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注意欠陥多動性障害(ADHD)・薬物療法の長期的な予後がよくない [2013年11月29日(Fri)]

くすりにたよらない精神医学(3)

  「くすりにたよらない精神医学」(雑誌「こころの科学」増刊)(日本評論社) が発売になりました。
 目次にあるように、4部に分かれています。
  • 1部は、医師以外の人々からの意見
  • 2部は、精神医学のくすりづけについて、精神医学の医師からの報告
  • 3部は、くすりに頼らない精神疾患の援助
  • 4部は、精神科以外の医師からの報告です。
 いくつか、マインドフルネス心理療法がお役に立てるかもしれないところ、気になるところを見てい きます。

注意欠陥多動性障害(ADHD)・薬物療法の長期的な予後がよくない

 3部の薬物療法以外の援助が必要であるという指摘があり、ADHDの場合にも、それが指摘されて います。ADHDに14か月薬物療法を提供した(MTA研究)が、確かにその終了時には、効果がみら れたが、 その子が数年たって後に、生き難い状況になっているといいいます。薬物療法だけでは不十分とい うことが指摘されています。 
     「14か月の治療が終了した時点で、対照群よりもADHD症状、反抗挑戦性障害(ODD)症状の改善 効果が有意に良好だったのは、薬物療法群と併用群だけでした。」
 ところが、8年経過した時点で、
     「数年間フォローアップされたMTA研究の参加者は全体として、学習到達度、社会的技能、精神 科入院治療の経験、全般的な機能状態などさまざまな点で、同年代のクラスメートに比して有意に 不良な結果を呈していました。」

     「こうした結果から、ADHDの薬物療法は、それ単独では子どもの生きにくさを長期的には十分減じ ていない可能性があります。」  (p111-115、井上裕紀氏)
 何が問題であるかというと、ADHDの中核症状ではなくて、社会性(対人関係)の課題、(ADHD症 状以外の)行動の課題、感情の課題などの領域における不足スキルだといいます。
 薬物療法を織り込みながらも、新しい支援モデルの開発が必要であると提案しておられます。

 感情コントロールのスキルでは、マインドフルネスが貢献できるかもしれませんが、子どものための マインドフルネス手法を開発しなければならないでしょう。一般的なマインドフルネスをADHDの支 援者が学んで、応用できるところがあると判断されるのであれば、どのように応用していくか考えて、 新しい手法を開発することになります。特定の領域のためのマインドフルネスの手法を開発できるの は、一般的マインドフルネスの専門家ではなくて、その問題領域の援助者です。具体的問題に精通 しないマインドフルネス者に、開発できるはずがありません。医師以外の援助者の役割が重要になり ます。マインドフルネスが貢献できそうかどうかわかりません。
薬に頼らない精神医学
タグ:ADHD
Posted by MF総研/大田 at 20:38 | この記事のURL