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さらに「卒業生」2人から現状報告 [2011年08月20日(Sat)]

さらに「卒業生」2人から現状報告

 ここ数年のうちに、カウンセリングを「卒業」なさった方2人から、最近 近況報告がありました。
 PTSDの記事はあとにしてお伝えします。
 マインドフルネス心理療法を受けたが再発した人や今実践なさっておられる人が参考にし ていただきたい。 似た状況にある方で、苦しんでおられる方が多いに違いありませんから。

復帰、再発、寛解、再発のくりかえし

 お1人は、私どもの自己洞察瞑想療法(SIMT)との関わりをもってから長い。 悪戦苦闘のかたです。こちらにおいでになってから、正規の日記指導のない「心の健康クラ ブ」(治療プログラムではなく、予防プログラム)に参加されて、しばらくしてから再就職 された。そして、しばらくして再発。退職なさって、再びカウンセリングを開始したが、 ひととおりセッション10まで終らないうちに復帰(会社の都合がありやむをえない)、し ばらくして再発をくり返された。再発し休職にはいったある年、今度こそ真剣にやるという ことでセッション1からやりなおした。

毎日60分から120分の呼吸法

 それで、半年ほど、自己洞察法の取組みは鬼気迫る ほどの打ち込みであった。呼吸法(自己洞察法)を毎日、1時間から2時間、行った。綿密 な日記記録、日記指導。そして、半年で復帰。2時間行うことも多かった。私のクライエントのうちで、最大量である。私自身、20年前、うつ病になった時には、休職せずに治したので、平日は1時間、土日は、3時間、5時間やった日もあったが。当時は、マインドフルネス心理療法などなく、この方法でうつ病が治ると教える人はいなかったが、うつ病の治癒には、思考抑制が要ではないかという予感があった(体験的に実証され、後に脳神経生理学的にも確認=苦痛的思考からHPA系の亢進)。治るまでには、1年弱かかったが、種々の悩みの根本解決をめざして通算6年実習にはげみ、もう自分のことはここへんでよいと決着がついて1993年から、心の病気の人の指導を開始し、禅の学問的研究、脳神経生理学、心理学、西田哲学によって、うつ病が治るわけを説明しようと勉強を続けて、自己洞察瞑想療法(SIMT)として数年前に体系化した。うつ病を心理療法で治す取組みは24年になる。心理学や脳神経生理学の研究者の断片的な実験、研究成果をつなぎあわせると、うつ病が治癒するわけが推測できる。心理療法としての課題の開発も日々続いている。適用症(うつ病から他の病気、病気でない問題領域へ)、適用領域(がん、教師、こども、介護、震災被災者、事件被害者など)は 広いので、完成する時はないように思う。
 苦悩の成立するわけを説明した西田哲学もあった。西田幾多郎は昭和20年私が生れる直前になくなったが、今、世界中のマインドフルネス心理療法者が彼の創始した哲学に近い自己探求を精神疾患の治療に応用している。 心理学で説明をしようと試みているが、西田哲学との比較検討はさけられないだろう。 マインドフルネス心理療法は、 精神疾患の治療に留まらず、政治やビジネス、医療、宗教などすべての人間の営みにみられるエゴ、独断的・自己中心的な個人悪が社会悪になる弊害を克服する方向を示してくれるでしょう。意識的自己に執着して、自己(およびその集団)の利益を優先して他者世界を不幸にすることが多い。マインドフルネス心理療法は今後、日本や世界に普及していくだろう。
 脱線しましたが、さて、この人の、毎日1,2時間という実施量の多さが効果的だったのだと思われる、再発予防に効いた。この実施量の多さが以前の脆弱 な脳神経回路をかなり変えたのだろう。その後は、1年順調で再発していない。この数年間に、1年勤務が続いたのは、はじめてだという。
 自己洞察瞑想療法(SIMT)を実施しても、何度か再発を繰り返す人は、参考にしていただき たい。1時間から2時間の呼吸法である。1年もの長期間、休職、無職でいられないという 人は、毎日、1,2時間、呼吸法をやってみられるといい。薬物療法、ほかの心理療法、カウンセリン グ、認知行動療法プログラムがうまくいかないなら、試してみる価値がある。多くの場合、毎日30分の呼吸法で、1年継続すれば、再発しない。ストレスの厳しい職場に戻るならば、その後も30分から1時間、実践できる時間を作るのがいい。数年、再燃させなければ、興奮系の回路が死火山になる。
 この人から得られる教訓は、マインドフルネス心理療法も、中途でやめて、ストレスが厳しい職場に復帰すると再燃すること、しかし絶望しなくていいこと、真剣にやれば半年でも回復することである。それを教えてくださった。私はこれから、こういう例もあり、再発を何度、繰り返した人でも大丈夫といえる。そのかわり、真剣にたくさん、呼吸法を行うことという条件をつける。
 私がかかわったクライエントの方は種々あって、実施量、期間、回復過程にバラエティに 冨み、他の方の参考にしてもらいたいので、色々なタイプをカウンセリングの時に、お話し している。

沈黙のクライエントも

 傾聴型のカウンセリングと認知行動療法とがあるが、マインドフルネス心理療法は、全く傾聴しないわけではない。課題の実施状況やわからないこと、症状への対処など、クライエントの知りたいことがある。個別面接ができる場合はそれを行い、できなければ、日記に書いて提出していただく。それが、クライエントからカウンセラーへの訴えになる。あまり望ましくないかもしれない(カウンセラーからのアドバイスがないので治癒割合が低いだろう)が、クライエントからカウンセラーへの語りがゼロであっても進行できる治療法でもある。
 マインドフルネス心理療法の技法は、枠組みで用いるので、認知の内容、個人の考えた内容、受けたトラウマ体験の個性的なものを傾聴せずに、治療できる。だから、どうしても言いたくないプライバシーを語る必要がない。 全く、日記を提出しない人もいる。私は、それはそれで、受容する。傾聴させてもらえない人である、アドバイスできないので、治る程度は限界があるが、一方的にカウンセラー側から、課題の実行法を指導するだけの人もいる。カウンセラーに自己の問題を言いたくないのである。そういうひとでも、効果がゼロではない。そういう人は、テキストの記述、講話から わかる範囲で実行するのだろう。 自己の哲学の深まりがある。わかっているのかどうか、カウンセラーには伝わらない。治り方に限界があるのはしかたがない。治る程度よりも、自己を他者に打ちあけないことのほうを重視する人である。何かの「本音」が働いている。カウンセラーはそれを受容する。それでも、ある程度、かるくなる。1割くらいの人がそれである。個人の希望を受け入れる。学校の授業で、質問する人と質問しない人の違いのようなものである。 うつ病や不安障害、依存症、事件被害者、被災者などの人の中には、こういう語りたくない人がいるだろうから、傾聴型のカウンセリングにはいかないだろう。
 日記を提出せずに、セッション10まで参加して、「ずいぶん軽くなりました」とグループ・セッションを卒業される人も1割くらいおられる。日記指導ができないほど参加者の多いグループ・セッションでは、全員がそうなる。参加者が10名程度であれば、日記指導ができる。 カウンセラーの受け入れ態勢次第である。日記指導のできるカウンセラーを数名もつ組織的カウンセリング所であれば、実習講話は、50−100名参加のグループ・セッション一つで行い、日記指導は数名のスタッフが分担すれば、50−100人でも同時に治療できる。1年で寛解にもっていくという方針とそれなりのサービスを提供すればいい。 それを週に2−3グループを進行させれば、1年間に相当のクライエントを治療できる。 将来は、そういう組織ができることが望ましい。
 こういう心理療法だから、グループ・セッション、集団療法が可能である。一度に、100人でも、指導できる。ただし、個別面接、日記指導を併用するほうが、治療効果が高い。一方的では、クライエントが、方法、課題を誤解して行っている場合に、指摘できない。
 もう1人の人の消息がわかった。数年、再発していない。今、執筆中の本に体験談を書いてくださること になった。プライバシーを除いて配慮して、体験を書いていただく。数年再燃させなければ、もう大丈夫というのが私の印象。休火山が完全な死火山となる。脳神経生理学的に 恒久的な変化が起きると思う。そういう印象である。私自身が体験者であるが、 私のは他の人の参考にならない。25年前に、わけもわからずに実行したものだし、毎日のデータもない。
 クライエントの方が、状況をおしらせくださると、私はプライバシーに配慮しながら、このくらいの量、このくらいの期間で治ると、新しいクライエントの方にお話しして(誰であるかわからないようにプライバシーのデータは語らないで)参考にしていただける。すなわち、クライエントの人の取組みのデータが他の人のためになる、クライエントの人が社会貢献となっている。新しい薬物の臨床試験に協力してくださる患者さんのようだ。 日記を書いてくださったので、症状、実施量、改善経過がわかって、私の治療技術が向上して、生きがいをもらった(技術が向上するほどに、技術者の独断に警戒しなさいと西田哲学が教えているが)。クライエントの人が 「助けられて助けている」。私は「助けて助けられている」という矛盾的自己同一が起きている。
Posted by MF総研/大田 at 19:09 | 私たちの心理療法 | この記事のURL