を提案しています。依っている哲学の相違によるものでしょう。次に述べます。
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