フラッシュバック [2011年08月22日(Mon)]
心的外傷後ストレス障害や非定型うつ病
=眼球運動、見ることに意識を集中することでフラッシュバックなどが改善するわけ(2)
欧米のマインドフルネス心理療法者も、トラウマの治療を行っている。自己洞察瞑想療法(SIMT)でも、フラッシュバックが軽くなる。EMDRやマインドフルネス心理療法で、PTSDの症状が改善する仕組みは
よくわかっていないようですが、
推測できる仕組みがいくつかあります。
背外側前頭前野や前頭眼野の機能向上のほか、意識的に思考を抑制する効果です。
フロイトのいう自我防衛機制による「抑圧」は無意識で不快な体験が想起されないように押
し込めるが、何らかの形で本人を苦しめる。無意識の防衛機制による抑圧と違って、意識的
に思考しないようにする訓練がどうなるかという研究がある。
被災地には余震が多くて、不快な体験を何度も考えてしまう人がいるだろう。
意志的に考えない訓練をすれば、PTSDや非定型うつ病(フラッシュバックの症状起きる人もいる)の発症を予防できるだろうか。
予防法を示唆する外国の研究(AndersonとGreen)がある(注1)。意志的な思考抑制技法を
中核としたマインドフルネス心理療法によるフラッシュバックの治療の可能性を考えたい。
不快体験だけを無意識の抑圧(これは、病理の症状をもたらす)するのと違って、意識的に
抑制する手法の効果
(心理療法の治療技法として用いることができるヒントになる)を
幾段にもわたって試験している。
PTSDや非定型うつ病にあるフラッシュバックは、本人は思いだしたくないのに、突然、不快
な過去の体験が想起される。
非定型うつ病の人にも、過去の不快な場面(職場や症状を悪化させた不快なストレスの場面、過去のことで思いだしたくないのによみがえるフラッシュバックの症状を伴うことがある。
非定型うつ病の他の症状(鉛様麻痺感など)が軽快するとともに、フラッシュバックもおこらなくなる。
フラッシュバックが何らかの治療法によって、フラッシュバッ
クが起こらなくなったり、想起されても苦痛が小さくなれば、本人の社会的職業的生活を障
害しなくなる。
意図的思考の抑制は思い出しにくくする
AndersonとGreenの実験は次のようなものであった。
参考図書に詳しいが、「think/no think課題」で検索すると、概略をAnderson氏の論文の
日本語訳で見ることができる(注2)。
この実験は、学習段階、think/no-think課題、テスト段階の3つの段階に分かれている。
<学習段階>
実験参加者は、弱い連想関係にある単語対(たとえば「旗」ー「剣」)を50対記憶して
もらった。
<think/no-think課題=第2段階>
学習段階で覚えてもらった単語のペアを使って、2種類の試行を行う。1種類目の試行では
、画面上に表示された単語から先に記憶した他方の単語を思い出し、それを口で言う。例え
ば、「旗」と表示されたら、「剣」と思い出して口で言う。
別の試行では、同じように単語が表示されるのだが、このとき
対の語を考えないようにする。容易ではないが、記憶した対の語が意識にのぼらない
ようにしなければならない。
1回、8回、16回の繰り返しが行われた。
<テスト段階>
最後に、学習段階で覚えてもらった単語の対をどれくらい覚えているかを確認した。対の
一方を見せて、一方の単語を思い出してそれを言えるかどうかテストした。
その結果、第2段階で思い出さないように努めた単語の対ほどテスト段階での成績が悪いこ
とがわかった。その悪さは、第2段階で高い頻度で現れた単語ほど悪いことがわかった。つ
まり、思い出さないようにした記憶ほど、あとで思い出そうとしても思い出しにくかった。
この実験では、様々な可能性を考慮した上でさらに条件を変えて同様のテストを行ってい
るが、結果は変わらなかった。
彼らは「考えないようにした反応語の記憶そのものを抑制するメカニズムが存在すること
を主張している」(注1参考書)
Anderson氏は、フロイトの抑圧では説明できない、記憶の抑制があるようだとしている。
背外側前頭前野や前部帯状回に関係しているようだとして、「
記憶の抑制は、もはやFreudが言っているような心理的防衛機制だけで説明されるべきではな
い。実行系の能動的な活動の結果を反映していると考えるべきではないだろうか。」
(注2)という。
(続く)マインドフルネス心理療法の思考抑制とこの実験のこととを考察したい。
(参考書・注)
- (注1)「メタ記憶」(北大路書房)の中の「メタ記憶のコントロール機能」川口潤氏が詳細に紹介している。87-104頁。
(注2)http://www4.ocn.ne.jp/~murakou/unwanted.pdf (研究の概要を紹介した論文。
ただし図はない。注1の参考図書には図もある)。
|
|
|
Posted by
MF総研/大田
at 21:35
|
災害とストレス
|
この記事のURL