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カウンセラーも自己洞察スキルの体験が必要(6) [2011年06月30日(Thu)]

カウンセラー(セラピスト、医者)も自己洞察スキルの体験が必要(6)

 アメリカのマインドフルネス心理療法者は、それを提供しようとする セラピスト(医者、カウンセラー)が、マインドフルネス、アクセプタ ンスの体験者であるべきであるといっています。

 自分で体得したセラピストならば、 その心理療法を、どの問題に適用できるか自分で判断できます。 マインドフルネス心理療法にも、種々の流派があって、得意とする精神 疾患、問題に差があるようです 。

マインドフルネス心理療法の各派には得意領域がある

 弁証法的行動療法は、ボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)に効果があります。
 アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)は、行動分析 的心理療法から発展したもので、次のように種々の領域に適用されているそうです。
  • ACTは「不安障害、怒り、PTSDと外傷体験に関する問題、うつ、慢性的な痛み、アノレキシア( 神経性食欲不振症)、糖尿病のライフスタイル、最愛の人との関係」
    「強迫性障害やパーソナリティ障害、薬物依存症といった精神病性障害や、障害のある子どもの保護者 、小児科での適用など」(「こころのりんしょうa/la/carte」2009/3、星和書店、38頁)
  • 「うつの患者さんに対してもACTが適用されていますが、第一目的かどうかと尋ねられると、答えは 「いいえ、違います」とうことになるでしょう。ACTが治療の対象とするのは、<うつ>という症状 ではなく、「心理的非柔軟性」に対してです。」(同40頁)
    「発達障害のある人への介入研究はまだまだ多くはありません。」(同43頁)
  • 「ACTは行動分析学に基づく治療法」(12頁)
    「ACTは行動分析学という学問体系に基づき、帰納的かつ実証的な知見を蓄積したことによって、発 展してきたもの」(13頁)

 ACTは行動分析から発展してきたが、ACTは「発達障害のある人への介入研究はまだまだ多くはありません。」(同43頁) といわれています。
  「行動分析」では、大人には適用が難しいと言っています。 行動分析が、クライエントとの対面の現場でセラピスト自身が行う技法 として発展してきたためのようです。
     「その外来治療・援助と行動分析とは相性が良くありません。クライエ ントが成人である場合、とくにそれは顕著です。ただし、このことは外 来治療には行動分析は使えないということを意味しているわけではあり ません。解説編第7章で述べられているように、むしろ、今後の成人の 外来心理療法の主流になる可能性を秘めており、それは本書の論点の1 つでもあります。
     とはいえ、成人の外来治療・援助は行動分析が得意とするところから もっとも遠くにあることは確かです。」 (大河内浩人・実光由里子「うつ病の成人への心理面接」、「行動分析 」ミネルヴァ書房、233頁
 本書に、自閉症児、知的障害児、アスペルガー症候群青年、不登校児 などの支援事例が紹介されている。
 行動分析は、 児童への支援が得意であるようである。児童生徒の発達障害の保護者、関係者に朗報である。
 同じくマインドフルネス心理療法といっても、行動分析を背景とする ACTの特徴は、症状の軽減というよりも、価値にそった生活向上を ゴールとするという。
     「ACTが「第1、第2の波」のセラピーと異なるもうひとつの点は 、症状の軽減という主流の臨床心理学が掲げるゴールではなく、心理的 柔軟性と価値に沿った生活の向上という応用的なゴールを持つことであ る。これは、CBTや他の主だった臨床のアプローチがクライエントの 価値ある人生を想定していないと言っているわけではない。むしろここ で言いたいのは、ACTがそれをアプローチの主眼にしているというこ とである。」(「ACTを実践する」パトリシアAバッハ等、星和書店 、57頁)
 「アクセプタンス&コミットメント・セラピーの文脈」(ブレーン出版)では、不安障害に対するACT,痛みに対するACT、職場でのストレスに対するACTが紹介されている。
 一方、「マインドフルネス認知療法」は大人のうつ病再発予防に効果 がある。障害ではなくて、児童生徒のストレス対処、うつ病・不安障害 の予防に応用できると思う。
 一方、「マインドフルネス認知療法」は大人のうつ病再発予防に効果 がある。寛解期において実践すれば、再発を予防できる。しかし、まさに重症期の患者のための心理療法ではない。これは、そのほか、児童生徒のストレス対処、うつ病・不安障害 の予防には応用できるそうである。
 一方、自己洞察瞑想療法( SIMT: Self Insight Meditation Therapy )は 、大人のうつ病、不安障害、依存症などの治療・支援を得意とする。受容にとどまらず、 積極的に「治す」ことを主眼とする。(もちろん、治ることのない苦悩を受容して生きていく 心、生きることの意味哲学の向上も大きな効果がある。) 開発者が、うつ病であったことから、自分自身の治療のために開始した淵源を持つ。 「マインドフルネ ス認知療法」と違って、寛解期でなくてもかまわない。再発予防とい うよりも、寛解でない時の、治療法である。 アメリカの行動活性化療法も重症のうつ病に効果があったという。
 いずれにしても、ACTが言うように、アプローチはアクセプタンス(受容)でいくが、症状が軽減消失する問題にも消失しない問題にも、不都合不快な現実を受け入れて生きて行く心を向上させる。その心がどのような苦悩にもついてまわる「うつ」を防止し、生きていく心を目覚めさせるのは同じであるようである。

 傾聴が主流である日本の臨床心理学とは違う流れが、欧米にあって、第1行動療法、第2認知療法で、症状を軽くするのが主眼であった。第3の波が、苦痛、障害を受容して価値ある生活を向上させるアプローチ。しかし、第3の波には、症状軽減を前面に出すものと、受容を前面に出すものとがあり、アプローチや応用領域に違いがある。でも、どのマインドフルネス心理療法にも2つの側面がある。症状軽減をめざさなくても、結果的に軽減する症状もある。症状を軽減をめざして取り組む場合でも基本的には受容の心得を持ちつつ軽減のアプローチを実践するのであるから、治療の進展につれて、軽減しない症状や不快事象があることがわかってきて、それには受容する心得を実践しているのであるから、そのまま受け入れて自分の願い、価値実現の生活に復帰できる。
 ACTにしても、SIMTにしても、セラピスト(カウンセラー)自身が 体得実践すれば、他の領域に適用できるかどうかわかるはずである。 それにしても、マインドフルネス心理療法の各流派やセラピスト個人には、以前からてがけてきた得意領域がある。 他の領域への適用は、周辺領域で活躍する支援者が研究している。その問題領域の障害の仕組みと心理現象を熟知している支援者なら、マインドフルネス、アクセプタンスの技法を適用できるかどうか判断できる。
 SIMTは、高校生以上の大人のうつ病、非定型うつ病、不安障害、過食症、依存症、家族の不和など の治療と予防をてがけてきた。大人の他の精神疾患への適用も試みつつ ある。他の精神疾患においても、その症状や治らない現状を受容せずに苦悩の思考を繰り返すことが症状の悪化や「抑うつ症状」の付加を招いていることが推察されるからである。
 私自身はSIMTを児童に適用したことはない。しかし、 小中高の児童生徒に心の病気の予防やいじめ防止のために 学校で応用できないものか研究してくださる方が現われることを期待す る。セラピストが面接場面で適用するのではなく、自宅などセラピスト がいない場所で自習できるようにするのであるが、効果がみられるうつ 病や不安障害、不登校の予防法として可能性がある。
 日本では、第3の波が医学や心理学の世界に受容、アクセプタンスされるのは、遠い未来であるかもしれない。あるいは、受容されないかもしれない。 日本では、病理レベルでない傾聴が主流だった。 日本は、病理レベルの人を治すという、第1、第2、第3の波とは別の流れに乗ってきた。イギリスでは、国家が、認知行動療法にふみきった。日本では、第2の認知療法も、まだアクセプタンスされているとはいいがたい。認知行動療法のセラピーが極めて少ない。認知行動療法によって治るうつ病、不安障害もあるのに、セラピストがいない。自殺が多い理由の一つかもしれない。日本も特定の施設で、認知行動療法のセラピストの育成を開始したという。新しい第2、第3の波は受容されるまでに相当かかる。


カウンセラー(セラピスト、医者)も自己洞察スキルの体験が必要
◆セラピスト・カウンセラーを育成する人には哲学が必要になる
Posted by MF総研/大田 at 21:15 | 新しい心理療法 | この記事のURL