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被災地の医療崩壊(3) [2011年07月22日(Fri)]

被災地の医療崩壊(3)

 =認定精神看護師の育成

 「週間東洋経済」(7/23号)も被災県の医療崩壊を伝えていますが、 そこに、「特定看護師」の案が紹介されています。 「療養上の世話・医療上の補助のうち、高度な判断を要する行為が医師の指示の元で可能」というもの。特別の教育を受ける。
 精神科医、精神科看護師、認知行動療法のできる心理士も不足している東北地方では、 認知行動療法を提供できる看護師や作業療法士を養成するのはいい対策だと思います。 「認定精神看護師」と仮に呼んでおきます。その学校、教育機関が認定する民間資格の創設の提案です。 次のような提案です。

認定精神看護師(仮称)の育成

 看護学部のある大学や看護師養成の学校で、認知行動療法やマインドフルネス心理療法の教育を受ける。
 たとえば、マインドフルネス総合研究所では、1日の講座をわざわざ毎月1回にして、その間、体験的な宿題を実習する時間を作って、7か月=7回行って、マインドフルネス心理療法の基礎を習得していただいて、認定している(自宅での宿題が必須である=これをしない人は身につかない)。これは、大学などで1コマ=1時間30分に換算すると、3コマくらいである。7回で、合計21回の授業となる。大学などで教えるとしたら、よく習得してもらうめに、毎週1回か、隔週1回の授業 を1年間(10か月)行うのがいいと思う。
 授業の内容は、マインドフルネス心理療法ならば、うつ病、不安障害などの脳神経生理学と心の病気、心の作用との関係、西田哲学(の基礎のみ=心理療法への応用に関係することのみ)と心の病気の関係、実習(実演)の3つである。そして、学校のカウンセリング所で受け付けた一般患者さん(または協力病院での患者さん)の治療プログラム(集団療法)の現場臨床にも支援補助者として交代(数人ずつでないと学生が多すぎるだろうから)で参加する。
 第2世代の認知療法の講座であっても、1年間で育成できるだろう。認知療法やマインドフルネス心理療法が一定期間で改善するという定評がある。

何をするか

 認定精神看護師となったら、勤務する病院で医師の指示のもとで、薬物療法と併用して、心理療法プログラムを患者さんに提供する。週1回2時間、その病院に通院、入院する患者さんにグループ・セッションを行う。さらに、時間をあと1日程度さけるならば、患者さんから提出してもらった日記の点検を行い、患者さんに助言し、医師に報告する。時々、症状の変化のチェックリストの記入をしてもらい、医師に報告する。それによって医師は診断(変更)、薬の処方の参考にする。
 医師や看護師には、ストレスによるうつ病、燃え尽きも多いのであるが、 認定精神看護師は、自分でうつ病予防のスキルを習得しているのでうつ病になりにくいだろうし、勤務する病院のスタッフにも教育することで、スタッフのうつ病予防にも貢献できる。
 このような範囲の認定精神看護師ならば、現在の法律を変えることなく実現できるだろう。患者さんの身体に触れる行為も薬も用いない。言葉で助言するだけであるから、医療行為ではない。現在、多くのカウンセラーが行っている範囲である。言葉での助言は、傾聴型のカウンセリング、認知療法、マインドフルネス心理療法などがあるが、認知療法、マインドフルネス心理療法は、うつ病、不安障害、依存症などの効果が顕著である。さらに他の精神疾患の軽減に用いることができる。
 東北地方には医師が不足しているという。精神科医、精神科看護師も不足しているだろう。しかし、自殺率は高い。東北3県で、認定精神看護師を育成できれば、東日本大震災で増えることが予想されるうつ病、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、原発(放射能)事故の不安によるストレスなどによる不眠、心身の不調などの治療支援ができるだろう。
 自殺率が高い東北地方、医師が少ない東北地方、そして、原発事故の避難、放射能の不安で、うつ病、不安障害、心身症が増えることが予想される福島県 で、認定精神看護師の育成は試してみる価値があるのではないだろうか。

どのくらいの予算が必要か

 一つの学校で実施するとしても、わづかな予算でできそうである。 非常勤講師の費用のみでできそうである。
 現地に住んでおられる認知行動療法のスキルを持つ心理士に看護師を養成する学校で年間1コマの講座(プラス臨床現場での指導=週1回くらい)を持ってもらえばいいのだから。一つの学校で講座をもって、他の学校の学生も受講できる公開講座にすれば、一カ所の学校で多くの看護師を養成できるだろう。
 当研究所から講師を派遣する場合、交通費、宿泊費、教材費などの実費(無報酬スタッフのみの非営利団体であるため報酬は不要)が年間100万円ほどがかかるだろう。1年間だけであるが(その後は、こちらから行かなくても、現地の育成された看護師がうつ病などの治療支援ができる)。(当研究所はマインドフルネス心理療法のスタッフしか派遣できない。) どこかの助成団体が東日本大震災の復興支援として助成金をくださるのではないだろうか。そうなれば、地元の負担はなくなる。 被災地の大学や看護師養成の学校がこういう講座を開講するならば、助成金を出してくださる団体はありそうである。うつ病の治療、自殺防止に貢献できるから。100万円で、被災県の地元に認定精神看護師が育成されて、その後、うつ病、不安障害の人の治療支援ができて、自殺防止に貢献できるだろうから、効果は極めて大きいと思う。
 助成金をもらえず、大きな費用をかけないで認定精神看護師を育成するのであれば、現地の認知行動療法カウンセラーの方に講師をお願いするのがいい。3県の看護師養成学校でぜひ検討していただきたい。過去に例のない非常事態であるから、従来の概念にとらわれず、期限つきでもいいから、自殺防止の可能性あることは1度でも試してみるべきだ。
Posted by MF総研/大田 at 09:40 | 災害とストレス | この記事のURL