CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
«伝統的価値観が何をすべきかを教えてはくれない | Main | この世界は人が創造していくもの、神が創るのではない=NHK »
過去は消えないといわれると苦しむ人もいる [2013年03月29日(Fri)]

人生の苦しみにどう向きあえばいいのか・フランクル4回目(2)

 =過去は消えないといわれると苦しむ人もいる

 NHK Eテレビで、27日、フランクルの「夜と霧」の4回目でした。
 人生には苦悩がつきものである。仕事、病気、愛するひととの別れ、自分の死など苦 悩が必ずある。
 テレビでは、「過去はなくならない」ということに焦点をあてたスピーチやゲストの 【コメント】でしたね。テキストとは随分ちがっていました。
 人のスピーチや文章の一部を切り取ると、誤解されるおそれがあります。 他のところでは、逆のことを言っている場合があります。 過去は決してなくならないというのは、一面であり、過去はもうないということもあり ます。フランクルも、創造価値、体験価値、態度価値を発見するように言います。 これらは、みな「今のことに行動しよう」ということだと思います。
 今、多くの人が、消えない過去に苦しんでいます。東日本大震災の被災者の方の PTSD,愛する人を助けられなかった後悔や自責、虐待された人、虐待した人、犯罪の被害者など、 まだ、過去の苦悩を乗り越えていない人には、「過去は決して消えない」というところだけ を切り取って強調すると、つらくて絶望されるかたがおられるかもしれません。心の病気の重い人 には、言い方を変えた、いわゆる「待機説法」になります。 前後の文脈でよく理解されます。
 フランクルも、3つの価値、目前の意味のために生きることを強調しているの です。日本の仏教は「今ここ」を強調しています。 マインドフルネス心理療法は、すべて、「今ここ」を強調しています。 それで、うつ病や不安障害が改善します。「過去はもうない」というほうが、うつ病の人は改善しやすいようです。クライエントの苦悩によって、援助方法を変えたほうがいいようです。カウンセラーの講座では、過去はないという側面と、現在に過去も未来も含まれているという西田哲学の論理を学習します。でも、クライエントの方には、「過去はない。今を生きよう」という側面を強調してつらい過去の記憶を乗り越えていく心を成長させる課題を実践していきます。しかし、先が長くはないと苦悩する人には、違う側面の見方が救いになるかもしれません。
 フランクルの思想や療法は、過去がつらかった重症のうつ病の人やつらい過去が苦痛であるPTSDなどの問題は扱う場合、多分、別のところでは、過去を見つめすぎないで、今、目前の中に生きる意味を見つけましょうといっているはずなので、同様のことなのでしょうが、テレビは過去が消えないという側面の強調でした。
 まもなく死にゆくということが苦悩である人にとって、「すばらしい過去」を送った人ならば「過去は金庫に保管されて消え ない」というと嬉しいのでしょうが、「過去が悲惨な」人でまだ乗り越えていない人はつらいだろ うと思います。そういう視聴者の方には、「つらい過去でも乗り越えることができる」といそいで付け加えることも必要ではないかと思いました。一部を切り取る方法は、聞かされる人には注意が必要です。 カウンセリングも時間が限られているので、1回の面接では全貌を伝えることは不可能であり、苦悩する方に伝えることは難しいものです。かといって、聴くばかりで解決方法を伝えないわけにはいかず、伝え方の工夫をし続けることがカウンセラーの成長です。
 フランクルは、たくさん 語りました。それで多くの人が救済されています。傾聴だけでは、その人が発見できるはずの意味を発見できるとか、深い自己を探求する援助はしないことになります。傾聴(だけ)をすべての問題に使うことはクライエントの成長の機会を失うおそれがあります。傾聴以外の心理療法が効果的なクライエントもあるということは理解しておいていただきたいです。
 カウンセリングにおいても、多くのことを説明したいのに、1回だけ聞いて、失望したり、怒ったりされるクライエントもおられます。幅広く深い思想や心理療法は、なるべく長い時間をかけて実践していくことが大切なようです。
 西田哲学も、現在のみしかないという一方で、過去が現在に含まれているとも言いま す。似たようなことですが、フランクルがいうのとは違うのかもしれません。
 放送とテキストでは内容が全く違っていましたね。目前の人生に意味があるというのです から、やはりフランクルも過去ではなく、今を大切にするのでしょう。生きる 意味は常に目前の「人生」にあるというのですから。フランクルの思想、哲学は西田哲学と似ており、すばらしいものです。これを、どのように実践すれば、苦悩を乗り越えていくことができる心理療法や生き方になるのか、専門家に研究していただきたいと思います。
 放送時間がわづか25分だから、解説者の先生も苦労なさったことでしょう。つらい過去を持ちまだ乗り超えていない人は、放送を見てフランクルの言うことを好きになれないというのは、早すぎる判断だと思います。「それでもフランクルにイエスという」テキストの4回目に記述されていることを見るとそういえます。
(続く)
フランクルのこと
Posted by MF総研/大田 at 23:23 | フランクル | この記事のURL