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セラピスト・カウンセラーを育成する人には哲学が必要になる [2012年01月30日(Mon)]

セラピスト・カウンセラーを育成する人には哲学が必要になる

 マインドフルネス心理療法はいくつかの流派があります。 第3世代の認知行動療法として、行動療法や認知療法でも治らなかった心の病気を治すものとして 期待されています。しかし、その哲学の深さやカウンセラーの習得可能性が問題になるかもしれま せん。 マインドフルネス心理療法が普及するためには、支援者の育成ができる人が必要です。 カウンセラーは、クライアントを指導するので、それほど深い哲学を知っている必要はありません が、カウンセラーのカウンセラー、すなわち、カウンセラーを育成する人(研修医を指導する指導 医のような立場)は、そのよってたつ哲学を相当深く知っていることと、それと関連する実技を指 導できる必要があるでしょう。なぜなら、カウンセラーには、きちんと哲学を教えないと、カウン セラーが自信をもって、臨床にのりだせないでしょう。クライアントさんは哲学を意識する必要は ありませんが、支援者はクライアントさんから「なぜ、その課題をするのですか」と質問されたら 答える必要があります。まして、カウンセラーを育成する人は、講座の受講生(心理士、医師、看 護師など)から、質問されるでしょう。

 呼吸法だけ、考えを流すだけを教えるのは「形式」だけ教えているのです。方針のない坐禅だけでは治らないように、うつ病や不安障害は、呼吸法だけでも、考えを流すだけでも治りません。自己ということを洞察する方針、哲学が必要です。それで新しい自分の見方を開発していく。

 マインドフルネス心理療法にはいくつかの流派があります。その背景の哲学は、 ACTは「行動分析学」、弁証法的行動療法は、ヘーゲルの弁証法だと言われています。 従って、日本でマインドフルネス心理療法が普及するためには、指導者が そういう哲学に造詣深いことが必要になるのでしょう。 (私は西田哲学にはうといのですが、幸い、日本には、西田哲学の参考書がたくさんありますので、それを紹介できます。私の不備をおぎなうことができます。そういう哲学の入門書に導かれて、西田幾多郎の原文にあたりました。)
 そういう哲学を知らずに、または、そういう哲学を十分に反映した手法を使わずに、形式的に呼吸 法や瞑想を指導するのでは、治療効果に限界があるのでしょう。「集中する」「気づく」などは、 心の病気の人も行っています。嫌なことを考えることに集中しています。それに気づいています。 集中するだけの坐禅は、これまで、社会の現実問題の支援に貢献できませんでした。何が違うのか哲学が重要です。 似たようなマインドフルネス心理 療法でありながら、うつ病の治療に効果があるとか、予防に効果があるとか、他の障害に効果があ るとかの差異が出てくるのかもしれません。

 ご存知のとおり、ティーズデールらの「マインドフルネス認知療法」は、3回以上再発した人の寛解期のうつ病の再発予防に効果があるが、 2回未満の人には効果がないとされています。また、重症期の治療法ではないとされています(ただし、抑うつ症状のただなかの人にも効果があったそうです。次の記事で)。行動活性化療法や自己洞察瞑想療法(SIMT)は、重症期のうつ病にも効果があります。 似たようなマインドフルネス、アクセプタンスの手法を用いるのに、効果の違いがあります。 哲学とそれに基づく手法の差異によるのかもしれません。今後、研究者の研究が進むことを願います。

 マインドフルネス心理療法は、世界でも始まって年数が浅い ので、すべてこれからの研究課題でしょう。世界中のマインドフルネス心理療法の研究者が研究す るでしょう。行動分析学やヘーゲルの弁証法を学習する場所は日本では限られているでしょう。 西田哲学は、日本の哲学ですから、多数の研究者がおられ、解説書もやさしいものから専門性の高いものまで容易に入手できます。 西田哲学は、いくつかの大学で講座も受けられるでしょう。日本には、西田哲学を背景にするマインドフルネス 心理療法が学習しやすい環境にあります。

 私は十年前は、「禅の哲学」を背景にして講座を開いていましたが、「禅」だというと宗教だと疑われて公共の会場ですすめにくく感じてからは、「禅」を引用せず、西田哲学の言葉を用いることにしました。道元禅の哲学と西田哲学は非常に似ています。西田哲学の研究者も仏教の哲学者も認めています。だから、どちらでもいいのです。でも、一方は宗教で他方は宗教ではなく、哲学で学問です。公共の場(教育、医療、福祉、企業など)では、特定宗教の言葉を使わないほうがいいのでしょう。

 ずっと、クライアントさんとあい続けるのであって、 カウンセラーを育成する立場には立たないというのであれば、哲学を深く知る必要はないでしょう が、カウンセラーを育成する人も多くいなければ、カウンセラーがふえずに、普及に限度があります。マインドフルネス心理療法の翻訳書はたくさんあるのに、マインドフルネス心理療法を受けられる場所が増えないのは問題です。

 非定型うつ病、各種の不安障害(パニック障害、PTSDなど))、パーソナリティ障害、その他の深刻な心の問題(虐待、覚醒剤依存、非行犯罪の更生、がん患者の死の不安、高齢者のうつ病、犯罪被害者の苦悩など)は、深い人間哲学による心理療法でないと十分ではないのでしょう。こういう問題は、全世界が、マインドフルネス心理療法を適用するようになるのでしょう。
◆セラピスト・カウンセラーを育成する人には哲学が必要になる ◆カウンセラー(セラピスト、医者)も自己洞察スキルの体験が必要
Posted by MF総研/大田 at 19:50 | 新しい心理療法 | この記事のURL