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記憶の形成と想起 [2011年10月07日(Fri)]

心の病気と前頭前野(2)
 =記憶の形成と想起

 前頭前野の機能の一つは、記憶の形成と想起に重要な役割をはたしている。 前頭前野の背外側部(DPFC)は記憶形成の前に記憶情報の組織化や内容確認をし、想起時にモニタ リングと想起内容の評価をする。(152p)
 背外側前頭前野などのワーキングメモリ機能と連動して、記憶と想起がスムーズに実行される。背外側前頭前野が障害を受けると、新しいことを記憶もできず、記憶していたはずの仕事や勉強に関することを思いだすことが難しくなる。うつ病患者は、背外側前頭前野の働きが低下している。
 うつ病になると、学習や仕事、対人関係の約束などを新しく記憶することも、 記憶していたはずのことを思い出す(想起)ことも困難になる。 だから、抑うつ症状や身体症状が軽くなっても、背外側前頭前野の障害が回復していなければ、仕 事や勉強がうまくいかない。ワーキングメモリーの機能と同じ背外側前頭前野である。 この部分の回復が順調でないと、完治したとはいえない。軽くなった時点で、配慮してもらって、 手順が難しくないような仕事から始めればいいが、元のように複雑な仕事に復帰すると、うまくで きないので、悩み苦しんで再発してしまう。 従って、復帰の前に、背外側前頭前野が十分に回復しておくことが大切であることになる。 背外側前頭前野がよく使われる訓練をすればいい。そこで、職場復帰プログラムが行われて、擬似 職場を作り、入力作業や計算、会議などで訓練することが行われている。一部には、これが奏功しているが、 しかし、なお、再発するということもある。そういう作業療法だけでは不十分である。
(続く)
Posted by MF総研/大田 at 22:52 | 私たちの心理療法 | この記事のURL