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心的外傷後ストレス障害(PTSD) [2011年12月26日(Mon)]

マインドフルネス心理療法(SIMT)でなぜ治るのか(5)

●心的外傷後ストレス障害(PTSD)

 実際に人が死ぬのを目撃したり、または危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を体験したり、 目撃したりした人が後になって発症するのがPTSDです。
 大震災の後には、数年、PTSDが必ず、かなり増加することが知られています。そして、長年月治ら ない人もいます。 今度の東日本大震災は、地震と津波で想像もできない恐怖ですし、原発のために苦悩がつづいています。多くの方がPTSDになられるおそれがあります。

 PTSDの症状の特徴は、@侵入的回想(フラッシュバック)及び再三夢に見る(悪夢)こと、A過覚 醒状態(睡眠障害、 集中困難、過剰な驚愕反応など)、Bその体験と類似した体験からの回避や、その出来事の想起回避 などの回避行動です。
 研究者の報告によれば、PTSDの患者には前部帯状回、海馬、前頭前野の体積の減少がみられます。 海馬や前頭前野の体積減少がフラッシュバックをひきおこしている可能性があります。 視覚・嗅覚・体性感覚・感情・聴覚などの各様式の記憶内容が統合されずにフラッシュバックが現わ れます。
 また、海馬と前頭前野は記憶の形成と検索に関わっていることから、その体積減少は記憶関連の機 能障害を生じやすくなっています。また、前部帯状回は扁桃体を調節することによる条件付けの消去 に関与しているので、その体積減少によっていったん恐怖体験によって条件付けられた反応を容易に 消去できなくなっています。
 こうした神経生理学的特徴をもつPTSDもマインドフルネス心理療法で軽くなります。 第一に、呼吸法を通して、自己の種々の作用や身体行動を観察するトレーニング、非機能的な行動に 移ることを抑制するトレーニングを日々実行することがワーキングメモリの中央実行系にかかわる神 経系を動かすことになるので、長く感情的になることが少なくなります。 基礎的なトレーニングを実行していると悪夢やフラッシュバックの起きる回数が減少してきます。 感情的になることが少なくなることや、前頭前野から帯状回の抑制が活発になるためであると推測さ れます。
 第二に、自己の種々の作用を観察する訓練をして、不快な事象にもあるがままに見る訓練をします ので、条件づけされた反応を抑制して、新しい反応を学習します。こうした訓練が前頭前野や帯状回 認知領域を頻繁に動かすことになるので、その領域に神経生理学的な回復が生じるのだと思われます 。
 第三に、フラッシュバックや悪夢の発作が起きなくなって、自己の種々の作用がわかり、不快事象 の受容ができるようになると、回避していたことへの接近を試みることができるようになります。こ うして、回避行動が徐々に解消していきます。
 第四に、呼吸法には注意の分配のトレーニングが継続されます。呼吸法をしながら不快な体験を意識的に再現させて、不快なことだけに占領されないトレーニングを継続することで、不快なことでもそのままにしておられるスキルが向上して、慣れが生じるでしょう。EMDRで改善するのと同様の仕組みがあるのかもしれません。
 第五に、PTSDの症状は、意に反して過去が現在に侵入してくる様相、自分の現在の目的行動に無関係のものが出てくる様相があります。自己洞察瞑想療法の課題で、目前のものを見る、呼吸を観察するという「現在」に強く意識を向け続ける訓練によって、みだりに過去や無関係の刺激が侵入してこないような抑制の神経回路が活性化してくると考えられます。EMDRの目で援助者の手ををみさせる、ひざなどを軽くたたくのも、同じような効果なのかもしれません。SIMTは、他者の援助なく、自分でできるセルフトレーニングができそうです。
 眼球の運動は、前頭眼野でコントロールしていますが、「見る」というマインドフルネス心理療法(SIMT)の訓練が過去の想起を抑制する前頭眼野の機能を向上させるという仕組みがあるのかもしれません。 (⇒前頭眼野と抑制) SIMTでは、PTSDの人に、眼前のものを見る課題を実行していただきます。

(次は、社会不安障害です)
  • 自己洞察瞑想療法(SIMT)でなぜ治るのか
  • Posted by MF総研/大田 at 20:37 | 新しい心理療法 | この記事のURL